星水シロと大海たまのミッドナイト配信。
「星水シロと……」
「大海たまの!」
「「ミッドナイトハロウィンフェスティバル!!」」
ハロウィン・ナイトフェスティバルが終わった後、俺は家に帰宅して星水シロとして配信を始めた。
想定していたよりも疲労感があるけど、自分からやりたいと言った企画なので気合を入れて頑張る。
「はい、そういうわけでね。そういうわけです」
「うん、説明くらいはちゃんとしようね、シロ」
この企画は言わば、お祭りの後のキャンプファイヤー的なものだ。
ちなみに良く漫画では文化祭の最後にキャンプファイヤーっていう展開があるけど、実際の文化祭でやっている学校はとても少ない、というかほぼない。確か安全面の問題からできないそうだ。
もちろん乙女咲の文化祭にだってキャンプファイヤーはない。その代わり最後にあったのはミスコンだ。
俺は部屋の片隅に置いているトロフィーへと視線を向ける。まさか俺が優勝するなんて思ってもいなかった。
なぁ、みんな……ネタで俺に投票したんだろうけど、ちゃんと真面目に採点しようよ。
嫁に100万点とか入れてた自分が言える事じゃないけどさ、スバルちゃんとか、くくりちゃんとかみんなちゃんと可愛かったのになぁ。くぅ〜、カノンには申し訳ないけど、らぴすにミスコンのトロフィーを取らせてあげたかったよ。
ちなみに最終候補の中でも、あのシスターさんは正直言ってやばかった。
なんなんだよあの肉感は! あんな清楚な雰囲気が出てるのに、シスター服の下には凶暴で凶悪なモノを隠し持ってるなんて反則すぎるだろ! しかも無防備だし、もっと自分が男を煽るような体をしてるって事を自覚して欲しい。
貴女の体はあくあ君のあくあ君をピンポイントアタックしてきすぎなんですよ。逮捕しちゃいますよ?
おっと、ついつい余計なことを考えてしまった。気を取り直して配信に集中しよう。
「えーっと、ミッドナイトハロウィンフェスティバルとは……ハロウィン・ナイトフェスティバルで熱狂しすぎたせいで、目が冴えて寝る事ができない全国のお兄ちゃんとお姉ちゃんのために向けたラジオ配信企画です。はい」
「うんうん。みんな、ちゃんとハロウィン・ナイトフェスティバルは見てくれたかな〜? 見てくれてない悪いお姉ちゃんや、悪いお兄ちゃんには悪戯しちゃうよ〜!」
俺はサブモニターに流れるコメント欄へと視線を向ける。
『ちゃんと見たよー!』
『本当は見たけど、たまちゃんに悪戯されたいから見てないって言いたい……』
『楽しかった!』ツッキー
『とりあえずお布施しとこ』石油女王
『ちっちゃなたまちゃんをお持ち帰りしたと思ったら、いなくなってた件について』
『アルバム出たら買います!』乙女の嗜み
『今日のバイト代です。お納めください』ラーメン捗る
『ミッドナイト配信助かる』ソムリエール
『お風呂間に合ったセフセフ』風呂ネキ
『悪戯? ご褒美の事ですかな?』ニャンコスキー
『まだドキドキしてる!!』
『会場で見てました! まだ興奮してます!』
『まだ心臓がうるさいもん。寝られるわけないじゃん!』
今回の配信はお互いのチャンネルではなくベリル公式チャンネルからの配信だ。よって、今日のコメント欄には、シロのリスナー以外に、たまちゃんのリスナーの人もコメント欄に来ている。
「ふーん、お兄ちゃん、お姉ちゃん達って結構子供っぽいんだね。大人なのに遠足前の小学生と一緒じゃん」
「ねー。しかも興奮しすぎて夜寝られないなんて、一体、ナニに興奮したのかなー。ぷーくすくす」
うんうん、歌に興奮したのか、それともダンスに興奮してくれたのか、他にも最新の技術だったり、パフォーマンスだったり、アクションシーンだったり、色々あるけど、どれが1番ワクワクしたのかは気になるよな。
『おっ! おっ! おっ!』ニャンコスキー
『2人の急なOSUGAKIムーブきたー!』
『ぐわあああああああああ!』
『脳がぁ、脳がああああああ、どげるううううう!』
『か……かわいい……』ツッキー
『たった今、今夜は寝られない事が確定しました』92
『こーれ、たまちゃんは全部わかってます』ラーメン捗る
『シロ君絶対に、ナニの意味がわかってなさそう』ソムリエール
『うん。普通に歌に興奮してくれたらいいなーって可愛い事思ってそう』996
『ばっか、そこが可愛いところなんだから、しーっ!』グランマ
『関係ないけど、あー様って結婚してても純粋だよね』
『わかる。だから結婚してても頭がちょっとアレな女に好かれちゃうんだよ』
『無防備と書いて白銀あくあと読む』ペゴ丸
俺はサブモニターとは反対側に置いてあるサブPCの方へと視線を向ける。
まず最初の企画はどれにしようかな?
