雪白えみり、ビンゴゲーム。
「それじゃあみんなー! 盛り上がってきたところでビンゴゲーム、いっくよ〜〜〜!」
「「「「「おーーーーーーっ!」」」」」
とあちゃんの掛け声に、みんなが大きな声で応えた。
私もビンゴゲームだと聞いて思わず立ち上がる。
景品はなんだ!? 米か!? ギフトセットか!? なんでもいいぞ!!
「えーと、そういうわけで今回のビンゴゲームの景品提供者である白銀カノンさん! 超・超・超豪華な景品の発表をよろしくお願いいたします!!」
「「「「「おおおおおお?」」」」」
ふぅ……これは勝ったな。私は嗜みが景品提供者だと聞いて確信する。
あいつがケチっぽい商品を出すはずがない。嗜みはやる時はやってくれる女だと私が一番よく知っているからな。
「今回のビンゴゲームの景品は」
「「「「「景品は?」」」」」
もったいぶった言い方をした嗜みは、大きく手を振り上げた。
「とあちゃんと私が指定した事を、あくあが当選者にやってもらう! です!!」
「「「「「うわああああああああああああ」」」」」
気がついた時には、両手でガッツポーズしてた。
もちろん私だけじゃない。会場に居た全員がだ。
「よっしゃ! 森川楓のパワービンゴ行っちゃいますか!」
パワービンゴってなんだよ……。
お前、力込めすぎてビンゴカード破いてみんなに迷惑かけるなよ?
やらかしそうな気がするから一声かけとくか……と、思ったら連れの鬼塚アナがちゃんと注意していた。
今日の結婚式、いっぱいの人で盛り上げたい、ちゃんと嫁をみんなに紹介したい、というあくあ様の意向を踏まえて結構いろんな人が来ている。
ドレスコードなんかもなく、おめかししてる人もいれば、直前に駆けつけてラフな格好をしている人もいるくらいだ。
実際、直前にホゲ川に誘われた総理が一番ラフな格好してるので、誰も服装については何も言わないだろう。あくあ様もそんなこまけー事を気にする人じゃないしな。
「ふふふ、流石は我が孫娘、よくわかってるじゃない!」
隣を見るとメアリーの婆さんがめちゃくちゃアップしてた。
流石あの歳でフルマラソンを完走するだけの事はある。実はホゲ川よりやべー身体能力してるんじゃねーかと思うくらいだ。流石、一国の元女王様だった人はちげーのかもしれねぇな。
「ブーブー、もっとマシな商品出しなさいよ!」
なっ!?
こ、こんな豪華景品を前にして、文句を言っている人がいる……だと!?
そんな不届者は誰だっ!? って、思ったら、野良の小雛ゆかりパイセンだった。
あっ、関わらんとこ。そう思った私は、スッと視線を外す。
「頑張るです……!」
近くにいた忍者が可愛かったので頭を撫でる。
お前はいいよな。ここにいる意地汚いメスどもと違ってお前からしか摂取できない可愛さがあるわ。
あー、あと、月街アヤナさんも。必死に小雛パイセンを抑えようとするその努力に涙が出そうになる。
カチッ、カチッ、カチッ。
聞き覚えのある音に反応して思わず横を見る。
「えみりさん、これ、戦争が起こったりとかしませんよね?」
クレア……ポケットの中に手を突っ込むのはやめようか?
大丈夫、何も起こらないから、な? ほら、そのポケットの中にあるブツをお姉さんに渡しなさい。
これは私が責任を以ってビンゴゲームが終わるまでの間、預かっておきます。
「ふふっ、景品があくあ様……ふふふふふ」
ヒィっ!? どうしてここに皇くくりがいるんだ!?
お前、合宿中じゃ……あ、でも、らぴすちゃんとかもいるから今は特例で外出が認められてるのかな?
