天我アキラ、天を我の物にすると書いて天我。
我の母親はあまり体が強い方ではなかった。
そんな母に代わって幼い時に我を育ててくれたのは、農家をやっていたお婆ちゃんである。
『アキ君はほんと頭がいいわねぇ』
小学生の頃、我が満点のテストを見せると、お婆ちゃんはそのシワシワな手で頭を撫でてくれた。
我はその時のお婆ちゃんの笑顔と温かい手が好きだった事をよく覚えている。
だから我は勉強を頑張った。勉強するのは嫌いじゃなかったしな。
お婆ちゃんはそんな我に、いつも美味しいご飯を作ってくれた。
『アキラ君は本当にお婆ちゃんの事が好きなのね』
幼馴染で近所のお姉さんだった春香ねえともその頃からの付き合いである。
この頃になると母さんも体調が良くなってきて家にいる事が多くなった。
あぁ、なんて楽しいんだろう。
春香ねえが我に結婚を告げるその時までは、我にとっては幸せな思い出しかなかった。
『アキラ、東京は怖いところだって聞くけど、本当に1人で大丈夫? やっぱりお母さんも一緒に……』
『問題ない。1人で大丈夫だ』
心配してくれる母に対して、我はぶっきらぼうに答える。
別に母が嫌いとかいうわけではなかったが、体の弱い母を東京に連れて行くのはどうかと思ったからあえて突き放したのだ。
それに加え、春香ねえとの事で当時の我はジャックナイフのように鋭利だったからな。
東京の大学に進学を決めた時も、反抗期に酔っていた我は家族に内緒で受験した。
『アキ君、辛かったらいつでも戻ってきなさい』
『お婆ちゃん……』
見送りの時、お婆ちゃんは目にうっすらと涙を浮かべていた。
その顔を見て、胸が苦しくなった事をよく覚えている。
最近は腰が痛いと良く言ってたし、もうお婆ちゃんも歳だからそう長くないのかもしれないと、母さんから聞かされていた。もしかしたら……お婆ちゃんとはこれが最後かもしれない。
当時はそんな不吉な事を考えてしまった。
そして我が上京してから2年、お婆ちゃんは……。
「きゃああああああああ! シン様かっこいいいいいいいいいい!」
今、我の目の前で黛のステージに熱狂していた。
「シン様は、死んだおじいちゃんにそっくりでハンサムねえええ」
「お母さん、うちにお爺ちゃんなんていないわよ!」
我のお婆ちゃん、めちゃくちゃ元気だった。
お婆ちゃんはすぐにペンライトを切り替えられるように、全員分のペンライトを2本ずつ腰に装着した自作のベルトにホルダーをつけてぶら下げている。って、あれよく見たら魔改造したポイズンチャリスのベルトじゃ……。
座席に置いたバッグの中には全員分の団扇まで用意してあるし、あ、あれ? 腰は? 寿命は?
