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白銀あくあ、運命のルーレットに弄ばれた俺。

「それでは説明します。お年玉の入ったポチ袋の後ろに書かれた数字が0から10の場合は当選。それ以外は参加賞になります」


 ペゴニアさんの説明が終わると、女性陣が一斉に箱のまえに並び出す。

 あ、あれ……? とあや慎太郎、天我先輩も並ぶの!?


「当たったら妹のスバルにあげるんだ」


 ナイスゥ! さすがは家族想いのとあだ。俺は心の中でガッツポーズする。

 スバルちゃんとデートするなら、どこに行こうかなぁ。


「さて、それでは最初の挑戦者は……私です」


 全員がズッコケそうになった。

 ちょっと、それあり!?


「というわけで引きます」


 ペゴえもんは有無をも言わさず箱を振ってから手を突っ込むと、中からお年玉の入ったポチ袋を引いた。


「2番!」


 2番!? 2番ってなんだ!?

 ペゴニアさんはホワイトボードに書かれた2番の隣に貼られたテープをペロリと剥がす。


【白銀あくあとの食事権】


 おぉう……よかった。変なやつならどうしようかと思ったけど、食事ならまだいい。


「というわけで、旦那様の奢りで高いもの食ってきます。ぶいぶい」


 うん、まぁ、いいんじゃないかな。

 俺としてもちょっと落ち着いたところで一度ペゴニアさんと話してみたかったしね。


「それでは、次の人」

「あくあちゃん、ママが守ってあげるから安心してね!!」


 母さん……なんで並んでるの……。

 ドヤ顔をした母さんは、意気揚々とお年玉くじを引く。

 なんとなくこの段階から結果が透けて見えるのは俺だけだろうか?


「あー、残念。参加賞ですね」

「ガーン!」


 ふぅ、よかった。母さんが変な賞を引くと後々が大変だからな。

 参加賞が何か知らないけど、2番が食事ならそんな変なもんじゃないでしょ。うん。


「参加賞は、旦那様から直接アーンしてもらう権利か、口元についたご飯粒をパクッとしてもらえる権利です」

「じゃあ、アーンで!」


 本当にその参加賞でいいの!? ライブのチケットの方が良くない?

 まぁ、みんながいいのなら俺は別にいいんだけどさ。

 はい、母さん、あーん。


「お母さんの仇はうつわ! あーちゃん、待っててね!!」


 次にお年玉くじを引いたのはしとりお姉ちゃんだ。


「はい、参加賞です。どちらか選んでください」

「ガーン……じゃあ、ご飯粒で」


 しとりお姉ちゃんは口元にグロスを塗り直すと、俺の体にしなだれる。

 ちょっと待って、今、わざわざリップグロスを塗り直す必要あった!?

 口元の側についてたご飯粒を摘む時、しとりお姉ちゃんの潤んだ唇にすごくドキドキした。


「じゃあ、次は私が……」


 美洲さんがくじを引く。


「参加賞ですね。どちらか選んでください」

「それなら、私もご飯粒で」


 って、美洲さん!?

 美洲さんはお姉ちゃんと同じように俺の体にしなだれる。

 ま、まってくれ。さっきのお姉ちゃんのは分かりやすかったけど……なんだろう、美洲さんの演技力のせいか、全体的にすごくいけない事をしている感じがする。

 手を出しちゃいけない雰囲気が出てるというか。背徳的というか……これは良くないですよ!


「ふーん、そういう事ね。なら次は私が行くわ」


 小雛先輩はお年玉箱の中に手を突っ込むとくじを引く。

 ハズレハズレハズレ……俺は正月早々神様に拝んだ。


「参加賞です」

「しゃあ!」


 ま、まさかこの人、狙って参加賞を引いたのか!?

