白銀カノン、ポンポンポンコツ!
「ど、どうかな?」
私はあくあの前でくるりと回転する。
ううっ、覚悟を決めて出てきたものの、やっぱり恥ずかしいよぉ……。
よくよく考えなくてもこれじゃあほぼチジョーじゃない!
ああ……それなのになんで私はこれでいけると思ったんだろう。
思い返せばあの時、えみり先輩のイケると言った口車にのってしまった自分を引っ叩きたい。
『良い事を思いついたぜ!!』
『どうせ、ろくなことじゃないんでしょ』
私はストローでジュースをちゅーちゅーしながらえみり先輩をジトリとした目で見つめる。
えみり先輩が思いつく良い事なんて、大抵しょうもない事だから話を聞くだけ無駄なんだよね。
『ちっちっちっ、嗜みさんよ、そんな顔をしているのも今のうちだけだぜ。まぁ、ちょっと待ってな!』
えみり先輩は自信満々な顔でお財布を握りしめてどこかへと行ってしまった。
まぁ、どうせすぐに帰ってくるだろうと思い、私と姐さん、楓先輩の3人はお店に留まってあくあへのクリスマスプレゼントに何を贈ればいいのかの会議を続ける。
それから十数分後、勝ち誇ったかのようなドヤ顔でえみり先輩が戻ってきた。
『迷える子羊、嫁なみのために先輩からの少しだけ早いクリスマスプレゼントだ。受け取ってくれ』
『あ、ありがとうございます。えみり先輩』
私と姐さん、楓先輩の3人は、えみり先輩から手渡された袋の中身を覗き込んで驚愕する。
えっ……? 待って、これって……どういう事!?
『プレゼントがないのなら、自分がプレゼントになればいい。そう! これこそがクリスマスプレゼントは私よ! 作戦だ!!』
えっ? だからってこれ、もうほとんどリボンじゃ……。
って、え? ショップにこんなのが売ってたの?
ふむふむ、店員がノリで作ったはいいけど、10年売れてなかった? それって、在庫処分じゃん!!
『捗る。お前、天才かよ!!』
『先輩……メアリーのプライド、見せつけてやりました』
私と姐さんが口を半開きにして顔を見合わせている後ろで、捗ると楓先輩だけが盛り上がっていた。
いやいやいやいや、流石にないでしょ……。で、でも……あくあなら、ワンチャン、あくあなら、こういうのが好きな可能性も……。ダメダメ、冷静になりなさい! 私!!
『こ、こんなものが許されるのでしょうか』
『や、やっぱりダメだよね?』
姐さんの言う通り、ここで止めておけば良かったと今更ながらに後悔する。
しかし全ては過去、もう今更、どうする事もできない。
私は覚悟を決めて、あくあの様子を伺う。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「え……?」
あれ? なんか急にあくあが手のひらを合わせて拝み出した。
心なしか少し涙ぐんでるように見えるのは私の気のせいかな?
「古き良き手法の一つ、定番中の定番ネタの一つ。もはや時間と共に趣のようなものを感じる。プレゼントは私、最高じゃないですか!!」
「嘘でしょ……」
え? もしかして、あくあってえみり先輩と同じレート帯なんじゃ……。う、ううん。きっと、そんな事は……ない……はず。いや、でも、待って、あくあって、よく考えなくても、明らかに他の男の子とは違うし……あ、あれ? それなら、これで良かったのかな?
うーん、まぁ、なんか、あくあが凄く喜んでくれてるし、それでいっか。うん、もう細かい事を考えるのはやめにしよ。
「おいで、カノン」
あくあはベッドに腰掛けると私を手招きする。
「う、うん」
私は恥ずかしがりながらあくあに近づくと、その隣にちょこんと座る。
本当は膝の上に乗りたかったけど、そんなガツガツしたような女の子は嫌だよね?
「そうじゃないでしょ。こっち」
「あ……」
あくあは私を抱き寄せると、そのまま私を膝の上に乗せた。
「カノンは俺へのプレゼントなんだから、座るならここでしょ?」
「あ、うん……」
やだ……あくあってば、私の考えてる事がわかったのかな?
