白銀らぴす、そういう事に興味が深々な妹はお嫌いですか?
3月14日ホワイトデー、発売延期をしていたあのベリルの乙女ゲーがついに発売します!
「ま、まだかな〜?」
ネットでソフトを予約注文していた私は、ソワソワした気持ちを隠しきれずに窓から外の様子を伺う。
配送状況を確認したら配達中になってるけど、もしかしたら配達のお姉さんが忙しすぎて遅れてるのかもしれません。
最近は配達員のお姉さんも不足してるみたいだし、何よりも私と同じようにネット注文で購入した人が多いのでしょう。仕方のない事です。そういう時もあると言い聞かせた私は、気を紛らわせるために、部屋にあるテレビの電源をつけた。
『皆さん見てください! もう発売から数時間が経っていますが今もベリルのゲームを買おうと多くの人達が並んでいます!!』
あっ、森川さんだ。
森川さんは並んでいる人達の方へと近づいていく。
『危ないって!』
『押すな押すな』
『ベリルの物を売っていいレベルじゃねーぞ!』
うわー、これどこの家電量販店かな?
ベリルの商品を販売するのになんの対策もとっていなかったのでしょうか?
規制線もぐちゃぐちゃだし、誘導員もいないし、すごく悲惨な事になっています。
『いやー、すごい人ですね。そしてこの列のすぐ横では、なんとこんな事になっているんです』
森川さんが指定した方向にカメラが向くと、路上でベリルの乙女ゲーを売っている人達が居ました。
転売なんてしなくても普通に買えるんだけど、1分1秒でも早くゲームしたい人は買っちゃうのかなー。
『今なら話題の最新作スイカップゲームとの2本セットで5000円だよー!』
『すみませーん。単品での販売はちょっとできないんですよー』
『お姉さんお姉さん、そっちの買うならこっちのも見てってよ』
『あのスイカップゲームの捗……作者が作った前作、ファイト*ファンタジーのセットで5000円ですよ!』
『それならこっちは今日の0時に発表した最新作、ドラマチックエロトマニアとセットだ!!』
『同じ作者のスーパーメアリーシスターズもあるよー!』
『こっちなら並ばなくても買えるよー!』
え? ただの転売じゃなくて2本セットなんですか? しかもベリルの乙女ゲーが5000円するから、どう考えても売る方が損しているようにしか思えません。
おまけにどのゲームも今は配信サイトから消えてるし、年齢制限で買えなかった子達とか手に入れてない人からすると喉から手が出るほど欲しいのではないでしょうか。
私も本当は年齢制限でアウトだったからしょんぼりしてたけど、優しいしとりお姉ちゃんが母様には内緒ねと言ってこっそりとクレジットカードで買ってくれました。姉様、ありがとうございます!
「らぴすちゅわ〜ん! 宅配の人が来てるわよ〜。悪いけどお母さん今出れないから出てあげて〜!」
「あっ、はーい!」
私はドタバタと慌ただしく階段を駆け降りると、急いで玄関の扉を開ける。
「ちわーっす。白猫エミリーの配達便ですー」
「ありがとうございます! って、えみりさん!?」
配達員のお姉さんがえみりさんで私はびっくりする。
どうして配達員のお仕事なんてしているのでしょうか?
私は頭の上にクエッションマークを浮かべる。
「いやー、実はゲームのゴニョゴニョ」
え? ゲームの?
ああ、ベリルの乙女ゲーがでるからお金が必要だったんですね。
「うん、まぁ、そんな感じです」
えみりさん、大人なのに大変なんですね。
ゲームが買えないほどお金がないなんて初耳です。
なんか余計な事にでもお金を使っちゃってるのかな? そんな風には全然見えませんが、えみりさんの事だからもしかしたら寄付とかボランティアをしているのかもしれません。それなら全ての辻褄が合います。
きっとゲームを買えない子達にプレゼントするためにバイトしているのでしょう。えみりさん、優しすぎます!
