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白銀あくあ、いいですともクリスマスSP前編

 笑っていいですとも。

 以前、俺が小雛先輩からの電話で出演した伝説のご長寿番組だ。


「こんにちは」

「「「「「こんにちは!!」」」」」


 スタジオからは司会の守田さんと観客のみんなとの軽快なやりとりが聞こえてくる。

 今回は俺が出演するドラマ、優等生な私のお兄様が月曜日に最終回を迎えるとあって、いいですとものクリスマススペシャル回に出演する事になった。


「今日は12月なのに暑いですね」

「「「「「そうですね!!」」」」」


 って、ちょっと!? 小雛先輩、ここぞとばかりに前に居る俺の体を後ろからぐいぐい押さないでくださいよ。

 明らかにまだ外にでちゃいけないタイミングじゃないですか。


「ラストサバイバーの恨み……」


 あっ、そういえば、この人はこういう人だったわ。

 サバサバしているように見えて、結構ちゃんと根に持つタイプなんだよな。


「え? その流れは前もやっただろ、早く行けって?」

「「「「「そうですね!」」」」」


 アヤナ、タスケテ……。って、目逸らしたな!

 くっそ、小雛先輩、後ろにいるアヤナも共犯者ですよ!!


「全くみんな気が早いんだよ。こっちにも準備ってのがあるの!」

「「「「「そうですね」」」」」


 あっ、油断したらちょっと押し出されて前に出てしまった。


「きゃああああああああああああああ!」

「あくあくーーーーーーん!」

「あくあ様ーーーーーーーーー!」

「うぎゃあああああああああああああ!」


 歓声でこちらに振り返った守田さんと目が合う。

 俺はバツが悪そうにペコリと頭を下げると、もう一度後ろに引っ込む。


「どうやら準備はできているようです」

「「「「「「「「「「そうですね!!」」」」」」」」」」


 後ろを振り返ると、小雛先輩がにししと歯茎を見せながら笑っていた。

 全くこの人は……本当に大人気ないんだから。


「そういうわけで今日のゲストはこの人達です。どうぞ!!」

「「「「「「「「「「きゃあああああああああああああ!」」」」」」」」」」


 俺は前回と同じように登場した流れで観客席最前列の端っこに駆け寄る。

 前はここからハイタッチしたけど、今回は少し違う。

 俺は両手に抱えた紙袋の一つを手前に居たお客さんに渡した。


「これ、中に入ってるのを一個だけ取って、後ろに回して」

「は、はい!」


 俺は袋の中から一つだけぬいぐるみを取り出すと、後ろの人が見えるように上に掲げる。


「紙袋の中に二頭身の寝そべった姿の俺の掌サイズのぬいぐるみが入ってるから、みんな良かったら持って帰って。俺からのクリスマスプレゼント」


 再び観客席から叫び声に近い歓声が鳴り響く。みんなが喜んでくれて何よりだよ。

 ちなみにこの商品を企画したのは琴乃で、元となる絵を描いたのはカノンだ。

 こんな可愛いイラストまで描けるなんて、俺の嫁、最高すぎでしょ。

 俺は右端の席から流れるように一定間隔で紙袋を手渡していく。


「ん?」


 席に戻ろうとしたら、俺に向かって掌を突き出した小雛先輩、守田さん、アヤナの3人が待ち構えていた。

 あれ? 3人ともどうしたんですか?


「大好きな小雛先輩へのクリスマスプレゼントは?」

「私も欲〜し〜い」

「さっきのぬいぐるみかわいい……」


 大好きな小雛先輩? それどこの先輩ですか? って、顔をしたらまた無言でぐいぐい押されそうになった。

 小雛先輩押すのはいいけど、脇の下を狙うのはやめてくださいって!


「ちゃんと守田さんにもありますよ。はい」


 俺は守田さんに袋を手渡す。

 守田さんは袋から取り出した先ほど同じデザインの大きなぬいぐるみを見てびっくりする。


「ふぉ〜〜〜、え? 何これ? あ、もしかして、抱き枕?」

「はい。守田さんには特別に大きなやつを持ってきました。ちゃんと小さいやつも入ってますよ」

「いいねぇ」


 うんうん、守田さんが喜んでくれて俺も嬉しいよ。

 って、小雛先輩、さっきからなんですか? ぐいぐい押したってなんも出ませんよ?

