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白銀あくあ、みんなでお疲れ会。

 うちにご飯食べにきます?


 毎日ご飯に出演した時に、俺は気軽な気持ちで森川さんにそう言った。

 まさかこの言葉がきっかけになって、色々な人達を巻き込んだ諸々のお疲れ打ち上げパーティーをする事になるなんて、誰が予想した事だろうか?


「遊びに来たぞ後輩!!」

「先輩……早いっす。3時間前ですよ……」


 この人、どれだけ楽しみにしてきたんだよ。

 しかもその大量の新居祝いの品々は、どうやってここまで持ってきたんだ?

 先輩の持ってきたお祝いの品だけで、なんか部屋一つ埋まっちゃったんだが……。

 それにベビーベッドとかオムツとか哺乳瓶とか……先輩、気が早すぎるっす。

 ほら、カノンの、俺の嫁の顔を見てくださいよ。真っ赤じゃん!!


「先輩って本当に良い人だったんだね」

「ええ、旦那様と違って天我先輩は本当に気が効く素敵な男性です。できれば、これを一刻も早く使えるようにしていただければ良いのですが……チラッ、チラッ」


 ペゴニアさん、わざわざ効果音まで声に出さなくても聞こえてますよ。

 あとお腹さすったりする仕草は完全にアウトです。


「ほえ〜、ここが天下の白銀あくあ様のお家なのね。ありがたや〜ありがたや〜」

「アキラ、こんなに早い時間にお邪魔しちゃって本当に大丈夫なの? 時間、間違ってない? ご迷惑じゃなければいいのだけど……」


 先輩のお母さんの夢子さんとお婆ちゃんも一緒に来てくれた。

 ハロウィンイベントの後に少しだけ挨拶したけど、こうやってちゃんとした形で会うのは今日が初めてである。


「こんにちは、ゆっくりしていってくださいね」

「あ、はい。ありがとうございます。急にお邪魔しちゃってごめんなさい」


 俺は気にしないでいいですよと夢子さんに微笑んだ。


「じ〜っ」

「ん? どうしたの、カノン?」

「別に。ただ、あくあって……結構、お母さんに甘いよねって思っただけ」


 うーん、確かに言われてみればそうかもしれない。


「あくあ、人妻は手を出しちゃダメなんだからね。ややこしい話になるから」

「だ、大丈夫だって、安心してくれ」


 全く、俺にだって節度ってものがある。

 流石にね、先輩とか、慎太郎とか、とあのお母さんに手を出したりなんて……ないと自分を信じたい。


「本当かなぁ」


 ジト目になったカノンから俺はスッと視線を逸らした。

 これは決してやましい事があるから視線を逸らしたわけではない。

 戦略的な撤退という奴だ。うん。


 ピンポーン!


 おっ、ちょうどいい具合に誰かが来たみたいだ。

 俺は新たな来客を新居に迎い入れる。


「すまん。先輩が行くって聞いて……迷惑かけてるなら連れて帰るが……」


 先輩が先に来ていると知って、息を切らしてやってきたのが慎太郎だ。


「大丈夫、大丈夫、家は広いし、むしろお前もゆっくりしてけよ!」


 俺は慎太郎の肩をポンポンと叩くと、その隣へと視線を向ける。


「あくあさん、おひさしぶりです」

「貴代子さん、この前は挨拶だけですみません。そういえばこの前、棚が壊れて大変だったとか慎太郎から聞きましたよ。俺でよかったらいつでもお手伝いしますから、気兼ねなく相談してくださいね」


 俺がそう言うと、貴代子さんはしなだれるように俺の胸に手を置いて、潤んだ瞳で俺の顔を見上げてきた。


「ありがとう、あくあさん。やっぱり男の人って頼りになるのね」


 今日の貴代子さんは上品なワンピースを着ている。

 ワンピースと一言で言ってもそのパターンは様々で、胸をクローズアップするような大人なワンピースもあれば、カノンやらぴすがよく着ている可愛いタイプのワンピースまで、その種類は様々だ。

 貴代子さんの着ているワンピースは上品かつシンプルなもので、決して膨らみ強調しているわけでも、ましてや大きく谷間が開いてるわけでもない。ただ……そのワンピースからほんの少しだけ覗かせる色香に俺はノックアウトされそうになった。


「あわわ……大人の色気……人妻の魅力……未亡人のしなやかさ……しゅごい……」

「お嬢様、しっかりしてください。私のこの戦場で鍛えた勘が確かなら、旦那様のお側にいる女性陣の中で彼女が最も危険人物です! しっかりと監視しておかないと、旦那様なんて秒で食われちゃいますよ。ああいう儚そうな人に限って、ベッドの中では絶対にツヨツヨなんですから! 決して見た目に騙されてはいけません!!」


 俺は慎太郎と貴代子さんを家に招き入れると、先輩の家族に2人を紹介する。

 1人だけ仲間はずれにするのもどうかと思ったので、とあにはメッセンジャーアプリで2人が先に来てる事を伝えた。

 すると、とあからすぐに来るとメッセージが返ってくる。

 とりあえずこんなものかと、ソファに座った落ち着こうと思った瞬間、けたたましいピンポンラッシュが鳴り響く。


 ピンポン、ピンポン、ピンポン!