だってこんなにも綺麗でしっかりしたお姉さんが、ゲームが買えないほど無計画にお金を使い込むなんて、普通に考えてあるわけないですよね。
「あっ、サイン貰えますか?」
「はい」
私は指示されたところにサインを書く。
「ありぁとございやっしたぁー」
えみりさんは次の配達があるからと急いで出て行きました。
あ、自転車で配送してるんですね。って、よく見たら荷台にちょこんとシロが乗っています。本当の白猫配達便じゃないですか! か、可愛い。通行人のご近所さんがみんなお写真を撮っていました。
「らぴすちゃん、荷物なんだったのー?」
「え、えへへ、ちょっと……」
私は母様から隠すように荷物をサッと背中の後ろに回す。
それを見た母様がニマニマした顔を見せる。
「隠さなくてもわかってるわよ。らぴすちゃんもベリルの乙女ゲー買ったんでしょ? らぴすちゃんも年頃だもんね。お母さんは別に怒らないわよ。でも、ゲームはほどほどにね。夜遅くまでやったらおっきく育たないわよー」
「は、はい、母様」
私は引き攣った笑みを浮かべながら、そそくさと自分の部屋へと戻る。
ううっ……母様に嘘吐いちゃいました……。
私は宅配便の箱を開けると、中に入っていた乙女ゲーを取り出す。
Zレート。
18歳以上の大人なお姉さんしかプレイする事しかできない過激なゲームです。
姉様がらぴすは誕生日プレゼントは何が良いって聞いてくれたから、ダメもとで頼んだらOKしてくれました。
『そっかぁ。らぴすもそういうのが気になる年よね。ふふふ……お姉ちゃんもそうだったからわかるわ。でもね、お部屋で捗りすぎたらダメよ。ほどほどに……ね』
あああああああああああ!
私はカーペットの上でゴロゴロと転がる。
「らぴすちゃーん! あんまり激しくしちゃダメよー!」
ああああああああああああ!
母様まで何言ってるんですか!!
そ、そ、そ、そんなこと、ちょっぴりしかしないんだもん!!
「……そういえば初回特典って何だったんでしょうか?」
羞恥心から立ち直った私は改めて箱の中を確認する。
これは……CD? オープニングとかのアルバムかな?
私はCDに書かれた文字に目を凝らします。
白銀あくあのおやすみボイスCD。
うぎゃあああああああああ!
私はCDを持ったままカーペットの上でゴロゴロする。
「らぴすちゃん……だいぶ捗ってるわね」
「母さん、らぴすも年頃だから、ね。ふふっ」
姉様いつの間に帰ってきたんですか?
あと、全部聞こえてますからね!! って、扉が開いてたから下の部屋の声が聞こえてきたんだ。ちゃんと閉めておかなきゃ。私はしっかりと戸締りをします。
「……もう一個袋があったけど、あっちは何だったんだろ」
私はビニール袋を丁寧に開けると、中に入っていたものを取り出してベッドの上に広げる。
「うぇっ!?」
私はあまりの衝撃に固まってしまった。
こ、これって等身大の兄様がプリントされた抱き枕カバー!?
ふぁ〜っ! え? じゃあ、これってこの兄様のおやすみCDとセットにして使えば……。
ぼふん!
頭がフットーした私は、そのままベッドに顔を突っ伏した。
あわあわあわ、流石はベリルです。とんでもない初回特典を同梱してきました。
「これって兄様以外のもあるんでしょうか?」
私は購入した時の選択肢で兄様を選びましたが、あの選択が大きく影響した気がします。
「こういう時はと……」
私はドライバーに出演しているトラ・ウマーこと淡島さんのSNSをチェックする。
淡島千霧
なんか慎太郎君を選択したら抱き枕のカバーが入ってたんだけど……。
あ、黛さんのだ!
やっぱり私が思った通り購入時の選択が重要だったそうです。
私はついでにカノン義姉様のSNSもチェックする。
白銀カノン
使う用、保存用、予備の予備と予備の予備の予備と予備の予備の予備の予備なんちゃってね!
なんで10個も買ってるんですか!? そんなにいらないでしょ!!
