白銀あくあ、まさかの共演者。
【ん?】
【これ、なに?】
【あくあ様、今日もかっこいい!!】
【白銀あくあ-百福食品 presents あくあキッチン】
【あくあ君の時はシロくんのチャンネルじゃなくて、ベリル公式チャンネルからの配信なんだね】
【これ、11月にやるって言ってなかったっけ?】
【11月は急遽サッカーの大会が予定に入って、配信が延期になってた】
【あくたんのエプロン姿あざっす!】
【これ、ゲストありだよね? 初回ゲストは誰だろ】
【小雛ゆかり希望、小雛ゆかり希望、小雛ゆかり希望】
【おい! 変なやつを召喚しようとするな!!】
俺は配信画面を見て、ある程度人が集まってくるのを待ってから番組をスタートする。
「みなさん。おはようございます。こんにちは。こんばんは。あくあキッチンの時間がやってきました。この番組は百福食品さんのご提供により送らせていただきます」
今回の配信には百福食品というカップ麺で有名な大企業がスポンサーでついている。
少し挨拶が硬すぎたかなと思ったけど、百福食品さんとは大きな契約を結んでるので、それくらい慎重になった方がいいだろう。
よーし、今日は超問題児の小雛先輩もいないし、放送事故を起こさないように頑張るぞ! と、俺は気合を入れた。
【あくあ君、ちょっと緊張してるのかな? いつもより硬い雰囲気でてる】
【ラーメン捗る:え? 硬くなったあくあ様だって!?(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
【こーれ、また何かやらかす雰囲気でてます】
【既に捗るとかいう奴がやらかして、姐さんにコメント削除されててウケるw】
【捗るってよく現実社会で捕まってないなって思う】
なんかいきなりコメント削除されてる人いるけど大丈夫かなあ。
今回はスポンサーさんがついてるし、本当に永久BANされちゃうよ?
「というわけで初回ゲストの方を紹介したいと思います。どうぞ!」
「どーも! どーも!」
初回のゲストは楓だ。なんか少し嬉しそうなのは気のせいだろうか。
【森川wwwww】
【こーれ、嫌な予感がします】
【ラーメン捗る:引っ込め! ブーブー!!】
【相変わらずホゲった顔してるな】
【あくあ様は共演する相手を考えた方がいいよ】
【また小雛ゆかりに乗っ取られる前触れですか!?】
【あくあキッチン→ゆかりキッチンのフラグが立ってしまった……】
【ゆかりご飯:呼んだ?】
なんかやたらとコメント欄が楓に厳しい気がするのは気のせいだろうか。
あと頼むから先輩は出てこないでください。ミリも呼んでません。
ていうかあの人、ほんと暇なのか、この前も馬鹿みたいに電話かかってきてたし……。
「今回のゲストは国営放送の森川楓アナウンサーです!」
「つい先日、番組を乗っ取られそうになった国営放送の森川楓です!」
何故、楓がゲストかと言うと、色々と理由がある。
先月、国営放送で放送された毎日ごはんに俺が出演した事に対する見返りだったり、スポンサー側の意向で、初回は手堅く行きたかったという理由からベリルと契約している人に絞ったという事や、つい先日の年末歌合戦の司会者決定の話が絡んでたりとか、そんな感じだ。
【早速、自分の持ちネタにしてるじゃねーか!】
【こいつほんまwww】
【森川のこういう前向きなところは見習いたい】
【只ではこけない女、それが森川】
【某野球ゲームなら森川は、打たれ強さ◎、根性○】
【某野球ゲームに例えるなら、森川は乱調とノミの心臓だろw】
【ラーメン捗る:こいつ、鎖骨骨折してるのに料理できるのか?】
【あ】
【あっ】
【あ……】
コメント欄を見た俺は、改めてカメラの方へと視線を戻す。
「ご存知の通り、森川さんは国営放送の夕方のニュース番組の最中に、調子に乗って世界大会で金メダルを獲ったレスリングの選手とローション相撲をした挙句、何故か途中からお互いに真剣勝負になり、寝業に持ち込んで勝利を収めたのですが、その代償として鎖骨を骨折してしまいました」
何を言ってるのか意味不明だが、これはすべて真実だ。
何故、夕方のニュースの最中にローション相撲をする事になったのか。
未だに国営放送の番組審査会ではその原因の解明に苦しんでいる。