それか私の顔に、あくあの膝の上に乗りたいって書いてたりとかしないよね?
わわ、恥ずかしい……。
「カノン……ごめんな」
「え?」
あくあは申し訳なさそうな顔で私の事を見つめる。
「クリスマスだって、本当は一緒に過ごしたかったよな?」
「うん……そうだね。でも、わかってた事だし、それがあくあの仕事だって事で納得はしてる。それに、近くから仕事してるあくあをたくさん見れたし、それはそれで同じくらい楽しかったからいいよ。それに……」
「それに……?」
「こうやって、あとでちゃんと私のために時間を作ってくれるところが好き!」
私はあくあの首の後ろに手を回すと、ぎゅっと抱きついた。
あくあはそれに応えてくれるように、私の事を力強く抱きしめ返してくれる。
「そっか……。ありがとな。だけど、無理だけはしないで欲しい。カノンが言いたい事があったら全部聞くし、何よりもカノンが笑顔じゃないのは俺が嫌だから。カノンが思ってる事、考えてる事、俺もカノンの気持ちは考えるけど、それはつもりになっているだけかも知れないし、実際は言葉にしないと伝わらない部分がたくさんあると思うんだ」
「それはお互い様だよね。私もあくあには笑顔で居て欲しいし、あくあのしたい事をして欲しい。それがアイドル白銀あくあのファンの1人である私にとっても幸せなの。だから……ね。私のために、無理だけはしないで欲しい。本当は今日だって、昨日まで仕事だったんだから、家で2人きり、まったりしたって良かったんだよ?」
あくあが私の事を想ってくれているのがすごく嬉しかった。
この想いが一方通行じゃない。お互いにベクトルを向け合っている。
それがわかっただけでも心がポカポカと暖かくなった。
『餓鬼のくせに無理してるんじゃねーよ! 辛いなら辛いって言え! 甘えたいなら素直に甘えりゃいいじゃねーか! これでも私の方が年上なんだから、中坊の餓鬼1人くらいなら抱きしめて頭ヨシヨシしてやるよ。ほら、こい!!』
あ……えみり先輩からの言葉、懐かしいな。
中学生の時、親元を離れて1人でこの国に来た時、本当は寂しかった。
当時の私は気を張っていて、ペゴニアとも壁を作ってたし、ちゃんとスターズの王女じゃなきゃって思ってたんだよね。匿名掲示板はそんな私にとっては気を遣わなくていい場所だった。
そこで出会ったえみり先輩は、そう言って私を抱きしめてくれたんだっけ。
地理に明るくなかった私のためにえみり先輩が付き添ってくれて、2人で神戸の慰霊祭に行って、帰りの終電を逃して、ホテルに泊まって……私がこの国に来て初めて泣いた日だった。
日本に来る時、本当はお母さんやお父さんに引き留めて欲しかったし、家でも外でも気が抜けなくて、本当はずっとずっと辛かったって、えみり先輩はただただ私の話を聞いて頷いてくれたんだよね。
『嗜みは私なんかよりしっかりしてるからさ、1人でなんでもできるかも知れないけど、だからと言って傷つかないわけでも辛くないわけでもないわけじゃないんだよ。私や捗るじゃ頼りないかも知れないけどさ、あんま1人で抱え込むのはやめとこう? ちょっとくらい、私みたいにいい加減でもいいじゃん』
楓先輩はちゃらんぽらんなところがあるけど、だからこそ気が抜けた。
気を抜くのが苦手な私にとって、一緒にいるだけで肩の重い荷物がスッとなくなる楓先輩は、稀有な存在だと思う。
だからこそあくあともあの距離感で普段と変わらずに話せるんだろうし、お婆ちゃんや羽生総理のような百戦錬磨の人達とかでさえも、すぐに心を開いてしまうんだと思った。
『大人になったって、寂しくて1人で泣いちゃう夜だってあります。子供なら毎日泣いたっていいじゃないですか。だって1人なんだから、泣いたって誰にも何にも言われないし、迷惑だってかけませんよ。でも、泣いた次の日は楽しくなる事をしましょう。それが1人でも人生を楽しく生きるためのコツですよ』
独り身だった姐さんのアドバイスは、私にはすごく響いた。
そういう意味では私にとって、姐さんは1番の理解者だったのかもしれない。