あ、メイドさん達へのボーナスとお友達用のも入ってるんだ。誰に買ってあげたんだろう。
カノン義姉様といい、ボランティアで働いてると思われるえみりさんといい、どっちもすごいな。私もいつかはそんな事がスマートにできる素敵なレディになれるといいなって思いました。
って、乙女ゲーの会社がトレンドランキングで上位に来てる。何だろう?
あなたの♡アイドルっ♪@公式
現在追加コンテンツとしてベリルエンターテイメントさんの山田丸男さん、黒蝶孔雀さんを準備中、続報を待て!
へー、そうなんだ。私も頑張らなきゃと気合が入ります。
さてと、少し落ち着いたところで私はゲームの封を開ける。
ん?
そこで視線を感じた私は扉の方へと視線を向ける。
「あらら、バレちゃった」
「もー! 姉様、バレちゃったじゃありませんよ!」
ぷんぷん! いくら姉様とはいえ勝手に覗き見はマナー違反です!! ぴーっですぴーぴー! 手元に笛があったら吹くところでした。
「らぴす……貴女ももう中学生。お母さんは渡し辛いでしょうから、私からこれを渡しておきます」
なんでしょう?
私は姉様から受け取った袋のリボンを解くと、中に入っていたボトルを取り出す。
もしかして姉様や母様が使っているような化粧水でしょうか? わー、嬉しいなー。
私がぬか喜びをしていると、姉様がボトルに書かれた文字のところを指さす。
「らぴすちゃんよく見てね」
え? 化粧水じゃないのかな?
私はボトルに書かれた文字を確認します。
潤滑剤。
これは一体、何に使うのでしょうか?
私がとぼけた顔をしていると、姉様がうふふと笑った
「らぴすちゃんにはまだ早かったかな? 聖女堂の製品だから間違い無いとは思うから、もう少し大人になったらね」
姉様はそれだけ言うと、扉を閉めてリビングへと戻って行きました。
一体なんだったんでしょう? 私はもう誰も部屋に入ってこれないように今度はちゃんと鍵をかけます。
「他も大丈夫ですよね?」
念の為に私は窓を確認したりカーテンを閉めたりする。
これでもう誰も入ってこれないし、誰にも邪魔されないはずです。
「そ、それじゃあ……」
私はゲームが入ったディスクを取り出すと大きな画面でプレイする。
[あなたのお名前を入力してください]
白……銀……ら……ぴ……す、と、私は自分の名前を入力して次に進める。
生年月日や出身地、ファンクラブ会員番号を入力していくつかの質問に答えた後はキャラクリエイトです。
あっ……キャラクタークリエイトをしなくても私の容姿になってるという事は、カノン義姉様のように私にも個別設定があるんですね。
『OK、これで必要な書類は全部ね。はい、それじゃあ今日から改めてよろしくね。らぴすちゃん』
やったー! よろしくねの前に改めてが表示されるという事は間違いなく個別データです!
私はそのまま最初のチュートリアルを進めて行きます。心なしか体験版より色々と親切な気がしました。
『うーんと、らぴすちゃんは、他にどこか見たいところはある?』
あっ、あっ、あっ!
例の有名な選択肢がきました!
[A:録音スタジオ]
[B:ダンススタジオ]
[C:ピアノスタジオ]
[D:多目的ルーム]
[E:試写室]
[F:トレーニングルーム]
[G:打ち合わせ室]
[H:配信ルーム]
[I:食堂]
[J:休憩室]
[K:特になし]
あの時に見た選択肢から数が減ってなくて私は画面を見て固まってしまう。
え、えーと、これってどれだったかな? 兄様といえばいつもトレーニングをしているイメージがあります。私は無難にトレーニングルームを選択しました。
『ここがトレーニングルームよ。悪いけど、私は急用が入ったから少し抜けるわね。あとは好きに見てて。分からない事があったら、周りの人に聞いてくれていいから』
あっ、しまった。
この言葉が出るって事は野生の森川楓さんと野良の小雛ゆかりさんが出現するフラグです。
ううう、最初の選択肢からやり直しかぁ……。私はしょんぼりした顔でトレーニングルームの中に入る。
『おっと』
わっ、画面が真っ暗になった。って、さっきの声は兄様!?
