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白銀あくあ、捨て猫拾っちゃいました。

 結婚してからも俺は週に一度は実家に帰るようにしている。

 何故ならそうしないと母さんから鬼のように催促のメールが来るからだ。

 それに加えて俺にはもう一つ、どうしても自宅に帰らなければいけない理由がある。

 今日もまたいつもの様に、俺は事務所の送迎で実家へと向かっていた。

 その途中……というか実家のちょっと手前で、俺は段ボールに入った不審な物を見つけてしまう。

 できれば気が付きたくなかったけど、このまま放置するわけにもいかないなと思った俺は、運転手さんにお礼を言って外に降りた。


「よっ! ちょうど良いところに来たね。少年」


 俺は段ボールの前で固まる。

 どっからどうみても玖珂レイラさんだ。

 え? ここで何してるんですか?

 そんな顔をした俺に対して、レイラさんはお姉さん顔で微笑む。


「悪いけどさ……少年、今日、お姉さんのこと泊めてくんない?」


 本当はそのままスルーして帰りたかったけど、このままここに残しておくのも別の問題が発生しせいなので、俺は仕方なく実家にレイラさんを連れて帰った。

 そういえば玖珂理人さんにも家出娘って言われてたし、他に泊まるところないのかな……。


「わわ、本物の玖珂レイラさんです……」


 家に連れ帰ったレイラさんを見たらぴすは目を輝かせる。くっ、相変わらずの可愛さだ。

 俺はもうこのために毎週実家に帰っていると言っても過言ではない。

 レイラさんはゆっくりとらぴすに近づくと、その小さな体をぎゅっと抱き締めた。


「ねぇ、あくあくん。この子、持って帰っていい?」

「いやいやいや、ダメですよ、レイラさん。らぴすは俺のですから」


 俺はレイラさんかららぴすを引き離す様に自分の方へと抱き寄せた。

 危ない危ない。この世界では女の子同士でも結婚できるんだから用心しないと……。あっ、でも下手な男に嫁にやるくらいなら女の子がいいな。ただ、レイラさんは美人だし資産があるのもいいけど、生活力がなさそうだからなぁ……。そこがネックかな。


「ら、らぴすは兄様の……」


 どうしたらぴす?

 顔が赤いけど大丈夫か?

 熱があるならお兄ちゃんが添い寝看病するのも吝かじゃ無いぞ。


「ふーん、なるほどね。じゃあ私とあくあ君が結婚すれば、らぴすちゃんも私のものと……悪くはないわね」

「はいはいはいはいはい!」

 

 レイラさんが何やらぶつくさと呟いていると、俺とレイラさんの間に割り込む様にして母さんが体を入れてきた。

 それを見た俺とらぴすがまた何か始まったという顔をする。


「良くない流れの波動を検知!! MAR! MAR!」


 母さんMARって……どうせマリン・アシスタント・レフェリーとかしょうもない事なんだろうな。

 俺とらぴすは顔を見合わせると小さく溜息を吐く。

 いやいや、そういう耳に手を当てる仕草とかいらないでしょ。誰と話してんのさ……。

 審議時間が長すぎるし、毎回それに付き合わされているであろうらぴすの事も考えてあげて欲しい。

 俺が剣呑な顔をしていると、母さんは着物から黄色いカードを取り出した。


「レイラさん、今のでイエローカード1枚目です。2枚累積でこの家から退場してもらいますので気をつけてください」

「はーい」


 母さん、芸が細かいなぁ〜。レイラさんも笑ってるじゃん。恥ずかしい。

 俺はレイラさんに母さんのおふざけに付き合ってくれてありがとうございますと言った。


「ふふっ」


 そんな俺達の姿を見て、1人の少女が控え目に笑う。

 俺が今日ここに帰ってこないといけなかったもう一つの理由がこれだ。

 事件のあったあの日の夜から、アヤナは俺の実家で寝泊まりをしている。

 自宅のマンションに戻るのもマスコミが居て騒がしいだろうし、かと言って年頃の娘さんを俺のところで預かるわけにもいかない。

 そう考えた結果、ここになった。アヤナは気を使わなくていいよと言ったけど、あの事件の後に1人暮らしのマンションに帰らせる方が心配だったし、アヤナのお母さんもから許可は得ている。

 シンプルにアヤナのお母さんのところに行くって選択肢もあったけど、小雛先輩が言っていたアヤナはお母さんがマネージャーだから甘えられないんじゃないのかなという言葉が引っかかった。

 確かにアヤナの性格なら我慢して、無理をして、強がって、大丈夫ってフリをして、余計辛くなりそうな気がする。それじゃあまた自分の中に溜め込んでしまいそうな気がした。


「アヤナ……」


 ちゃんと眠れたか?

