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白銀結、私の幸せな結婚。

「綺麗だよ。結」

「あ、ありがとうございます」


 あー様の笑顔とシンプルでストレートな褒め言葉に、私は照れた表情を見せる。

 横にある鏡に視線を向けると、美しい白のウェディングドレスを着たいつもとは違う自分の姿があった。

 今日は12月28日、大安吉日、私とあーさまの結婚式が執り行われる私にとっての特別な日です。


「みなさん、結の事を綺麗にしてくれてありがとうございました」

「あ、ありがとうございました!」

「こちらこそ、2人きりの結婚式、どうか楽しんできてね」


 今回、私とあー様のメイクやヘアセットをしてくれたのはベリルのスタイリストチームの皆さんです。

 そして、私が着用した白のウェディングドレスは、あー様の担当デザインをしてくれるコロールのジョンさんがデザインをしてくれました。ジョンさん曰く、深い雪のような白から白銀のような光り輝く白になる様を、布地の種類を変えたり、染め方だったり、デコレーションだったりで、このウェディングドレスを表現したそうです。

 どういうデザインのドレスを着たいかと事前の打ち合わせでジョンさんに聞かれた時、今の私からあー様の私になるんだって事を実感できるようなドレスにして欲しいって、そんな抽象的な事しかお伝えできなかったのに、たったそれだけの事でこんなにも素敵なドレスをデザインしてくれるとは思いませんでした。


「さぁ、行こうか。結」


 あー様は、私の方へと手のひらを差し出す。

 白のタキシードスーツ姿のあー様はやっぱりすごくかっこいい。

 ほんと物語に出てくる王子様みたいにキラキラしてるし、優しくて暖かなあー様に白い衣装はぴったりです。


「結、どうかした?」

「あ、ごめんなさい。ぼーっとしてました」


 あああああ! ごめんなさい!!

 あー様がカッコ良すぎてつい見惚れていました。なんて言えるわけがありません。

 私が顔を背けて恥ずかしがってると、あー様がそっと私の耳元に顔を寄せる。


「実は俺もこの部屋に入ってすぐ、結にバレないように見惚れてたんだけど、これは内緒だよ」


 なっ、内緒!?

 内緒って普通、本人に内緒にしておくとかそういうのじゃないんですか!?

 私がどう反応していいのか戸惑っていると、あー様はペロリと舌先を出した。

 あ……どうやら私は、あー様にうまく揶揄われてたみたいです。


「内緒ってのは嘘だけど、見惚れてたの本当だから」


 あああああ、今すぐ、お顔を両手で覆い隠して恥ずかしがりたい。

 でも綺麗にメイクしてもらってるし、そんな事をしたらせっかくのメイクが台無しだ。

 あー様は、多分だけど私が自分で顔を隠せないのがわかっててやってるんだと思います。確信犯以外の何者でもありません。なんか……あー様ってこう、たまに年相応に悪戯っぽいというか、私とか琴乃さんみたいな年上のお姉さんを弄んで、その反応を楽しんでたりするように見えます。

 本当は一言くらい何か言い返したくなる時もありますが、その後の屈託のない笑顔をみたら、全部許しちゃうんですよね。ほら! ほら! その笑顔ですよ、その笑顔! あー様は、絶対にずるいです!


「それじゃあ、行こうか」

「……はい」


 でも好きなんだから仕方ないよね。

 そういう悪戯っぽいところがあるあー様が好き。

 緊張してる私を見て、優しいイタズラで緊張を解いてくれるあー様が好き。

 私だけじゃなくて、誰にでも優しくしてくれるあー様が好き。

 お母さんとのわだかまりを解決してくれたあー様が好き。

 あ、あと……私なんかにも、ちゃんと女としての魅力を感じてくれているところが好き……です!


「結、ここから先に進む覚悟はできてる?」


 チャペルの入り口で立ち止まったあー様は、私を真剣なお顔で見つめる。


「一歩でもこの先に足を踏み入れたら、もうこの手を俺から離す事はないけど、それでもいい?」

「え、あ、そ、それって……」


 私はドキドキした気持ちであー様の顔を見上げる。


「例えこの先、どうなろうと結とずっと一緒に歩んでいく覚悟、俺はもうできてるよ」

「わ、私もできてます……!」


 私は改めて強くあー様の手を握り締める。

 最初から覚悟はできていました。

 私は琴乃さんやカノンさんとは違って、あー様のやろうとしてる事、やりたい事に関して、直接何かを手助けできるわけじゃありません。それでも……! 私には私にしかできない事がある!