 それでも小雛先輩はぐいぐいと俺の体を押す。だから脇腹はダメですって!


「はいはいはいはい、わかってますって!」


 俺と小雛先輩のやりとりを見た観客席からクスクスという笑い声が聞こえる。

 ほら、小雛先輩のせいで笑われちゃったじゃないですか。


「はい、これ」


 奥からスタッフの人が持ってきてくれた紙袋を小雛先輩に渡す……ように見せかけて、隣のアヤナに渡した。


「あ、え……あ、ありがとう」

「俺だと思って抱きしめてやってくれ」


 観客席から悲鳴に近い歓声が聞こえてきた。


「な、な、な、何を……」


 あ、頭に莉奈ってつけるの忘れてた。

 俺は改めて言い直す。


「莉奈、俺だと思って抱きしめてやってくれ」

「え、あ、そ、そういう事ね。うん……コホン! う、うん、わかった。一也先輩だと思って、毎晩ギュッてするね」


 観客席の悲鳴が歓声に変わる。

 俺とアヤナはそれに応えるように観客席に手を振った。


「お兄様……」


 ヒィッ!

 底冷えするような声に、俺もアヤナも体をビクンと震わせた。

 守田さん? 俺の体を盾にしないでくださいよ。


「最近、莉奈さんと懇意にされているようですが、どうかされましたか?」


 ひえええ! 小雛先輩の本気闇堕ち沙雪に肝が冷える。

 そのなんでもないように髪を耳にかける仕草、ハイライトの消えた目を閉じて笑顔を見せるところ……もう撮影は3ヶ月近くも前に終わってるのに相変わらず完璧です。

 小雛先輩は演技を解くと舌をベーっと出した。


「ふん、私に喧嘩を売った罰よ。ほら、さっさと出す」

「はいはい、わかりましたよ」


 俺はスタッフさんから紙袋を受け取ると、仕方ないなという素振りを見せつつ小雛先輩に手渡した。

 小雛先輩は俺から紙袋をぶんどるように奪うと、中を開いて大きいサイズの寝そべりあくあ君の抱き枕を取り出す。


「このデザインなかなかいいじゃない!」

「そうでしょそうでしょ」

「あんたの間抜け面がよく描けてるわ。デザインしたやつ、あんたの事、好きすぎでしょ」


 カノンが俺の事を好きなのはその通りだけど、間抜け面はないでしょ!


「え? みんな可愛いよねこれ?」


 俺は小雛先輩が手に持った寝そべりあくあ君を顔を並べるようにして観客席に見せる。


「可愛い〜!」

「きゃー!」

「ぎゅっとさせてー!」

「そういうあくあ君も好き!」


 観客席の歓声を聞いた小雛先輩が、あんぐりと口を開く。


「はぁ!? これが可愛いとか正気? あんた達、今すぐにでも眼科に行ったほうがいいわよ!!」


 はい、どうどう、俺とアヤナが慌てて前に出ようとした小雛先輩の体を押さえる。

 小雛先輩、流石に観客席の人達に喧嘩売っちゃダメですよ。


「あのさ、2人って結婚してたんだっけ?」

「してないわよ!」

「するわけないじゃないですか!」


 守田さんの言葉に俺と小雛先輩が瞬時に言い返す。

 小雛先輩と結婚したら、この人の事を24時間365日面倒みないといけないんですよ?

 俺、前世でそんな悪い事しましたか?