鬼塚アナからも、森川アナは物事をあらぬ方向へと持っていく癖があるから十分に気をつけてと言われた。
【本当に何を言ってるのかわからねぇわw】
【アレは仕方ない。選手が森川さんと戦ってみたいなんて言うから】
【あいつもうアナウンサーなんて辞めて、スポーツ選手になった方がいいんじゃないかな】
【見た感じ華奢で筋肉なんてほとんどないのに、この女の体は一体どうなってるんだ……】
【森川って、ぱっと見スレンダーで華奢だし、普通に立ってたら綺麗なアナウンサーのお姉さんなのに、とにかく腕力が強い。それに加えて瞬発力がすごくて、猿みたいに小回りが利くんだよ】
確かに……ぶっちゃけ、トレーニングしてる琴乃の方がまだ筋肉ついてるし、腕周りとかもがっしりしてると思う。
それこそ楓ってカノンと同じくらい細いし、本当にこの細い体のどこにそんなパワーがあるのか完全に謎だ。
「そういうわけで今日は特別に、森川アナは調理には加わらずに出来た料理を食べて感想を言ってもらおうと思います」
楓は椅子に座るとナプキンをつけて、両手にナイフとフォークを持って子供の様に喜んだ。
あの……今日の料理は和食なんだけど……。さっき、打ち合わせでスタッフの人が5回くらい言ってたよね?
【はあ!? あくあ様の料理を食べるだけの役割だって!?】
【ラーメン捗る:はい! はい! はい! その仕事、私がやりたいです!!】
【ふざけんな! 国営放送は受信料返せ!!】
【こんなうらやまけしからん事が許されていいのか!】
【放送倫理委員会で検討すべき事案だと上奏します!】
【くっそ、今から腹が減ってきた】
【完全に新婚じゃねえか!!】
【国営放送のお客さま相談室はコチラです→XXXX-XXX-XXXX】
俺はチラリと横を見て、目で合図を送る。
「そういうわけで、今日は特別に森川アナの代わりに料理を手伝ってくれる助っ人を呼びました。どうぞ」
少し緊張した面持ちで現れた彼女はカメラにペコリと頭を下げる。
「はい、そういうわけで、みなさんご存知だと思いますが俺の嫁です」
「今日は森川アナの代わりに、調理の補助を担当する事になった白銀カノンです。よろしくお願いします」
どうしたんだろう? こういうテレビに出たりするのは慣れてると思うけど、久しぶりだから緊張しているのかな?
カノンの夫としてちゃんとフォローしないとなと気合いが入る。
【嫁きたー!】
【ラーメン捗る:嗜み○ね!!(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
【まさかの嫁だと!?】
【嘘だろ!?】
【そういえばこのキッチンて、あのCMのやつじゃ……】
【お昼のワイドショーで流れたときに、全主婦が阿鼻叫喚したあのCMのキッチンか】
【こーれ、嫌な予感がします】
今回、カノンが呼ばれたのは、これまた他のスポンサーとの兼ね合いだ。
夫婦で出演したPanasonyから発売されているキッチンのCMが今日から放送開始という事もあって、今回使用しているキッチンもそのキッチンと同じ物を使用している。
「それでは早速、時間のこともありますので調理を開始していきたいと思います」
今はちょうど夕方の4時なので、5時までに終わらせないといけない。
「今日のテーマは和食という事なので、まずは早速お米を炊きたいと思います」
俺はささっとお米を研ぐと水と一緒に炊飯器の釜の中に入れた。
米と水の分量は繊細で、ここがカチッとはまるかどうかでお米の美味しさが違ってくる。
ただ、今日は早炊きなのと、毎日作る事を考えたら基本的には大体でいい。
「今日は時間がないので早炊きモードを使っていきましょう」
それが終わったら次にお味噌汁で使う具材を包丁でカットする。
「それでは、ここでカノンに手伝ってもらおうかな」
俺は包丁を置くと、少し横に捌けてカノンに調理場所を渡した。
「頑張って、ほら、皮はピーラー使えば早いから」
「う、うん」
カノンは少しだけ緊張した面持ちで、丁寧に金時人参の皮を剥いていく。
あー、必死に料理するカノンはかわいいな。ここが家で誰も居なかったら襲ってるかもしれん。
「え、あ……ちょっと待って、この空気なんですか?」
ん? 楓が慌ててるみたいだけど、どうかした?