阿古さんとも話し合ったけど、ネット配信にとって重要なのはリスナーさんと同じ時間を同じ場所で共有するライブ感だ。
だから今回は企画の準備だけはしておいて、最低限やらないといけない大まかな進行以外は特に決めてない。
「僕はね〜、やっぱりあのチビたまちゃんがいっぱい出てきたのは興奮したかな」
「あー、なるほどね」
残念ながら本番では見れなかったけど、リハーサルの時には確認しているので、どういう演出をしたかはわかる。
まさか、本番直前にあんな事になるなんて思っていなかったとはいえ、とあには申し訳なく思う。俺も大きなステージに飛び交うチビたまちゃんを見たかったなぁ……。
「あれって、一体どうなってるんだろうね?」
「本当にね。難しい事はよくわからないけど、ああいうのできたら他にも色々とできそう」
「うんうん。楽しみが広がるよね」
「ねー」
今回のライブ、とあと俺は、たまちゃんやシロとしてはお休みに近かったので、そっちとしてもライブとかできたらいいなぁと思った。
『なんだろうこの夫婦感』
『なるほどね。これが夫婦って奴なのか、了解』
『ふぁ〜』ツッキー
『こいつらちょいちょいイチャついてるよな』山田
『隙あらばいちゃついてくる〜!』
『かわいい奥さんと一緒にいるよりイチャイチャ感出すのやめてもらっていいですか?』乙女の嗜み
『こーれ、嫁なみ寝取られてます!』ラーメン捗る
『嫁なみNTRそうでウケるwwwww』グランマ
『嫁なみザマァwwwww』ソムリエール
『嫁とは?』ペゴ丸
『はぁ……はぁ……』ニャンコスキー
『うっ……心臓の動悸が……』
『ぐぅっ、持病の癪が……』
『※配信中に心臓の動悸、違和感を感じた方は、ベリル専門の心療内科がある最寄りの病院を受診をしてください。概要欄にて対応している最寄りの病院が検索できます』ベリルbot
おっ! この企画なんて良さそうだな。
俺は用意していた企画の中から一つファイルを選択して開く。
「シロはどの企画が良かった?」
「うーん、やっぱり、手話で歌った四季折々か、4人で歌った君は美しいかな。四季折々は、観客席でも手話してくれてる人がいたし、いつかはみんなでやれたら楽しいよね。君は美しいの方は、全員で歌ってダンス踊っていたのが最高だったと思う」
君は美しいは結婚式の時に4人で歌った曲だ。
慎太郎がめちゃくちゃダンス頑張ってくれたおかげで、最高のパフォーマンスをみんなに届ける事ができたと思う。
『君は美しいは本当にやばかった……』
『ねー!』
『衣装チェンジもあったから、みんな王子様っぽくてすごくかっこよかった!!』乙女の嗜み
『正統派プリンスあー様に、可愛い系王子様のとあちゃん、ちょっと腹黒っぽい王子様のマユシン君に、見た目だけはクールだけどパフォーマンスはホットだった天我皇子、どれをとっても最高だった』
『あの曲で何人の女の子が膝から崩れ落ちたことか』グランマ
『腰も膝もガクガクで、立ってるので精一杯だったよ』
『週刊漫画誌の編集長が言ってたけど、私達の知っていた王子の概念が変わる。これがスタンダードになるとか言ってて笑った。やっぱり白龍先生なんだよ』
『まさかアイコちゃん先生の描いていた世界が現実になるなんてな』
コメント欄を見ると白龍先生の名前がチラホラと出ていた。
俺は良いタイミングだと思ったので、その事についてみんなの知らない情報を明かす。