とりあえず、あいつにも関わらんとこ。私の中で、小雛ゆかりパイセンとくくり、ホゲ川の3人には関わらないと決める。あいつら3人に関わったら最後、ろくでもない事に巻き込まれかねないからだ。
周囲に視線を向けると、景品があくあ様と聞いて色めきだっている。
「さーてと、どうやら本気を出す時が来たようですね」
「神様、仏様、嗜み様、あくあ様、どうかどうかよろしくお願いします!」
「はぁはぁ、はぁはぁ、もう今から興奮してきた……」
おい! 最後の奴、本当に大丈夫か!?
全く、落ち着けお前ら。今からそんなに興奮してたら、肝心な時にトイレに行きたくなっちゃうぞ。
「えー、では、最初に真ん中の所をくり抜いてください」
「あっ……」
ほら、言わんこっちゃない! 早速ゴリ川がやらかして、両隣にいる姐さんと鬼塚アナに厳しい視線を向けられていた。よし、お前は今日ずっとそこのポジションでいいぞ。
「それじゃあ、あくあ、悪いけど、箱の中から数字の書かれたボールを掴んで僕に渡してくれるかな?」
「OK!」
あくあ様は壇上に上がると、箱の中からボールを取り出してとあちゃんに手渡す。
ん? 何人かがポケットから取り出した薬を飲み始めたが大丈夫か? 言っとくけど、その薬なら聖あくあ教のフロント企業が作った薬だからなんも効かねーぞ。その代わり副作用もないけどな。
「それじゃあ最初の番号は……7番です!」
「あ、やったー、私、当たった」
はぁ!? 嗜みお前も参加するのかよ!!
「ぶーぶー」
「ふざけるなー」
「引っ込め〜」
私とホゲ川がステージに向かってブーイングする。
くそ、あいつが参戦するなんて聞いてないぞ。
私はビンゴカードを見て、7番をくり抜く。
やっぱりな。7、21の数字はあると思ってたんだよ。
どうせあそこのぼんやりした顔の嗜んとかさんも、4、7、3が揃ってるんだろ!
「えっと、次の数字は……22番です!」
惜しいいいいいいいいいいい! って、思ったら22番もあるじゃん。プチッとな。
「イッコ モ ヒラカナイ……」
どこのチジョーかと思ったら知り合いだった。
チジョーの幹部ホゲ・カワー、ありがとう。お前のおかげで歯茎が出たよ。
「どんどん行くよ。次の数字はセットで! 45番と36番です!!」
おっ! も、もしかしてこれて揃ったんじゃねぇか!!
私はすかさず手を挙げる。
「あー、どうやらもう揃った人がいるみたいですね……って、あれ、カノンさんも?」
「はい」
よりによって、お前と同着かよ!
つーか、景品提供者がビンゴゲームするな!
「えーと、ここで追加説明をしておくと、今回のビンゴゲームですが、ビンゴをいくつ揃えたかで景品が変わるそうです。たくさんくり抜いて、いっぱいビンゴを作ってくださいね。もちろん揃わなかった人にも参加賞がありますからご安心ください!」
よーし、よしよし、そういう事ならもうこれで一個はビンゴ達成したって事だ。
続け様に、とあちゃんは5つの数字を発表する。
流石にホゲ川も一個くらいは数字が開いたのかガッツポーズしてた。
「ちょっと! なんで一個も開かないのよ!!」
「先輩、落ち着いてください!」
おそらく、今、ここにいる人達の気持ちは一つになった。
小雛ゆかりパイセン……ざまあ!!
ここら辺になると、少しだがビンゴを揃える人がチラホラと出てくる。
私や嗜み以外にも、メアリーの婆さんや総理もガッツポーズしてた。
2人とも流石は国のトップに立つ、立っていただけの事はある。でもな……総理、運だけで総理になった羽生ですとか言うのは止めた方がいいぞ。また、玖珂理人さんが青ざめた顔で、総理、流出したらまた不適切な言葉で謝罪会見になりますよと言っていた。
「じゃあどんどんいっくよー!」
立て続けに番号を発表する。
「うう、拙者、まだビンゴが揃わないで候……」
忍者のビンゴカードを覗き込むと、リーチは2つあったけどビンゴがまだ揃ってなかった。
私は忍者の頭を撫でて自らの運をお裾分けする。
大丈夫大丈夫、そこまで来たら一個くらいはビンゴ揃うよ。
「あ、当たりました」
らぴすちゃんが側に居た友達達と盛り上がる。
いやー、どっかの薄汚い大人達を見てると、純粋な忍者やらぴすちゃんには癒されるなあ!
