白銀カノン、完成白銀キングダム。
「というわけで白銀キングダムがほぼ完成しました」
4月某日、えみり先輩に呼び出された私達は例の場所へと向かう。
最初は冗談だったら良かったのにと思ってたけど、冗談じゃ済まされないような規模の宮殿……いや、小さな街が完成していました。
「うわぁ。これはすごい」
建物を見た白龍先生は手に持っていたカメラで外観を撮影する。
今日はあくあのお嫁さんというよりも、1人の小説家として小説の参考資料にしたいからという理由で見学に参加したそうです。
「大きいですね。セキュリティはどうなっているのでしょうか?」
結さんは、周囲のセキュリティを隈なく確認する。
さすがというかなんというか、こういう状況でも落ち着いて見えます。
「嘘でしょ……」
完成した現物を見た姐さんは頭を抱える。
うん、私も同じ気持ちだから安心して。
「ほへー」
楓先輩がすごくシンプルな面白い顔をしていた。
ちょっと、こんな時まで笑わせないでくださいよ!
え? わざとじゃない? これが凡人の普通の反応? なるほどね。楓先輩が凡人のカテゴリに入るのかどうかは一旦置いておいて、確かに普通の人が見たらそうなっちゃうよね。
「そういうわけで、今から私が皆さんを白銀キングダムへとご案内いたします」
バスガイドの制服を着て、手に旗を持ったえみり先輩が私達を門の入口へと誘導する。
わざわざこういう時のためにその制服と旗を用意してくるところとか、えみり先輩は努力するベクトルが間違ってる気がするんだよね。そんな事よりも、もっとこう、あくあにアプローチするとか大事な事があるよね?
「えー、まずは入場門のセキュリティですが、SEIJYOMっていう名前の会社が担当します。ここが24時間交代で検問、パトロール、そしてカメラによる監視を行います」
はいはい。聖あくあ教のフロント企業ね。もう隠す気すらない名前でバレバレだよ。
分厚い門の横にはちゃんと受付があって、私達も中に入場するために名前を記名する。
って、えみり先輩、カウンターの向こう側に向かってどうしたんですか?
「身分証明書をご提示ください」
えみり先輩はキリッとした顔をする。
まーた、いつものしょうもない小ネタが始まった。
あくあといい、えみり先輩もそういうの好きだよね。
「白崎アイ? 白龍アイコじゃなくて?」
「はい、白龍アイコはペンネームなので……」
えみり先輩はステイツの空港にいる入国審査官のような渋い顔をする。
いるいる。そういうもう最初から疑ってる感マックスの渋い顔の人。
「お姉さん、SNSが凍結された過去があるでしょ」
「ぁぅ……」
えみり先輩の言葉で黒歴史を思い出した白龍先生がダメージを負う。
「ちょっとお姉さん怪しいですね。少し裏で詳しく取り調べしましょうか」
「えっ?」
警備員に両脇を抱き抱えられた先生が詰め所の裏へと引き摺り込まれて行った。
うん。えみり先輩。これ長くなりそうなネタですか?
「はい、次の人ー」
楓先輩が間の抜けた顔のままパスポートを見せる。
「国際種子法違反に他国でのテロ活動!? これは明らかにアウトでしょ。逮捕です! 警察にすぐ通報して!!」
それはそう。って、普通に納得しちゃった……。
楓先輩は警備員さんに、ほへーとなった顔のまま詰め所の奥に連れて行かれる。
もしかして今日はずっとその顔のままなのかな?
「はい。じゃあ、次の人」
「あっ、はい」
結さんがえみり先輩にパスポートを手渡す。
そこはかとなくえみり先輩がスケベな顔をしているように見えるのは私だけかな?
「えーと……白銀結さん。身体がえっ!? ですね」
「え?」
「そういうのは一旦裏で取り調べする事になってるんですよ。ぐへへ!」
「ちょ!?」
えみり先輩、それ絶対にえみり先輩の私的な何かですよね?
明らかに職権濫用でしょ。警備員さんが結さんを拘束する。
なんか警備の人達も楽しんでませんか?