【一 体 何 が 始 ま っ て る ん で す か ?】
【森川わかるwwwww】
【こーれ、森川、地獄です】
【夫婦でいちゃついてるだと!?】
【ふぁ〜、刺激的すぎて口が開きっぱなしですわ】
【これを見た若い女の子達の夫婦観は確実に歪みます】
【カノンさんの事を優しく見守ってるあくあ様の視線がすごくいいです!】
【ホゲってる奴が半分、残りの半分はぐぬぬってる】
【ラーメン捗る:やっぱり嗜みは死ね!!(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
コメント欄が速すぎてよく見えない。
みんな、カノンの可愛さにやられちゃったのかな?
「ふぅー、先生、こんなものでどうですか?」
フリフリのエプロンを着たカノンは、上目遣いで俺の事を見上げながら自分で剥いた金時人参を俺に見せる。
あー……なんでここ家じゃないんだろ。家ならこのままベッドに直行して、朝までフルコースですよ。
「うん。上手に剥けてるよ。よく頑張ったね」
「えへへ」
俺はカノンの頭を優しく撫でる。くっ、スポンサーさんには申し訳ないけど料理じゃなくてカノンを食べたい……!
「ほげー」
ん? 誰か今、なんか言った?
【←さっきまでホゲ川でゲラゲラしてた奴、今、ホゲ川と同じ顔してる】
【こ こ か ら が 地 獄 だ !】
【ベリル恒例のデスゲームが始まった】
【ホゲ川頑張れ!!】
【生きろホゲ川】
【ラーメン捗る:しっかりしろホゲ川!!】
【目の前で後数十分これを見せつけられる森川wwwww】
【ホゲ川、さっきまで世界で1番羨ましがられていたのに、今や世界で1番同情されているwww】
カノンが剥いてくれた金時人参を俺は手慣れた手つきでカットする。
ついでに大根を桂剥きにしてっと……。
【だめ、料理が上手すぎて、こんなの即堕ちする】
【あくあ様、本当にうまい】
【あのさ、桂剥きにしてる時、シャツの袖まくった手元がアップになるのやばくない?】
【やばいよ。普通に大根の皮剥いてるだけなのに、手首がすごくセクシーでドキドキする】
【顔出さなくても、手だけで良い男ってわかるのはあくあ様だけ】
【このカメラマン、メスの事をよく知ってる】
【羽生:かーっ、こんな頼りになる旦那さんが欲しかとばい!!】
【総理wwwww】
【ラーメン捗る:こーれ、嫁なみさんは隣で(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
全ての具材の下準備を終えたので、俺達は次の工程に入る。
「うん、それじゃあ大根もあるので、ぶり大根にしましょうか」
臭みを取るためにしっかりと下処理をしてから、鍋の中に水と料理酒と一緒に放り込んで火にかける。
大体ここから20分くらいかかるので、この間に、出汁巻き玉子でも作ろうかな。
そのためにまずは豚汁を作る時にも使う予定にしてある出汁を準備しておかないといけない。
俺は昆布、鰹節その他諸々で出汁を取る。この出汁は黛家秘伝のレシピだ。
後で貴代子さんに、俺にできる事ならなんでも言ってくださいねってお礼を言っておこう。
「それでは、今からカノンと一緒に卵焼きを作ろうと思います。頑張って、カノン!」
「うん!」
最初は順調かと思いきや、巻くのが少し早すぎて、途中で生地がクシャッとなる。
「ごめんね」
「大丈夫、後は俺に任せて」
あらよっと! 俺はカノンを悲しませないために、本気を出して形をうまく整える。
「ほげ〜」
楓? 悪いけど、今はすごく集中してるから、後にしてもらえるかな?