『大丈夫?』
兄様だ!
私は立ち上がると早くシーンが切り替わらないかなと、目を見開いたまま画面をジッと見つめる。
すると次の瞬間、ぼやけた視界が差し込んだ光と共にゆっくりと開いていく。
も、もどかしい! そんな事を考えて油断をしていたら、ぼやけた視界が一瞬だけはっきりと映って、私は持っていたコントローラーをポトリとカーペットの上に落としそうになりました。
「うわああああああああああああああああああああああ!」
視界がはっきりすると、トレーニングで汗だくになった兄様の上半身が私の目の前に現れました。
あまりの衝撃に吹っ飛ばされた私は床をゴロゴロと転がる。
その衝撃でベッドに頭をぶつけた私は痛みに悶えた。
「らぴすちゃーん、激しくするのはダメよー」
もーもーもー! 母様、今は放っておいてください。
「はぁ、はぁ……」
よろよろと立ち上がった私は一旦落ち着くためにSNSを開く。
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5位 別の意味でクソゲー。 関連ワード 最初の選択肢でほとんどの人が脱落。
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8位 ゲームは広いところでやりましょう。 関連ワード 頭ぶつけた。倒れた。死ぬかと思った。
9位 抱き枕。 関連ワード もう使った。ゲームが始められない。これだけで死んだ。検査薬。
10位 おやすみCD。 関連ワード 脳が溶ける。夢の中にあくあ様が出てきた。産婦人科がパンク。
よかった。私だけが死んでるんじゃないんですね。
私はSNSを閉じると、再び落としたコントローラーを持って画面と向き合う。
兄様が初登場時からアップとかZレートやばすぎます。
『え、あ……』
あ、また目の前に選択肢が出てきました!
[A:大丈夫ですと言って起き上がる]
[B:ごめんなさい! ぶつかった事を謝罪する]
[C:気を失ったふりをする]
[D:もうダメかもと言って寄りかかる]
[E:すみませんと言ってその場から逃げる]
[F:ふらついた振りをしてクンカクンカーする]
[G:深呼吸する。合法クンカクンカー]
[H:ぐへへ、体ぐりぐり押し付けとこ]
多いよ! せっかく修正したのに、そこは変わってないんだ……。
とりあえず8つの選択肢からF、G、Hの論外選択肢三つを除外します。こんなのを選ぶのなんて変なお姉さんしかいません! カノン義姉様や、えみりさん、アヤナさんのような素敵なレディーは絶対に選ばないような選択肢ですね。
残った5つのうち、その場から逃げるEは失礼な気がします。Dもわざとらしくてアウトですね。Cも常識的に論外です。
そうなると残るはAかB、やはりここは謝る事が先決だと思いました。
私がBを選択しようと思った瞬間、勝手にセリフが次に進んでしまう。
『って、らぴすか。怪我してない? 大丈夫?』
どうやら選択肢に時間制限があったみたいです。
兄様はぶつかった相手が私だと気がつくと、心配そうな表情で顔を近づけてきました。
近い。兄様近いにも程があります。
『兄様、大丈夫です。すみません。前を見てなくて』
『そうか、何もなかったのならいいんだ。でも、今度から気をつけて歩こうな』
『はい!』
目の前の画面が少しだけ揺れる。
うわあああああああ! 今、間違いなくゲームの中の私が兄様に頭をなでなでしてもらいました。
私は悶えそうになるのをなんとか我慢します。
『それとらぴす、今日から入る助っ人のマネージャーってお前の事だったのか』
『はい! 今日から改めてお願いしますね。兄様』
『おう! よろしくな。らぴす!』
また画面が少しだけ揺れる。
ぐぬぬぬ! なんかさっきよりなでなでの時間が長くなってないですか!?