「はい、次の人ー」
仕方ないけど付き合ってあげますか。私は渋々とパスポートを見せる。
「白銀カノン!? こいつもアウトだアウト! あくあ様の最初の女ってだけで何かの罪だろ!!」
警備員の人達が私を拘束……しなかった。
あっ、妊婦だから気を遣ってくれてるのね。ありがとう。
「はい、最後の人ー」
調子に乗った顔のえみり先輩が姐さんからパスポートを受け取る。
この時点でオチがわかっているのは私だけかな?
「あー、これはダメですね。デカすぎます。これは間違いなくチジョーが擬態した姿、それも幹部のデカ・オン……グヘェ!」
姐さんの右手がえみり先輩の顔面を鷲掴みにする。
ほらね。やっぱりこうなったかという展開になった。
「えみりさん、もういいかしら?」
「あっ、ふぁい……」
えみり先輩、確実にこうなるってわかっててもやっちゃうところが多分ダメなんだと思うよ。
みんなに謝って付き合ってくれてありがとうと感謝したえみり先輩は、詰所の裏になる拘留場所に案内する。
「ちゃんと檻があるのはいいですね」
結さんは鉄格子の強度を確認したり詳しくチェックする。
拘束する場所があるのはいいけど、そこに置いてあるお茄子の形をした道具とか鞭は何? それと、木馬みたいなのがあるけど、これは何に使うのかな?
「カノン、お前って奴は……」
「カノンさんはそのままでいてくださいね」
「ほへー」
ちょ、ちょっと! なんで2人ともそんな保護者みたいな顔で私の事を見るのよ!
しかも姐さんはいいけど、捗るに肩ポンされてうんうんって頷かれるの、ちょっと個人的に嫌なんだけど!?
あと、楓先輩はそろそろ帰ってきて!
「それではこちらがメインストリートになります」
門の内側に足を踏み入れた私達は、大通りを見て驚愕する。
「え? 街?」
白龍先生の言葉に全員が頷く。
大通りの両側を見ると雑貨屋さん、帽子屋さん、玩具屋さん、和菓子屋さんなどなどが立ち並んでいた。
「よくもまあこれだけの物を作りましたね……」
うんうん。私は姐さんの言葉に頷く。
でも、テーマパークのショップエリアみたいですごくワクワクする。
あっ、よく見たら生地屋さんがある!
レイヤーとしては、ちょっと見てみたいな……。私はお店の中を覗く。
あー、まだ中に商品が入ってないし、店員さんが居ないから中は見れないんだ。残念。
「雇用する人の査定が大変ですが、全員お手つき可能な人にすれば例の問題も解決するのでは?」
結さんは監視カメラの位置を確認しながら、ぶつぶつと呟く。
って、上を見て気がついたけど街灯がガス灯なんだ! 可愛い!!
「ほへー」
楓せんぱーい! もうそろそろ帰ってきてー!
さっきよりも目が点になってるよ。
私達はメインストリートに並ぶお店を眺めながら中央にある噴水広場を目指す。
うわぁ、ファンタジー系のコスプレで写真撮るには最高のスポットかも。
「この噴水広場から右に行くとスターズを参考にして作られたアーケード街があります。こちらは大通りにあるお店と違って専門店が多いです」
わわ、本当だ! スターズにあるパッサージュみたいな作りで小さなお店が並んでいる。
お店のラインナップも文房具屋さんみたいに一纏めにするのではなく、インク屋さんとか、紙屋さんとか、専門店に分かれてるのがすごくいい! いまだに紙で書く事に拘っている司先生とか、ここに連れてきたら喜びそうな気がします。
「1番奥の大きな建物は藤百貨店白銀キングダム店です。ちなみに白銀キングダム内のお店のラインナップも藤百貨店というか、蘭子ばーちゃんとメアリー様が質に拘ってセレクトしてくださいました」
蘭子お婆ちゃん、気合いを入れすぎるのも程があるよ。あと、うちのお婆ちゃんは私に内緒で何をやってるのかな? すごくイキイキした顔でどこかに出かけてると思ったら、裏でこんな事をやってたんだ……。
「そして噴水広場から左側の通りは主に食料品店や飲食店になります」
ふーん、通りがうねった螺旋ような形で作られてて、1番奥の小高いところにある店と最初のお店の横道が階段で繋がってるんだ。
って、1番上にあるお店、パン屋さんじゃん!! 私それ、日本のアニメ映画で見たよ!!