 どうやら小雛先輩はさっきの美洲さんの演技を見て、対抗意識に火がついたみたいだ。


「どちらにしますか?」

「もちろんご飯粒に決まってるじゃない!」


 小雛先輩は唇の近くにご飯粒をつけると、俺に飛びついた。


「ゆかり!?」

「うおおおおおおお!」

「押し倒すのもありなんですか!?」


 小雛先輩は俺を床に押し倒すと、唇に人差し指を当てて俺を潤んだ目で見つめる。

 それを見た周りが大きく盛り上がった。


「ねぇ、あくあ。どこについてるの? とって……?」


 うおおおおおおおおおおお! 俺は自分の胸板の上から心臓をグーで殴った。

 いいかよく聞け白銀あくあ。今の、きゅんっていうのは絶対に勘違いだ。

 目の前にいるのは、あの小雛ゆかりだと何度も自分の心に連呼する。


「ドキドキしたでしょ?」


 はぁはぁはぁはぁ。やばかった。可愛さと庇護欲を全面に押し出してきた小雛先輩に血迷うところだったわ。


「ふふーん、私の勝ちね」


 小雛先輩、美洲さんを至近距離から煽るのやめてくれませんか?

 後、これ別に勝負とかじゃないでしょ……。

 その人、一応俺のお母さんだからね。


「次の人〜」

「それじゃあ次は私が引こうかな」


 おお! 頼むぞカノン! 俺のためにも、ペゴニアさんが入れてるやばそうなやつを引いてくれ!!

 俺は相手がカノンなら犬にだってなれる。むしろ犬になってぺろぺろしたい。


「ところでペゴニア。これ、当たりが出たら誰かにあげてもいいの?」

「はい、それは自由です」

「そっか、わかった」


 俺の嫁、優しすぎだろ……。

 あまりにもカノンの心が清らかすぎて昇天しそうになった。

 さっきまでカノンをぺろぺろしたいなんて思ってた邪なあくあくんは見習ってほしいね。


「あ、なんか書いてある。外……3? ナニコレ?」

「おめでとうございまーす」


 ペゴニアさんは近くにあったベルを鳴らす。

 おおおおおおおお! どうやらカノンが何か当選したみたいだ。


「お嬢……白銀カノンさん、おめでとうございます。ハズレの3、当選です!」

「ハズレの3!? ちょ、ハズレってナニ!?」


 ペゴニアさんはテープをペロリとめくる。


「ハズレの3番は、森川楓様ご提供、国営放送の名物アナウンサー、あの森川楓と本気で腕相撲ができる権利です。おめでとうございます!!」

「え? いらないんだけど?」


 カノンさんや。いらないからって後ろにいたえみりさんに押し付けようとしたらダメだよ。えみりさんもそれはいらないって顔してるじゃないか。

 それに、もう腕まくりしてドヤ顔で待ち構えてる楓がすごく悲しそうな顔をしてて可哀想になった。


「あ、そうだ」


 カノンはトコトコと俺に近づいてくる。

 はわわわわ、俺の嫁、歩いてるだけでもう可愛い!


「あくあ、これあげる」

「ほげ!?」


 カノンの提案に楓は驚いた声を上げる。

 よし、わかった。ここはカノンのためにも、楓のためにも俺がやるよ。


「それじゃあお手柔らかに」


 俺は腕をまくると楓の手を握る。


「え、やば……シャツ捲った腕、骨とか筋肉とか血管とか、うわ、やばい。これ」


 楓は何やらぶつぶつと呟く。多分だけど、どうやって俺に勝つか分析してるんだろうな。

 よっしゃ。俺も本気でやるか!


「READY」


 ペゴニアさんが組んだ俺と楓の手の上に自らの手を重ねる。


「ファイッ!」


 あ、あれ!?

 楓の手に全然力が入ってなくて、あっさり勝っちゃった。

 大丈夫? もう一回やる? え? 今日はもう無理?

 もしかしたらパワーニュースでの怪我を引きずってるのかもしれないな。

 それなら仕方ない。怪我をおしてでもやろうとしたその心意気に俺は感動した。


「勝者、白銀あくあ!」


 ペゴニアさんが俺の手を持ち上げる。それをみんなが拍手で祝福してくれた。

 もちろん負けた楓にも頑張ったぞという暖かな声援がたくさん飛ぶ。その中でもえみりさんは、目から一筋の涙をこぼして泣いていた。おそらく怪我でも頑張ろうとしてた楓の事を見て感動したのだろう。えみりさんって、やっぱり優しい人なんだね。


「はい。それでは次」


 次に引くのはえみりさんだ。

 えみりさんとはデートをする約束をしてるけど、なんなら権利は2回あったっていいはずだ。

 頼む。それかこう、ペゴニアさんが一個は入れてあるだろうなんかこう俺にとって良さげなのが入ってたらえみりさんに当たってくれ。


「残念、参加賞ですね」


 俺はその場に崩れ落ちた。神様……そんなに俺の事が嫌いですか?