顔を上げれば目の前には笑顔のえみり先輩が居て、横を向けばニコニコ顔の楓先輩が居て、後ろを振り返れば微笑んでくれる姐さんが居た。それがこの国に来てからの私の日常。
あくあと結婚して、この国の人間になる事に対して、迷いがなかったと言えば嘘になる。 それでも私にぬくもりをたくさんくれたのは、この国の人たちだったから。
今だからこそ言える。本当にここに来て良かったって。
だって……私が嗜みだってわかった後でも、嗜み死ねなんていう人達、私の国には冗談で言う人だっていないもの。ふふっ。私は思わず笑みをこぼしてしまった。
「どうした?」
「あ……うん、なんでもない……っていうのは嘘で、今、幸せだなって思って」
「そっか。でも幸せさなら俺だって負けないぞ……!」
「きゃっ」
あくあはそのまま私をベッドに押し倒すと、胸のところで結んだ大きなリボンの端切れに指先を絡ませる。
「というわけで、今から幸せだって事をお互いに実感しようか」
「うん……!」
はー……やば。普段からただでさえかっこよく見えるのに、もっとかっこよく見えるし、なんなら100%好きな気持ちが200%にも500%にもなってしまう。こうなると、好きが溢れて目すら合わせられなくなっちゃう自分がいる。
それなのに……。
「好きだよカノン、愛してる」
はいはいはい、私の方が好きですが何か?
なんなら私の方が愛してると思う。
あくあの気持ちを疑うわけじゃないけど、絶対私の愛と好きの方が重いもん。
でも、あくあに重い女の子だって思われたくないから、知られないようにしなきゃ。
夜通しあくあに甘やかされた私は、いつの間にかベッドで眠りこけてしまった。
翌朝、目が覚めるとほんの少しだけ違和感を感じる。
「あれ? どうしたのカノン?」
「あ、うん……ごめん。ちょっとだけぼーっとしてた。お風呂で温もりすぎたのかも」
「それじゃあ、朝はちょっとゆっくりしてから出発しよっか」
「うん!」
朝食はルームサービスでお願いした。
うん、どれも美味しそう。お腹が空いてたのもあって私はパクパクと食べた。
「カノンと新婚旅行に来れてよかったよ」
「私も、あくあとゆっくり過ごせてすごく嬉しかった」
朝食を食べた後、軽く周囲を散歩して2人でのんびりとした時間を過ごしてから帰路に着いた。
「それじゃあ、ちょっと行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
あくあは帰宅した後、また出掛けてしまったけど、私は疲れてたのか、リビングのソファで横になったらいつの間にか寝てしまっていた。
起きたのは昼過ぎだったけど、目が覚めたと同時に自分がぼーっとしている事に気がつく。あれ? 熱っぽい?
「もしかしたら風邪をひいてしまったのかもしれませんね。侍従医の宮餅先生に連絡してきます」
私の侍従医である宮餅玉藻先生は、侍従医として働く傍ら、普段は同じマンション内のクリニックに勤務している。それに加え週に2回ほど、聖メアリー大学病院、特殊心療内科、通称ベリル専用心療内科にも勉強のために出向していると聞いた。
「私が来た!!」
「……えみり先輩は呼んでないです」
どうやら玉藻先生は、さっきまでおばあちゃんの事を診てくれていたみたいです。
それもあって、いらないえみり先輩までついてきてしまった。
「どうした? もしかしたら……ムフフな事を考えすぎて知恵熱が出たんじゃないか? うーん、我ながら名診察!」
「えみり先輩と一緒にしないでください。あと玉藻先生のお仕事の邪魔をしたらダメですよ」
軽く問診をした玉藻先生は、詳しい検査がしたいからと念のために機器のあるクリニックに行きましょうと言われた。うう……なんか大きい病気だと嫌だなぁ。だって、痛いのは嫌だもん……。
私はえみり先輩におぶわれて、下のクリニックへと向かう……って、えみり先輩、危ないって! もう! 後ちょっとで、私が頭を角でぶつけるところだったじゃないですか! めんご、めんごじゃないですよ!
