白銀あくあ、悪徳不動産屋に遭遇する。
月9のイベントに出演した翌日、俺はカノンと一緒に学校を休んでとある場所へと向かっていた。
「えーと……地図アプリで見るとここらへんだったような」
「藤不動産開発……あ! あったよ!」
俺は今日の目的地となる会社の近くでバイクを停めると、地図アプリを終了させる。
藤不動産開発さんは藤グループの一社で、家のことをしとりお姉ちゃんに相談したらベリル繋がりで薦められた。俺としても同じ藤グループの藤百貨店さんには、お仕事をしたこともあって何度もお世話になっている。だからカノンと相談して、藤不動産開発さんにお世話になることにした。
「んー……なんかさ、藤にしては、ちょっとボロくない?」
店構えを見たカノンは懐疑的な表情で首をコテンと傾ける。
確かにカノンの言う通り少しボロいような……。
「そう? 古い店舗なんじゃない? とりあえず入ってみようよ」
うーん、まぁ、細かいことはいいか。
俺はカノンと一緒に店舗の中に入る。
「いらっしゃいませえええええええ!」
自動ドアが開いたのと同時に元気のいい挨拶が聞こえてきた。
あれ? ここ不動産屋さんだよね? 間違えて八百屋さんか魚屋さんに来ちゃったかな?
「どーも、どーも、今日はどう言った御用件で……へっ?」
「えっ!?」
「あっ……」
かねきちの様に揉み手をしながら、高速すり足で出てきた見覚えのあるお姉さんを見て俺は動揺する。
「え、えみりさん!?」
喫茶店でバイトをした時に常連だった雪白えみりさん。
確か彼女は女子大生だったはずだけど、何で不動産会社にいるんだろう?
隣にいるカノンを見ると、俺と同様にえみりさんを見て固まっていた。
「は……ンンッ、えみり先輩、何でこんなところにいるんですか?」
「たし……じゃなくて、カノンさんは、どうしてここに?」
えっ? カノンもえみりさんと知り合いなの?
俺の視線に気がついたのか、カノンはなぜか嫌そうな顔で説明してくれた。
「メアリーの先輩です」
「あぁ、そっか、そういえばそうだったね」
確かに2人とも合同音楽会にいたし、同じ学校なら知り合いということもあり得るのか。
「実はさっきバイトに入ったばかりで、今日からここで働かせてもらってるんです。今は全員出てて私しかいないから安心してください」
ええっ!? むしろそれって大丈夫なの?
さっき入ったバイトの子をそのまま1人会社に残すなんて、まともな会社じゃ普通は考えられない。
後ろを見るとホワイトボードにはこんな言葉が書かれていた。
社訓十か条
目指せ! 毎秒ノルマ達成!!
ハイパーミラクルハッピー!!
残業なき労働に価値なし!!
ハイパーミラクルハッピー!!
みんなのために1週間の徹夜は我慢しよう!!
ハイパーミラクルハッピー!!
睡眠不足は名誉だと思え!!
ハイパーミラクルハッピー!!
体が鈍るから有給なんて要りません!!
ハイパーミラクルハッピー!!
遅刻1分で1万円の罰金を払います!!
ハイパーミラクルハッピー!!
上司は神様、上司の言葉は神からの啓示である!!
ハイパーミラクルハッピー!!
お前たちが喋っていい言葉は「はい」と「イエス」だけ!!
ハイパーミラクルハッピー!!
心なんて捨てろ、そんなものがあるから心が折れるんだ!!
ハイパーミラクルハッピー!!
お湯を使うな! 使ったやつは一回千円な!!
ハイパーミラクルハッピー!!
はい、アウトー!!
完全にブラック企業じゃん!