あ、おトイレに行きたくなったら、そこの出口を出て右ね。
【ホゲ川わかるぞ】
【ホゲ川、君は1人じゃない】
【私達も同じ顔をしてるから安心してほしい】
【くっそ、あざといけど卵焼きくしゃっとさせた時のカノン様の申し訳なさそうなお顔が普通に可愛かった……】
【わかった! この配信はカノン様を観察して、どうやったらあくあ様に愛されるかを学ぶための番組なんだ!!】
【それだ!!】
【天才がいるな】
【なるほど、勉強になります(嫁の素材が良すぎて勉強にならない)】
【本気で愛されてるのがわかる】
【隣で見守ってる時のあくあ君の目線が優しすぎる】
【あくあ様、ガチで料理うまいな】
【あくあ君、お姉さんが養ってあげるから、お家に来ない?】
【蝶々夫人:さっきのお出汁の取り方、とてもいいと思います】
俺は完成させた卵焼きをお皿の上に乗せる。
その隣にシソの葉を置いて、その上に大根おろしを乗せてっと。うん、これで彩りも完璧だ。
「すごい!!」
隣に居たカノンが顔を綻ばして手を小さくぱちぱちと叩く。
だからさ、なんでそう君は、全ての行動がいちいち全部かわいいのかな?
「それじゃあぶり大根の味付けをしましょうか」
俺は砂糖を入れると、隣の鍋の準備を始める。
こちらではほうれん草と油揚げの煮浸しを作るつもりだ。
一旦、塩を加えた沸騰したお湯でほうれん草を煮た後に、水で洗い流してカットすると油揚げと一緒にもう一度沸騰したお湯で煮る。
その間にぶり大根に醤油を加えてさらに煮詰めていく。
【くっそ、手際が良すぎて何も言えない】
【農林水産省は食育大使にあー様を指名したほうがいいと思うよ。絶対、料理も作った事のない顔だけの女性タレントや女優より効果的だと思うわ】
【ラーメン捗る:ハラー・ヘッターと捗るの晩御飯……お婆ちゃんが急に和食が食いたいと騒ぎ出した】
【料理が上手なあくあパパの娘になりたい】
【あかん、こんなの見せられたらますます理想が高くなってしまう】
【※これは極めて特殊な例です。決して参考にしてはいけません!!】
【なんかさっきテロップが出たぞwww】
【わかるwwwww】
【こーれ、スポンサーもホゲってます】
【カノン様と一緒にテレビに出るのは危険だ。全女子の世界が止まる】
【みろよ。ホゲ川なんてさっきから1ミリも動いてないぞw】
【定期的にホゲ川にカメラを向けるなw! これ、スタッフは絶対にホゲ川で遊んでるだろw】
全てが順調だ。出汁巻き玉子焼きに加えて、ほうれん草と油揚げの煮浸しが完成する。
俺はぶり大根を煮詰めているIHの火を切ると、最後のメニューとなる豚汁の準備を開始した。
「まずは野菜を炒めます」
その後にだし汁を加えて沸騰させる。
「それじゃあ、カノン、アクを取ってくれる?」
「うん」
額に汗を浮かべながらアクをとるカノンを横からジッと見つめる。
カノンの可愛い姿を近くでじっくりと見れて、その上でお金も貰えるなんて最高の仕事かよ……。
百福食品さん、ありがとうございます!!