 あー様の担当官として、摂取した貴重な生殖細胞の管理とか、なんでもいいから自分のできる事であー様を支えたいと思いました。


「行こう」

「はい!」


 扉を開いて私とあー様はチャペルの中へと足を踏み入れる。

 私が望んだ、あー様と私のためだけの、たった2人だけの結婚式。

 ここにはお互いの親族もいなければ、立会人も、参列者も、司祭様も、誰もいません。

 一生に一度だけの機会だから、それなら2人だけで誰にも邪魔されたくなかった。

 だって……ほんの少しの時間でいいから、私だけのあー様を独占する時間が欲しかったんだもん。

 アラビア半島連邦の時、2人で少しだけお散歩した時すごく嬉しかったから。


『結、俺は2人で歩きたいけど、どう思う?』


 入り口から祭壇へと向かう道筋、私が先に入って待つか、あー様が先に入って待つか。どちらにしようかと考えてたら、あー様が2人で歩きたいって言ってくれたんです。

 1人じゃない。2人で並んで歩こうって、隣にいるよって言ってくれた気がして凄く嬉しかった。


「結」

「はい」


 あー様は私と向き合うと、少し緊張した面持ちで軽く息を吐く。そして少しリラックスされると、いつものように、優しく微笑みかけてくれました。


「もしかしたら寂しく想う夜だってあるかもしれない。悲しくさせてしまう時だってあるだろう。できる限りそうならないように俺も努力はするし、本当はそんな想いさせないよって言いたい。だけど、きっと結にはたくさん苦労も心配もかけると思う」


 覚悟はしています。

 私はあー様の言葉を真剣に聞く。


「それでも寂しくさせた後は必ず抱きしめるし、悲しませた後には必ず笑顔にさせる。結が、俺と結婚して幸せだったって、そう思わせる人生にしたいと思った。だから、これから先も俺と、ただの白銀あくあと一緒にいてくれないか?」


 私は軽く息を吸う。そして……。


「はい」


 返事をした私は、そのままあー様のお顔を見つめながら、自分の思っている事を、誓いの言葉を口にした。


「たとえこの世界がどうなったとしても、あー様がどうなられたとしても、最後のその瞬間まで、あなたの隣にいると誓います。だから、だから……! あー様が私の事を幸せにしてくれるなら、私の全部を以ってあー様の事を幸せにさせてください!」


 あー様の幸せってなんだろう。あー様が幸せになるために私ができるって何があるのかと考えました。

 私は担当官として、あー様のお嫁さんになる人が今の人数だけでは収まりきらないと思っています。

 並大抵の人ではきっとダメ。それこそ掲示板に出没する捗なんとかさんみたいに、非常にお強そうな人とか、ティムなんとかさんみたいな、スペシャリストであるソムリエ資格を持ったプロフェッショナルな方に奥様になっていただいたら、きっとあー様も持て余した熱を発散できて幸せな気持ちになると思っています。

 残念ながら政府のAIではポンコツすぎて、お2人の素性には全くと言っていいほど辿り着けませんでした。

 彼女達がどこで何をしている人なのかは全くわかりませんが、妻として、あー様のために私も頑張りますね!


「ありがとう結!」


 あー様はギュッと私の事を抱きしめてくれた。

 任せておいてください。担当官として、あー様の生活を快適にできるように頑張りますね!