「えーと……次の番号は21です!!」
よっしゃー!!
私の21番が来た! これで勝つる!!
そして21番が来たことでリーチだったところが3つ一気に揃う。これで5つビンゴだ……。自分の運の良さに怖くなる。
前を向くと嗜みと目があった。
あのメス……私と同じファイブビンゴ状態か!?
くっ、どうやらここが頂上決戦のようだな。
「ちょっと、まだ一個ってどういう事よ!!」
すみません。野良の小雛ゆかりパイセン、今いいとこなんで静かにしてもらっていいですか?
「それじゃあ、最後大判振る舞いでラスト10個行ってみようか!!」
「流石とあちゃん!」
「わかってるー!」
「ありがとうございます。ありがとうございます!」
18、89、92、34、56、2、64、67、5……次々と数字が発表されていく。
最後5つになると、とあちゃん、黛君、天我パイセンの順番でボールを引いて数字を発表する。
そしてラストの一つ前、新婦である結さんがボールを引いて会場が大きく盛り上がった。
結さんも自分で引いたボールでビンゴが当たって喜ぶ。それを見たみんなが拍手と掛け声でおめでとうを返した。
「そして、最後の数字は、あくあの方から発表したいと思います」
「よし、まかしとけ!」
あくあ様は箱の中に手を突っ込む。
「77! 77! 77! それで一個ビンゴが揃うのよ!!」
え? まだビンゴ揃ってない人いるの?
これだけボール引いてたらもうみんな当たってるんじゃ……って、思ったら小雛ゆかりパイセンだった。
やっぱり日頃の行動って重要なんだなと思った私は、過去の自分を振り返る。うん、私も明日からは、ちょっとは考えて行動するようにしようかな……。
私は自分のビンゴガードに視線を落とす。
後、残っててビンゴが揃いそうなのは、雪白の46だ。
まだ47がコールされてないところを見ると、嗜みがリーチにかかっている数字は嗜みの47なのだろう。
さっきの嗜みからの視線の合図だけで私はその事に気がついた。
「最後の数字は」
「「「「「数字は?」」」」」
「4……」
「「「「「4!?」」」」」
4という数字がコールされた時点で、すかさず月街アヤナさんとうちの森川が小雛ゆかり先輩の体を掴んだ。
ゴリ川……お前、ちゃんと身体能力が役に立ってるじゃねぇか!!
私は心の中で盟友ホゲ川の事を見直した。
ちなみに4はもうコールされてるので、それに続く数字が書かれているのは確定である。
私は息を呑んだ。
「6! 最後の番号は46です!!」
しゃああああああああああああああああああっ!
捗るちゃん大勝利ぃいいいいいいいいい! 嗜みざまあと言いかけたところで、あいつと抱き合って健闘を称え合う。良い勝負だった。流石は嗜み、あくあ様と結婚してるメスなだけはある。
「それでは景品の授与式に移りたいと思いまーす!」
「「「「「やったー!」」」」」
みんなが沸く。
「えーと、残念ながらビンゴが揃わなかった人、ごめんね。でも参加賞があるから」
とあちゃんは申し訳なさそうな顔でぺこりと頭を下げる。
あれだけ数字を引いて揃ってない奴は、何かあくあ様に対してやらかしてる人だから、とあちゃんは気に病む必要なんかないよと心の中で呟く。
「それじゃあ、カノンさん。参加賞の発表をしてもらって良いかな?」
「うん。それじゃあ参加賞は……あくあと一緒に記念撮影です!! しかも撮影はあの世界的な写真家でもあるノブさんですよ!」
「任せておいて〜、あくあ君のツーショット写真、私が世界で一番綺麗に貴女を撮ってあげるわよ!!」
参加賞でツーショット写真!? おまけにノブさんの撮影だって!?