確かに母から送られてきた手紙には、お婆ちゃん最近元気になったのよと書かれていたが、元気になるとかそういうレベルじゃないような気がする。
なんか肌もテカテカしてるし、皺も心なしか減っているし、よく見たら隣の母も健康そうだし……。ううむ、細かい事を考えるのはやめとこう。
「春香ちゃん、大丈夫? 気分が悪くなったら言ってね」
「あ……だ、大丈夫です。夢子さん……」
視力2.5を超える我が目を凝らすと、母さんの隣には元気そうな春香ねえの姿があった。
春香ねえ……。春香ねえは今、DVの旦那さんと離婚して我の実家で心のケアをしている。
お医者さんや母から話を聞く限り、最初の頃よりもだいぶ明るくなったと聞いた。
あの頃の春香ねえの笑顔が見たい。そう思った我は、今日のライブ、思い切って春香ねえを誘ってみた。
『春香ねえ、ハロウィンのステージを見に来てみないか? 母やお婆ちゃんも一緒だし、途中で辛くなったら退席しても大丈夫だから』
春香ねえは新曲を披露する黛のステージをジッと見つめていた。
ファンのみんなが嬉しそうな顔、楽しそうな笑顔、喜んだ表情を見せる中、春香ねえだけが笑顔じゃない。
それでも心なしか体を少しだけ揺らせているような気がする。
きっと春香ねえも頑張っているんだ。
みんなと同じように楽しみたい。そう思ったから我の誘いにも二つ返事で応えてくれた。
あと少し、ほんの少し、きっかけがあれば、どうにかなりそうな気がする。
『天我先輩……俺、俺……』
バックヤードで顔を青ざめた白銀の手を取った時、白銀は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
白銀に何があったのかはわからない。ただ、白銀の顔を見て、春香ねえの顔が重なったんだ。
『白銀、一旦座って深呼吸しろ。ステージの事は心配しなくていい。みんなでどうにかする』
猫山がすぐに動き出したおかげで、我は少し冷静になれた。
はっきりいって白銀がそうなってしまった事の原因がわからない以上、我も周りの人間もどうする事もできない。
冷たいように聞こえるかもしれないが、我はこのステージ中に白銀が復帰できない最悪のパターンを考えた。
「天我さん、準備できました!」
「感謝する。あとは我に任せよ」
今の我にできる事は、白銀のやりたがっていたこのステージを最後まで無事やり遂げる事だけだ。
きっとファンのみんなもステージが進めばそのうち異変に気がつくだろう。
だからこそ、このワンダーランドのような夢の時間を少しでも長く楽しんで欲しい。
ファンのみんなを悲しませたくはない。白銀のその気持ちに応えるためにも、1分でも1秒でも、ファンの人たちを長く楽しませる。そのために我らはステージの上で最高のパフォーマンスをするだけだ。
「後輩、我もそちらに行くぞ!!」
スポットライトが天井へと向けられる。
「またせたな、お前たち! スーパーテンガタイムの時間だ!」
狼男をイメージした格好をしている我は、天井から吊り下げられたワイヤーを使ってジャンプするようにステージに舞い降りた。
スターズでは狼とは忌避される存在だが、この国に限って言えばそうではない。
古い書物にも、この国の王が道に迷った時に正しい道へと案内した神聖な生き物として書かれている。
「さぁ、我のショータイムを楽しむといい!」
モジャさんや猫山と3人で作曲したドライバーのBGM。それをこの日のためにメドレーリミックスしたものがステージに流れる。
「ぎゃあああああああああああ!」
「ヘブンズソードきたあああああああああ!」
「お母さんが言っていた! 天我先輩ならやるって!!」
「天剣! 天剣! 天剣! 天剣!」
「神代! 神代! 神代! 神代!」
「ポイズンチャリスの曲だああああああ!」
「お前らヘブンズソード好きすぎだろ……まぁ、私も好きなんだけど、天剣!」
ヘブンズソードがきっかけとなって、いや、白銀が見せるかっこいいアクションシーンを見て、我もやってみたいと思った。ちゃんとした肉体作りから始めて、プロの人からも指導を受ける日々、今日はそれをファンのみんなにお披露目する日でもある。
会場に現れた魔女の衣装に身を包んだ女性たち、我は派手なアクションでそれを薙ぎ倒していく。