「結、俺からの結婚指輪、受け取ってもらえるかな?」

「はい、喜んで!」


 あー様はポケットから取り出した箱を開くと、結婚指輪を取り出して跪いた。

 私はグローブを外すと、薬指に煌めくあー様がプレゼントしてくれた婚約指輪を見て暖かい気持ちになる。


『結さん。結婚指輪なんだけど、みんなと同じデザインになっちゃうけど、それでもいい?』

『も……もちろんです。奥様』


 奥様の提案を聞いた時、私はびっくりしてしまいました。

 スターズの元王女殿下であった奥様は、はっきり言って特別な存在です。

 ですから結婚指輪に関しても、正妻である事をアピールするために他の妻達には指輪をつけさせないものだと勝手に思っていました。実際に正妻が他の妻達にアクセサリーをつけさせないなんて話も、仕事柄、聞いた事があります。

 でも奥様は、全員の妻達が等しくあー様とお揃いの指輪を常につけられるようにと、全員の結婚指輪を自分がもらったデザインと統一する事を提案されました。


『その……いいのですか?』

『あ、うん。私にも打算とかがないわけじゃないから……その、仲の良い友達と同じのがつけられたらいいなって』


 失礼だとも思いましたが、奥様の事を思わずギュッと抱きしめてしまいました。

 なるほど、あの天下のあー様と言えど、この可愛さには勝てません。


『あ、あとね。その代わり、婚約指輪はそれぞれ別にするように言っておくから。あくあが私達の事を考えて贈ってくれた、たった一つの自分だけの指輪。ね。そうしたらすごく素敵じゃない?』

『はい、とっても素敵だと思います!』


 あー様が私のために送ってくれたこの世界でたった一つの婚約指輪。ずっとお揃いの結婚指輪もすごく嬉しいし、私、こんなに幸せで大丈夫かな?

 私、あー様のものになったんだ。上下に2つ並んだ婚約指輪と結婚指輪を見て笑顔になる。


「結、今日一番の素敵な笑顔をありがとう」


 あ……私、今、ちゃんと笑えてたんだ。

 笑顔の練習とかしていた頃がすごく懐かしくなる。


「ヴェールをあげてじっくり見ていいかな?」

「はい!」


 あー様は私のヴェールをあげると、本当にごく自然とチュッとしました。


「ごめん。結が可愛すぎて気が急いちゃった。せっかくだし、ここ景色が綺麗だから、少し座ってお話をしようか。2人きりの結婚式だから好きにしていいしね」

「うん……!」


 本当に2人で他愛もない会話をしました。

 でもその時間はすごく穏やかで、ゆったりとしていて、心がすごく落ち着きます。


「結、お腹空いてない?」

「あ、はい……実はその、結構お腹空いてます」


 綺麗にウェディングドレスを着るために、昨日からあんまり食べてなかったからか、落ち着いたらすごくお腹が空いてきました。


「そっか、じゃあ、ご飯を食べに行こうか」

「はい! あ……」


 あー様は私を抱き上げると、例のお姫様抱っこでチャペルの入り口へと向かう。

 こ……こんな感じなんだ。まるで自分が本当のお姫様になったみたいな気持ちになります。


「あ」


 扉を開けなきゃいけないので、入り口の前でおりますと言おうとしたら反対側から扉が左右に開いていく。

 その先に広がる光景を見て私は思わず声を漏らしてしまいました。


「「「「「「「「「「結さん! 結婚おめでとう!!」」」」」」」」」」


 奥様や琴乃さん達の姿だけじゃない。ベリルの皆さんの姿も見えます。


「結さん……」

「結先輩……」

「「「「「綺麗!!」」」」」


 同じ職場で働く同僚や上司の人達が駆け寄ってくる。


「皆さん、どうして……」

「だって……ねぇ」

「うん……」


 同僚の皆さんの視線が私の上司、天草しきみ長官へと向けられる。


「2人きりの結婚式はいいとして……部下のお祝いくらいしたっていいじゃない。ねぇ、理人さん」

「ああ、せっかくのめでたい日なんだ。それとも迷惑だったかな?」


 私はブンブンと首を左右に振る。


「だ、そうですよ」


 天草長官と玖珂理人さんが後ろを向くと、そこにはお母さんが立っていました。


「お母さん……!」

「結、すごく綺麗よ」


 あー様は私を下ろすと、手を引いてお母さんの近くへとゆっくりと歩いていく。


「ごめんなさい。やっぱり、私は居ない方がよかったわよね。結に赦されない事をした私に、ここに来る資格なんてないのに」

「ううん。私もそう迷ってた。でも、一生に一度しかないから、私のウェディングドレス姿を見てもらえてよかったって、今はそう思ってる」

「そっか……ありがとう結」


 お母さんは、あー様の方へと視線を向ける。


「あくあ君。ありがとう」

「いや……俺は何もしてませんよ。結も悩んでたし、だから俺も日付と場所を伝える事しかしてませんでしたから。あとは運命に委ねる……っていうのじゃないけど、どういう風向きになっても、俺が結を幸せにするって事だけは変わらないんで」