 少しは落ち着いたか?

 言いたい言葉はいっぱい思い浮かんだけど、できる限り事件の事には触れない方がいいと思って事件に関わる言葉を避けた。


「ごめんな。うちの家族……というか特に母さんがすごく騒がしいだろ?」

「ううん。まりんさんは凄く面白いし、しとりさんも凄く優しいし、らぴすちゃんはすごく可愛いし……お陰様で、すごく楽しく過ごさせてもらってるわ」


 俺はらぴすは可愛いのところで首を縦に振る。レイラさんといいアヤナといいちゃんとわかってるな。

 アヤナはレイラさんへと視線を向ける。


「ところで、玖珂レイラさんがなんでここに……?」

「いや、そこに落ちてたから?」

「は?」


 アヤナのその反応は正しい。俺もアヤナと同じ顔をさっきしたばかりだもん。

 それを見たレイラさんが口を開く。


「私、帰る家ない。だから今日泊めて」

「実家は? 理人さんも心配してましたよ?」

「ツーン」


 いやいやいや、そんな子供みたいな反応してもダメですって。


「あいつなんて知らないもーん」


 なんかレイラさん急に子供っぽくなってないですか?

 いつものクールビューティーさんは、どこ行きました?


「本当に迷惑なら出て行くから、その時は遠慮せずに言ってほしい」

「いや、迷惑ではないですけど……。今、客室はアヤナが使ってるから俺の部屋しか空いてないですよ?」


 俺の発言に、レイラさんは急に顔を赤くする。

 え? 今の言葉に顔を赤くする要素ってあったっけ……。


「あくあくんって男の子なのに結構大胆なんだね」

「大胆?」


 レイラさんは何故か少し色っぽく、上着のジャケットを半分だけ脱ぐ。


「いいだろう。これでも女優の端くれ、体には自信がある方だからね。宿泊費はこの体で……」

「はいはいはいはい! あうあうアウト!!」


 今度は母さんだけじゃなくて、らぴすまで間に入ってきた。

 なんかそこの2人、俺が実家から出てってから、さらに仲良くなってないか。


「これはもう1発アウト! レッドカードです!!」

「MARの余地なし! 異議なーし!!」


 だからそのレッドカードどこから出てきたんだよ……。

 相変わらず実家は楽しそうな事やってるなあと思いつつ、話が進まないので2人の頭を撫でて落ち着かせる。

 ほーれほれほれ、あくごろうさんの撫で回しで2人ともぐでぐでにしてあげよう。


「えへへ、あくあちゃん、もっとぉ〜」

「兄様、兄様、兄様……」


 うん、まぁ、こんなものかな。

 これで少しはちゃんとした話し合いができるだろう。

 俺は改めてレイラさんの方へと顔を向ける。


「で、レイラさんは理人さんの何が気に食わないんですか?」

「……説教くさいところ」


 あー……うん。それは多分、十中八九レイラさんが悪いんじゃないかな。

 でもレイラさんが家出をしている本当の理由はそうじゃないって事を俺は知っている。


「レイラさん、そうじゃないでしょ。理人さんと天草さんとの一件が尾を引いているんじゃないですか?」


 理人さんが天草さんの話をしたときに見せた愛おしそうな顔を思い出す。

 あれは完全に想いを断ち切った人の顔じゃなかった。

 そしてレイラさんが家出をした理由も、おそらくはそこに起因している。


「ふーん……理人のやつ、そこまで話しているのか……。いや、あくあくんが気がついたのかな。きみ、ミシュ様と一緒で自分に向けられたベクトル以外には敏感そうだしね」


 雪白美洲……初めて映像で見た時はびっくりした。

 目を引くようなカリスマ性と華、自分の世界に惹き込ませるような演技力には多くの人が感動したことだろう。

 こんな人がいるのかと思った。

 レイラさんも凄いし、小雛先輩もすごいが、ミシュ様は明確にそれよりも一歩先をいっている。

 CM撮影の時は慎太郎の共演相手だったが、機会があるなら俺も共演してみたいなと思った1人だ。


「わかってるなら話が早いわ。理人の奴、今でもしきみお姉ちゃんの事が好きなのにさ、カッコつけて諦めたフリしてるんだよね。だからさ……あくあくん、協力してくんない?」

「協力するのは別にいいんですけど……何すればいいんです?」


 俺が首を傾けると、レイラさんも同じように首を傾ける。

 なんとなく逆方向に首を傾けると、レイラさんも同じように逆方向へと首を傾けた。

 この人、結構可愛いな……って! そうじゃなくって!!