「それじゃあ、私もご飯粒で……」


 えみりさんはご飯粒を口の周りにつけて俺に近づく。

 うわ……もうこのご飯粒、直接パクッと行ってもいいかな? なんならそのまま……。

 そんな事を考えていたせいで、俺はテーブルの足に自分の足を引っ掛けてしまう。


 ん?


 な、なんだこの感触は!?

 何かすごく幸せな気持ちになる。


「はい、そこまでです」


 あ、ペゴえもんが強制的に俺の体を引き離す。

 すると顔を赤らめたえみりさんが、潤んだ目で俺の事を見つめていた。


「ご、ごめんなさい」

「い、いえ。私のが役に立ってよかったです」


 えみりさん!?

 いっ、一体、何が役に立ったのだというんです!?


「えー、審議の結果、今のは参加賞に相当するとカウントされました。それでは次の人、くじ引きをお願いします」

「それじゃあ次は僕が引こうかな」


 とあは箱の中に手を突っ込むとくじを引いた。


「ん。ハズレの1だって」

「ハズレの1はこちらの商品になります」


 ペゴニアさんはホワイトボードに貼られたテープをペロリと剥がす。


「お嬢様、白銀カノンさんと白銀あくあについてお喋りができる権です」

「「いらねぇ……」」


 ん? 今なんか声が楓とえみりさんの方から聞こえてきた気がするけど、気のせいかな。

 なんか周りの人たちも微妙な顔をしていた気がするけど、え? カノンとお話しできるんだよ? これって当たりでしょ! むしろ俺が引きたかったわ。


「いいじゃん。カノンさん、あくあについてお話ししよ!」

「うん!」


 近くのテーブルに座った2人は俺について話し始める。

 え? ちょっと待って、これなんかすごく恥ずかしいんだけど……。

 俺はペゴニアさんの方へと視線を向ける。

 その時、にんまりとしたペゴニアさんの顔を見て俺は確信した。

 こ……これは、俺にとってのハズレだ!!

 ペゴえもんよ。もしや羞恥心で俺を殺すつもりか……。


「それでは、次〜」


 くっそ、いい顔しやがって!


「とあの次は私ね」


 とあの次に引いたのはかなたさんだ。


「あ、なんか当たった!」

「おめでとうございます! 5番ですね」


 ペゴニアさんは5番の紙をペロリと剥がす。


【1日だけ白銀あくあの家族になれる権】


 ん? 1日だけ俺の家族になれる? どういう事だ?


「説明しましょう。この権利は白銀家に1泊2日できる上に、旦那様から家族のように扱ってもらえる権利です」


 ペゴニアさんの言葉にどよめく。

 待って、要は家に一泊するんでしょ。それ、別に普通じゃない?


「なお、旦那様から妹として扱ってもらうか。姉として扱ってもらうか。母親として扱ってもらうかは当選者の自由です」

「ふーん、じゃあ、この権利があれば1日だけあくあ君のママになれるんだ。それか、とあやスバルを妹として送り出すのもありね」


 かなたさんが俺のマッマ!?

 じゃあ、あんなことやそんなこともできちゃったりするんですか!?

 いやあ、これは正月早々、俺もホクホクした気持ちになる。


「僕、あくあが何を考えてるか、手に取るようにわかるよ」

「私も」


 そこ、俺の談義してる人達は黙って!!

 俺はあくまでも純真無垢なあくあ君として、かなたママにどうやって甘えられるかを真剣に考えてるんだから!!


「それじゃあ次は僕だな」

「じゃあその次は私ね」


 慎太郎! 貴代子さん!!

 神様! 貴代子さんにもかなたママと同じ権利をお与えください!

 それか心優しい慎太郎なら、同様の権利が当たったらきっと貴代子さんにプレゼントするはずだ。

 どうか俺に、俺にダブルママの権利をお与えください!!