「あっ、ちなみに君は美しいのあの衣装とかステージ設定、パフォーマンスとかもアイコちゃんの監修だよ〜」
俺はサブPCのチャット欄を開くと、全体チャットで最初のコーナーでやる企画を提示する。
すると全方位から秒でいいよと返ってきた。いくらなんでもみんなレスポンス早すぎでしょ。
『やっぱりな』
『先生ー!!』
『アイコちゃん先生しか勝たん!!』
『アイコ、生きてるぅ?』ユリス
『先生、わかってるわ』
『流石は白龍先生、半永久的にメスから砂糖を吐かせるだけの事はある』グランマ
『白龍先生、一生ついていきます』乙女の嗜み
『やっぱり先生は大先生です』92
『頼む先生、早く掲示板に帰ってきてくれ』
『先生ちゃーん、何したか知らないけど、自粛なんてもう良いから帰っておいでよ』HP3
自粛か……。そういえば、あのデート以来、白龍先生とは桐花さんや阿古さんを通してメールのやり取りはしたけど、直接会って話したりとか直接連絡を取ったりはしてない。
すみませんでした。賠償金払います。出頭するつもりですと先生からメールが来た時はびっくりして、慌ててそんな事しなくて良いですよとメールを送った。すると、戒めのためにしばらく自粛しますと返ってきてからは、先生と直接のやり取りをしていない。
うーん、大丈夫かな?
「みんな、先生の事が大好きなんだね。多分だけど、この配信も見てくれてるだろうし、きっと先生も喜んでくれてると思うよ」
俺は近くにあったスマフォを手に取ると、先生、そろそろ帰ってきてよ。あれは俺だって悪かったんだし、奥さんにもちゃんと言ったからとメールを送った。
これで何か返信があればいいんだけどな。
「ところでシロ、何かやるつもりだったんじゃない?」
「おっと、ごめんね。1番最初のコーナー行ってみようか」
画面に映ったとあちゃんとシロの真上にドーンと大きな文字で企画名が表示される。
【2人に100の質問コーナー!】
ん? アレ? これ違うくない?
自分で間違ったコーナーを伝えてしまったんじゃないかと思って再確認したが、そんな事はなかった。
内部チャットを確認すると、どうやらスタッフの人が出すコーナー名を間違ってしまったらしい。
リスナーさんの反応を見ると、みんなものすごく盛り上がっていた事もあって、せっかくなので俺はこのままやりますとすぐに内部チャットに書き込んだ。
「はい、そういうわけで、リスナーから送られてきた100の質問に、たまちゃんと2人で答えていきたいと思います!」
「おー! どんな質問がくるのか、ワクワクだねー!」
うん、流石はとあだ。すぐに対応してくれる。
【シロくん、たまちゃん、はじめまして! 私は砂丘のある県に住んでいる社会人です。お二人は旅行は好きですか? 私は旅行するのが好きです。47都道府県、どこか行ってみたい県があったら教えてください!!】
おぉ、まじか……。
ついさっき47都道府県から12カ所をチョイスして、全国ツアーに行くって話をしたばっかなのに、最初から微妙に答えづらい質問がきちゃったな。
「いくらなんでも最初からタイムリーすぎでしょ」
「スタッフさん、これは流石に狙ってるよね?」
チャット欄ではこの質問に賑わいを見せていた。
『これは気になる』
『スタッフちゃんさぁ!』
『私の住んでるところに会いにきてー!』グランマ
『最初からすごいのきた!』