「嘘……だろ……」
「まんま、あの伝説の雑誌じゃねぇか!!」
「そういえばそうじゃん!」
「ビンゴ揃ってない人いる?」
「いや……ていうか、あんなに発表して揃ってない人なんているわけないじゃん」
「ちょっと待って、逆に参加賞ってレアじゃ……」
周りの話を聞いて、昔の事を思い出した。
そういえば、あのとあちゃんと一緒に出てた雑誌、あれがあくあ様の知名度を全国区にしたんだよな。
確かに、そう考えると参加賞にしては明らかに豪華だ。
でも、みんなが言う通り、これだけ数字が出てて外れてる人なんているのか?
「それじゃあ、参加賞の人は前に出てきてください」
あ……。
小雛先輩が勝ち誇った顔で手をあげる。
そういえばこの人、最後の数字で外れてたわ……。今、思い出した。
「アヤナちゃん。これあげる」
「え?」
「私、別にあくぽんたんと一緒の写真が欲しいわけじゃないし、アヤナちゃんが代わりにやっといて」
なん……だと……?
あくあ様とのツーショット写真、それもノブさん撮影という、あの雑誌と同じ仕様のスペシャル版。それを拒否するなんてと、みんなの顔がホゲに侵食される。
「あ、え? ……本当にいいんですか?」
「別に。あいつと一緒の写真が欲しくなったら、無理やり呼び出してでも撮るから、大丈夫大丈夫」
小雛ゆかりパイセンは周りを見渡すと、ふっと息を吐いてドヤ顔を見せる。
こっ、この女……私はお前らと違って、いつでもツーショット写真なんて撮れるんだぞとマウントを取ってきやがった!!
よっぽどビンゴが外れたのが悔しかったのだろう。大人気ない! 大人気ないにも程がある!!
私はこんな大人にはならないようにしようと心に誓った。
「2人とも良いわよ〜!」
うん、流石はトップアイドル同士、絵になるな。
他の人が撮影するのも自由なので、みんな手持ちの携帯で2人の写真を撮っていた。
「それじゃあ、次にビンゴ一個当たった人!」
嗜みの呼びかけに、3割近くの人が手を挙げた。
「それじゃあ一個の人は、あくあと握手とかでどう? 参加賞が豪華だったから、それも両手繋ぎで10秒だけ会話OKとか?」
「それ、あり!」
な、なんだって〜!?
接触がありだと!? そっ、それなら最終的には……なんでもアリって事ですか!?
私はキラキラした子供のような純真な瞳で嗜みの方を見つめる。
「いっ、いつも応援してます!」
「ありがとう」
結さんの同僚の人は、嬉しさが有り余って飛び跳ねていた。
「嬉しいで候」
「はは、りんちゃんも当たったんだね。おめでとう」
忍者、一個揃ってたのか! よかったなあ!
個人的にほっこりした気持ちになる。
「白銀君、結婚式おめでとう」
「ナタリア生徒会長、今日は俺のために来てくれてありがとう」
ナタリア・ローゼンエスタ、嗜みの親戚で乙女咲の生徒会長さんらしい。
確かこの子もデュエットオーディション出るんだっけ? リストに名前が書かれていた気がする。
「おにーちゃーん!」
「おっ、しぃちゃん。久しぶり!」
「今日は私達までお招きくださり、ありがとうございます」
「まどかさん。こちらこそ、結婚式を盛り上げるために来てくれてありがとうございました!」
確かちっこい子供の方が小雛パイセンと同じ事務所なんだっけか。
大丈夫か? よりにもよってあの小雛パイセンと同じ事務所で……私なら断固拒否するわ。
そして同伴しているのがお母さんかな? 心なしかあくあ様の顔がだらしない気がする。
「今日は素敵な結婚式に招いてくれてありがとな」
「レイラさんこそ、忙しいのにきてくれてありがとうございます」
玖珂レイラさんとあくあ様の握手は、アクション映画で戦友同士がやり合うような腕相撲をするような握手だった。
なんかステイツの映画のワンシーンみたいで絵になる。
「私からの電話、ちゃんと出なさいよ!」
「すみません。もう10秒です」
「ちょっとぉ!?」
あ、小雛パイセンだ。なるほどね、アヤナちゃんはお返しで自分のビンゴカードを渡したのか。
なんだろう。アヤナちゃんは素直に優しくて良い子だなって思うけど、さっきの誰かさんと違って……。マウントさえ取らなきゃ、みんな普通に小雛ゆかりパイセンに拍手したと思うんだけどな。
「あ、困りますお客様、必要以上にアイドルの方には触れないでください」
「ふざけんな、このあくぽんたん! 後で覚えてなさいよ!」
たった10秒だったけど、みんながこの2人のやり取りには声を出して笑った。
「今日は楽しい結婚式に招待してくれてありがとう。それに……最後のサプライズ、とっても嬉しかった」
「そう言ってもらえると本当に嬉しいです。先輩との結婚式楽しみにしてますから」
桜庭春香さん。天我パイセンとねんごろになってる女性らしい。
落ち着いた感じの上品なお姉さんだ。
「うへへ、自分、握手いいですか?」
「もちろん」
おいホゲ川! 顔が犯罪者みたいになってるぞ!!