 あー! もう誰ですか! そんなに鳴らさなくてもわかってますって!

 俺は剣呑な顔で扉を開ける。


「来ちゃった♡」


 俺はそのまま無言で扉を閉じる。


「ちょっとぉ!! 早く開けなさいよ!!」


 ふぁ〜、なんもなかったな。

 俺は欠伸をしながらリビングの方へと体を反転させる。


 ピンポンピンポンピンポン!


 だぁーっ! もうわかったって、わかりましたって!


「おはようございます。小雛先輩、こんなに早くからどうしたんですか?」

「決まってるじゃない。早くに来て迷惑かけてやろうと思ったのよ!!」


 やっぱこのまま扉閉じようかな……。


「あ! 今、そっと閉じようとしたでしょ!! さっさと中に入れなさいよ!」


 小雛先輩は扉にしがみつくと、足を入れて半身を滑り込ませるように無理やり家の中に入ってくる。

 くっそ、誰かに迷惑かける時の小雛先輩ほど必死なものはない。


「へぇ、なかなかいいとこに住んでるじゃない! せっかくだから私もここに住んであげてもいいわよ!!」


 小雛先輩はキッチンにあるコーヒーメーカーでコーヒーを入れると、我が物顔でソファにドカッと腰を下ろした。

 すげぇ、入ってきて5分も経ってないのに、もう完全に自分の家にしてやがる。

 しかも勝手に新居祝いの茶菓子食ってるし、その茶菓子を持ってきた慎太郎がドン引きしてるじゃん。


「小雛先輩……」


 俺がジトッとした目で小雛先輩の事を見ると、先輩も何かに気がついたのかポンと手を叩く。


「そんな顔しなくても、新居祝いならちゃんと持ってきてるわよ。ほら、こっち来なさい」


 小雛先輩は持ってきた紙袋を持ってソファから立ち上がると、俺に部屋の隅っこに来るように手招きする。

 ニマニマした顔の小雛先輩を見てると、なんか嫌な予感がするな……。


「はい、これ」


 早く開けなさいよという素振りを見せる小雛先輩を見て、渋々紙袋を開いて中身を確認する。


「ん……? なんだこれ? 紙切れ……?」


 なんか見覚えのある数字の並び方だなと思ってたら、俺の耳元で小雛先輩がそっと囁く。


「奥さんとの関係がマンネリになったら使ってもいいよ」


 は? はぁ!? 何言ってんのこの人!?

 俺は完全に理解した。この数字の羅列はアレである。小雛先輩の……いやいやいや! 流石にそれはダメでしょ。


「言っておくけど興味がないなんて言い訳は私には通用しないわよ。だって私がわざと楽屋の扉の鍵をかけ忘れた時、着替えていた最中をガッツリ見てたわよね」


 くっそ、やっぱりアレはトラップだったのか!!

 いつもの小雛先輩とは違った色っぽい表情と、恥ずかしそうに体を隠した仕草に違和感を感じるべきだった。

 そもそもこの世界の女性は着替えを見せつけようとするのに、今考えるとあの反応は明らかにおかしいじゃないか。

 くっ、これが大人のやる事ですか!? 男の子の純情な感情を弄ぶなんて卑怯な!!


「間違っても奥さん泣かすんじゃないわよ。あんたの奥さん、あんたに似て夢見がちっぽいし、よっぽどの理由がない限り自分より先に他の女が妊娠したら確実に病むわよ。なんならそういうヘラってる気配ちょっとあるし、包丁で刺されないためにも、暴発する前にちゃんと私を使いなさい」

「はい……」


 項垂れた俺はフラフラとおぼつかない足元で元居た場所へと戻って行く。


「どうしたのあくあ? なんか今にも消え去りそうな顔してるけど……大丈夫?」

「うん……大丈夫」


 勝てない……!

 明らかに小雛先輩が強すぎる。

 小雛先輩にわからせられた俺は、ソファの上でさらに項垂れた。


 ピンポーン!