どうせならやっぱりペゴニアに背負って貰えばよかった。
「それではまず、原因を特定するために幾つかの検査を受けてもらいます」
「はい!」
私は玉藻先生の指示に従い血液検査などを受ける。
そして……。
「おめでとうございます」
「え?」
何がおめでとう?
もしかしてただ熱っぽいだけで病気じゃありませんよって事かな?
私が首を傾けて頭にクエッションマークを浮かべていると、玉藻先生はもう一度にこりと微笑んで、おめでとうございますと言ってくれた。
「ご懐妊です」
「誤解任?」
何を間違って解任してしまったのと言うのだろう?
えみり先輩なら、まだおばあちゃんのメイドから解任されてませんよ?
「ふふっ、おめでたです」
「おめでた……?」
玉藻先生、もしかしてあれですか。
お前の頭の中はめでてーな! って、私の事を煽ってたりします?
「赤ちゃんですよ」
「赤ちゃんプレイ!?」
待って、もしかして昨日、あくあとちょっとだけ赤ちゃんプレイしたの見られちゃった!?
うわあああああああああああ。穴があったら入りたいよおおおおおおおおお!
「おい、嗜み! お前、バカか!! このポンが!!」
「なっ!? よ、よりにもよってえみり先輩にバカって言われたくないですぅー!! そもそもポンってなんですか!? 私の事をジュースか何かみたいに言うのはやめてください!!」
「妊娠だよ妊娠! お前、あくあ様との間に子供ができたんだよ!!」
「へ?」
えみり先輩の言葉に、私はフリーズした。
え? 私の中に、あくあの赤ちゃんが居るって事?
手が震える。
ど、どうしよう。赤ちゃんが居るって知らなかったから、昨日も……。
あああああああ、ごめん。ごめんね。もっと早くに私が気ついてたら安静にさせられたのに!!
そんな私の事をえみり先輩はギュッと抱きしめてくれた。
「つまりポンなみジュニアが出来たって事だよ!」
「だから、ポンなみジュニアって何よ!!」
「やったなお前! よく頑張った!!」
「あ、う、うん……ありがとう。うぷ」
えみり先輩の大きなものにムギュッとされて窒息しかける。
もう! 自分のが大きいってちゃんと自覚しないと、あくあでもこれをされたら窒息しちゃいますよ!
「やべぇ、すぐにばばなみ様に連絡しねぇと、あ、あと姐さん達にも言わねぇと……うわああああああ! こうしちゃいられねぇ!!」
えみり先輩はわちゃわちゃになりながら、号外でも出すような勢いでドタドタと診察室の外に走り出した。
ふふっ、自分より慌ててるえみり先輩を見たせいか、おもったよりも心の中は落ち着いてる。
「あの……その……」
私は聞き辛そうに少しだけもじもじした後、意を決して玉藻先生に質問を投げかける。
「昨日、その……ちょっと激しくちゃって……」
「は、激しく!? そ、その、どれくらい……ですか?」
「夜に3回」
「さぁんかい!?」
「……あ、後、朝にも1回」
「あわせて、よぉんかぁい!? ふざけた回数……じゃなくって、嘘ついてたりとかは……ないですよね。うん」
玉藻先生は小さな声で、そっちも規格外なのかーと呟いた。
あ、やっぱり普通じゃないんだね。だって、私が知ってるのはあくあだけだし、他の人がどうなのかなんて知らないんだもん。
「コホン……すみません。私とした事が少しだけ取り乱してしまいました。一応触診と検査、超音波を見た限りでは大丈夫だと思います。でも、これからは安静に、そういう行為も安定するまでは避けてくださいね」
「は、はい」
うわぁ、うわぁ、どうしよう。
玉藻せんせーとお話ししてるうちに、実感が湧いてきてウキウキした気持ちになる。
「うおおおおおおおお! おめでとおおおおおおおおおおお!」
えみり先輩から話を聞いたのか、すぐに楓先輩が家にやってきた。
楓先輩、来るのはいいけど、その肩に担いだ国旗はどうしたの?
え? 国営放送にあったのを引っこ抜いてきた? なんでそんなバカな事をしたんですか?