私はゲームの中にいるもう1人の自分に嫉妬します。
[白銀あくあさんから好感度が上昇しました。しかしすでに上限値を突破しているので、これ以上はゲームに反映されません。ご了承ください]
えっ? 最初から兄様の好感度が上限値突破!?
鞘無さんなんて0.1%をあげるのに地獄の1ヶ月を過ごしたのに!?
い、いいんでしょうか? こんなにも簡単に突破してしまって……。なんか悪い事をしているみたいで申し訳なくなります。
『らぴす、仕事は大変だろうけど頑張れよ』
『はい、兄様』
兄様とのイベントをこなした私は残りの業務を終わらせて自宅へと帰る。
[デモ版と違って1日に1回、帰宅時にセーブができます。またセーブ可能スロットが1から無限に変更されました]
あっ、うん。そういう細かいところもゆるゆるになったんですね。
よかった。鞘無さんと同じ仕様なら絶望していました。
『らぴす、どうだ? なんか困った事があったらいつでも言うんだぞ』
2日目、選択肢があるわけでもなく、普通に兄様の方からやってきました。
兄様に会う為に76時間もかかった事がある鞘無さんの事を思うと涙が出ます。
『ご飯はもう食べたからぴす。まだだったら一緒にご飯を食べよう』
『今日は一緒に帰ろうか、らぴす』
『調子はどうだ、らぴす?』
『最近頑張ってるって阿古さんに聞いたぞ。欲しい物があったら買ってやるからな』
いやいやいや! 野生のなんとかさんとか野良のなんとかさん以上に兄様が通常で湧きます。
それこそ兄様と1日で会う確率が100%だとするなら、2回出会う確率は150%、3回出会う確率は200%あると言っても過言ではありません。つまりは1日で確定3回は兄様に出会えます。
1週間も兄様に出会えなかった事がある鞘無さんとは、もう目が合わせる事ができません。
『らぴす、緊張してないか?』
ゲーム開始から1週間後のMステライブの日も兄様から話しかけてきました。
[A:少し緊張しています]
[B:大丈夫です、兄様]
[C:兄様……ちょっと2人になれるところに行きませんか?]
[D:兄様と言いながらしなだれる]
[E:あわあわあわ]
[F:とりあえずないけど擦り付ける]
ちょっとぉ!?
油断していたら最後の選択肢はなんですか! ないって失礼にも程があります!! うわーん!!
CからEはもう論外として、AかBの2択です。
この場合、虚勢を張って大丈夫と言うよりも素直にAの方がいいんじゃないでしょうか。
私はAを選択します。
『大丈夫、らぴすが頑張ってくれたライブ、兄様が確実に成功させるから。らぴすは安心して後ろから見ているといいよ』
うわーうわーうわー! 私はかっこいい兄様の背中をじっと見つめる。
ここからはインコさんが見たのと同じ光景です。
かっこいい兄様のライブシーンを見て心をときめかせる。
「兄様かっこよかったな……」
ライブシーンが終わった後、私はセーブして一旦ゲームを止めました。
長い時間をプレーすると、プレーヤーの私の方が耐えられなくなります。
「兄様……」
私は兄様の抱き枕をギュッと抱きしめる。
うう、やっぱり中身が入ってないペラペラだとイマイチです。
「あ……」
モジモジした私の視界に、姉様が置いていったボトルが視界に入る。
あ、あれって、何にに使うんだろう。私もあれを使えば、この切ない気持ちを無くす事ができるのでしょうか?
「兄様、ごめんなさい」
私は姉様がくれたボトルの方へとゆっくりと手を伸ばす。
「らぴすちゃーん、晩御飯よ!!」
母様の声にあわてて私はボトルを落としそうになりました。
もーっ、なんで母様ってそんなタイミングの悪い時に声をかけてくるの!?
「あ、はーい!」
何してるんだろう。何してるんだろう。何してるんだろう。
顔を真っ赤にした私はあわててパンツを元の位置へとずり上げる。
「兄様……こんな妹で本当にごめんなさい!」
私はペラペラな兄様の抱き枕にもう一度だけギュッとすると、母様と姉様のいるリビングへと向かった。
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