後、興奮しすぎてお前のパワーであくあ様の手を握りつぶしたりしないようにしろよな!
「今日の二次会、すごく楽しかったです。ありがとう」
「こちらこそ。俺のわがままに付き合ってくれてありがとうね」
今日の主役である結さんとの握手にはみんな大きな拍手で祝福した。
あーなんだろう。さっきのホゲ川が浄化されて消えていくように、暖かで穏やかで綺麗な時間だった。
「それじゃあ、カノンさん。次の景品は何かな?」
「えっと握手はやったから……次はハグなんてどう?」
「「「「「ハグゥ!?」」」」」
みんながさらに驚いた顔をした。
嗜み……私はお前の事を舐めてたかもしれねぇ!!
「たし……カ・ノ・ン! カ・ノ・ン!」
思わず私も感動で嗜みの名前をコールしてしまった。
「「「「「カ・ノ・ン! カ・ノ・ン!」」」」」
周りの人達もそれに続く。
イイゾ〜! このまま煽って調子に乗らせて、一等を○ッ○○に近づけるんだ。
せめて先っちょ、先っちょだけで良いから、あくあ様と夜の濃厚接触をさせてください!!
「それじゃあ2つ揃ってる人ー!」
ここで半数近くの人が手をあげた。
列に並んだ人達は顔を赤らめてそわそわし始める。わかるよ。疼いちゃうよな。特に下半身が。
「あくあちゃーん!」
「母さん、恥ずかしいって!」
お母さんに抱きつかれたあくあ様は少し恥ずかしそうにする。
あくあ様が恥ずかしがるなんて事は滅多にない。新鮮なあくあ様にみんながほっこりした気持ちになった。
「わ、私もいいのだろうか……」
「当然ですよ。はい。どうぞ」
ミクおばちゃんとあくあ様のハグ……。絵になるな。
こうやってみると男女の差もあって似てないけど、細かいところのパーツがやっぱり若い時のミクおばちゃんに似てる気がする。それにしてもこの2人のハグも何かの映画みたいだ。
「あの……本当に私なんかがいいんでしょうか?」
「もちろんです。貴代子さん、どんと、こう、ギュッときてください!」
ん? 心なしか黛君のお母さんと力強くハグをしたあくあ様がだらしのない顔をしているように見える。
ハグが終わった後には、慎太郎君は僕に任せておいてくださいと言っていた。
「あくあ君、うちの子達をよろしくね」
「もちろんです。かなたさん……猫山家は俺に任せてください!」
あくあ様はキリッとしてるけど、どこかだらしのない顔でかなたさんをギュッと抱きしめる。
気のせいかな? なんかこの景品、あくあ様の方が喜んでないか?
「というわけで、次は僕だよ!」
「おわっ」
とあちゃんが勢いよくあくあに飛びついた瞬間、どこか遠くから薬をじゃらじゃらと飲む音が聞こえてきた。ほどほどにしとけよと心の中で突っ込む。
それと何人かが倒れそうになったが忍者やペゴニアさんがすぐに支えていた。ナイスプレイ!