「みなさん今の反応見ました? 私もね、長い事、芸能界にいさせてもらってますが、こんなにも息がぴったりの2人は見たことがないって言ってんの。それなのに、私が2人に付き合ってるのかって聞いたら、そんな事ないって頭ごなしにいうもんですから。でも、こんなのを見せられて信じろって言ってもねー」


 確かに言葉は被ったかもしれないけど、事実なのだから仕方ない。

 そりゃまぁ、俺も健全な男子高校生だし、小雛先輩も女の子だし、体型は小柄で童顔だからパッと見はね、その惑わされたりはしないけど、うん……脱いだ時はちゃんとあるし顔も黙ってれば綺麗だしな。

 ま、まぁ、それこそ、ヌいた事があるかないかだけの問題で言えば、まぁ、あるではあるし、そのアラビア半島連邦では気持ちよかったけど、それとこれとは別ですから。うんうん、別、別。

 俺はスッと守田さんから視線を逸らす。


「それこそ、みなさんは知らないでしょうけど、この人達、楽屋でもずっとこうだからね。舞台袖でも永遠にペラっペラペラっペラ話し続けてんの。まんまあの小雛ゆかりの部屋なんだよね。あれさぁ、スタッフは裏もちゃんとカメラ回しておいた方がいいよ。勿体無い。ちゃんと放送した方がいいよ」


 確かに、俺、結構喋るの好きだけど、小雛先輩や楓とだけは裏でも永遠に喋り続けてる気がする。

 普通はどんなに仲が良くても間というか、お互いに会話の休憩時間があったりするけど、小雛先輩と楓にだけはそれがない。だからなのか、小雛先輩とのトーク番組や楓がインタビューしてくれる時は、会話に詰まった記憶がないんだよね。


「ちなみにここまでもう10分もかかってるからね。まだ登場しかしてないのに。普通、話す事のない番宣ゲストならもう終わって帰ってるよ」


 ふー……俺と小雛先輩はわかりやすいくらい視線を背けると、口笛を吹くように口先を尖らせる。


「そしてその10分間、私も放置されてます……」


 あれ? この声、聞き覚えがあるぞ。

 声の方に振り向くと紙袋を持ってきたスタッフさん、じゃなくって楓がジトっとした目で立っていた。

 ちょ、楓、放送局間違ってるよ!!


「あ……」


 守田さんが気まずそうな表情を見せる。


「えっと、今日のアナウンサーは、特別に国営放送の森川楓さんです」

「どうも。国営放送の森川楓です。観客席の皆さんに森川、お前、出る番組間違ってるぞって心の中で突っ込まれてた森川楓が、今日のアナウンサーを特別に担当させていただく事になりました」


 あー、なるほど、それでか……って、まずい。元気だけが取り柄の楓が、痛み止めに入れていた鎮静剤のせいで、番組を取られた過去をフラッシュバックして闇堕ちパターンに入ってる。


「まぁ、メインはゆうおにの3人なんで、私はあくまでもオマケなんですけどね……。さっき、あくあ君にも普通に紙袋持ってきたスタッフの人だって思われてたし」


 くっ、バレてるだと!?

 いつもはアバウトでそんな事に気がつきもしないのに今日はどうしたというんだろう。

 もしかしたら鎮静剤を打った事で、いつもより頭の中が冷静になっているおかげかもしれないな。


「小雛さん……私から番組を盗るのはいいけど、間違っても守田さんからいいですともを盗っちゃダメですよ?」

「わ、わかってるって。私も守田さんにそんな酷い事しないわよ!」

「ふーーーん、じゃあ私のはいいんだ」

「うっ……」


 うおおおおおおおおお!

 あ、あの小雛先輩が押されてるだと!?

 俺とアヤナはガッツポーズで目をキラキラと輝かせる。

 イケイケ楓、フレフレ楓、そのまま小雛先輩にギャフンと言わせてくれ!!


「もう、わかってるって、次回は3人一緒に出るんでしょ! ごめんって、だから機嫌、直しなさいよね!」


 ごめん?

 あの小雛先輩が謝った……?