 お母さんはクスリと微笑む。


「あくあ君……結の事をよろしくお願いします。それと、結、本当に結婚おめでとう」

「ありがとうお母さん」


 私はお母さんと抱き合った。


「おめでとう! 結さん!!」

「結先輩、おめでとうございます!」

「おめでとー!!」

「2人とも、おめでとうございます!」

「おめでとう!!」


 周りを見ると多くの人達が私の結婚を祝福してくれていました。

 お母さん、天草長官、奥様、琴乃さん、みんな、みんな……!

 もう1人じゃないんだって、そう思ったら自然と目から涙がこぼれ落ちていきました。


『ねぇ、あの子、混ざり物なんだって』

『へー、そうなんだ。華族の面汚しじゃん』

『お母さんが言ってたもん。間違って外国の男の遺伝子掴まされたって』

『ふーん、それって牛のオスとかじゃなくて?』

『ちょっと、笑わせないでよ。キャハハ!』


 私の学生時代、自らの生い立ちもあって、友達なんて呼べる人はいませんでした。

 でもこれは私にも問題があったのです。

 最初から全てを諦めて、無愛想で、感情を殺して能面に成り切ってた自分。

 もしかしたら自分から行動したら友達の1人か2人くらいはできたかもしれません。

 それでも社会人になって、今の職場の人達に恵まれて、琴乃さんみたいなお友達もできました。

 だから私はこう言えます。周りに居た人達に恵まれたんだって。


『おい、デカ女。お前の胸すげー気持ち悪いから2度と俺の視界に入るな』


 今の私なら、いじめを作るきっかけとなった、あの言葉にこう言い返してやるでしょう。


 私のこの大きな膨らみは貴方のためにあるんじゃありませんと。


 この世界でたった一つしかない私のこの大きな胸は、ただ1人、あー様を喜ばせるために存在しているのです。

 そのためにこの前、百貨店で思い切って、今より大きく見えると噂されている悪魔のビッグバンブラを購入しました。


「あー様……」

「結、ほら、泣かないで」


 あー様は私を泣き止ませようとギュッと抱きしめてくれました。


「あー様はずるいです。こんな、こんな、サプライズ、聞いてません」

「あはは、ごめんな。でも、結婚式の後はこうやってみんなで祝いたかったんだよ。結が、せっかく俺のために綺麗になってくれた姿をみんなに見てもらいたいって、そう思ったから」

「……許します。許しますけど、あー様は絶対にずるいと思います」


 まぁ、なんてわがままな事を言っているんだと自分でも思いました。

 でも、なんかもう、幸せ過ぎて言わずにはいられなかったのです。


「だよねー。あくあって絶対ずるいよ」


 とあちゃんの言葉に反応して周りからドッと笑いが起きる。

 ふふっ、やっぱりそう思ってるのは私だけじゃなかったんだ。


「あるあるだな。今に始まった話じゃない。あくあは最初からそうだったぞ」

「我なんかヘブンズソードのバイトシーンの度にそう思ってる。クリスマスに放送された美容室のシーンなんて、あまりに我のカットが下手すぎて、スタッフの人に天我君はハサミを持たない方がいいよって言われたからな」