『みんな自分の県じゃなくても落ち込んじゃダメだよ』
『2人で旅行……うっ……』ニャンコスキー
『ぐわぁっ、また心臓が!!』
『ちょっとお薬とってきます』
『※配信中に心臓の動悸、違和感を感じた方は、ベリル専門の心療内科がある最寄りの病院を受診をしてください。概要欄にて対応している最寄りの病院が検索できます』ベリルbot
さて、どう答えようかな。
俺が悩んでいると、先にとあが質問に答えた。
「えーっと、僕は猫島がある県に行ってみたいな!」
「あー、確かにそれはいいかも。島ってのいうのもすごく楽しそう」
なるほどね。これはうまい回答だ。
猫島は1つじゃないから、この回答ならどこの都道府県かは言ってないから角は立たない。
「シロは?」
「本音を言うと47都道府県いろんなところに行ってみたい。だからどこか1つなんて選べないよ」
「シロは欲張りだなぁ」
「だって、どこの県も美味しそうな食べ物がいっぱいあるんだもの。うう……お腹空いてきた」
ぐぅ……あぁ、さっきちょっと食べたけど、やっぱりおにぎりだけじゃ足りなかったか。
本当はあんまり良くないけど、配信終わったらなんか適当に食べよ……。
『やったー! うちの県、猫島あるぞ! これで勝つる!』
『うちの県、島はあるけど猫島じゃないなぁ……』
『明日には全国の島が猫島になってそう』
『急に猫島アピールしだす自治体あるある』
『さっき近所の島のトゥイッターアカウントの説明欄が秒で猫島になってたw』
『草しか生えないwwwww』グランマ
『お犬さんカワイソス……』山田
『シロ君は食いしん坊さんだなぁ』只野
『シロ君のお腹をお姉ちゃんの手料理でパンパンにしてあげたい』
『むしろ私のお腹をシロ君でパンパンにして欲しい……』ラーメン捗る ※このコメントは削除されました。
『シロ君、お姉ちゃんと一緒にパンパンしよ?』ソムリエール ※このコメントは削除されました。
『※不適切なコメントは自動的に削除されます。何度も不適切なコメントを繰り返すアカウントは一定期間、コメントの投稿自体が禁止になるので注意してください』ベリルbot
何故か幾つかのコメントが削除されたみたいだ。
一体どんなコメントをしたのやら……。俺の周りには常識のある人が多いから、きっと変なコメントしてる人なんて1人もいないだろうけど、みんなちゃんとルールは守ってね。
画面の上部に、次の質問が表示される。
【シロくん、たまちゃん、こんばんは! 私は家庭科部に所属している女子高生です! 2人は好きな料理とか食べ物はありますか? 良かったら教えてください!】
ぐわあああああ、お腹の空く質問がきちゃった。
スタッフさん、これ狙ってるよね。そんなに俺のお腹を空かせてどうしたいんだ。
「うどん……」
俺は自然とそう呟いていた。
甘いお揚げを乗せたきつねうどん、たっぷりとワカメを乗せたわかめうどん、肉とネギで出汁をとった肉うどん、そして卵を落として月見うどん、深夜に食べるおうどんはとても背徳的だ。
一見するとさっぱりとしていい感じに見えるが、出汁まで飲み切ってしまうと塩分や糖分などを摂りすぎてしまう。そして出汁とはついつい飲み切ってしまうものなのである。
くっ、これはまずい。もっと他のことを考えて気を紛らわさないと!
「カツ丼、ハンバーガー、たこ焼き……」
あかーん! 全部食べ物や!!