ちなみに魔女の衣装を着ている人達はチジョー役で出演してくれている人達だ。
彼女たちは阿吽の呼吸で投げられたり倒されたりするプロなので、我がまだまだ甘い部分も彼女たちの派手なリアクションでカッコよく見せてくれる。
それでも今の我ができる最高のアクションで、かっこいい天我アキラの殺陣を演じ切った。
「こーれどうみても中身チジョーです」
「間違いないね、左にいた2人は2話と5話に出てた奴」
「魔女さんの首を噛み切るような素振りのシーンやばすぎでしょ」
「ちょっと待って、いくら払えば天我先輩に噛み付いてもらえるんです?」
「無自覚にエロいシーン入れてくるベリルは最高だぜ!」
「アキ君かっこいいいいいいいいいいいいい! 死んだおじいちゃんにそっくりよおおおお!」
「ていうかあの尻尾動いてない!? どういう技術!?」
「もふりたい、あの尻尾」
「はわわわわわ、天我君のお耳さんかわいいよおおおお」
アクションシーンは予々好評だった。
そしてここからはドラマパートである。
魔女を蹴散らした先に倒れている赤頭巾の少女を見つけた我は声をかける。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
魔女に襲われていた赤頭巾の少女役を務めるのは、ヘブンズソードの南カナ役でお馴染みの少女である。
「幼子よ、こんな夜道に1人で外を出歩くのは危険だぞ」
「ごめんなさい。でも……お婆ちゃんが」
聞くところの話によると、少女は山奥で1人暮らすお婆ちゃんに魔法の薬を届けにいく最中だったらしい。
魔女たちは少女の持つ魔法の薬が欲しくて、赤頭巾の少女を襲ったのだ。
「仕方ない。赤頭巾の少女よ、これも何かの縁だ。我は旅の途中だが、其方をお婆ちゃんのところまで送り届けてやろう」
そんなわけで、我と赤頭巾の少女の短い旅が始まる。
今にも崩れ落ちそうな吊り橋を渡るシーンや、少女を背中に乗せて崖を登るシーンなど、ハラハラするようなシーンに観客席も大きな声をあげて楽しんでいた。
「危ない!」
「きゃあ!」
「天我くんがんばれ……!」
「あー、みてるこっちがドキドキする」
「赤頭巾ちゃんもがんばれー!!」
「赤頭巾ちゃん、カナちゃん役の子じゃん!」
「わわわわ、これは流石に予想外」
「朗報、文化祭で劇を生で見れなかった私、今めちゃくちゃ感動してる」
時折、休憩するシーンなどを挟み、赤頭巾の少女と会話を交わして親睦を深めていく。
「オオカミさん! あれがお婆ちゃんのお家です!!」
足を挫いて歩けなくなった赤頭巾の少女を肩車する我らの目の前に、セットで作られた小さな家が見える。
しかしそこで再び魔女たちが我らの行手を邪魔してきた。
最初と同じように再び我と魔女のアクションシーンが始まる。しかし、それも途中までだ。
我が魔女に組み伏せられた事で赤頭巾の少女は一転してピンチになる。
「オオカミさんに意地悪しないで!」
赤頭巾の少女は観客席を見上げて手をかざす。
「お願い、オオカミさんを助けるために、みんな力を貸して! みんなの持っている赤い月の力を貸してほしいの!!」
赤い月の光、こんな言葉でわかるのかと思ったが、みんな一斉に我のイメージカラーである赤いペンライトを取り出して、一心不乱にペンライトを振り始める。すごいな……。
大丈夫、ファンの人ならすぐに察するからって本郷監督も言っていたが、まさにその通りだった。
「みんな、ありがとう! 悪い魔女さんは、オオカミさんから離れろー!!」
一言で言うと謎パワーである。赤頭巾ちゃんから放たれた謎の大きな赤い光が、我の周りに居た魔女たちをかき消した。そうやって魔女を排した我らはお婆ちゃんの部屋へと入る。
「お婆ちゃん、大丈夫!? これ、お婆ちゃんがよくなるかもって聞いて、魔法のお薬を持ってきたの!」
「ありがとう。これできっと私もよくなるわ」
魔法の薬で体調を戻したお婆ちゃん。
物語はハッピーエンドで締め括られる。
でもそれは、我と赤頭巾の短い旅の終わりを告げるハッピーエンドでもあった。
「オオカミさん、行っちゃヤダ!」
色々な事を一緒に乗り越え、親睦を深めた赤頭巾の少女。
離れ難いと思うのは当然のことだろう。
赤頭巾の少女は涙目で我に抱きつく。
「気持ちわかるわ……」