 俺がびっくりした顔でフリーズしてると、顔を赤くした小雛先輩に脇の下をぐいぐいと押される。

 だから、ピンポイントで弱いところを攻撃するのはダメですって。


「えー、みなさん、ちなみこれ、他局の話です」

「「「「あっ……」」」」


 守田さんの言葉に、俺とアヤナ、小雛先輩と楓が目を合わせる。


「まぁ、最初に話を振ったのは私なんですけどね。うぇっへっへ」


 守田さんは歯茎を見せて笑う。

 ほっ……後でプロデューサーさんに怒られるかもしれないけど、守田さんは怒るどころか面白がっていた。


「はい。そういうわけで、月曜日に最終回を迎えるゆうおにから、佐田沙雪役の小雛ゆかりさん、笠道莉奈役の月街アヤナさん、佐田一也役の白銀あくあさんです。拍手!」


 観客席からの拍手に応えるように俺たちは3人で手を振る。

 ちなみにアヤナと小雛先輩は、この前の雑誌でも書かれてたけど、意外とファンサしてくれる女優、タレント、アーティスト部門で1位と2位だった。

 番組では素人にも容赦なく食ってかかる小雛先輩も、普段は普通にファンの人と一緒に記念撮影したり握手したりサインしたり結構ちゃんとやってるんだよね。


「あー、やっと自己紹介できた。ちなみにここまで15分です。番組の4分の1がもう終わってますからね」


 守田さんの言葉に観客席のみんながドッと笑う。


「そういうわけで、さっさと行きましょう。お花、来てます。あっ、司圭先生から来てますよ」

「司先生、ありがとうございます!」

「あのさ……司先生って、どんな人?」

「いやあ、それが俺達3人ともまだ会った事がないんですよねー」


 隣に座った小雛先輩とアヤナもコクコクと頷く。

 それはいいんだけど、2人とも俺のぬいぐるみを抱きかかえたままになってるぞ。

 特に小雛先輩、若干、俺のぬいぐるみの首を絞めてるように見えるのはきっと気のせいじゃないですよね?

 それとアヤナに抱き抱えられたあくあ君人形よ。お前、俺をモチーフにしたぬいぐるみなのに、アヤナにむぎゅってされて俺よりいいご身分じゃないか。羨ましいぜ。


「他にもね。前回と同じ面々からお花が届いていますが、各局テレビ局の社長が勢揃いしてるのなんて、わたしゃ初めて見ましたよ。後、それにね。総理とメアリー様からも来てますよ」

「はは、ありがとうございます」


 俺はカメラに向かってペコリと頭を下げる。


「ちなみに入り切らなかった花が通路に溢れかえってます。何せ3人分ですからね」


 おー、すごい。

 たくさんの花を見て、身が引き締まる思いだ。

 これだけ多くの人が今までの自分の仕事に関わってくれて、それが責任となって自分の肩にのしかかってる。

 だからこそ、プロとしてちゃんとしないとなと思った。


「そしてなんと、越プロの社長からメッセージが来てます」


 越プロといえば小雛先輩が所属する事務所だ。

 そういえば前回、越プロの社長から小雛先輩に電話を繋いだんだっけ。


「えー、小雛ゆかりさんへ。あまり守田さんにご迷惑をおかけしないようにお願いします。そして、あくあ君、アヤナちゃん、うちの小雛ゆかりをいつも面倒見てくれてありがとう。この前、アヤナちゃんから公園で小雛ゆかりさんが野良猫と本気で喧嘩していたと連絡を受けた時は本当に助かりました」