何故か鞘無インコ先輩が乗り移ってしまう。
「あく……シロってさ。お仕事以外は結構……というかだいぶ優柔不断だよね」
「うっ……」
「あとなんかすごく押しに弱そう。特に女の子にぐいぐいこられたり、何かお願いされたら断れなさそうな気がする」
「ぐぅ……確かに」
言われてみると、なんとなくそんな感じがする。
『はいはい、押しに弱い頂きました』
『つまり押せば落とせるって事ね』
『最初、あくあ君って言いかけてるウケる』
『ふーん、なるほどね。勉強になります』996
『胸部装甲にも弱いし、押しにも弱い。これは確実に誘ってますね。』グランマ ※このコメントは削除されました。
『むしろそういうところはヨワヨワでいて欲しい。それならワンチャンあるって思えるから』
『わかるわ……』
『永遠に純粋なシロ君とあくあ君で居て欲しい』
『はぁ〜、妄想が捗ります』
『今、心の中でぐぬぬってそうwww』ペゴ丸
ぐぬぬ! ちなみに続くたまちゃんの答えは、カリカリだった……。
あ、なるほどね、そういう所はキャラ設定使うのか。
俺たちは、その後に続く質問にも順調に答え続けていく。
【多分カットされるだろうけど、ズバリ聞きます! お2人は大きな女性は好きですか? 私は身長とか、他にも色々と大きいです】
な、なんだってー!?
他にも色々と……? そこの所、ちょっと詳しくお願い出来ますかね? 僕もその真剣なんで。
「うーん、僕はそういうの気にしないけどね。マネージャーもすごく身長が高い人なんだけど、身長が大きいからって気にしたりとかしたことはないかなぁ」
確かに桐花さんは色々と、そう、色々と大きい人だ。
ジムで一緒になった時は、こっそりと胸部のものだったり、お尻から太ももの辺りにかけてとか、お腹周りだったりとか、本人にバレないようにコッソリとみてるが、どれも本当に素晴らしいものをお持ちである。
ちなみにこれは自分の名誉のために言っておくが、これは決して浮気でもなければ、いやらしい意味合いではない。
誰だって美術館に行って美術品を見るのは当然のことだし、俺も美的感覚を養うために芸術品を鑑賞しているだけでしかないんだ。
たまに鋭い視線が飛んできてドキッとする時もあるが、それも最近はちょっと自分の中で癖になってるのか、良いスパイスになってる。むしろもっと嫌そうな顔とか蔑んだ目をしてくれると……おっと、話が脱線しそうになった。
「これはね。好きとか嫌いとかね。そういう次元の話じゃないんですよ」
「また、なんか始まった」
「良いですか? 大きいとは、もうそれだけで包容力を醸し出しているんです。ほら、大きいという単語を聞くと、全てを包み込んでくれる暖かさを感じませんか?」
「ごめんねみんな。面倒臭いだろうけど、あく……シロの話をちゃんと聞いてあげてね」
「だからね。あえて言わせてほしい。大きい事の何がいけないんですか? 僕はね。大きい。非常にいいと思います。もちろん小さいのもすごくいいと思うんだけど、今日は大きいについて語らせてください。それこそ先ほど少し話に出ましたが、たまちゃんのマネージャーさん。彼女も色々と大きいんですが、僕はね、彼女の姿を会社で見かけるたびに嬉しい気持ちになるんです。今日も頑張ろう。明日も頑張れるぞってね。大きいのを見ると心がこう楽しくなるんですよ。だから僕は、毎日彼女の大きさに拝んでます。だから貴女にも、そして貴女を産んだお母様にもお礼を言わせてください。大きくてありがとう!!」
あ、あれ?
たまちゃんなんかすごくジト目になってない?