「私も赤頭巾ちゃんなら絶対に天我君と離れたくないもん」
「やっぱり女の子は小さくてもメスの本能で良い男が誰かってわかってる」
「あぁ、お婆ちゃんは助かったけど、この2人の旅はこれで終わりなんだ」
「アキ君、お婆ちゃんを置いていかないで!!」
「うう、せっかくのハッピーエンドなのに、最後お別れが待ってるのは辛いよ〜」
「でも仕方ないよ。赤頭巾ちゃんは赤頭巾ちゃんの、オオカミさんにはオオカミさんのする事があるんだから」
「いつかは4人もこうやって離れていくのかな……」
「ちょっと待ってよ縁起でもない!」
「いや、でも、今までとあちゃんも、黛君も、天我先輩もあくあ君についてくるだけって感じだったけど、今日のステージ見てたらなんかさ……」
「やめて、悲しくなる」
「待って、この4人が好きなのにそんなこと言わないで」
我は赤頭巾の少女と視線を合わせるようにしゃがみ込むと、フードをとって頭を優しく撫でた。
そして、少女の目についた涙の粒をそっと掬い取る。
「赤頭巾の少女よ。泣くでない。たとえ遠くに離れたとしても、我らはこのどこまでも広がる満天の星空の下で共にある。だから悲しくなった時、寂しくなった時は顔を上げろ。そうすれば我は、いつだって其方の隣にあるから」
ステージの両端にスポットライトが当たる。
そこにはピアノを弾く黛の姿と、ドラムを前に笑顔を見せる猫山の姿が照らされた。
美しく軽快なリズムのピアノサウンド。
ただひたすらに心地良く、それでいて疲れた心を癒し、澱んだ心を綺麗に洗い流してくれるイントロ。
聞いた人全てを明るく、心を軽くさせてくれるような曲だ。
「君は光だから、月のない夜空に一際輝く道標だから。そんな君の周りで輝いてみたいと思った」
我は衣装の中に隠していたマイクを手に取ると、赤頭巾の少女と視線を交わしたまま歌い始める。
旅の途中、いつだって明るく前を歩く赤頭巾の少女の事を思って歌った曲だ。
でもこの歌詞を書くとき、我は遠く離れて暮らすお婆ちゃんや母、春香ねえの事、白銀の事、猫山の事、黛の事、支えてくれる天鳥社長や本郷監督、モジャさんやノブさん、スタッフのみんな、ファンの人達の事、そして自分の事、色々な想いや、様々な願いをこの中に込めた。
「君は光だから、月のない夜空に一際輝く道標だから。光の届かない深い場所さえも君は明るく照らしてくれる」
春香ねえのことがきっかけで、一時期は自分で歌うことが出来なかった。
それでもギターは手放せなくて、歌えもしない曲ばかりを作るだけの日々が続いていく。
白銀……お前と出会った事で、そんな我は救われたんだ。
だから顔を上げて今の我のこの姿を見て欲しい。
もう2度と誰かの前でこうやって歌えるなんて思ってもいなかった。
それがどうだ! 我は今まさに、多くのファンを前にして歌っている!
「弱って翳る時もあれば、雲に遮られる日があってもいい。そんな日があっても誰も君を責めたりなんてしない」
ヘブンズソードの撮影の時、猫山との会話を黛と2人で聞いた。
あの時、白銀が猫山を救った言葉は、我の心にも響いたんだよ。
そしてきっとその言葉は、隣にいた黛にも影響を与えたのだと思う。
だからこそ白銀、お前が弱っているのなら、何かに挫けそうになっているのなら、今度は我が後ろから支える。
「だってこの真っ暗な世界で、君は誰よりも輝き続けているのだから」
我は立ち上がると空に向かって顔を見上げる。
なぁ、後輩よ、我の名前を覚えているか?
我の名前は天我アキラ、天を我のものとすると書いて天我だ。
「君は光だから、月のない夜空に一際輝く道標だから。君とならどこまでだっていける気がする」
都会の中心、それも渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、こんな奇跡的な事はあるだろうか?
我に釣られてみんなが空を見上げる。そしてびっくりして手のひらで口元を覆い隠した。
「夜空が暗くなるほど君はますます輝いていく。そんな君の周りでみんなが輝きを増していくんだ」
満天の星空、輝く星々が我らへと降り注いでいた。
星は一つじゃない。星の数だけ人生があると言うけど、まさにその通りだなと思った。
誰しもの人生が輝いている。そう教えてくれたのは後輩、お前だろ!