 小雛先輩……何やってんですか。

 ついに猫くらいしか相手をしてくれなくなったのかと、かわいそうなものを見るような目で小雛先輩を見つめる。

 すると小雛先輩はまた俺の脇腹をぐりぐりしてきた。


「野良猫と喧嘩してたの、マジ?」

「ちっ、違うんだってば、それは、その……私が落としたお弁当の塩サバの切り身を盗んだから!」


 くっ……公園、お弁当、ボッチ飯の予感に、観客席にいるみんなも悲痛な表情を……見せるわけもなく、みんなが歯茎を出してニッコリとしていた。


「アヤナちゃんはさ、それを最初に見てどう思った?」

「……気がつかなかった振りをして、そのまま通り過ぎようか一瞬だけ迷いました」

「うっ……」


 わかるわかるよアヤナ。それでも助けてあげるところがアヤナの優しさなんだろうな。

 それこそ俺が同じ状況に遭遇したら間違いなく他人の振りをするね。確実に。

 観客席のみんなも同じ気持ちだったのか声を出して笑う。


「あくあ君が同じ状況に遭遇したらどうする?」

「猫に加勢します」

「ちょっとぉ!?」


 俺が満面の笑みでそう言うと、守田さんがニヤニヤした顔をした。


「そういえばアヤナちゃんって猫、飼ってなかったっけ?」

「あっ、はい。飼ってたというか、番組の企画で少しの間、怪我してた保護猫を預かった事があります」

「なるほど、だからアヤナは小雛先輩の面倒見がいいのか……」

「私はアヤナちゃんのペットか!」


 ナイスツッコミです。小雛先輩。


「あくあ君は、ペット飼ったりしてないの?」

「飼ってないですね」


 ペットといえば、この前、いつの日かカノンに身に付けてもらおうと、こっそりとネットで購入した猫耳エプロングッズがペゴえもんにバレてしまった。

 まぁ、そのおかげでシャツがパツパツで太ももがムチムチの猫耳ペゴニアさんが見れたから、それはそれで……いやいや、当初の目的を忘れちゃダメだぞあくあ。俺が見たいのはにゃーにゃーカノンちゃんだって事を忘れちゃだめだ。


「ちなみにこの2人が猫だとして、飼うならどっち?」

「そりゃもちろんアヤナでしょ。猫耳似合いそうだし、可愛いし、結構2人になると甘えてくれそうだし、小雛先輩は黙ってれば可愛いだろうし、猫耳も似合いそうだけど、引っ掻きそうだから……って、守田さん!? 何言わせてるんですか!?」

「いやいやいや、あくあ君、そこまで言えとは私も言ってないからね!?」


 振り返ると隣にいた2人が視線を逸らして顔を赤くしていた。

 本当ごめん。2人もどう反応していいのかわからないよな。気を遣わせてしまったと反省する。


「ていうか小雛先輩、さっきから俺の寝そべりあくあ君の抱き枕が凄い顔してるんですけど!?」


 そんなむぎゅっと押さえつけなくても……くっ、こうやってみると、この人、童顔ロリ体型に見えてちゃんとあるんだよな。本当、黙ってさえいれば……。


「だって、ちょうどいいんだもん」


 小雛先輩は寝そべりあくあ君のほっぺたをむぎゅっとする。


「いいな〜!」

「羨ましい!!」

「それ欲しい〜!!」


 あっ、そうだ思い出した。ついでにこれも言っておかないとな。


「これも、さっきみんなに配ったものも公式ショップで明日から販売します。公式ショップがまだオープンしてないところは提携ショップで販売するからみんなサイトかSNSでチェックしてねー。ちなみに俺だけじゃなくて、とあとか慎太郎とか、天我先輩のもあるから、そっちもよろしく!」


 ちゃんと告知できるものは告知しておかないとね。

 それだけ多くの人が関わって準備してくれているものだから、その人達の労力に報いる為にもやる事はちゃんとやらなきゃいけないのだ。


「そういえばあくあ君はこの後もコンサートだっけ? 朝も国営放送に出てたし、夕方もなんかするんでしょ?」

「はい。詳しい事はまだいえないんですけどね」

「体力的にキツくないの?」

「これでも一応、鍛えてますから」


 俺は握り拳を作る。


「試しに聞くけど、ちょっと触ってもいい?」

「いいですよ」


 守田さんは俺の上腕二頭筋にそっと触れる。

 俺はそれに合わせてグッと力を込めた。


「ふぉ〜、これはすごい。えー、こんな事になってるんだ」

「いいなぁ〜!」

「私も触りたい!!」

「羨ましい!!」

「うぇっへっへ、すみませんねぇ」


 俺は観客席のざわめきに応えるように席から降りて前に出る。


「触りたい人!!」

「「「「「はーい!」」」」」


 おお、みんな手を上げてくれた。嬉しいな。

 誰にしようかと悩んでいたら、小雛先輩が前に出てきた。


「私があんたのために選んであげるわ。そうね……私のファンの人! はい、そこの1番早かった赤ニットのお姉さん!」


 ちょっと、小雛ゆかりさん? 自分のファンの方を贔屓にするの、やめてもらっていいですか?