お、おおおお俺は、ただ励まそうとしただけですよ。そう、全然卑しい気持ちとかそんなのはなくてですね……。
『こーれ、姐さん死んでます』ラーメン捗る
『姐さんの死亡を確認!』ソムリエール
『ふーん、姐さんの事、そんな感じで見てるんだ』乙女の嗜み
『あく……シロくん、めっちゃ語るやん』
『たまちゃんわかってるwwwww』
『とあ様頑張れ!!』ニャンコスキー
『かっけー』山田
『あく……シロくんは大きい女性が好きなんですね』只野
『こいつほんまwww』ペゴ丸
『あのさ、私たちも気がついてないフリするの大変なんだよ?』つーちゃん
『コイツ、もはや隠す気すらないでしょ。バチあたれバチ』ゆかりご飯
『ごめん、あくあ様が襲われても仕方ないかと少し思っちゃった』グランマ
『守る方も大変だってわかってほしい(真顔)』HP3
『こういう時のあく……シロくんが1番好きかも。かわいい……好き』996
『この発言で何人の女性が救われたのやら』
『小さい方には語ってくれないんですか? いつも大きい方ばかり語っててずるいです……』ラピスラズリ
ものすごい勢いでコメント欄が流れていく。
俺たちは気を取り直してさらに質問に答えていった。
「はい、思ったより長かったこの企画もこれがラストです!」
最後の質問が画面の中にいる俺たちの頭上へと映し出される。
【まず最初に2人にありがとうって言葉を伝えさせてください! シロくんやたまちゃん、それにベリルのみんなに出会えてから毎日が楽しくて仕方がないです! それと、私からの質問なのですが、2人は感謝を伝えたい人っていますか? いたら教えてくれると嬉しいです】
この質問に対して先に答えたのはとあだ。
「僕は、色んな人に感謝を伝えたいですね。ベリルのみんなにも、スタッフの人たちにも、家族にも、そしてファンの人にもありがとうって言いたいです」
「たまちゃんと全く一緒です。今回のイベントも多くの人の協力があって成功する事が出来ました。個人的にも本当に多くの人たちに助けられたと思います」
「今も、僕たちが配信するために多くの人たちが会社に残ってくれてるしね。本当に感謝しても感謝したりないよ」
「うん、本当にね。みんな夜遅くまでごめんねー」
「それに今日、見に来てくれたお姉ちゃん、お兄ちゃんも、本当にありがとう!!」
「全ての人に感謝!!」
「感謝します!!」
俺はサブPCを確認して新しい企画をやろうとしたけど、スタッフの方からストップがかかってしまった。
あー、なるほどね。もうそういう時間か……。間違えちゃったスタッフの人がごめんなさいって言ってたけど気にしなくていいから返信する。だって誰にでもミスはあるしね。それをミスしたからと言って怒るんじゃなくて、みんなでカバーしあえたら最高だよね。
それに何事も勉強だし、やらなきゃわかんない事だってある。今回だって他にも色々と考えてたけど、このコーナーだってこんなに時間がかかると思わなかった。多分、余計に語っちゃったりした自分のせいってのもあると思う。ここも次から考えないとなと思った。
「ごめんねみんな、そろそろ終了みたい。でもせっかくだから、今からなんかもう一つ追加で質問に応えるからそれで許して!」
「ごめんねー。僕ももう目がしょぼしょぼしておねむだよ〜」
俺は送られてきた質問ばかりを集めた質問ボックスの中から一枚を引き当てる。
この質問ボックスの中に入った質問は一応チェックされた質問ばかりだから、変な質問は入ってないはずだ。
さて、何が出るかな?
【こんばんはー。ただの主婦です。ベリルから他のVtuberの子とかデビューしたりしないんでしょうか? すごく気になっています。あと、ベリルエンターテイメントに所属する男の子4人組の事がとっても好きなんだけど、4人の事を呼ぶ時のグループ名とかありますか? あったら教えてください!!】
グループ名……そっか。これは盲点だったかも。
確かに4人で歌ったりする事もあるし、あったほうが便利な気がする。
「最後の最後にとんでもない質問きちゃったね」
「ねー」
「まず最初の質問だけど、実は今日ここでもう1人追加で発表できたらいいなって思ってたんだけどね」
「うんうん、車の中で爆睡してたもんね。それはまた次の機会にしようと思ってるから、みんな楽しみにしててねー」「今日やれなかったコーナーも多いし、次は3人でやれたらいいなぁ」