「参加賞です」


 まだだ、まだ貴代子さんがいる!!


「参加賞ですね」


 神は死んだ。


「神様に邪な心を見透かされたんじゃない? 絶対に僕のママと貴代子さんでダブルママとか考えてたでしょ」

「わかる。あくあって第三者の視点から見るとわかりやすいよね」


 だからそこ、うるさいって!

 そもそも、お前たちは俺の理解度が深すぎでしょ。


「参加賞……これ、僕もするのか?」


 戸惑う慎太郎に俺は両手を広げる。


「こいよ慎太郎。俺がアーンしてやるよ!」


 俺は恥ずかしがる慎太郎にアーンした。


「なるほど……女性陣が顔を赤らめるはずだ……」


 ん、何か言ったか慎太郎?


「ごめんね。あくあ君。私にもママになって欲しかったのね」


 ほら! とあやカノンが大きな声で話すから、貴代子さんに俺の秘めたる願いが聞こえちゃったじゃないか!


「貴代子さん……もうこんなくじとか関係ないです。是非、かなたさんが泊まりに来るときに、一緒に訪ねてきてください!」


 俺は密着した貴代子さんにそう囁く。


「まぁ! ありがとう」


 嬉しそうな顔をした貴代子さんを見て俺も嬉しい気持ちになる。

 後ろの辺で母さんが騒いでたけど聞こえない聞こえない。

 そもそも母さんは普通に泊まりにくればいいじゃん! って事を、隣のしとりお姉ちゃんが教えてあげたら静かになった。

 さて、それでは参加賞をと考えていたら、ペゴニアさんに体を引き剥がされる。


「個人的な商品のアップグレードが確認されましたので、参加賞は取り消しです」

「あら、まぁ……残念ね」


 貴代子さんは悲しそうな顔を見せる。

 ペゴえもんの鬼! ちょっとくらい、いいじゃん!


「はい、それでは次の方」

「我が引くぞ!!」


 天我先輩は引いたお年玉を天高く掲げる。


「3番だ!!」


 ペゴニアさんは3番の紙をペロリとめくる。

 その瞬間、全員が固まった。


「えーと、3番は、白銀あくあからキ……きしゅしてもらう権利です……!?」


 珍しくペゴニアさんが困惑した顔を見せる。

 流石のペゴニアさんもこれは想定外だったのだろう。

 だが、任せてほしい。俺は白銀あくあ。こんな状況でも俺ならどうにかできる。

 不可能を可能にし、空気読まずに全てをぶち壊す。俺が破壊神、白銀あくあだ!!