 ダメだぞあくあ、またお前の悪い癖が出てる。俺にはカノンがいるんだと心の中で10回呟く。

 いくら一夫多妻の世界とはいえ、誰とでもっていうのは俺の性格上、違う気がするんだよね。


「何やってんのよ2人とも……」


 近くに居たアヤナが俺たちのやりとりを見て剣呑な顔を見せる。

 おぉ! このポンコツしかいない空間に1人だけまともな人がいたぞ!!

 俺はアヤナに理人さんと天草さんの事について説明するために、レイラさんに許可を求める。

 するとレイラさんが最初から順を追って、2人の事について話し始めた。


「私達3人の関係は平たく言うと幼馴染なのよ」


 華族の中でも最高峰と呼ばれる六家、皇、黒蝶、雪白、藤堂、玖珂、天草、そのうちの2つの家に次期当主として生まれた2人の悲恋。その始まりは暖かな幼少期の思い出からスタートした。


「私はすぐに理人としきみお姉ちゃんが想いあってるってすぐに気がついたわ。だって2人ともそういうのを隠すのが下手くそなんだもん」


 そんなある日、3人の関係に変化が訪れる。

 現黒蝶家当主の黒蝶揚羽さんとの出会いだ。


「その頃には、理人もしきみお姉ちゃんも次期当主としての教育が始まっていて、そんな2人に対して揚羽はこう言ったの。当主同士は結婚できないって……。だから私は理人に、代わりに私が当主になるから、しきみお姉ちゃんの所に婿入りしてって」


 理人さんから聞いた話によると、この時点でレイラさんには女優になるという夢があった。

 もしレイラさんが玖珂家の当主になるなら、今度はレイラさんがその夢を諦めるしかない。だから理人さんは首を縦に振らなかった。同様に天草さんもそれを理解して自分から身を引いたのである。

 他にも自由人っぽいレイラさんに六家の当主が務まるのかとか、レイラさんに自分のお家の派閥を安心して任せられるのかという理由も理人さんから聞いた。


「本当は理人じゃなくて自分に腹が立ってるんだ。肝心なところで何も役に立たないんだって……私がもっとちゃんとしっかりしてればよかったんだけど、子供の頃から何をやらしても優秀だった理人に勝てたのはお遊戯会の演技くらいだったしね」


 顔向けできないから帰れないか……。

 レイラさんの本心が垣間見えた気がした。


「だから私はミシュ様を追ってこの国から逃げたの。何も言わないままお互いに想いを告げずに、諦めた振りをして今でも愛おしそうに視線を交わす2人を近くで見ていられなかった」


 初対面の俺だって気がついたくらいなんだから、近くにいたレイラさんなら尚更そうだったんだろうなと思った。

 レイラさんから説明を受けたアヤナは一考した後にゆっくりと口を開く。


「なるほど……それでレイラさんは、2人にどうして欲しいと? 私みたいな第3者から見ても、お2人には添い遂げて欲しいなって思うけど……そうじゃないですよね?」


 レイラさんは小さく頷く。


「私は……私のわがままだけど、2人には想いを伝えあって欲しいと思った。しきみお姉ちゃんの、それに理人の本心を聞いちゃったから……。結局のところ、あれから何年も過ぎたけど何も変わらないし、誰も一歩を踏み出せてないのよ。理人も、しきみお姉ちゃんも……そして私も……」