 黛さんと天我さんのコメントに周りが大爆笑した。


「よかった。私だけじゃなかったんだ……」

「よかったな、た……カノン。ホゲってたのはお前だけじゃなかったみたいだぞ」

「ふふっ、実は私もずるいと思ってました」

「私も例の師弟コンビに取られた番組を見ながらそう思ってました」


 森川さんの自虐ネタに、周りからドンマイ。頑張ってという言葉が飛ぶ。


「ちょっと、みんな!? 俺の結婚式なんだよ!? そういうのじゃなくてもっと祝って!」


 あはは、あー様の言葉にみんなが手を叩いて笑う。

 私もついついそれにつられて笑ってしまいました。


「結まで……ところで結、さっき、一生に一度って言ってたけど、結婚式が人生に一度きりだなんて誰が言ったんだ?」

「えっ……?」

「したくなったら、またしたらいいじゃん」


 私は……というか、女性陣の多くがホゲ川さんみたいな顔で首を傾けました。

 だって、あー様の言っている意味が皆さん最初は理解できなかったんだもん。


「ほらね。やっぱりあくあが、またなんか変な事言い出した! いつもこうなんだよ!」


 とあちゃんのツッコミでみんなが我へと返っていく。


「あー、うん、そっかー、あくあって、そう考えちゃうんだ。あ、ごめん。変な意味じゃなくて普通にすごいなって……うん。でも、そうだね。したくなったらまたする。それもいいかも! だって、私も、もっともっと綺麗なウェディングドレス着たかったし」

「だろ!」


 あー様と奥様の言葉にみんなが明るい顔になった。

 ほんと、あー様って凄いな。こんな事、普通の人じゃ思いつかないよ。


「よし! それじゃあ話も纏まったし、みんなで飯を……と、結。その前に一つ、お願いがあるんだけどいいかな?」

「はい?」


 あくあさんはお母さんからお花のブーケを受け取ると、私にブーケを手渡してヒソヒソ声で耳打ちする。

 うん……うん……なるほど。


「わかりました! そういう事ならお任せください!」


 私は天高くブーケを掲げる。


「えっと、今からこのブーケを投げるからキャッチしてください! このブーケを受け取った人が、次に結婚式をする人でーーーす!」


 私はそう言うと、あー様が指定した方向へとブーケを投げる。


「チャーンス!」

「くっ、ホゲ川、おま、反則だぞ! 動くな!」

「ちょっと、邪魔しないでよ。は……えみり!」

「ぐぬぬぬ、お前だけには絶対キャッチさせん!」

「そこ! 醜い争いをするのはやめなさい!」


 揉み合う森川さんと雪白えみりさんの上を私の投げたブーケが通過していく。

 それを見上げた琴乃さんは笑顔でそれを見送りました。

 落ちていくブーケ、それをキャッチしたのは……。


「え……?」


 天我アキラさんのパートナーとして来ていた桜庭春香さんはびっくりした顔をする。


「先輩」


 あー様はそう言うと、親指をぐっと突き立てた。


「ふっ、後輩。言われなくてもわかっている。でも……ありがとな!」


 そういえば天我さんはこの休みに帰省していると聞きました。

 それなのに、このために来てくれたのです。

 これは、あー様からのそのお礼という事なのでしょうか。

 それとも、男の子の間でだけわかる、何かの合図なのかもしれないって思いました。


「よっしゃ、こうなったら女、森川、二次会は宴会芸で盛り上げます!」


 森川アナがそういうと、みんなが手を叩いて喜ぶ。


「そういう事なら私も付き合おうじゃないか!」

「そ、総理……!?」


 総理も来てたんですね。あ、森川さんについてきたら結婚式だったと……。

 あまりにもフットワークの軽い総理に周りも唖然とする。


「どうやら接待だけで総理に上り詰めた私の実力を発揮する時が来たようですね!」

「総理、そんな事を言って、どこかに流出したらまた謝罪会見ですよ! 年末とか年始に謝罪会見とか恥ずかしいからやめて下さい」


 玖珂理人さんが青褪めた顔で総理に耳打ちをする。

 なんだろう。なんで、あー様の周りってこんなに面白くて楽しいんでしょう。


「私……やっぱり、あー様の事が好きです」


 だって、貴方と一緒にいると、どんどん自分の周りに居る人達まで幸せになっていくんだもん。


「そっか……じゃあ、もっと俺の事を好きにさせてやるよ」


 あー様の返しに私は顔を真っ赤にしました。やっぱり、あー様ってずるいです!

 だって、だって……そういう時だけ、すごくかっこいい顔するんですもの!!


 騒がしくって人がいっぱいって、みんな笑ってて、2人きりの結婚式も良かったけど、二次会もすごく楽しい時間でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一般の結婚式でブーケトスどうなっとるやろ一瞬思ったが 一般の結婚式なんてもんがなかったわ(゜д゜)
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