「なぁ……これ、僕もやるのか?」
「当然だろ。こいよ……慎太郎!」
慎太郎とあくあ君のハグを見て、またふらついてた人達が居た。
大丈夫かみんな? 興奮しすぎたら椅子に座って休憩した方がいいぞ。
「あくあ様!」
「メアリーお婆ちゃん、ビンゴ当選おめでとう!」
メアリーの婆さん、よかったなー! あくあ様にハグしてもらって、すごく嬉しそうだ。
「あ、あくあ君、私もいい……のかな?」
「もちろんですよ総理」
総理、大丈夫か? この写真だけが流出したら大炎上不可避かもしれないぞ。
いや、あくあ様とハグし終わった後に、我が政治家人生に悔いなしと言っている事からこれは辞任覚悟のハグだったのか。すげぇ……。やっぱ国のトップだけあって、覚悟がちげーわ。
「あくあ君……」
「うるはさん、今日はきてくれてありがとう」
あくあ様は同級生の女の子にハグをする。
すげぇデカさだ。しかもあの色香、あれで同級生だって!?
あくあ様なんて、秒で食われちまいそうな雰囲気がある。
現に大きなものを押し付けられたあくあ様が、すごく嬉しそうな顔をしていた。
「あ……あの……」
「鬼塚さん。いつも楓がお世話になってます。ありがとう」
あ、ホゲ川の上司だ。
「嘘……でしょ。鬼塚パイセンがメスの顔になってる」
当然だろホゲ川。相手はあのあくあ様だぜ。
ほら、見ろよ。あの姐さんだってメスの顔になってる。
そんな事ができる男なんて、この世界にはあくあ様だけだ!!
「あくあさん……」
「琴乃、俺たちも絶対に結婚式あげような!」
「はい!」
良かったな。私と嗜みとホゲ川は盛大な拍手を姐さんに贈る。
「それじゃあ次はいよいよ3ビンゴ。とあちゃんどうする?」
「んーと、それなら……意外と、下の名前で呼んでもらうとかどう? それも体を密着させて!」
「それ……あり! 採用!」
「「「「「カ・ノ・ン! カ・ノ・ン!」」」」」
ふぅ、だんだん凄い事になってきたぜ。
下の名前で呼んでもらえる? どんなご褒美だよ。もうほとんど恋人か夫婦じゃねーか!
「よ、よろしくお願いします」
クレア!? クレアじゃないか!?
お前、ビンゴ3つも揃ったのかよ。すげーな!!
「クレアさんおめでとう、どういう事を言って欲しい?」
「えっと……命令口調でなんか言ってくれれば、それで……」
「OK、そういう事だから、あくあ、よろしくね!」
「わかった!」
あくあ様は少し考えた後、クレアの手を取って壁側まで連れていく。
あくあ様は壁にもたれかかったクレアに詰め寄ると、勢いよく壁をドンと叩いて、体を密着させるようにした。
この時点で会場は、ぎゃーとか、うぎゃーとかいう汚いメスの声が響きまくる。
「クレア……。お前は、俺だけ応援してろ。いいな?」
「ふぁ、ふぁい……!」
クレアは内股をキュッと擦らせる。よかったなぁ。報われて。私はクレアに拍手を贈った。
でも、さっきのアレでまた変な方向に行ったりとか……は、流石にしねーよな! うんうん、私の気のせいだ。気のせい。
「あ、えっと、私もいいのかな?」
「当然です社長。どうぞどうぞ」
あー、次は天鳥社長か。この人には報われて欲しいから、みんなが温かい目で見る。
「それじゃあ、社長はどうして欲しい」
「えっと、その……褒めてくれるとか……あり?」
「だ、そうだよ。あくあ、頑張って!」
「よしきた。任せろ!」
あくあ様は、天鳥社長の手を引くと、自分の胸の中に抱き寄せた。
「阿古……お疲れ。いつも俺達のために頑張ってくれてありがとう。感謝してる。だから……あんま無茶するんじゃないぞ!」
「「「「「うわああああああああああ!」」」」」
ふらついた阿古さんを小雛ゆかりパイセンが抱き止めてた。
これにはみんなが拍手を贈る。ありがとう。ほんとありがとう。みんなが天鳥社長に感謝した。
「あくあ先輩!」
ひいっ! くくりの声に思わず体がびくんと反応する。
どうせ体がびくんとするなら、あくあ様に弄られてびくんびくんしたかった……。
「くくりちゃんはどうして欲しい?」
「んー……それじゃあ、くくりは俺のものって扱いしてくれませんか?」
「OK!」
あくあ様は、くくりの腰に手を回すと、そっと自分の方へと抱き寄せた。
「くくり、俺の事だけ見て。他のやつには触らせたりしないから」
「はい……!」
くっ……これ、くくりじゃない人との組み合わせで見たかった……。
あくあ様、一見するとお淑やかにしてるその女の中身は化け物です。早く逃げて!!