「いや、ほら……スターズって王族に子供ができた時に、すぐに国民にわかるように国旗を掲揚したりするんじゃなかったっけ? それに、あくあ君の子供なんて日本の宝だろ。だから日本を代表して、やっぱり国旗くらいは振っとかなきゃって思った時には引っこ抜いてたんだよ。大丈夫、国営放送にある国旗はその昔、皇家から寄贈されたモノホンだから」
それ、余計にまずい事になってない?
今頃、この事態を知った上司の鬼塚さんが発狂してたりとかしないよね?
先週、ニュース番組で、来週には旅行に行くんだーって鬼塚アナが楽しそうに話してたけど、呼び戻されたりとかしたらかわいそうだよ。
「あ、後ついでに、スターズの大使館からも国旗を引っこ抜いて借りてきたわ。どっちも使えるように」
「流石、楓さんね!」
おばあちゃんは大喜びだけど、本当にいいのかなぁ。後で叱られても知らないよ。
スターズの大使館の方はおばあちゃんが上手く言っておいてくれるかもしれないけど、鬼塚さんにはちゃんと謝っといた方がいいと思う。
「カノンさん! おめでとうございます!!」
「姐さん……! ありがとう」
やっとまともな人が来た!!
私はお腹に負担をかけないように、姐さんと胸から上だけでギュッと抱き合う。
「ところで楓さん。そのふざけた国旗どうしたんですか?」
「え? あ、いや……ほら、スターズってさ……」
もちろん楓先輩の言い訳は通用しなかった。
そりゃそうだよね。ほら、バレないうちに早く返して来た方がいいって。
「国旗、返してきまーす……」
「カノンさん、どうかご安静に、また今度ゆっくりと落ち着いた時に来ますね」
「2人ともありがとう」
姐さんに引きずられるようにして、楓先輩は帰って行った。
あ、うん、楓先輩は本当に何しに来たんだろうね。
「さぁさぁ、みなさん、お嬢様は熱を出してお疲れなんですよ。メアリー様も、雪白様も、嬉しいのはわかりますが、まずは安静にお嬢様をお休みさせてください」
「えぇ、そうね。それじゃあね、カノン。私は下に居るから、何かあったら呼ぶのよ」
「じゃあな。ほら、寂しくならないように、これ、置いて行ってやるから」
えみり先輩はベッドの横に手縫いの人形を置いて行ってくれた。
ふふ、これ、あくあかな。可愛い。流石は白銀家のメイド試験で、裁縫の科目で満点を取っただけの事はある。
上手にあくあをデフォルメさせてるし、こういうところは器用を通り越えて純粋に凄い。
「また、来るからよ。なんかあったら呼べよな!」
「うん……!」
えみり先輩も早くあくあとくっついてくれたらいいのになって思った。
そしたら、えみり先輩にもたくさん甘えられるのに……。
「ほらほら、お嬢様、赤ちゃんのために今はゆっくりと休みましょう」
「あ、うん。でも……連絡しなきゃ」
「それなら大丈夫です。女王陛下や、ハーミー殿下、後見人にもなってもらったキテラ様には私の方から連絡しておきますから、今は一刻も早く熱を下げて体調を回復させるためにお休みください」
「ありがとう。ペゴニア」
私は体にお布団をかけ直してくれたペゴニアの手を掴む。
「ペゴニア、ずっと、ずっと、そばに居てくれてありがとう。これからも……ずっと、一緒に居てくれる?」
「はいはい。お嬢様が嫌だって言っても私はお嬢様の側におりますよ。だって奥様は旦那様のものですが、お嬢様だけは私のお嬢様なのですから」
優しいペゴニアの微笑みを見て安心したのか、私は急に眠くなる。
あれ……なんか、みんなとても大事な事を忘れているような気がするけど、私の気のせいかな?
落ちていく意識の中、私は意識を手放す前に、とても……そう、とても大事な事を思い出した。
あっ……肝心のあくあに、誰も連絡してない……よね?
私がポンとか、みんなだって人のこと言えないじゃない! って、私は心の中で突っ込みながらベッドの上で眠りに落ちた。
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