 どうやらまた誰か来たようだ。

 俺は再びソファから立ち上がるとショボーンとしながら玄関の方へと向かう。


「こんにちはー!」


 この元気な声で、誰が来たのかすぐにわかった。


「森川さん、こんにちは」

「あくあ君、今日はよろしくねー」


 いつも通りの元気いっぱいな森川さんを見て安心する。

 小雛先輩と比べるとミリも捻くれてないというか、カノン並みに素直な感じがするんだよな。

 やっぱり友達って似たような人が集まるのか、えみりさんや森川さんはカノンと同じでピュアな感じがする。


「楓先輩、来てくれたんですね」

「えへへ、来たよー!」


 2人がギュッと体を抱き締めあった瞬間を見て、ほっこりとした温かい気持ちになる。

 やっぱり女の子同士のこういう姿は最高だね。俺はちゃんとわかってるから邪魔しないよ。

 それこそ女の子の間に無理やり入る男は、控え目に言ってくたばるか、天に召された方がいいからね。


「でも早くない?」

「あれ? この時間じゃなかったっけ? それにみんな来てるし……えっ? あ……」


 スケジュール帳を再確認した森川さんは、口元を波打たせるとアワアワと声を漏らす。

 なんとなくだけど、隣の日のスケジュールとかと勘違いしたんじゃないかな?


「ごめん……これ一昨年のスケジュール帳だった」


 俺はその場でずっこけそうになった。

 昨日明日とか、1週間ずれてたとか、1ヶ月読み間違えたとか、そういう次元じゃない。

 去年すらも通り越えて一昨年!? 一昨年のスケジュール帳がまだ家に残ってるの!?

 なんだろう。森川さんの抜けているというか、ズボラな私生活が少し透けて見えた気がした。


「楓先輩っていつもそうなんですね」

「えへへ!」

「いや、ミリも誉めてないですからね」

「う……」


 カノンさんや、そのくらいにしておいてあげなさい。

 ショボーンとした森川さんがソファに座る。ちなみにその話を聞いた小雛先輩は爆笑してた。

 この人ほんま……。いつか絶対わからせてやる。


 ピン、ポーン!


 おぉう、誰だ? 流石にもうそんな時間間違うようなボケた人や、小雛先輩みたいに迷惑かけたがる人はいないだろうし……いや、1人居たわ。俺の母さんだ。


「あくあちゃーん!! 貴方の大好きなママがきたわよ〜!」


 俺はドアの前でうずくまった。

 止めて母さん、いくらなんでも恥ずかしすぎる……。

 俺さ、これでも思春期真っ盛りの男子高校生なのよ。まぁ、男なんて年中思春期みたいなもんなんだけどさ、もうちょっと配慮というか、ねぇ。よかった、このフロア貸切にしてて、ご近所さんいたら確実に引越し案件だわ。


「ほらほら、大好きなママが来てるのにお外で待たしてていいの〜? あくあって親不孝者なのね〜」


 くっそ、小雛先輩がおちょくりに来やがった。

 俺は仕方なく扉を開けて母さん達を招き入れる。


「初めまして、白銀まりんさん。ドラマで共演させてもらっている小雛ゆかりです」


 は? 誰!?

 見た事がないほど丁寧な対応をする小雛先輩に俺は目を丸くする。


「この前はご挨拶くらいしかできなくて申し訳ありません。改めてよろしくお願いしますね」

「いえいえ、こちらこそ。天鳥社長からお話は聞いています。なんでも芸能界の魔の手からあくあちゃんを守っていただいているとか……本来であればこちらからお礼を言わなければいけなかったのに、ちゃんとしたご挨拶が遅れてしまってすみません」


 母さんと小雛先輩は、お互いに深々と頭を下げる。

 え? 先輩? 本当に貴女誰ですか?


「あくあちゃん良かったわね。こんな礼儀正しい先輩がいたら安心してお任せできるわ。ほら、芸能界って怖いところだって聞くし、泥棒猫……じゃなかった、共演した女優さんから、マーキングするみたいにおしっこひっかけられたりしてないか心配だったのよ」


 母さん言い方……あと、それ、騙されてるよ。めちゃくちゃ騙されてる。

 小雛先輩は母さんの隣にいたらぴすへと視線を向けるとにっこりと笑った。

 ねぇ、だからその笑顔は何? そんな先輩、今の今まで一度たりとも見た事がないんだけど……。


「妹さんもよろしくね」

「あわわわ……本物の小雛ゆかりさんだ。は、はい、よろしくお願いしましゅ……」


 そういえばらぴすは、私の優等生なお兄様にハマってるんだっけか。

 小雛先輩にちょっと緊張してるのかな? アレでも一応主人公だしね。

 挨拶もそこそこにして、俺は母さんとらぴすをリビングへと案内する。

 その道中、俺と目があった小雛さんが家族には見えないように、俺にだけにまーっと笑った。


「ちょっろ、あくあがチョロいのって遺伝なんだ。お姉さんと違って、お母さんも妹さんも大丈夫? 掛け軸とか壺とか買わされたりしてない? 何の価値もないただのゴミでも、あくあが使ったやつって言えば秒で騙されて買いそう。試しにやってみようかな〜」


 ちょっと、うちの家族で遊ぶのだけは止めてくださいよ!