「次は杉田先生か」
「先生はどうして欲しい?」
「わ、私も、天鳥社長みたいに癒しがいいです……」
「OK!」
あくあ様は、杉田先生の体に密着させると、頭の上に手を置いた。
そしてポンポンと頭を叩くと、そっと耳元で囁くように名前を呼ぶ。
「ちゃんと休めてる? 無理しないでね。マリ。マリ先生が倒れたら、俺が悲しむから」
「あ、あ、あ……うん」
良かったなぁ! 聖あくあ教に勧誘されたり、生徒に幹部が居たり、先生は大変そうだからこれくらいご褒美があってもいいはずだ。すまねぇ。うちの信者どもが迷惑かけてます。
「それじゃあ、これで終わりかな?」
「我がいる……!」
天我パイセンはビンゴガードを天高く上げる。
すげぇな。特別な事をしてるわけじゃないのに、なんかすげぇカッコよく見える。
「それじゃあ、天我先輩はどうして欲しい?」
「じゃ、じゃぁ……同級生みたいな感じで」
ふぁ〜〜〜、そういえば天我パイセンって1人だけ学年も学校も違うんだよな……。
あ、あれ? 学校でぼっち飯してる天我パイセンを想像したらなんか目から汗が出てきたぞ。
これがもう1人のパイセンなら歯茎が出るだけなのに……。
「アキラ! 放課後バスケしに行こうぜ!」
「お、おぅ! いこーぜ、あ、あく、あくあ!」
かーっ、これ天我パイセンが一番可愛い奴じゃねぇか!
後輩に呼び捨てされて赤くなってるし、恥ずかしがって声がきょどってるし、どこかの嗜みさんより全然ヒロインしてますわ。
「それじゃあ、今度こそ終わりだよね? で……後、何人?」
手を挙げたのは私と嗜み、それにペゴニアさんと……揚羽お姉ちゃん!?
どうして揚羽お姉ちゃんがここにって、あ、総理繋がりできたのね。なるほど……。
「カノンさん、残りどうする?」
「うーん。私は別に景品はなくてもいいけど、1位以外の2人は例のアレでよくない? ほら、俵抱きとお姫様抱っこで。それでさ、あくあには例のセリフを言って貰うって事で」
「じゃあ、もうそれで!!」
4ビンゴのペゴニアさんと、揚羽お姉ちゃんがステージの上に出る。
揚羽お姉ちゃん、アウェーだからか、平静を装ってはいるけど居心地が悪そうだ。
嗜みは何やらコショコショとあくあ様に囁く。
「えっと、どっちかがお姫様抱っこで、どっちかが俵抱きで」
「それなら私は後でいいですわ。お先にどうぞ」
とあちゃんの提案に、揚羽お姉ちゃんはペゴニアさんに順番を回す。
「それじゃあ私はお嬢様と同じお姫様抱っこでよろしくお願いします」
「わかった」
あくあ様はペゴニアさんをお姫様抱っこ……というかメイド抱っこ? する。
「あらあら、旦那様。私はお姫様ではなくてただのメイドですよ」
「ふぅん、俺に生意気な口をきくとは、随分と生意気なメイドだな」
夕迅!? この口調は夕迅様モードじゃねぇか!!