「僕と、シロと、マユ……ンンッ、新人の子と一緒にね」
とあ、流石にそれはわざとすぎるだろ。
でもチャット欄は盛り上がってるからいいか。
「そしてもう一つの質問だけど……」
「うんうん」
「決められないので募集します!!」
「ちょっ、シロってば、そんなのあり!?」
「公式サイトや公式トゥイッターなど、良かったらファンのみんなで4人のグループ名を考えてください!!」
「いいのかなぁ。それ……」
「仕方ない。急に言われても思い浮かばなかったんだもん」
というか、はっきり言ってもう眠い。思ったより自分の思考が回ってない事に多少のヤバさを感じてる。
流石にライブの後に深夜配信するのはやりすぎだった。
「そういうわけで、これで本当の終わりです!」
「みんなー、今日は来てくれてありがとー!」
コメント欄に多くの文字が流れていく。
『うわあああああ、終わらないでえええええ』
『お姉ちゃん達をおいていかないでええええええ!』
『今日は本当にありがとう! 楽しかったよ!』ツッキー
『たまちゃんのために、お布団あっためときました』ニャンコスキー
『正直もう眠かったから助かる』山田
『これで明日のお仕事も頑張れます!』只野
『眠そうなあく……シロくんかわいい。きっと寝顔も凄く可愛いんでしょうね。ふふっ』996
『寝顔に悪戯できるチャンス!』ゆかりご飯
『夢の中で会いましょう』ラーメン捗る
『今日は幸せな夢が見られそう』ソムリエール
『今日は本当にお疲れ様でした』92
『ゆっくり休んでね』乙女の嗜み
『楽しい思い出をいっぱいありがとう!』グランマ
『良い夢みろよ!』ペゴ丸
あ、あれ? 配信閉じなきゃ……。
『ん?』ラーメン捗る
『ん?』ソムリエール
『ん?』グランマ
『ん?』996
『ん?』ペゴ丸
『ん?』HP3
『シロくん?』
『シロくんどしたん?』
『ちょっとみんな静かに!!』
『おい、嘘だろ……』
スゥ……スゥ……。
『寝息きたあああああああああああ! 捗るちゃん大勝利ィ!』ラーメン捗る
『うおおおおおおおおおおお、私たちの夜はこれからだぜええええ』ソムリエール
『あらあら、まぁまぁ、あくあ様は自分が可愛いって事ちゃんとわかってらっしゃるのかしら』996
『●REC』HP3
『後で高音質の録音データお願いします。言い値で買いましょう>HP3』グランマ
『ポンコツ嫁さっさといけ! 今がチャンスだぞ!!』ペゴ丸
『寝息に秒で反応してた捗るとソムリエやばすぎwwwww』
『数人めちゃくちゃ気がつくの早かったけど、鍛えられすぎだろw』
『こーれ、間違いなく住民です』
『これは二重奏さんの新たな素材になっちゃうな』
『よくないぞお前ら、掲示板のよくないとこが出てる』
『伝説の寝落ち配信回来ちゃああああああああ!』
『まさかの最後の最後にこれはすごい』
『やっば……寝息が……寝息が!』
『これ放送して大丈夫なんですか?』ラピスラズリ
『これはまずい。捗るじゃないけど、普通に捗っちゃう』
『誰か寝顔にいたずら書きしろ! 鼻の穴になんか詰めろ!』ゆかりご飯
『シロくん、本当にお疲れ様』只野
『たまちゃん戸惑ってる可愛い』
『てぇてぇ……』ニャンコスキー
部屋の扉が開く音が聞こえる。
誰だ? 誰かがそっと俺のマウスの上から掌を重ねると配信を閉じるボタンを押してくれた。
「もう……こんなところでねちゃダメでしょ」
俺はその人に言われるがまま、最後の気力を振り絞ってベッドの方へといく。
なんだろう、なんか知らないけど、ものすごくいい匂いがするし、顔全体が柔らかいものに包まれてる気がする。
「もう、さっきまでかっこよかったのに、こういうところが可愛いって言ってた人いたけどわかるな」
あーもうだめだ。何も考えられない。強烈な睡魔が俺を覆い尽くしていく。
「ふふっ、今日は本当にお疲れ様。ゆっくりと休んでね。おやすみ、あくあ」
その日、俺はとても幸せな夢を見た気がする。
その中で、顔は見えなかったけど誰かが俺に向かってありがとうと、そう言ってくれた気がした。
fantia、fanboxにてカットしたミスコンの話を投稿してます。
真決勝戦も今月中に投稿できたらいいなぁ。
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