 頼む。誰か早く助けに来て……。俺は慌てて小雛さんがもう来ている事を阿古さんとアヤナにも連絡する。


 ピンポーン!


 次は誰だ? もうあと来てない人で問題児はいないはずだから、きっと大丈夫なはず……。


「はいはい、ちょっと待っててね」


 俺は再び玄関へと舞い戻ると、扉を開ける。


「先輩達、もう来てるって? って、あくあ!?」

「とあ……!」


 俺はとあをぎゅーっと抱きしめる。

 よかった! やっとまともな奴が来てくれた!!


「あわわわわわ、お兄ちゃんと、あくあさんが……」

「とあ……お嫁さんに行く時は言ってね!」


 おっと、勢い余って抱きついてしまった。

 俺はとあを解放すると現状を説明する。


「なるほどね。なんとなくこうなるんじゃないかって、早めに準備しておいてよかったよ」


 さすがはとあだ。俺が言わなくても全部わかってる。


「かなたさんとスバルたんも今日は来てくれてありがとう」

「こちらこそ誘ってくれてありがとう。あと、これうちからの新居祝いです。これからもとあと……ううん、猫山家と末長くよろしくね!」


 もちろんですとも! とあも、慎太郎も、先輩も、みんなもう家族みたいなもんなんですから遠慮しないでください。

 俺はかなたさんと硬く握手を交わすと、スバルたんの方に顔を向ける。


「お、お兄さん、ミスコン以来です。あの時はお世話になりました」

「お世話も何も、スバルたんはもう俺にとっても妹みたいなものなのだから、困った時はすぐにお兄さんに頼むんだよ」


 は〜っ、今日もスバルたんはかわいいなぁ。ミスコンの後に行われた真決勝戦で見せてくれたナース服も良かったけど、フェミニンかつボーイッシュな普段着とショートカットの髪の組み合わせがたまらなくいい。

 全く、こんな可愛い子を見過ごすなんて、世の中のアイドル事務所は何してんだよ!!

 あ、そうだ! 良い事を思いついたぞ! 後で阿古さんが来たらさり気なくスバルたんをプッシュしておこう。

 頼む、早くスバルたんに課金させてくれ!! お兄さんに推させてくれないか!!


「あくあ……絶対に碌なこと考えてないでしょ」

「ん? 何か言ったかとあ?」

「別に……」


 俺は3人を連れて再びリビングへと戻る。

 とりあえず俺は大問題児小雛先輩の対応だけでいっぱいいっぱいだから、とあには母さん達の対応を任せるとするか。

 先輩の面倒は慎太郎が見て、森川さんの面倒はカノンが見る、そしてとあが俺の家族の面倒を見て、俺が小雛先輩を抑える。完璧なフォーメーションとマンツーマンディフェンスだ。これでどんなポンコツな事態が起こっても的確に対応できるぞ!

 ええ、そんな事を考えていた時期が俺にもあったんです。


「あわわわわ」

「わわわわわ」


 忘れてたよ。俺の嫁、森川さんと同じくらいポンコツだったんだ……。

 ポンコツがポンコツの面倒なんて見れるわけがないよな。

 はいはいはい、今度は何が起こったんですか?


「どうしたの、カノン?」

「た、たまご全部割っちゃった……」

「ご、ごめん、私がキャッチしようとしたら腕力が強すぎて大惨事に……」


 どうしてそうなる!?

 卵でベチャベチャになった2人を見た俺は頭を抱えた。


「ペゴニアさん、2人をお風呂に入れて洗濯もしてあげて、俺は下のスーパーに卵買ってきます」


 俺は慌てて玄関へと向かう。

 普段履きのスニーカーを履いて外に出ると、ちょうど玄関前まで来ていたしとりお姉ちゃんと出くわした。


「あ、しとりお姉ちゃん」

「あーちゃん、どうかした?」


 今日のしとりお姉ちゃんはスーツではなく普段着を着ている。

 そういえば今日は大学になんか用事あるって言ってたっけ。

 しとりお姉ちゃんは当初ベリルに人が足りない事もあって、大学に通いながらベリルの手伝いをしてくれていた。

 そこからベリルの正社員になったのはいいけど、会社が大きくなった今、大学の方に集中してもらってもいいと思うんだけど、しとりお姉ちゃんはその後も大学に通いながらベリルに勤めてくれている。