黒い猫が居る、全女子が一度は行ってみたいと思ったパン屋さんです。
「ちょっと待っててくださいね」
そう言ってえみり先輩は階段を2段飛ばしで駆け上がっていった。
まーた何か小ネタが始まったんだなと思った私達は、普通に周囲のお店を外から見て回る。
え? チョコレート専門店!? いいなー。行ってみたーい!!
「お待たせしました!」
あっ、えみり先輩、帰ってきたんだ。私はえみり先輩の格好を見て呆れる。
大きな赤いリボンに黒い服、そして手には箒…… って、明らかにそのアニメに出てくる主人公じゃないですか!
「名物になる予定のシロにちなんで作られたシロパンです。どうぞ」
えみり先輩はみんなにパンを手渡す。
わわ、出来立てだ! 私達は顔を見合わせるとシロパンにパクリとかぶりつく。
シロパンはふわふわの柔らかい生地のパンに、重たいカスタードクリームが入ったクリームパンだった。
「美味しいです!」
結さんの言葉にみんなが頷く。
本当に美味しい。それに生地のデザインになったシロちゃんの顔がそれぞれ違ってて可愛かった。
でも、私のパンだけいやらしい表情のニシシ顔なのは、なんでですか?
「ありがとうございます。ちなみに私が石窯で焼きました」
「嘘でしょ……」
誇らしげにキリッとした顔をするえみり先輩を見て姐さんは頭を抱える。
えみり先輩ってアレだよね。本当に頑張る方向性がなんかズレてる気がする。
普通にパンが美味しいだけにすごく残念というかなんというか、そういうところがちょっとだけあくあに似てる気がした。
「うまうま」
楓先輩はもぐもぐとパンを食べる。
あ、ほっぺたにクリームついてますよ。拭いてあげるね。
「ぐへへ、カノンのほっぺたにクリームは……チッ、ついてなかったか」
えみり先輩、そういうのちゃんと全部聞こえていますからね?
「私、奥のお城じゃなくて、この街中に普通に住みたいかも」
白龍先生、わかります。
「従業員用の戸建て住居の余剰分があるので、白龍先生なら申請すればそこに住めると思いますよ。ちなみにカノンはダメです。ちゃんと奥の宮殿に住んでください」
はいはい、わかってますよ。
えみり先輩は白龍先生に申請用紙を手渡す。
「ところでこれ、利益というか運営資金の元は取れるんですか?」
姐さんの言葉に私も頷く。
どう考えても無理よね。
「よくぞ聞いてくれました!」
えみり先輩は私達全員に極秘資料と書かれた用紙を手渡す。
本当に用意周到というか、こういうのをもっと別の面で発揮してほしい。
ていうか、こういう資料が作れて計画が立てられるなら、あくあとだって普通にうまくいくはずでしょ!! どうしてまだ付き合ってないの!? どう考えてもあくあの好みなのに、今、考えても全く理解ができない。
「まず1つ、白銀キングダム限定グッズを販売します。それを城門の外にお店を作って販売しようかなと考えてます。もちろんオンラインでのグッズ販売も考えていますが、店舗限定商品なんかもあっていいんじゃないかなーと個人的には思いました」
なるほどね。確かにそれは儲けられそうな気がします。
「そしてもう一つ、噴水広場の奥に城門があるように、宮殿内はまた別の区画になっています。なので、祝日などは一般に開放しようかなと考えています」
あー、そういうのいいね! 私もファンの1人だったら普通に来てみたいもん。
それにこんなに綺麗に作ったんだから、働いてる人や作ってくれた人のために公開すべきだよ。
「問題はセキュリティ面ですが、この立て看板でどうにかしようと思います」
私達はえみり先輩が指差した立て看板へと視線を向ける。
【野生の森川楓と野良の小雛ゆかりと野山の捗るが彷徨いてます】
野山の捗るって何? あー、山に草を採りに行ってるから野山のね。なるほど……って、納得しかけたけど、すごくしょーもない理由だった。
「いいですか。自分よりやべー奴がいたら、大体のヤバい奴は大人しくなります。なので、この3人をセレクトしました。この国にあくあ様を除けば、この3人よりやべー奴はいません!!」
えみり先輩はドヤ顔でそう言ったけど、その中の1人が自分なんだよね。
捗るがえみり先輩だって知らない結さんとか白龍先生はそうですねと頷いてるけど、私と姐さんと楓先輩の笑顔は引き攣っていました。って、楓先輩もその中の1人ですよ! 他人事じゃないんですよ!!