俺はカメラが自分の方に寄っている事に気がついて、近くにあったカップ麺を手に取ってウィンクする。
【はい、これでこのカップ麺は明日品切れです】
【これは私達にはカップ麺でも食ってろという合図では?】
【ドSあくあ様きちゃ!?】
【たまんねぇな】
【何かに目覚めそうになるからやめて】
【大人しくカップ麺啜ります】
【ゆかりご飯:あんたに言われなくても、毎日1人でカップ麺を啜ってますが何か?】
【誰とは言わないけど草w】
【百福食品さん、ここにも1人、CMに起用できそうな人材がいますよwww】
カノンがアクを丁寧に取ってくれた後は、味噌を加えてコトコトと煮込む。
その間にご飯が炊けたので、俺とカノンはお豆腐やお漬物などを用意する。
「それじゃあ最後にもう一度だけ味噌を溶かしましょう」
これで完成と……俺はお椀に持った豚汁に最後のアクセントとして、青ネギを添えて一味唐辛子をパラりと振りかける。ぶり大根も千切りした柚子を添えて、豆腐の上にも飾りで枝豆を乗せようかな。
【もう完全にプロやんけ!!】
【あくあ様のお嫁さんになりたひ】
【チジョーになりたいとか、ベリルに就職したいとかみんな言うけど、あくあ様のお嫁さんという最高の正解を一発回答した嫁の顔がこれです】
【嗜み死ね!(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
【嗜み死ね!(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
【嗜み死ね!(この発言には不適切な表現が見受けられたために、管理人TOOOKAの判断によって削除しました)】
【ラーメン捗る:これは仕方ない】
【ホゲ川、息してるか?】
【こーれ、ホゲ川死んでます】
【ついにホゲ川のホゲった声も聞こえなくなったwww】
【ホゲ川、お前は1人じゃない!!】
【そりゃホゲ川もホゲりますわ】
【1時間近く私達が見させられていたもの→嫁とのイチャイチャ】
【全てが衝撃的だった……】
【石油女王:この食事を食べるには油田をいくつスパチャすればいいですか?】
【次元の違う事を言ってる奴がいるぞw】
【またヤベェのがきたw】
なんか急にコメントの削除が増えたけど大丈夫かなあ?
最後はご飯を盛って、完成と!
「はい、出来ました!」
「やったー!」
あー、もう、カノンは可愛いなあ。はい、よしよし。
俺はカノンの頭を優しく撫でる。
「ほげ〜」
俺とカノンは楓の前に料理を並べる。
楓? いつまでフォークとナイフを手に持ってるんだい?
【ゲストとは】
【代役に全部喰われた女の末路がこれです】
【ホゲ川wwwww】
【生きろ!】
【小雛ゆかりといい、今回といい、ほんまお前www】
【ホゲ川は、こういうところがなんか憎めないんだよなぁw】
【ずっと口開きっぱなしじゃねぇかw】
【軽くホラーwww】
【わかる。わかるよ。森川、私達は君の味方だwww】
【森川ソムリエ:この表情……実はまだ余裕がありますよね?】
【ソムリエマジかよwww】
楓が何故かフリーズしているので、俺は番組を進行させるために、自分達用に用意した食事を楓の食事の反対側に並べた。
俺はまずぶり大根の味を確認する。ん、うまい。
「おいしー!」
美味しそうに食べてくれるカノンの顔を見て俺も表情が綻ぶ。
【またイチャつき始めたぞ!!】
【鞘無インコ:飯テロかと思ったらイチャテロやんけ!!】
【すげぇ……こんなの刺激が強すぎて地上波で流せねぇよ】
【もう自分が嫁になったつもりで見てる】
【わかる】
【カノン様が羨ましいと言うより、この暖かな空間に私も混ざりたい】
【わかる。こんな幸せな家庭に混ざりたい】
【むしろ私は2人の子供になったつもりで見てます】
【2人の子供!?】
【天才がいるな!】
【あくあパパ! カノンマッマ!!】
【アクアマリン:ママもあーちゃんの娘になれば、もっと構ってくれるかな?】
【この2人の子供とか、産まれる前から美少女or美少年確定してるのやばいなw】
【こーれ、次のなりたい職業ランキングで2人の子供が急上昇します】
俺は2人で作った出汁巻き玉子をパクリと食べる。
うん、いい具合に中がトロふわで出汁がきいててうまい!!