 ありがたいし、家族が側に居てくれるのは嬉しいけど、ハードワークになってないか心配だ。

 今度、2人でゆっくりと話してみてもいいかもしれない。


「ちょっと下まで卵買ってくるから、母さんたちの面倒見てて!」

「あ、うん、わかった。あーちゃんはお姉ちゃんがついていかなくても大丈夫?」

「だ、大丈夫だから!」


 そんな小さい子じゃあるまいし……。しとりお姉ちゃんは、たまに俺の事を小学生か幼稚園児と勘違いしているんじゃないのかと思う。

 実家に居た時も、朝トイレに行こうとしたら1人でできる? お姉ちゃんが支えてあげよっかって、一体何を言っているんだと思ったくらいだ。

 お昼はお昼でお味噌汁熱くない? お姉ちゃんがフーフーしてあげるねとか……夜、1人で寝るの怖くない? 一緒に添い寝してあげよっかって部屋に来た時は、流石に俺も卒倒しそうになったよ。


「あ……」

「あ」


 エレベーターの前で待ってると、上がってきたエレベーターの中から白龍先生が降りてきた。

 こうやって白龍先生とちゃんと顔を合わせるのは、あのデートの日以来になるな。


「白龍先生、お久しぶりです」

「あ……あ……。こ、この前はごめんね……。わ、私……やっぱり今日は……」


 なるほど、先生は断ろうとして少し早くにこの時間に来たのか。

 それと先生の様子を見る限り、カノンや俺に謝罪しようとしていたのかもしれない。

 気にしなくていいと言ったのに、前にメールで俺とカノンに謝りたいって言ってたし。

 俺は震えてる白龍先生を落ち着かせるために、優しく両手を掴む。


「先生、むしろあの時はごめんなさい。俺は白龍先生との事を真剣に考えもせずに答えを出そうとして……だから、俺に時間をくれませんか? そんなに遅くはならないようにしますから、先生との事は真剣に考えます。だからもっとちゃんとお互いを知っていきましょう」

「は、はい……で、でも、私、む、無理矢理……」

「ちなみにその件については全然嫌じゃなかったです。だから気にしないでください」


 カノンにも言われたけど、20後半を超える女性とデートする時はそういうつもりでと釘を刺された。

 ただでさえ女性と接する距離感がバグってる俺は、そんな気はなかったじゃ許されないらしい。それなら最初から塩対応にしなさいと言われた。

 うーん、なかなか難しいね。もっとこう気軽に仲良くできたらいいんだけどな。

 そのためにも、もっともっと頑張らなきゃなと思った。


「お」

「あ……」

「あ!」


 エレベーターホールの前で立ってたら、次は下から本郷監督と小早川さん、阿部さんが上がってきた。


「なになに、2人ともどうしたのー?」

「あ、いや、たまたまちょっと話し込んじゃって」


 本郷監督はいつも通りのジャージ姿に便所サンダルだ。

 ボサボサの髪をてっぺんでヘアゴムでまとめて、少しサイズの合ってないメガネが斜めにずれ落ちている姿は、人によってはだらしないという印象を与えるかもしれない。

 本郷監督は普段こんな感じでも、ちゃんとしてたらとても綺麗な女性だ。

 結婚式に後から来てくれた時も、ドレスを着て髪を整えたら相当な美人さんだった事を覚えてる。

 どういう格好をするのも個人の自由だけど、なんでこんなに綺麗な人なのに、もったいないなと少し思ってしまった。


「小早川さんも、司令も今日はありがとうございます。もうみんな来てますよ」

「ありがとう白銀。腹なら空かせてきた」

「さっき優希ちゃん、めちゃくちゃお腹鳴ってたもんね。後、プライベートなのに、司令はないでしょ。あくあ君!」


 ぐ〜っ。小早川さんの大きなお腹の音にみんなの視線が集中する。

 ははっ、確かに、でも恥ずかしがってないところが俺的にはナイスです。

 ヘブンズソードの撮影後に料理した時も、小早川さんが残さず全部食べてくれるからついつい作りすぎちゃうんだよなぁ。森川さんといい、美味しそうにご飯食べてくれる人には無限にご飯作りたくなっちゃう。

 仕方ないなぁ〜、今日も俺の手料理で胃袋制圧しちゃいますからね!