いや、でも……ここは仮にもあの藤グループ、蘭子会長にはお会いしたことがあるけど、あんなに優しくて穏やかな人がそんなブラック企業を経営しているとは思えない。うん、だからきっとあの後ろの社訓は冗談か何かだろう。
「えっと……実は不動産を探しにきたんだけど、どうやらお店を間違ったみたいなので……」
「いやぁ、お客さん達は運がいいです!! 今! ちょうどキャンペーン中で良い物件が揃ってるんですよ。いやあ、かわいい後輩でもあるカノンさんの新しい門出をサポートできるなんて幸せだなあああ」
「ちょ、ちょっと……!」
えみりさんは、帰ろうとしたカノンの背中をぐいぐいと押して無理やり席に座らせる。
その様子を見た俺は自然と笑みを零す。
2人の感じを見ていると、ただの先輩と後輩じゃなく結構仲がいいみたいだ。
その証拠に、カノンから外行きの取り繕った感じが全くしない。森川さんや、桐花さんに見せる表情と全く同じだ。
えみりさんの方も今日は知り合いのカノンが一緒にいるせいか、いつものお淑やかな感じと違って素っぽいところが出てて可愛いなと思う。
「私のおすすめ物件はこれですね!」
えみりさんは近くにあったファイルを開いて、おすすめの物件の情報が書かれた紙を俺たちの前に差し出す。
「なになに、戸塚区で21000円のアパート……って、これえみり先輩のお家じゃないですか!!」
「いいですか、ここはまず1番に家賃が安い! それに加えて私が隣のお部屋に住んでいるのでセキュリティの面でも安全です!! 24時間不眠不休もちろん無料であくあ様の事をお守りいたしますよ!! でも……本当のおすすめポイントはそれだけではありません」
机の上で肘をついて顔の下半分を隠すように手を組んだえみりさんは、真剣な顔で俺たちのことを見つめる。
俺とカノンもえみりさんの雰囲気に反応するように息を呑んだ。
「本当にこの物件をおすすめしたい理由は、お部屋の壁が薄くて隣のお部屋に声が聞こえることと、おトイレが共同だということです。しかも今なら本来24000円のアパートが、なんと!! 不人気すぎて3000円引きの21000円なんですよ。いやーお客さんは運がいい!! 私なら即決しちゃいますね!!」
「却下!」
あ……カノンに秒で却下された。
それにしても壁が薄いこととトイレが共同なんて、おすすめポイントなんだろうか?
うーん、俺がこういった事に疎いせいか全くもってわからない。
「そ……それじゃあこちらの物件はどうでしょう!!」
えみりさんが次に提案したのは普通のマンションだった。
物件説明の欄には、デカデカと最高の見晴らし、絶景のビューポイントと記載されている。
「へぇ、見晴らしがいいんだって。富士山とかが見えるのかな?」
「お、そういうのもいいかもね。えみりさん、この物件ってどういう景色が見えるんですか?」
えみりさんはなぜか手のひらを合わせると、聖女のような顔でにこりと笑う。
「墓地が見えます。この国の礎となったご先祖様達の守護霊がお二人を温かく見守ってくださいますよ」
「はい、却下ー!」
カノンが突っ込まなかったら間違いなく俺が突っ込んでたと思う。
それにしても、あの清らかで邪気のない笑顔を見ると、えみりさんの言っていることが冗談なのか本気なのかわからない……。
えみりさんはカノンに対して仕方ありませんねという顔をすると、物件の情報が書かれた新たな用紙をスッと俺たちの方に差し出す。
「それではこちらの物件もダメですか?」
「なによこれ? 同居人います? って! えええええええ!」
カノンは手に持った用紙をハラリと落とす。
「だめ、ダメったらダメだもん、怖いのは絶対に! 無・理!!」
俺はカノンが顔を背けた用紙を拾い上げると、書いてある内容に目を通す。
なになに……目に見えない同居人がいます? 1人でも寂しくないよ? って、これ完全に事故物件じゃねーか!!