「先輩、俺ならもう覚悟はできてますよ」

「「「「「えっ!?」」」」」


 俺はあくまでも自然体でそう言った。


「いや。これはキープしておく。商品を変えてほしい人がいたらチェンジしようかと思う」

「「「「「おおおおおおおお!」」」」」


 あ……そっか。そういうのもありだよな。うん。

 俺はすごすごと後ろに引っ込んだ。


「コ、コホン! それでは、気を取り直して次の人」

「それじゃあ、次は私達ね」


 おばあちゃんとキテラさんが立て続けにくじを引く。


「お2人とも参加賞です」

「あら」

「まぁ」


 俺は2人の希望通りアーンをする。


「ふふふ、こういうのスターズに居る時じゃ絶対に無理だったから嬉しいわ! ありがとう。あくあ様」


 確かに、行儀が悪いどころじゃないもんね。

 それによく考えたら元女王様にアーンなんて不敬にも程がある。

 本国でやったら俺、処刑されたりとかしちゃうんじゃないか……。

 いや、それを言うなら女王陛下に様づけで呼ばれている事がもうすでにやばい気がする。


「私まで、ありがとうございます。あくあ様」


 同じく、スターズ正教の主教を務めているキテラさんから様づけで呼ばれるのもまずい気がする。

 キテラさん、様をつけるのは神様だけにしておいてくださいよ。

 あと、キテラさんはカノンの後見人でもあったのだから、もっと気軽に遊びにきていいですよと言ったらすごく喜んでくれた。


「はいはい、どんどん行きましょう。残りは15人なのに、まだ8本も当たりくじが余ってますよ。……ハズレも一本余ってますけどね」

「ふふふふふ」


 ん? なんか気持ち悪い笑い声が聞こえる。


「この時を待っていた!!」


 楓がずんずんと前に出る。


「残り物には福がある! 森川楓のパワークジいっちゃいますか!」


 パワーくじってナニ? なんて、野暮な事を聞く人はここに誰もいない。

 むしろみんな、くじを掴んだ時に楓のパワーでお年玉袋がちぎれないか心配していた。


「どりゃあ!」

「参加賞です」


 見事な即落ち2コマに、みんなが温かな拍手を送った。


「それじゃあ、アーンで」

「はいはい、あーん」


 って、あぶな! 楓が口を閉じるのが早いから、もう少しでお箸ごと持っていかれるかと思ったぜ。


「じゃあ、立て続けに私も引くわね」

「わかりました」


 琴乃はくじを引くと顔を顰めた。


「ハズレの2です」


 急に周囲の気温が下がった気がした。

 あれ? もしかして暖房切れたかな?


「ハズレの2は、小雛ゆかりさんご提供! あの、ぼっちで有名な小雛ゆかりさんとお友達になれる権利です!!」


 いらねぇ! これは俺でもいらないわ!!


「なるほど……ちょうどいい機会ですね。それではプライベートの電話番号を交換しましょうか」

「ひぃっ! わ、わかったわ」


 あれ〜? 小雛先輩どうしたんですか?

 もしかしたら琴乃の事が怖いのかなー!?

 なんてニヤけてたら思いっきり、あとで覚えてなさいよって言われた。こわ……。


「じゃあ、私も引こうかな」


 次にくじを引いたのはアイだった。


「おめでとうございます! 白龍先生、1番ゲットです!!」

「うぇっ!?」


 こういうのって、どういうわけか無欲な人が引いちゃうんだよね。

 あれ? それなら無欲の塊みたいなえみりさんはどうして外れちゃったんだ?

 多分、えみりさんの事だから自分は当たらなくていいよって願いながら引いたんだよね。きっと、そうだ。うんうん。


「1番はご存知の通り、あくあさんとのデート権です」

「あ、それなら……」


 アイは天我先輩のところに近づく。


「ねぇねぇ、天我君、私と景品を交換しない?」

「白龍先生、いいのか? デートの方が豪華だと思うが……」

「うん、私はあくあ君の奥さんだからね。いつだってデートに行けるだろうし……それよりさっき天我くん、2人でお出かけしたそうだったから、そっちの方がいいかなって。それに……」


 アイは顔を赤らめる。


「き……きしゅ権があれば、わ、私のしてほしい時にしてもらえるし」


 やばかったな。間違いなく2人きりならいってたぞ。

 周りの人達もアイの感情が感染したのか、みんなで顔を赤くした。


「うむ! それならば交換しよう。我も後輩と遊びたかったしな! ありがとう白龍先生」

「こちらこそ、ありがとう天我君」


 みんなから盛大な拍手が送られる。


「それでは次の人」


 残った人たちが顔を見合わせる。


「えっと、それじゃあ、私が……みんなも行こ」


 アヤナは近くにいた鷲宮さん、胡桃さん、黒上さん、千聖さんの4人に声をかける。

 やっぱりアヤナは優しい子だな。クラスメイトの子達が引きやすいように声をかけたのだろう。

 まずは最初にアヤナがくじを引く。


「参加賞ですね。どうしますか?」

「えっと……それなら、アーンで」


 う……アヤナとの過去を思い出して、なんかすごくドキドキした。


「はい、それでは次の方」

「それでは、わたくしが……」


 鷲宮さんはくじを引く。


「おめでとうございます! 4番、当選です!!」


 ペゴニアさんはテープをペロリとめくる。


「1日だけ白銀あくあの嫁になれる権利です! おめでとうございます!!」


 嘘……だろ!? え? そんなの入ってるの!?

 って、鷲宮さん!? な、泣いちゃった!?