「あ、悪いけどみんな先に家に入ってて、俺ちょっとマンション内のスーパーに卵買ってくるから!!」


 俺はそう言ってエレベーターに乗り込むと、ボタンを押して下の階へと向かう。

 スーパーのある1階に降りると、降りた先のエレベーターホールでまた知り合いに出会した。


「あ、阿古さん、それに桐花さん、モジャP、ノブさんも!」

「あれ? あくあ君ってば、下まで降りてきてどうかしたの?」


 俺は阿古さんに事情を説明する。

 阿古さんの顔をよく見ると、目の下のクマを化粧で隠していた。

 うーん、なんとなくわかっていたけど、これは本気で無理矢理どっかで休ませないとな。

 後で小雛先輩に相談してみるか。あの人、普段はふざけてるけど、なんか阿古さんについては真剣に話聞いてくれそうではある。


「なるほどね、そういうわけなら桐花さん、あくあ君についてってくれる?」

「はい、もちろんです」


 いや、マンション内のスーパーだし1人で大丈夫ですよと言おうとしたら、2人から、セキュリティ、自覚、という言葉が飛んできた。

 ううっ……そこまで気にしなくても大丈夫だと思うんだけどな。あのスーパーなんかやたらと警備員多いし。


「ふーん、2人でスーパーでお買い物なんて、それこそ漫画に出てくる新婚さんみたいねぇ」

「な!?」


 ノブさんの一言で桐花さんの顔が真っ赤になった。

 あら、まぁ、じゃないでしょ。ノブさん、うちのマネージャーで遊ばないでください。


「はは、本当におメェさんは罪な男だなぁ、白銀!」


 モジャPに背中をドンと叩かれた。

 そういえば2人って結婚してるだろうか……今度聞いてみようかな。

 今思えばこの2人とも色々話したりしてるのに、そういう会話はしてこなかった気がする。


「それじゃあ行ってきます」

「2人とも気をつけてね。あくあ君も知らない人についてっちゃだめよ。特に胸の大きなお姉さんとか」


 つ、ついていきませんって!

 そりゃ胸が大きなお姉さんが居たら、目では追っちゃうかもしれないけど、いくらなんでも俺だってねぇ……そこまでポンコツじゃないですよ!


「買うのは卵だけでいいんですか?」

「ついでだから、ちょっと足りなさそうな分も買っておきましょう」


 俺は桐花さんと2人でカートを押して必要な食材をカゴの中に入れていく。


『新婚さんみたいねぇ』


 くっ、ノブさんの言葉を思い出して顔が赤くなる。

 桐花さんの方へと視線を向けたら、向こうは俺以上に顔が赤くなっていた。

 それでも平静を取り繕おうとしているのか、表情に変化はない。でも真っ赤になった耳たぶまでは誤魔化せてないんだよね。ああ、もう……桐花さん、そういう可愛いところを見せてくるのは反則ですよ。


「こ、こんなもんかな」

「はい。それじゃあ、レジに行きましょう」

「ありがとうございます。手伝ってくれて」

「い、いえ、これも仕事ですから……」


 くぅっ! だからその恥じらった感じと雰囲気が、もう既にお仕事じゃないんだって!!

 この人はほんまにもう……ちゃんと自分が可愛いって自覚しなさいってお説教したくなる。

 正直、今日家に来てる女の子達を、みんなを端から端まで並べて、ちゃんと女だって自覚しろっていいたくなるよ。

 一応俺だって男だ。もれなく全員そういう対象として使わせてもらってるし、何人かの女性には非常にたくさんお世話になった。

 まぁ、そんな事は恥ずかしいから言えるわけないし、昨日貴女と夢の中でしましたなんて言われて喜ぶ女の子なんて流石にいないし、普通にセクハラとか犯罪でしょ。

 それこそ桐花さんなんて、ジムで一緒した時にどれだけお世話になった事か……。備え付けのシャワールームがあって何度よかったと思ったか数えきれないくらいだ。


「あ……」


 2人で荷物を抱えてエレベーターホールで待っていると、見知った顔の集団がこちらにやってきた。

 藤蘭子会長と八雲いつき先生、森長のもう1人のメリーさんこと森長めぐみ社長である。それともう1人、同じくらいの年齢の人がそばにいた。誰だろう?