「美味しい……?」
「うん。ほら……」
俺は摘んだ卵焼きをカノンの方へと近づける。
「あーん、して」
「ん……おひしいです」
照れたカノンの顔を見てギュッと抱きしめたくなった。
あのー? もう配信閉じていいですか? ちょっと2人きりで、もっと体を密着させていちゃつきたいんだけど、もう終わりでいいよね?
【あっ、あっ、あっ】
【こーれ、完全にアウトです】
【そろそろ配信終了時間だけど、後学のためにこの後を見せてもらっていいですか? いや、本当に卑しい気持ちなんてミリもなくてですね】
【もちろんこの後の寝室も配信してくれますよね?】
【ラーメン捗る:百福食品さんみたいな世界的な大企業が、この後を配信しないとか、そんなわけあるわけないだろ!!】
【とりあえず服脱いだ】
【ラピスラズリ:今の行為で赤ちゃんができるって聞いたんですけど、本当ですか?】
【妹ちゃん本当に可愛くて癒される】
【穢れた掲示板民すら浄化する清純オーラが出てる】
【ゆかりご飯:こいつら3人で楽しそうにご飯食べて……1人でご飯食べてる人への当てつけですか?】
【3人で楽しく?】
【ゆかりご飯、よく番組みろよ! 楽しんでるのは2人だけだぞw】
【1人、確実に死んでるだろw】
【森川、ドンマイ!】
【いいですか皆さん。このように一つの出来事が後に大変な事になったりするので、十分に自分の行動には気をつけましょう】
あ、さっきまでフリーズしていた楓が油が切れたロボットのような挙動をしだした。
「しくしく、しくしく……ご飯が美味しいよぉ」
泣くほど喜んでくれるなんて嬉しいな。
ほら、お代わりならたくさんあるから、いっぱい食べてね。
「というわけで、そろそろお時間の方が来ました。みなさん、今日はご視聴どうもありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
俺はカメラの前で手を振る。
「またねー!」
そこで配信は終わりだ。
残った料理は、スタッフの人や見学してた百福食品の人たちも交えてみんなで食べる。
楓も復活したのか、モリモリご飯を食べていた。
「いやあ、どうなるかと思ったけど、なんとかうまく出来たね。まぁ、私、椅子で座ってただけなんだけど……」
「あはは、まぁ、そう言う時もありますよ。俺もいつもは楓に助けられてるから、今回は楓を助けられてよかったよ」
「あくあ君……! ううっ、パクパク、ご飯が美味しいよおおおおお!!」
ふぅ……思ってたより生配信と時間制限の関係で緊張したけど、うまくやれたような気がする。
やっぱり小雛先輩がいないと全てがスムーズだ。
トラブルが起こる事もなく、謝罪のシーンなんてのもミリもない。
俺だけだとトラブルの一つも起こってないところを見ると、小雛先輩こそが諸悪の根源だなと再確認させられた。
「あくあ、この豚汁美味しいね」
「ああ、だって2人で作ったんだから、美味しくないわけないだろ?」
「もう、あくあったら……」
「ほら、こっちも食べて」
ん? なんか周りからすごく視線を感じたような?
うん、きっと気のせいだな。俺はカノンとの食事の時間をしっかりと楽しんだ。
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