「良かったねリサちゃん!」

「おめでとう、リサちゃん」


 周りに居た黒上さんや胡桃さんが鷲宮さんを祝福する。

 それに続いてクレアさんやカノン、アヤナ、杉田先生も鷲宮さんを祝福した。

 あ、うん、嬉しくて泣いてたのか。それなら良かった。


「鷲宮さんには1泊2日で白銀家に滞在し、旦那様の奥様になれる権利を贈呈いたします!」


 みんなから鷲宮さんに、温かな拍手が送られる。

 かなたさんは成人女性だからいいとして、ちゃんと親御さんに挨拶とかしとかなくて大丈夫かな? 俺はそっと鷲宮さんに近づくとそれとなく聞いてみる。


「あくあ様が両親に挨拶!?」


 おっと、頭から湯気を出して倒れそうになった鷲宮さんを抱き止める。

 あれ? もしかして俺、言葉のチョイス間違った!?


「あくあってさ、ほんと……」

「鷲宮さん大丈夫?」


 俺はとあとカノンに鷲宮さんを預ける。


「ココナちゃん頑張れ!」


 次にくじを引いたのは胡桃さんだ。


「参加賞です」

「やった。それじゃあ、私もアーンで」


 俺は胡桃さんにアーンする。

 本当に健康になって良かった。それに、チャーミングポイントのそばかすを隠さなくなったのも俺的にはポイントが高い。だって、すごく愛嬌があるし健康的に見えて可愛いんだもん。

 俺は胡桃さんに、今日も可愛いねってそっと囁いた。

 すると胡桃さんは顔を真っ赤にする。


「もう、あくあ君ってば!」


 ははっ、本当にこういう冗談が言い合えるようになって良かった。


「うるはちゃんも頑張れー!」


 次にくじを引いたのは黒上さんだ。


「9番!! おめでとうございます!」


 あるかどうか知らないけど、おっぱいマッサージ権みたいなのこいと俺は願った。


「9番は旦那様、つまりはアイドル白銀あくあから私物を一つもらえる権利です! なお、旦那様が了承したものに限ります」


 俺の私物!? え? 結婚指輪とか婚約指輪とかみんながプレゼントしてくれたものじゃなかったら別になんだっていいけど……男の俺が持ってるもので、黒上さんがなんかほしいものあるかな?


「あ、それじゃあその……あくあ君が着てるそのパーカーとか、その……だめ、かな?」

「ん? ああ、別にいいけど……」


 俺はパーカーをその場で脱ぐと黒上さんに手渡した。

 変なものを要求されたらどうしようかと思ったけど、これなら問題ない。


「ふぁ……さっきまで着ていたあくあ君の匂いが……」


 ん? 何か言った?


「はい、それでは次の方、どうぞ。残りは8人。残る当たりくじは5本です」


 次にくじを引いたのはクレアさんだ。

 あれ? なぜかお婆ちゃんとキテラさん、えみりさん、りんちゃん、みことちゃんの5人が膝をついて必死の形相で拝んでいる。みんな、どうかした?


「8番! まさかの連続当選、おめでとうございます!!」


 次はなんだ? 変なのじゃありませんようにと願う。


「旦那様にマッサージしてもらう権利です!」


 な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?

 俺は驚愕する。何故ならホワイトボードには、小さく米印でどこでもも可と書かれていた。

 喜びたい気持ちを我慢して、俺は心の中でガッツポーズを決める。


「あれ、絶対にしょうもない事を考えてるよ」

「クレアさん、綺麗だからね。ここにいつでも好きに揉めるお嫁さんがいるのになー」


 そこ! とあもカノンもさっきから俺の心を読まない!!

 くっそ、ペゴえもんめ。このハズレくじは絶対に俺に対してのハズレだ。

 あと、カノンはちゃんと後で揉んであげるから安心しなさい。


「わ、私が、マッサージ……あわわわわ」


 ん? なんかカチカチって音が聞こえた気がするけど、俺の気のせいか?