しかもよく見たら壁に銃痕があるし、一体なにがあったんだこの部屋……。
「あ? その壁の穴、やっぱり気になりますか? それなら大丈夫ですよ。地図を見ると目の前の建物になんとか組っていう建築会社の事務所が入ってるみたいだし、業者も近いからご成約したらすぐにリフォームの手配をするつもりです!」
ああ……えみりさんはきっと心が綺麗な人だからわからないんだ。
壁についた銃痕の原因は、その目の前にある建築会社みたいな名前の事務所のせいですよと言ってあげたくなる。
「いや、いいです」
嫌な予感がした俺はもちろん即答で断った。だってそれ、確実に○○組とかいうこわーい人たちがやってる反社会的な何かじゃないですか……。そんな危険なところにカノンを住ませるわけにはいかない。
「ちょっと、それ貸して」
「あ……」
カノンは、えみりさんからファイルを取り上げるとパラパラとめくっていく。
「あ……あくあ、ここいいんじゃない?」
「ん、どれどれ?」
書いてある内容を見ると築浅めの物件で、セキュリティもしっかりしてる。
うん、これならいいんじゃないのかな。
「あーこれは……」
「何よ、この物件もお化けが出るとは言わないわよね?」
えみりさんは俺の方へとチラリと視線を向けると、ほんのりと頬をピンク色に染める。
「ここね、お化けは出ないんですけど、夜になるとその……20代の変質……お姉さんが出没するスポットですね」
「はい、却下、次」
カノンは先ほどの提案はなかったことにして、またファイルを捲る。
俺個人としては、20代のお姉さんが変質者のことがとっても気になったが、そんなこと言えるわけがない。もちろん俺にはカノンがいるから、そういうことではないんだけど、男としてはちょっとな……うん。
「こことか良いんじゃない? 治安の良い地域だし交通の便も良さそう」
うん、確かに書かれている事は問題ないけど、最後の要注意事項が気になるな。
俺とカノンは、えみりさんの方へと視線を向ける。
「あーそこね! 夏頃にあった事件覚えてる? 26歳のマンション管理人が、同じマンション内の24歳、22歳、19歳の住民3人と共謀して、当時そこの部屋に住んでいた16歳の少年を4人で監禁した事件の現場です」
「うん、普通に却下だよね」
カノンは笑顔でえみりさんに書類を突き返す。
あー……そういえばそんな事件あったね。ちなみに俺がニュースで見た限りは、みんなお胸の大きな美人なお姉さんばかりでした。あんな綺麗な人たちでもそんな事件を起こしちゃうなんて、いまだに信じられない。
「あのさ……まともな物件はないわけ?」
俺もカノンの発言に頷く。
えみりさんには申し訳ないけど、いくらなんでも訳あり物件が多すぎる。というか訳あり物件しかない。
「そもそも、ここって本当に藤グループ系列の不動産? 藤ならこういうの扱ってなさそうなんだけど」
「いやでもここにちゃんと藤不動産開発って……あ!」
奥にあるポスターをよく見ると、最後の文字が発じゃなくて拓、藤不動産開拓となっていた。
え? 地図間違ってないよね?
「あー、なるほどね」
えみりさんは俺が手に持っていた携帯の地図アプリを覗き込む。
「藤不動産開発ならこの一本後ろの通りです」
ま、紛らわしすぎる。確かに地図を拡大してよく見ると、ぺったりとひっついた隣のビルをマーカーが指していた。
「ほらね、やっぱり色々とおかしいと思った。えみり先輩も、こんな明らかに胡散くさそうなところじゃなくて、バイトするにしても、もうちょっとまともなところを選びなさいよ」
「いやあ……でもここ日払いだし給料いいしなぁ……」
カノンとえみりさんの話に耳を傾ける。喫茶店に来てくれていた頃から薄々勘づいてはいたけど、やはりえみりさんは苦学生のようだ。うーん、俺も何かしてあげられたらいいのだけど……あっ! そうだ、あれがあった!!
「えみりさん、お仕事探してるんだよね?」
「う、うん」
「それなら紹介したい仕事があるんだけど……」
「お受けいたします」
えみりさんは俺の言葉にやや被せ気味に即答する。
「えみりさん……せめて仕事の内容くらいは確認しようよ」
「あくあの言う通りよ。姐……桐花さんにまたお説教されてもいいの?」
「うっ……」
えみりさんって、桐花さんとも知り合いなんだ。まぁ、カノンと桐花さん、えみりさんとカノンが仲がいいのなら繋がっていてもおかしくないのかな?