 本心か……。2人とも自分の想いを告げられずに後悔してるって事を身近に居たレイラさんは何らかの機会で知ったのだろう。

 その想いを知って苦しくなって耐えられなくなったから今も家出していると……なるほど、おおよそのことがわかってきたぞ。


「なるほど……だったら、どこかでそういう機会と雰囲気を作って上げられればいいってことだよね?」


 アヤナがいると話がスムーズだなぁ。

 やっぱりちゃんとしてる人がいると話が早い。


「うっ、うっ、うっ……なんて悲しいお話かしら……」

「母様、ティッシュです。ほら鼻チーンしましょう。はいはい上手ですよー」


 いつの間にか復活して話を聞いていた母さん達は無視するとして、俺は手を上げて発言する。


「だったら今度、絶好のチャンスがあるんだけど……」


 この週末に俺とアヤナの2人は月9のお仕事としてサプライズライブの予定が入っている。

 アヤナもそれに気がついたのか、俺の言葉に小さく頷いた。


「政府主導のお見合いイベントに、国家機密局の天草さんが参加するんだけど、総理と一緒に理人さんが来るようにどうにかできるんじゃないかなって思ってる」


 12月末に終わりを迎える月9では、クライマックスに向けてこのタイミングで大きな動きがあった。

 アヤナが演じる莉奈と俺が演じる一也の2人が、小雛先輩が演じる主人公、沙雪を押し退けて急速に近づいたのである。その時に流れる曲を、政府主導のお見合いイベントで演ってくれないかとお願いされた。


「そんな事が可能なのか?」

「うん……なんか試しに聞いてみたらできるみたい」


 俺は携帯の画面をレイラさんに見せる。

 試しにさっき総理に、ダメもとで今度のライブに内緒で理人さんを連れてきてよ! って送ったら、即答でおkってメールが返ってきた。総理、フットワーク軽過ぎでしょ。


「じゃあ、あとはそこで2人をうまく引き合わせて……何となくいい雰囲気にさせればいいって事よね?」


 俺はアヤナの言葉に頷く。

 幸いにもお見合いイベントだし、うまくやればそれっぽい雰囲気とかにできるんじゃないかなと思った。

 いや……いい手があるな。


「いっそ、当日きた2人をお見合いイベントに参加させて、お互いの嫉妬心を煽るとかもありじゃない? 何なら理人さんが1人で参加しづらいなら俺がさくらで出てもいいし……」