 えみりさんが固まったクレアさんを回収して後ろに下がる。


「それじゃあ次は私ね」


 杉田先生がくじを引く。

 先生、あの時は擦りむいて絆創膏を貼ってたけど……うん、傷跡は残ってないな。良かった。

 きっと、くくりちゃんが紹介してくれたお医者さんが良かったんだろう。


「参加賞です」

「じゃあ、私もアーンにしてもらおうかな。米粒は恥ずかしいし……」


 俺は杉田先生にアーンする。

 こんな綺麗な人が余ってるなんてな。こんな人が俺の居た世界で先生をやってたら、間違いなく男子生徒は全員懸想してたと思う。

 普段はクールビューティーで仕事できますって感じなのに、ミスコンの時に見せた水着審査では恥ずかしがっててすごく可愛かったのが記憶に残ってる。


「それでは次の方」


 残ったリノンさん、りんちゃん、みことちゃん、るーな先輩が阿古さんと結の方を見る。


「私は最後でいいからみんな先に引いていいわよ。残り6の4なら先に引いた方が当たりやすいでしょうしね」

「それなら私はその前で構いません。どうぞ皆様、お先に引いてどうぞ当ててくださいませ」


 阿古さんと結さんが他の4人に先を譲る。あぁ、やっぱり2人は優しいなと思った。


「じゃあ、お先に……」


 りのんさんがくじを引く。


「おめでとうございます! 6番です!!」


 ペゴニアさんが6番の隣に貼られたテープをペロリとめくる。


「6番、白銀あくあと一緒にお風呂に入れる権、当選です! もちろんお風呂に入った後は、お嬢様や妹であるらぴす様と同じ、髪を乾かしたりするアフターサービス付きになります!!」


 な、なんだってー!?

 え? 待って!? 俺とりのんさんが一緒にお風呂だって!?

 そんな素晴らしい事が許されていいんですか!?


「あ、旦那様がお嫌でしたら違う権利に変える事も……」

「全然」


 俺はキリッとした真剣な表情でペゴニアさんをじっと見つめる。

 よくやった。俺が視線でペゴニアさんに伝える。

 お給金のアップお願いします。そう言われた気がしたので俺はボーナスを出すぞと頷いた。


「私が一緒にお風呂……」


 固まったりのんさんをペゴニアさんが回収していく。

 ペゴニアさん。りのんさんが嫌だったら違うのでもいいからね!


「じゃあ次は拙者が……」


 りんちゃんがくじを引く。


「参加賞です」

「やったでござる」


 りんちゃんが選択したのはご飯粒だ。

 さっき、アーンしたからね。


「それじゃあ失礼します」


 俺はそう言って、りんちゃんのほっぺたにつけた米粒をつまんで食べる。

 この世界に来て感覚がバグりそうになるけど、りんちゃんも普通に美少女なんだよなぁ。

 でも、それに気がつくと恥ずかしくなるので俺はあえて気が付かないふりをした。


「じゃあ、次は私が引く」


 りんちゃんに続いてるーな先輩がくじを引く。


「ななぁばん!? 大当たり! 大当たりが出ました!!」


 珍しく興奮したペゴニアさんがくじの番号をペロリとめくる。


【白銀あくあに何でもしてもらえる権。ただし旦那様が了承した行為に限る】


 うおおおおおおおおお、ここで来たか。良かった。小雛先輩がこれを引かなくて。

 なんかこう、一瞬だけ、小雛先輩がこれを引く気がしたんだよね。なんでだろう?

 大当たりに会場がどよめく。


「それでは、るーなさんは何を希望されますか?」

「一緒に添い寝がしたい。るーなの抱き枕になって?」


 るーな先輩の大胆なお願いにみんなが声をあげる。


「旦那様はそれでもよろしいでしょうか?」

「あ、うん。俺は別にいいよ」


 ふぅ、可愛いお願いで助かったな。

 一瞬、一緒に寝るって聞いて良からぬ妄想をしてしまったが、純粋なるーな先輩がそんな事を考えてるわけないよな。普通にお昼寝が好きだし、添い寝仲間が欲しかったんだろう。


「やった」


 小さく喜ぶるーな先輩を見て周りもほっこりした気持ちになる。


「デハ ツギハ ワタシ デスネ」


 あれ? みことちゃん大丈夫? なんかチジョーみたいなカタコトの喋り方になってない?


「ウィーン……ガシャン ゼロバン デス!」

「0番キターーーーーーーーーーー! 2連続で大当たり、おめでとうございます!!」


 今日のペゴえもん、めちゃくちゃテンション高いな。

 まぁ、楽しそうだし、俺も嬉しいよ。

 ペゴニアさんは勿体ぶるようにして0番をめくる。

 その瞬間、会場が大きな叫び声に包まれた。


【白銀あくあと一緒にお休みする権利】


 んん……? どういう事?