あれ? そういえばえみりさんって、誰かに似てるような……うーん、つい最近あった誰かと、ここまで出てるんだけど出てこない……俺の思い過ごしかなあ?
「えみりさん、よかったらだけど今度の俺のPV出てみない?」
「へっ?」
「ふぇっ?」
えみりさんと、なぜかカノンも口を半開きにして間の抜けたような顔で俺の事を見る。
まるでぼーっとしている時の森川さんのようだ。あ……そういえば森川さんは無事に帰国できたのだろうか? カノンも桐花さんも放っておいて大丈夫って言ってたけど本当かな。えみりさんの事も心配だが、そっちもそっちで心配だ。
「うん、えみりさんならイメージにぴったりな気がするし、本郷監督と阿古さん、モジャさんとノブさん、ジョンの5人に確認してからになると思うけど多分大丈夫だと思う」
他の人に決まっていたらいけないから、俺はすぐに連絡を入れて確認を取る。
ついでに出演料をその日にもらえないか聞いてみたところ、それも含めてOKだった。
「大丈夫だったよ。それじゃあ近いうちに俺と一緒にスタジオに来てくれる? それでよかったらすぐに撮影するから」
「うん、ありがとう!」
よかったよかった……って、アレ? 何か大事な用事を忘れてるような気が……。
「って、そうじゃなくてお家!」
「あっ……そうだ。家探しに来てたんだった」
時計を見ると、来店を予定していた時間を過ぎている。
俺とカノンは慌てて席から立ち上がった。
「えみり先輩には悪いけど、向こうと約束があるから、私たちはそろそろ行くね」
「別に気にしなくていいって、それよりも2人ともありがとね」
俺たちはえみりさんと別れを告げると、バイクを押して後ろの建物へと回る。
「今度こそ藤不動産開発みたいね」
「本当だ……店構えからして違う」
改めてバイクを駐車場に停めた俺たちは、今度こそ本当に藤不動産開発の中に入る。
「ようこそおいでくださいました」
建物の中に入ると、なぜか社員一同で俺たちをお出迎えしてくれた。
な、なんで? 俺が戸惑っていると、中央にいたお姉さんがにっこりと微笑む。って、あれ!? あの人って……。
「あくあさん、それと殿下……いえ、カノンさんもお久しぶりです」
「秋山さん!?」
「幸さん、久しぶりです」
秋山幸さん。母さんの教室に通っている生徒さんでカノンの友人の1人だ。
あれから色々あって、あのケン君との結婚は破談になったと聞いている。
なぜ、彼女がこんなところにいるんだろう?
「私、お婆さまの紹介もあって、ここで働かせてもらっているの。あっ、どうぞこちらへ。お席にご案内します」
秋山さんの話を聞くと、どうやら彼女は藤の会長を務める蘭子さんのお孫さんのようだ。
まだ大学生だった秋山さんは、結婚が破談になったことを噂されるのを気にしてか一旦大学に休学届けを出して、蘭子さんの紹介もあって夏前から藤不動産開発で働いているらしい。
「ごめんね。担当が新人の私なんかで」
「ううん、むしろどこかのは……知らない人より、幸さんの方が全然頼りになるもの」
「俺も秋山さんが担当で良かったです」
秋山さんは俺たちが気を遣って言っているのだと思ったのか、少し申し訳なさそうに微笑んだ。
良かった。一応母さんからその後の話も聞いてたけど、秋山さんがちゃんと笑えている事を確認できて俺はホッと胸を撫で下ろす。
「ふふっ、ありがとう2人とも。ところでどういう物件がいい? セキュリティがしっかりとしたところがいいわよね?」
「お化けとか変質者が出ないならもうどこでもいいわ」
俺もカノンの言葉に無言で頷く。
「お化け? 変質者? なにそれ? まぁいいわ。それならおすすめの物件があるんだけど、これなんてどう?」
秋山さんは手慣れた感じで幾つかの物件を紹介してくれた。
うん、前のアレがあったとはいえ、どれもまともな物件で安心する。
「色々ありすぎて逆に悩むわね。うーん、どれもいいと思うけど、これなんて良さそう」
「じゃあ、それ見に行ってみましょうか。一度見た方が色々と必要なものも解るしね」