「藤蘭子会長、昨日はありがとうございます。今度また2人でこっそりあんみつ食べに行きましょうね」

「ねー! それじゃあ今度は、2人でこっそりとおぜんざい食べに行きましょ。美味しいところ知ってるのよ〜」


 実はこの前もこっそりと会長にあんみつを奢ってもらったんだよね。

 何を隠そう、実は俺が1番デートしている女性は嫁でも誰でもなく藤蘭子会長だ。

 ちなみに2番目が強制連行という名のデートが多い小雛先輩かな。カノンが怒ったらいけないから絶対にナイショだけど……。


「いいな〜。私も蘭子ちゃんみたいにおデートしたいなぁ〜」

「うんうん、蘭子ちゃんばっかりずるい〜」

「はは、じゃあ今度、みんなでどっか一緒にご飯行きましょ」

「やったー!」

「絶対に約束だからね。忘れちゃだめよ!」


 うんうん、めぐみさんも八雲先生も喜んでくれたようで何よりだ。

 ちなみにこの場に、もう1人のメリーさん事、CMで共演してる茶々さんも呼んだのだけど、周りのメンバーに緊張してしまったらしく、今朝方、知恵熱を出してしまったらしい。うーん、残念。あとでお見舞いに行こうかな。


「あ、そうそう、実は今日お友達を連れてきたんだけど……」

「ご、ご迷惑じゃなかったかしら?」


 誰だろう? 俺が頭の上に、クエッションマークを浮かべていると、八雲先生がその疑問に答えてくれた。


「じゃじゃーん! ピンクのバラの原作者こと、村井熊乃先生です! 今日は特別に連れてきちゃいました!!」

「うわぁ! 本当に嬉しいです。先生初めまして、ベリルエンターテイメント所属のアイドル、白銀あくあです」


 俺は先生の手をとって握手をする。

 後で嫁のカノンと、ファンだって言ってた鷲宮さんのためにもサインもらっておこっと。


「あ、あ……これが本物……」


 本物? 先生が本物って事ですか?

 そういえば今回は、白龍先生や八雲先生だけじゃなく、司先生も誘ったんだけど遠慮しますって言われちゃったんだよなぁ……。

 そんな事を考えていたら、エレベーターから降りてきた人とぶつかりそうになった。


「あ……すみません」

「こ、こここここちらこそ、すみません」


 同じマンションに住んでいる住民の人と軽く会釈を交わすと、エレベーターに乗って上の階へと向かう。

 自分の家があるフロアーに戻ってくると、なぜかエレベーターホールの前でアヤナが仁王立ちしてた。

 怖いって、ていうかそれ完全に、決闘で沙雪を待ち構えてた時の莉奈のシーンじゃん。


「あ、戻ってきた」

「アヤナ、来てたのか」


 アヤナに話を聞くと、俺がお喋りしてたり買い物してた時間が長くて帰りが遅かったので、来たばかりのアヤナが折り返して様子を見に行こうとしていた途中だったらしい。

 すれ違わなくて良かった。


「他に誰か来た?」

「私だって来たばっかなんだからわかるわけないじゃん」

「あ……そっか」


 他愛もない会話をしながら、みんなで家の中に入る。

 おぉ……コートを脱いだアヤナは下にニットを着ていた。

 いいね、決して大きいわけではないけど、ちゃんと膨らみがわかるのがたまらなくいい。

 そういうのあくあ君的にはたまらないんですよ。


「節操なし」

「ん? なんか言った?」

「ううん、別に〜」


 なんだろう。なんか気になるな。


「ンンッ」

「ゲフンゲフン」

「ちょっとストレッチしようかな」


 あれ? みんな急に屈伸したり、体を反らして胸を張ったりしてどうかしましたか?

 おっと、ぼーっとしてたけど、みんな揃ってきたしそろそろご飯作らなきゃな、


 ピンポーン!


 ソファから立ち上がった瞬間、チャイムがなった。

 はいはい、待っててくださいねー。今、いきますよー。

 もしかして、えみりさんが来たかな?

 そう思って、玄関先に行くと意外な人物が立ってた。


「来ちゃった♡」

「うぇええええええええええ!?」


 その来ちゃったって言い方がデジャブだとか、隣にいるえみりさんが何故かメイド服を着てるとか、気になる事はいっぱいあるけど、どうしてここにいるのさ! メアリーお婆ちゃん!!


「あくあ、どうかした? なんか叫び声が聞こえたような気が……うぇええええええええええ!?」


 カノンさんや、それ全く俺と同じ反応です。


「お、お婆ちゃん、何でここに!? この前、帰国したばかりじゃ!? って、えみり先輩? 何やってるんですか? またおふざけか何かですか!?」

「えへへ、実はすぐに王族離脱して、こっちに引っ越してきちゃった。てへ! 今日から下の階に住むからよろしくね!」


 えええええええええええええ!?

 嘘だろお婆ちゃん……。ていうか、王族の離脱ってそんな簡単にできるの!?

 ていうか、あの感動的なお別れは!? 涙返して!!