「後は、経済を回すためですね。あくあ様もそうですが、ベリルやベリルの株を持っている藤蘭子会長、そして、森長めぐみさん等にお金が集中するといけないので、皆さんが白銀キングダムの運営に私財を投げ打って雇用を拡大する効果もあります」
確かに……。って、本当にこういうところまでちゃんと考えられるのに、なんでたまに何も考えずに行動する時があるの!? あくあもそうだけど、たまにとんでもなくアホになる時があるよね!? あれはなんでなの!?
「それでは地下に行きましょう」
「「「「「地下!?」」」」」
え? 地下まであるの?
私達はえみり先輩の案内で地下に入る。
するとそこには、地下鉄のような物があった。
そう、地下鉄じゃなくて、地下鉄のようなものである。
「白銀キングダム内は広いので、これで東西南北を移動できるようにしました。そして事故がないように、筒状のパイプになった内側を同じく筒状の乗り物が走るシステムになっています。なので、ホームから転落する事故もありません。ちなみにこの乗り物の開発にはアルティメットハイパフォーマンスサーバーの産みの親である鯖兎こよみさんが携わっています」
嘘でしょ……。あの人、ちょっと凄すぎない?
1人だけ明らかにオーバーテクノロジーというかなんというか、分野も様々だしあの人こそ1番のチートな気がする。
「駅は北駅、東駅、そしてここ南駅の三つです。それではまず東駅に向かいましょう」
私達は地下鉄もどきに乗って移動する。
なるほど、低速のリニアみたいなシステムで動いてるんだね。
へー、アラビア半島連邦で運行実験してたんだ。すごいね。
「はい、それではここが東エリアになります」
地上に出た私達は目の前の建物を見て固まる。
「えー、目の前に見えるお城が風雪えみり城です。なんと、計画を阻止したはずが普通に建っちゃいましたね。これ、なんに使うのかな? あはは……」
うん、もう笑うしかないよね。
ていうか、時代劇のセットじゃないけど、周囲にはちゃんと街並みがあるんだ。
あっ、団子屋さんだ!!
「ここは和のものを中心にセレクトしたお店が並んでます。まぁ、大通りにある洋物エリアの和のバージョンだと思ってください。藤百貨店の洋風館を抜けた反対側が和風館になっており、そこからも繋がっています」
いや、本当に街じゃん。しかも街1個じゃなくて、2個もある。自分でも何を言っているの理解できなかった。
えっ? えみり先輩のところの宗教って本当に頭おかしいんじゃない?
そういえばみんなの口数が急に少なくなったなあと思って周りをよく見たら、白龍先生も結さんも姐さんもみんな楓先輩みたいな顔になってた。
わかるよ。私も全く理解が追いつかないもの。えみり先輩は、てへっ! やっちゃった! みたいな顔で誤魔化してるけど、もはや取り返しのつかないところまで来ています。
「はい、それでは北駅に向かいます」
私達はまた地下の低速リニアに乗って北駅へと向かう。
「あれー、おかしいな?」
「どうかしました?」
えみり先輩が周囲をキョロキョロとする。
「8番出口が見つからない……」
そういえば、さっきから1番と書かれた看板が連続しているような気がします。
って、よく見たらそこの看板とここの看板、全く同じじゃないですか。ややこしい!!
「あぁ、これはあれですね。普通に取り付けミスです」
えみり先輩はすぐに電話をかける。
えっ? ここの工事現場で現場監督のアルバイトやってた!?