俺たちは一旦店舗を出ると、秋山さんの運転する車に乗って目的の物件へと向かう。
場所は東京都の中心、千代田区の平河町にあるタワーマンションだった。
「おぉ……!」
何を隠そう俺はタワーマンションになんて住んだ経験はない。
ここは会社のある丸の内も近いし、何よりも近くに皇居があるおかげか警察の巡回も多く、周囲もあまり騒がしくなくて落ち着いて住めるかなと思った。
「ここがお部屋になります」
秋山さんに案内されたのは最上階のお部屋だった。
それもなんとワンフロアー丸ごとひとつの部屋らしい。
流石に広すぎるんじゃないかと思ったが、秋山さん曰く、セキュリティーの面を考えると、男性が住むなら結婚していてもワンフロアーがいいと言われた。うーん、俺はともかく元王女であるカノンの事も考えると、そっちの方がセキュリティ的にも安全かもしれない。
「お、おお!」
キッチンフロアが広くて感動する。パントリーも広いし、これなら色々な調理家電が置けそうだし収納できそうだ。
っていうかここ、天井たかっ! 俺はキッチン廻りを一通り確認し終えると、リビングに出て天井を見上げる。
「へっ?」
ちょっと、待って、なんか2階らしきものがあるんだけど気のせい!? よく見ればリビングの端っこに階段がある。どうやらこれは気のせいではないらしい。つまり1フロアーどころか2フロアーまとめてひとつのお家になっているそうだ。
ほえ〜、俺は口を半開きにしたまま、秋山さんに案内されて他の部屋を見て回る。うん、なんというか、本当に色々とすごかった。一体いくらするんだろうここ……。
「ちなみにここのお部屋は藤蘭子会長所有ですから、あくあさんが気に入ったら無料で貸し出すようにと伺っております」
「いや、流石にそれは申し訳ないので、ちゃんとした料金を払わせてください」
ちなみに賃料は500万を突破していた。年間にすると6000万以上……うん、今の自分だと森長さんとの年間契約料だけでも払えない金額じゃないのが余計に恐ろしい。俺はカノンと相談して、ここに住むことを決めた。
「でもちょっと部屋は多かったかな」
「え? 他にお嫁さんが来ることを考えたら、むしろこれくらいはいるんじゃない?」
「えっ?」
「ん?」
他にお嫁さん……カノンは一体なにを言っているんだろう?
「なるほどね……記憶喪失だとは聞いていたけど、どうやら色々と後でちゃんと話し合う必要があるようね」
なにやらカノンはボソボソと呟く。
「ねぇ、あくあ、ここにお引越ししたら、ちょっと2人で色々と話し合おっか」
「ん? いいけど、どうかした?」
「ちょっとね。なんかこのままあくあを放置しておくと、不幸な女の子が増えそうな気がするから、お嫁さんの私がなんとかしないとねって思っただけだから」
俺が女の子を不幸にする!?
一体何だろう。こういうのは案外無自覚でやらかしていることも多いから、自分では気がつかない事も多い。
そういえば前に、とあからも似たようなことを言われたような気がする。
俺とカノンは秋山さんと一緒に会社に戻ると、契約の書類にハンコを押してその日はそれぞれの自宅へと帰った。
帰宅してからもカノンが最後に言った言葉がどうにも頭に引っかかる。
「集中……しないとな」
家に帰った後もカノンから言われた言葉を考えたが、どこがどう女の子を不幸にしてしまうのか見当がつかなかった。かといって俺にはボーッとしている暇はない。今晩からは、延期したCreamRAWカップ、通称CRカップのスクリムが再開して、週末の土曜日には大会がある。
俺はパソコンをつけると配信のための準備をし始めた。
カノンから言われたことは気になってるけど、まずは今日配信を見にきてくれるみんなを楽しませなきゃな。
「よしっ、やるぞ!!」
俺は気持ちを切り替えると、久々に配信ソフトを立ち上げた。
姐さんの休日、公開しました。
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