 俺がそこまで言うと、アヤナとレイラさんの2人に両肩を掴まれた。


「あくあ……そんな事をしたら全部がぶち壊しよ」

「あくあくん、君はお見合い会場を戦場にしたいのかな?」


 2人の圧に負けてその案はボツになった。

 うん、いくら2人のためと言っても、やっぱり結婚する気がないのに参加するのは相手の女性に対して失礼だよな。


「あくあくんのそういう天然な所も、ミシュ様にそっくり」

「俺ってそんなに雪白美洲さんに似てますか?」


 以前から似てるって言われてる事が気になって、逆にミシュ様をよく知るレイラさんに質問を投げかけてみる。


「うん。雰囲気というか、身に纏うオーラとか……あと、同じ匂いがする」

「確かに、あくあちゃんといると、たまに間違いそうになるかも」


 ん? 俺とレイラさんは顔を見合わせると、俺をあくあちゃんなどと呼ぶ母さんの方へと視線を向ける。


「母さん?」

「ぎくっ」


 はいはい、視線を逸らしてもダメですよ。貴女の発言だってバレてますからね〜。

 俺はらぴすの陰に隠れようとした母さんをつまみ出す。

 らぴすは何も知らないのか首を傾けていた。


「うわぁーん、あくあちゃんがお母さんの事をいじめりゅー。アヤナちゃん、助けてぇ〜」


 アヤナに助けを求めようとしても無駄ですよ。ほら、さっさと観念してください。

 そんなやりとりをしていると、玄関の方から物音が聞こえてくる。


「あーちゃんも母さんも、2人揃って何してるの?」

「助けてしとりちゃん!」

「あっ、しとりお姉ちゃん。おかえり」

「姉様、お帰りなさい」

「お帰りなさいしとりさん」

「お邪魔しています。玖珂レイラです」


 仕事から帰ってきたしとりお姉ちゃんはレイラさんに軽く会釈すると、再び俺たちの方へと視線を戻した。


「いや、母さんがミシュ様と俺をたまに間違いそうになるって言ったから……」


 俺の言葉を聞いて、しとりお姉ちゃんは首を傾ける。

 そして何かがわかったのか手をポンと叩いた。


「あっ! そっか……あーちゃんってば記憶喪失だから忘れてたんだっけ。って事は、母さん? もしかしてそんな事も話してないんじゃ……」

「ぎくくっ!」


 はいはい、逃げようとしても無駄ですよ。

 いい加減、母さんは観念して欲しい。往生際が悪いにも程がある。


「ううう……だって、ミクちゃんとはまだ喧嘩してるんだもん!」


 ミクちゃん? あぁ、そういえばミシュ様って本当はみくにって呼ぶんだっけ。


「もしかして母さんってミシュ様と知り合いなの?」

「知り合いも何も、ミクちゃんがあくあちゃんのもう1人のママだもん」

「はぁ!?」


 衝撃的な事実に、俺は思わず隣にいたアヤナと顔を見合わせる。

 アヤナも俺と同じように口を大きく開けてびっくりしていた。

 そして今の話、私が聞いちゃってもよかったのかなと自分の顔を指差す。

 俺は口元に指先を当ててオフレコでよろしくとお願いした。


「ちょ、ちょっと待ってください。でも、らぴすが知らないって事は……」

「だって、らぴすちゃんは前に言ったけど違う人との間の子供だし、その頃にはミクちゃんはもうお家にいなかったんだもん」


 色々と気になる……。

 例えば前にもサラリと聞いたらぴすのもう1人の親の事とか、どうしてミシュ様……もう1人のお母さんと別れちゃったのかなとか、聞きたい事は沢山あるけど、頭が混乱し過ぎててうまく言葉が出てこない。

 今思えば白銀家は俺の知らない事ばかりだ。

 俺が家族を女の人として意識し過ぎたあまりに、距離を置いて知ろうとしてなかったせいだろう。

 つまり悪いのは俺だ。もっとちゃんと、こういう事は聞いておくべきだったと反省する。というか、もう1人の母親がミシュ様だなんて想像していなかったし、母さんが話さないところを見ると触れちゃいけないのかなと遠慮していた。


「確かお母さんが大事にしてたアイスを勝手に食べちゃったからだっけ?」

「そーよ! ミクちゃんったら私が冷凍庫の中に大事に仕舞っていたご褒美アイスを勝手に食べたんだもん! しかもアイス買ってくるって言って、帰ってこないし! だからもういいの!」


 思わず俺もアヤナもズッコケそうになった。

 しょーもな! 本当にしょーもない理由で俺もアヤナもびっくりだよ!!

 気を遣ってた俺の優しさを返して!! でも母さんらしいなとも思った。

 理人さんと天草さんからの落差があまりにも酷すぎて、ポカーンとなったらぴすの開いた口が塞がらない。

 流石に方向音痴で十数年迷ってるなんて事はあり得ないだろうし、こちらの関係修復はもう無理なのかもしれないな。うん……そういう事にしておこう。だって、なんか面倒臭そうだし。

 そんな事を考えていると、レイラさんが俺の背中に抱きついてきた。


「あくあくん……今日は君の部屋に泊めてくれるんだろう? さぁ、今すぐ行こうか。幸いにも私のタイミングもバッチリだから遠慮する事はない。さぁ、ミシュ様の子供を……いや、孫を2人で授かりに行こう!!」


 ちょ!? レイラさん、一旦落ち着いて!

 って、力つっっっよ! どこにそんなパワーあったんですか?


「ピーッピッピッ! 今度こそアウト、完全にアウトよ!」


 怒る母さんに対して、レイラさんは悪い笑みを浮かべる。


「そんなこと言わずに、お母さんも一緒にどうですか?」

「な……」


 流石の母さんもびっくりした顔をしていた。

 いいぞ母さん、レイラさんの暴走を止めてくれ!!


「それは悪くないかも」


 ちょっとぉ!? くっそ、母さんに期待した私が馬鹿だった!!

 って、なんかしとりお姉ちゃんもヤル気スイッチ入ってませんか!?

 このままじゃ不味いと思った俺は、アヤナとらぴすに助けを求める。

 今はそんな事をしてる場合じゃないだろうと、2人の説得もあってなんとかその場は治まった。

 らぴすは勿論の事、やっぱりアヤナは頼りになるな。


「アヤナ、よかったらもうずっと俺の家に居てくれていいぞ……」

「えっ……」


 あれ? アヤナの顔が急速に赤くなったかと思ったら後ろに倒れる。

 なんとか途中でうまくキャッチできたけど、あぶなかった。

 どうしたんだろう? やっぱり住む場所が変わって疲れていたのかもしれないな。


「ほらね。ミクちゃんと一緒。あくあちゃんの天然たらし……」

「お姉ちゃん、あーちゃんのそういうところ、もうちょっとどうにかしたほうがいいと思うの」

「兄様、お願いですから少しは考えてというか、発言に責任を持ってください」

「あくあくん、君……なかなかにひどい男だね。言ったからには、ちゃんと責任を取ったほうがいいと思うよ」


 なぜかよくわからないけど、4人から両手を広げてやれやれという顔をされた。

 解せぬ……。

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