 最初、意味がわからずに俺は固まってしまう。


「つまり旦那様の一晩をお貸しします」


 ふぁっ!?

 俺は意味を理解して変な声が出そうになった。


「オーエス ヲ サイキドウ シマス。エラー! ヨキセヌ エラーガオキマシタ。オーエス ヲ サイド インストール シナオシテクダサイ!」

「おい、ポンコツサーバーしっかりしろ!!」


 みことちゃんに近づいたえみりさんが何やら喋っている。

 知り合いなのかな?

 いや、それにしても、ちょっと待って、え? 本当にいいの!?

 俺はともかくとして、これってその立場を利用したセクハラとかパワハラとか何かの強要とかに当たらない!?


「コホン、この事については後で私と旦那様、私と他のメイド達の間で話し合います。それでは最後2つです。結様、どうぞ」


 続いて結がくじを引く。


「参加賞ですね。どちらがよろしいですか?」

「それなら私もアーンで」


 結の楽しそうな顔を見て俺はほっこりした気持ちになる。

 かのんとも仲良くやってるみたいだし、最近は特に笑顔が増えてきて俺も嬉しいよ。


「それでは最後に残った阿古さん。結果はわかってますがどうぞ」

「はい」


 本当に残り物には福があるんだなぁ。

 ホワイトボードを見ると10番の賞品だけまだテープが捲られていない。

 10番が何かはわからないけど、阿古さんの10番当選はこの時点で確定していた。


「おめでとうございます!! 最後の大当たり、10番はこちらになります!!」


 全員の視線がホワイトボードに向けられる。


【白銀あくあの生殖細胞がもらえる権。 ※白銀結様ご提供、天草長官と総理の承認済み】


 お、おおおおおおおおおおおお、ちょっと! こら! ペゴえもん!!

 なんてものを賞品にしてくれやがってるんですか!?

 ていうか、しきみさん!? 総理!? 貴女達まで悪ノリしないでくださいよ!


「あ……」


 ほら! 阿古さんも固まっちゃったじゃないか!

 でもさすがは阿古さんだ。すぐに復帰すると頭を抱える。


「良かった。これが私じゃなかったら、なんか大変な事になって気がする。もちろん、ずっと政府で預かってくれるのよね?」

「はい、使用されるその時まで、こちらで責任を持って保管致します」

「良かった。それなら永久に保存しておいてもらえれば、問題になる事はなさそうね」


 いやぁ、ほんと、これを引いたのが阿古さんで良かった。

 多分カノンとか、清らかな心を持ったえみりさんとか、常識のあるクレアさんとかでも大丈夫だった気がするけど、楓とかが持ってるとなんか謎のホゲパワーでとんでもない事をやらかしそうだしな……。


「ちなみに旦那様の許可が出れば直……」

「すとおおおおおおおおおっぷ! ペゴえもん、そこまで!!」


 俺は慌てててペゴえもんの口を塞ぐ。

 なんかちょっといけない感じの絵面になったけど、今はそれどころじゃない。

 まずはこの人の口を塞がないと、次は何を言い出すかわかったもんじゃないからな。


「わ、私があくあ君と……」


 あ……後ろに倒れた阿古さんを小雛先輩がキャッチする。


「ちょっと! しっかりしなさいよ。阿古! これはチャンスよ!」

「わわわわわわわわ」

「もう! 肝心なところであんたもあくポンたんもポンコツなんだから!!」


 ちょっと! よく聞こえなかったけど、そこ俺の悪口言ってないよね!?


「なんだかんだ言って、慌ててるけどあくあは喜んでるよね」

「うんうん。あくあってそういうところあるよね」


 だからそこ! 呑気に談笑してないで、とあもカノンも手伝ってよ!!

 こうして正月の始まりを告げるカオスなお年玉くじは、何人かの犠牲を出しつつ幕を閉じた。

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[良い点] >顔を赤らめたえみりさんが、潤んだ目で俺の事を見つめていた。 検証班ズ「「誰だコイツ!?」」
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