「弱って翳る時もあれば、雲に遮られる日があってもいい。そんな日があっても誰も君を責めたりなんてしない」
だから空を見ろ、この見事な満天の夜空を!!
見たか後輩! 我はどんな曇り空すらも晴らしてみせるぞ!
お前の事も、春香ねえの事も全部、全部受け止めてみせる。
なぜなら我はお前の、白銀あくあにとって最高にかっこいい先輩なのだから!
「だってこの真っ暗な世界で、君は1人輝き続けていたのだから」
春香ねえの顔を見たら、目に涙をいっぱい溜めていた。
そして次の瞬間、口元を押さえていた手を広げたら、その下の口元は笑っていた。
春香ねえだけじゃない。泣いていたファンの人たちもみんなが笑顔を見せている。
「君と出会えた奇跡に感謝する」
ピアノを弾く黛と目を合わせて微笑みを交わす。
「君と出会えたこの運命にありがとう」
ドラムを叩く猫山と視線を交わして笑顔を見せ合う。
「君は光だから、月のない夜空に一際輝く道標だから。あぁ、なんて素晴らしい景色だろう。
ふっ……我もやっぱりまだまだ若輩者だな。
さっきは冷静になって現実的だのなんだと言っていたが、そんなのはただの誤魔化しでしかない。
白銀……我は、お前と一緒にこのステージに立ちたいよ。
顔を上げて、目を見開いて、この我の前に広がる観客席を見てくれ!!
「君が照らした世界はこんなにも輝いている。君が照らした光でみんなが世界の美しさを知る」
観客席に瞬く無数のペンライトの光。みんなこの満天の星空に負けないようにペンライトを振っていた。
白色、紫色、緑色、赤色、水色、黄色……様々な色のペンライトの光がステージを美しく彩る。
確かに満天の夜空も美しいが、我はこっちの景色の方がいいと思った。
ペンライトの光は人工的なものかもしれないけど、その先に我は人の温もりのようなものが感じられたからだ。
全てを歌い終わり、割れんばかりの拍手が我らを包み込む。
「もうだめ……」
「なんか知らんけど涙が止まらない」
「3人とも成長しすぎでしょ」
「あー様抜きで、3人だけでこんなステージができるなんてずるい」
「この曲、もうどう解釈していいのかわからない」
「これってずっとみんな一緒ってこと?」
「それとも離れたとしても一緒ってこと?」
「もうどっちでもいい。だって4人は同じ星を見てるって事でしょ!」
「私はもうベリルを信じる」
「ここまできたら一蓮托生」
「ずっとついていく。あの日、あの時から私たちの選択は変わらない」
「ねぇ……あくあ君はどうして出ないの?」
「あくあ様がこんなに出ないなんて、なんかあったのかな?」
「ちょっと待って、嫌な予感がする」
「あくあくーん!」
「あくあさまー!!」
くっ……ここまでか。
ファンの人達もいつまで経っても出てこない白銀を不思議に思って、その名前をコールし始めた。
みんなが白銀の事を心配しているのだろう。不安げな声、心配そうな声、張り裂けそうな慟哭、色々な声が混じっていたが、その声はどれもが白銀の事を思っていた声に感じられた。
どうすればいい? どうするのが最善だ?
『天我君! とあちゃん! 黛君!』
インカムから天鳥社長の声が聞こえてきた。
『3人ともありがとう。もう大丈夫よ!』
瞬間、左右にいた黛と猫山の2人と視線が合う。
大丈夫、今更、何が大丈夫だなんて確認なんて事はしない。
その言葉だけで、我ら3人の心は夜の寒さを吹き飛ばすほど熱く燃えたぎり、高揚した体が武者震いしたのだ。
「俺の名前を呼ぶのは誰だ?」
思わず口角が上がりそうになる。
その声に、誰しもが息を呑む。
来るぞ!
我らだけじゃない。みんなが心の中で奴が来ると思った。
誰しも待ち望んだ、最強にて最高のアイドル!
白銀あくあのステージだ!
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