どうなって、そうなったのよ。気になったけど、話が長くなりそうだったのでスルーした。
「あぁ、あった。皆さーん、こっちでーす」
えみり先輩の案内で8番出口に出ると、大きなホールが立っていた。
何これ? って、もしかしてこれってコンサートホール!?
「このホールではミュージカルやライブ、映画鑑賞ができるようになっています!!」
「「「「「そういうのでいいんですよ!!」」」」」
私達はえみり先輩と固く握手を交わす。
道を挟んで北側に大きな帝皇武道館があるから、こっちはミニホールにしたんだね。いいと思う。
私達はえみり先輩の案内で音楽ホールの中を見学する。
「いいですね。音響設備もいい」
姐さんは機材をチェックする。
もはや仕事というより完全に趣味です。
「あー様との距離が近いのはいいですが、その分セキュリティが心配ですね」
その一方で結さんはしっかりとセキュリティをチェックする。
ほんと、結さんがお嫁さんでよかったよ。結さんが1番しっかりしてる説まである。
「ミニホール用の脚本書こうかな」
白龍先生!?
その言葉を聞いた全員が目を輝かせる。
「ほへー」
あ、楓先輩。もう見学は終わったので次のところに行きますよ。
「それでは南に戻りましょう」
そういえば西ってどうなってるんだろう?
えみり先輩になぜ西駅がないのかと聞くと、西は食事に出される野菜とかを育てている農園があるそうです。
そこは一般の人が利用できないから駅がないらしい。
「というわけで、元の場所に帰ってきました。さぁ、二つ目の城門を潜りましょう」
えみり先輩、もう普通にガイドが板についてるよね。
え? そういうバイトもした事がある? 一体幾つのバイトを経験したのよ……。
「はい、ここがお城と後宮、そして学校です!」
「なんで学校があるのよ!」
思わず突っ込んだ。
するとえみり先輩は、流石は嗜み、よくぞ突っ込んでくれましたと、キリッとした顔をする。
この時点でもう嫌な予感しかしないのは私だけかな?
「プレイ用です」
「「「「「プレイ用!?」」」」」
えみり先輩の言葉に私達は顔を見合わせる。
「校舎の他にも部室や体育館、プールなど、乙女咲の校舎をそのまま再現しました」
嘘でしょ……って、思ったけど、よく見たら本当に乙女咲だった。
教室が少ないからサイズはちょっと小さいけど、確かに乙女咲です。
私は頭を抱える。
「このように、ここではあくあ様が学校プレイを楽しめるような施設が用意されています。もちろん私が全てをプロデュースしました!! ちなみに私のおすすめは青空公園ですね。ヘブンズソードごっこもできます。皆さんも試しにどうですか?」
もうここまでくると逆に感動するよ。
私達は顔を見合わせると、なぜかみんなでえみり先輩に拍手を送った。
それを見たえみり先輩が涙を流す。何これ? 何かの茶番?
えっ? この涙は嬉しくてじゃなくて悔しくて流してるって?
「せっかく頑張って作ったのに、自分で使えないってどういう事ですか!?」
「それは……」
「うーん……」
「普通にね」
「うん」
「モタモタしてるえみり先輩が悪いと思います」
私達の言葉にえみり先輩はがっくりと肩を落とす。
もう、仕方ないなあ。私達はえみり先輩を励ます。
「ほら、せっかくだし中も案内してくださいよ」
「うん」
私達はえみり先輩をチヤホヤしつつ、中を案内してもらった。
「はい、それでは皆さんの意見を聞いて、ここから改修を加えていきたいと思います。それと同時進行で、人材を確保して7月21日、捗るの日には正式に稼働できるようにしたいと思います。今日はありがとうございました!!」
全員でパチパチと拍手をする。
うん、なんかもう普通に受け入れちゃったけど、本当にどうしてこうなったんだろう?
「「「「「ほへー」」」」」
えみり先輩と別れた帰り道、私達はみんな楓先輩のような顔で帰路についた。
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もっと色々できるの考えてたけど、これしかなかったんだよね。
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