「ふふっ、良かったですねお嬢様、これからは毎日、好きな時にお婆さまにお会いできますよ」

「う、うん。そうだね」


 おーい、カノン、騙されるなよー。

 そこにいるメイド、絶対に全部知ってたぞ。

 だってさっき凄く顔がにやけてたもん。

 あ、ほら、見てカノン、今、お婆ちゃんとハイタッチしたって! う……さすがは俺の嫁、ポンコツすぎて肝心なシーンを見逃してやがる。


「で、えみり先輩は何でメイド服? もしかしてふざけてるんですか? ふざけてるなら帰ってください」


 ちょっと、俺の嫁、えみりさんにだけあたりがきつい。


「え、あははは、いやぁ、実は色々あって……」

「ふふっ、えみりさんに話を聞いたらお金が必要だっていうから……ね。うちで雇う事にしたの。よろしくね」


 エェッ!?

 えみりさんみたいなお淑やかで可憐な美人さん、それも超が付くほどの大人なボディを持ってるお姉さんがメイドさんだって!?

 お、お婆ちゃん、うらやま……うちのペゴニアとかいう名前のメイドさんと本気でトレードしませんか?


「そ、そういうわけなので、ふ、2人ともよろしく」

「えみりさん……」


 俺はえみりさんの両手をガッツリと掴む。

 くっ、手がやわらけぇ。肌に触れただけでこんなに気持ちいいなんてチートだよチート。


「あ、あくあ様!?」

「えみりさん、お金ない時はうちに来てくれてもいいんですからね。ご飯だってちゃんと俺が用意します。だから毎日だって遊びにきてください。カノンもその方が喜ぶだろうし」


 今だって手首とか腰回りとか、脚とか首周りも細すぎでしょ。

 痩せてその大きくて形のいいものが萎んだらどうするんですか!!

 貴方のその胸はね、控えめに言って重要文化財みたいなもんなんですよ!! だからもっとちゃんと自覚してください!

 後世に残すべき大切なものを守るために、白銀あくあ、動きます!


「ふーん」


 おっとぉ、俺は嫁の冷えた視線に気がついて慌てて手を離す。

 やばいやばい、もうちょっとでバレてたかもしれないな。セーフ!

 俺は誤魔化すように2人を部屋の中へと案内する。

 よし、じゃあ今度こそご飯を……。


 ピン、ポーン!


 はいはいはいはい! わかりましたよ!

 そうでしょうね。わかってましたよ。なんか来るだろうなと思ってました。


「はいはーい」

「少し早くに到着してしまって、すみませんあくあ様、ご、ご迷惑でしたか?」


 深雪さんの後ろを見ると、大きめのパーカーとフードで顔と姿を隠している俺と同じくらいの身長の人が立っていた。誰だろう?


「あ、いえ、全然大丈夫ですけど……」


 俺は再び後ろの人へと視線を向ける。

 うーん、とりあえず深雪さんが連れてきた人なら大丈夫だろう。

 ここで話すのもなんだし、俺は2人を家の中へと招き入れた。

 深雪さんは家の中に入ると、カノンや母さんと挨拶を交わす。


「深雪さん、今日は来てくれてありがとう」

「よ、良かったのでしょうか? 私、部外者なのに……」

「気にしない気にしない!」


 俺はパーカーを着ている人が気になって改めて視線をそちらへと向ける。

 するとその人は、被っていたフードをゆっくりと下ろして、その素顔を俺達の前へと曝け出した。


「あら……」

「ま……」

「嘘……」

「え?」


 女性陣が驚くのも無理はない。

 俺の前に現れた人は男性、それも俳優をやっていたっておかしくないくらいのイケメンだった。


「初めまして白銀あくあ君、私の名前は玖珂理人だ。今日は来れなかった妹の代わりに新居祝いと、どうせあのバカな妹が渡してないだろうと新婚祝いの両方を持ってきた」

「あ……」


 そういえばレイラさん、双子の弟が居るって言ってたな。って妹? どっちだ、どっちが正しいんだ?


「ありがとうございます。わざわざすみません。レイラさんにも後でお礼言っておきますね。あ、それと白銀あくあです。こちらこそよろしくお願いします」


 俺は理人さんと握手を交わす。慎太郎は理人さんの事を知っているのか、軽く会釈していた。

 って、俺は理人さんから貰った名刺を見て驚く。まだ20代くらいだと思われるのに、総理大臣特命秘書官って凄いな。見るからに頭良さそうだし、この人からはポンコツ臭があまりしない。


「実は今日、少し君とお話ができればと思ってきた。良かったら少し僕に君の時間をくれないだろうか?」

「あ、はい。いいですよ」


 俺はペゴニアさんに先に準備しておいてとお願いした後、理人さんと2人でゆっくりとお話をするために、俺の寝室へと向かった。

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