「夕迅様……」
危ねぇ! 倒れかかったメアリーの婆さんを必死に支える。
おい、そこの孫娘、自分の婆さんを天に召させるつもりか! 自重しろ!!
「え、あ……」
「まぁいいさ。随分と躾甲斐がありそうだし、じっくりと時間をかけて堕とせばいいわけだし……ね。ペゴニア、今晩は寝かせないよ」
うわあああああああああああああああああああああ!
って、お前、自分が言ってて私と一緒になって叫ぶな嗜み!!
このシチュエーション、完全にお前が見たかったシーンをやりたかっただけだろ!!
「くっ……これは屈辱です!」
ペゴニアさんは赤くなった顔を誤魔化すように、お姫様抱っこの状態から床に足を下ろすと、どこかへと逃げてしまった。うん、わかるよ。あれには勝てない。
「それじゃあ私は俵抱きですね」
揚羽お姉ちゃんがんばれ!!
嗜みとあくあ様の事だから、まーた、何かやらかすぞ!!
私は心の中で揚羽お姉ちゃんにエールを贈る。
「ひゃっ」
あくあ様は難なく揚羽お姉ちゃんを俵抱きする。
「暴れないでよ。じっとしてなきゃ、運べないじゃん」
のうりんの主人公だあああああああああああ!
「うぎゃあああああああ!」
あっ、揚羽お姉ちゃんより先に白龍先生が死んだ。
お、おい、死ぬな。生きろ!! これをちゃんと実写化するために、貴女には生きててもらわなきゃいけないんだよ!!
メアリー様が隣でうなされていたが死んで無いので良しとする。
「あ、あ、あ……」
流石の揚羽お姉ちゃんも顔を真っ赤にしてた。
これはしゃーない。取り繕えるわけがないんだから。
私達、メスにできる事なんてホゲ顔でただ目の前の状況を眺める事だけですよ。
「だからじっとしてなよって言ってるでしょ。ほら、僕の言う事ちゃんと聞く。わかった? 揚羽お姉ちゃん」
「う、ううううん……」
とんでもねぇもんが生み出されてしまった。
こんなもんが外に流出したら暴動が起きるぞ……。今すぐ実写化しろってデモが起こってもおかしくない。
私は揚羽お姉ちゃんによく頑張ったと心の中で強く拍手をして称えた。
「えーと、それじゃあ最後の1人。雪白えみりさん。どうぞ」
「はい!」
うぉおおおおおおおお、ついに来た! 私の番である。
い、いったい、何をするんだろう。緊張してきたぞ……。
「最後はどうしよっか?」
「うーん、もう最後はあくあに任せるって事で、どう?」
「わかった」
あくあ様は嗜みの言葉に笑顔で頷く。
「そういう事ならこれで」
「きゃっ!」
「えっ?」
ステージの中央に立ったあくあ様は、私と嗜みの2人の肩に手を回して自分の体の方へと抱き寄せた。
「カノン、今日はありがとな」
あくあ様は嗜みのほっぺたに軽く触れる。
「えみりさん、嫌なら嫌って言って」
「嫌じゃないです」
もう大体、何されるかわかったけど、あくあ様にされて嫌な事なんてないです!!
「えみりさんも、今日は来てくれてありがとう」
そう言ってあくあ様は、私のおでこに軽く触れる。
もうこのおでこ、一生洗わねぇわ……。
「って、これだとシンプルかな? 3人でゆうおにのラストシーンする?」
「もう、それはあくあがやりたいだけじゃん!」
嗜みー! そこは恥ずかしがらずにやるって言えよ!!
私とお前であくあ様をサンドしようぜ!! なーに、口が滑っても事故だよ事故! 偶然を装っていれば何したっていいじゃないか! ぐへへ!
「はは、冗談だよ」
くっ……残念だけど仕方ない。
「それじゃあ、盛り上がってきたところで、森川楓の一発芸いきます!!」
うん、それはまぁ、どうでもいいかな。
こうして二次会は大いに盛り上がっていった。
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