 って、言おうと思ったけど、赤ニットのお姉さんが立ち上がった瞬間にG以上だと判明して心の中でガッツポーズする。流石だよ小雛先輩、俺へのクリスマスプレゼント、ありがとうございます!!

 赤ニットのお姉さんは驚きを隠せない表情で前に出る。


「どこ触りたい?」

「えっ……?」


 お姉さんは口元を両手で覆い隠して目を見開いたまま周りをキョロキョロする。


「うぎゃあああああああああ!」

「いいなああああああああああ!」

「あっ、あっ、あっ!」

「マジかマジかマジか」

「くっ、公式が1番えっ……」

「この無防備さ、推したい!」

「あくあ君、どうかそのままのあくあ君で居て!」


 観客席がざわめく中、赤ニットのお姉さんは上目遣いで申し訳なさそうに俺に話しかける。


「えっと、あの……お腹とか、あっ、ダメだったらダメで……」

「いいよ」

「えっ?」

「いいよ。触ってみて」

「は、はい……」


 俺はここぞとばかりにお腹にグッと力を込める。

 男ならわかるだろうけど、誰しも綺麗な女の人の前ではカッコをつけたいんだ。


「あっ、あっ、あっ……すごく、硬いです」

「本当?」

「はい。カチカチ……です。しゅごい……」


 慌てた表情の守田さんが前に出る。


「ちょっと2人とも、まだお昼だよ!?」

「え?」

「まずいって、それ以上は! この番組、終わっちゃうよ」


 守田さん、どうかしましたか?

 確かにお姉さんからほんのちょっぴりエロい感じが出てた気がするけど、きっと気のせいですよ。


「ほー、あんたなかなかやるわね。ご長寿番組のいいですともを終わらせて、私のために番組の枠を空けようとしてるなんてなかなか殊勝じゃない!」


 小雛先輩!? 何とんでもない事言ってるんですか?


「ちょっと、そこもグルなの!? せっかく頑張ってみんなでここまで続けたのに、いいですとも、今日で最終回になっちゃうよ」


 守田さんの言葉に観客席のみんなも苦笑する。


「ふーん、そういうやり方なんだ。ふーーーーーん」


 あっかーん、端っこでまた楓が闇堕ちしそうになってる。

 よっぽど番組を取られた事がトラウマになっているんだろう。

 厳密にはまだ取られてないはずなんだけど、これも全部、小雛先輩が調子に乗って楓を弄りすぎたせいですよ!


「じゃあ、間をとって、次回から俺とアヤナでお昼の情報番組やります」

「え? 私?」


 アヤナ、面倒臭そうと思って、我関せずといった感じで寝そべりあくあ君と戯れてたけど、アヤナもちゃんと当事者だからな。巻き込ませてもらうぞ。


「みたいー!」

「あくあ君のワイドショーみたい!!」

「アヤナちゃんかわいー!」

「あくあ君とアヤナちゃんの番組もっとみたい!」


 よしよし、いい流れに持っていったぞ。


「アヤナ、例のアレ持ってきて」

「あ、うん」


 アヤナはスタッフさんから筒状に丸めた紙を受け取ると俺の方へと持ってきた。


「守田さん」

「何、何!? え? 今日で本当に最終回とか……? え? 嘘でしょ? 本当に来週からあくあ君とアヤナちゃんのお昼のワイドショーが始まっちゃいます?」


 守田さんは何が起こってるのかわからないのか、珍しく戸惑った表情を見せる。こんなに慌てる守田さんはなかなか貴重だ。

 俺は用意してくれたマイクスタンドの前に立つと、筒状になった紙を広げる。


 ここから先は、俺と番組のスタッフさんが共犯した守田さんへのサプライズプレゼントだ。

GW後に入院して手術する事になりました。

入院前の5月6日土曜か7日の日曜まで更新して、その週の13日の土曜か14日の日曜にまた復活できればと考えています。つまり5月8日月曜あたりから12日金曜まで更新をお休みする予定です。

早かったら11日木曜か12日金曜で復活できるかもしれません。



Twitterアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。


https://mobile.twitter.com/yuuritohoney


fantia、fanboxにて、本作品の短編を投稿しております。


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