あくあとカノンの初めての夜
すみません予約投稿が1日ずれてました。
後、ちゃんとしたのが読みたくて年齢が適合してる人は大人しくノクターンにおこしやす〜。
こういうところに限らず、本編の過激な表現もこのまろやか版ではだいぶ削ってます。
こちらでは基本的に感想を返しませんが、ノクターン版では感想返ししております。
「ふぅ……」
結婚式も披露宴も無事に終わる事ができてホッとする。
最初はカノンも少し緊張していたみたいだけど、式が進むにつれすごく喜んでくれた事が何よりも嬉しかった。
それに加えて最後には参加してくれた人達が、みんな笑顔になってくれたのがよかったと思う。
「それにしてもあんなことになるなんてな」
俺はさっきのことを思い出して笑みをこぼす。
披露宴の途中まではテレビで放送されてたみたいだけど、実はその後も色々あった。
例えば、カノンと一緒にピアノを連弾したりとか、ノブさんとモジャさんと本郷監督が作った結婚おめでとう映像が流れたりとか、とあと慎太郎によるビンゴゲーム大会とか、天我先輩による子供たちとのジャンケン大会とか、目隠しのシスターさんによる茄子を使った大道芸とか、桐花さんが無表情でやる完璧な宴会芸とか、らぴすとしとりお姉ちゃんがやった俺についてのクイズ大会とか、森川さんがやらかして阿古さんが巻き添えくらったりとか、とにかく和やかで楽しかった思い出しかない。
ちなみに母さんはフューリア女王陛下と飲み比べ対決して圧勝していた。息子の仇はとったわよと叫んでいたが、俺は死んでないからな! ちなみにフューリア女王陛下は泣き上戸で、私もう女王なんてやりたくないとメアリー殿下に泣きついていた。女王陛下にもなると色々と大変なんだな……。
とはいえ無事に披露宴を終えることができたが、俺にとっての問題、真の闘いはここからだ。
「さてと……そ、そろそろ行くか」
カノンとの初夜……俺が前世から大事に守り抜いてきたものをついに捨てる日が来たのである。
さっきすれ違ったペゴニアさんに、お嬢様は初めてなのでお優しくお願いしますと言われたが、こっちだって初めてなのだから、果たしてそんな余裕はあるのだろうか。そもそも緊張しすぎて、ちゃんとできるかもわからない。
そんなことを考えていたら、私がお手伝いましょうかと茶々を入れられたが、純粋な男子を揶揄うのはやめて欲しい。そもそも俺にはカノンがいるんだから、そんな浮気みたいなことできるわけないでしょ!
「ここか……」
実はこの部屋の扉の前に立ったのは今日で3度目だ。
つまりさっきから俺は部屋の扉の前を3回くらいうろうろと別の場所と行き来している。
それくらい俺も緊張しているのだ。だが、そろそろ覚悟を決めなければならない。
カノンもお風呂から出て準備ができてるだろうし、待たせるのはかわいそうだ。
覚悟を決めろよ、白銀あくあ!
俺は気合いを入れ直す。
「行くか」
覚悟を決めた俺は、カノンの部屋の扉をノックする。
「カノン、入るよ」
「う、ううううん……」
俺はゆっくりと扉を開けて、いつものように、そう……普段通りを装って部屋の中へと入る。
◆
「お、おおおおおかしいところないよね?」
お風呂でしっかりとみんなに磨いてもらった私は、鏡の前で何度も何度もチェックを繰り返す。
さっきペゴニアには、大丈夫ですよ、お嬢様はいつもお綺麗ですなんて言われたけど、それでもやっぱり心配だ……。
「あっ……そうだ、これも吹いておかなきゃ……」
私は結婚祝いで捗るがくれた謎の液体が入った香水をベッドの近くでふりかける。
本番で緊張しなくていいように、リラックスできる天然由来の成分で作った香水らしいけど本当に効果があるのかな? で、でも、確かになんだか良い匂いがするし、何もしないよりマシだよね。
捗るは他にももしもの時のために、気分が上がる粉もくれたけど、これは絶対にやばいやつでしょ……。見なかった事にしておこうっと……。
そういう意味では、普通に痛み止めとか、潤滑ジェルとかを結婚祝いでくれたティムポスキーは意外とまともなものをくれたんだよね。
ちなみに私が着ている可愛さマシマシの勝負下着は、姐さんからの結婚祝いだ。やっぱり姐さんは気が効くよね。それにしても姐さん……こういう可愛い下着が好きなんだ。今度私も姐さんにとびっきり可愛いのをプレゼントしよっと。
「よ、よーし、これで準備万端! いつでもドーンときなさいよね!!」
うん、なんかいけるような気がしてきた。
……。
…………。
………………。
はい……全然ダメでした。
ううん、正確にいうと成功するには成功したけど、それは終始あくあがリードしてくれたおかげであって、私が何かをできたわけではない。だからこれでよかったのかという微妙である。
しかもあくあは夫婦なのに、私との間に子供が欲しくないのかもしれません。
「カノン今日はいっぱい頑張ったね」
あくあは私の横に寝ると、優しく抱きしめて髪を撫でてくれた。
「だから今日はもうゆっくり休んでね」
「う、うん……」
うー……幸せだけどなんかちょっとモヤモヤする。ってこんな贅沢言っちゃだめだよね。
あくあに嫌われるかもしれないし、結婚してくれて、こんなにすぐしてくれたのに、これ以上の高望みしたら他の女の子たちにも申し訳ないかも……。
「んん……」
いつの間にか眠っていた私の意識がゆっくりと覚醒していく……。
っ! 私は腰の痛みで一気に目が覚めた。
「大丈夫、カノン?」
「あ……」
目の前に居たあくあの顔を見て、急速に私の顔が熱くなる。
ま、待って、寝起き! 寝起きだから見ないで!!
私は咄嗟にあくあから顔を背ける。寝返りをうとうとしたけど、腰の痛みでできなかった。
「み、見ないで……!」
「どうして?」
「だ、だって、寝起きだし変な顔してるかも……それにお風呂だって入ってないし……」
「そっか、じゃあ一緒にお風呂に入る?」
えっ? あくあの言っている意味がわからなくて私は一瞬固まる。
するとあくあはベッドから降りると、上にかけていたお布団を剥ぎ取って私の体をそっと優しく抱き上げた。
「ま、待って、一人で入れるから!」
「ん? 本当に? 一人でちゃんと浴室まで行ける?」
う……はっきり言って、無理したら歩けると思うけど、そんな不格好な姿をあくあに見られるのも嫌だ……。
「そ、それは無理かもしれないけど……」
「それじゃ、一緒に入ろうか」
あわわわわわわ、あくあは私の体を抱き上げたままお風呂場へと向かう。
そ、その抱き方は、あくあが近くて心臓に悪いから自重して! で、でも……定期的にはしてほしいかも。
あくあは私を椅子に座らせると、バスタブの中にお湯を溜め始める。
ま……待って、何か嫌な予感がするけど、それが何なのかわからない……。でもこれは確実に何かやらかす流れだ。
「カノン、最初は優しくするからもっと強くして欲しかったら言ってね」
えっ、えっ、にゃ、にゃにするの!?
あくあは私の髪にゆっくりとシャワーをかける。
うえええええええっ!? ちょ、ちょっと待って! もしかしてあくあが私の髪を洗ってくれるってこと?
え? それって有料サービスだったりとか……ふぁ。私より大きな手のあくあが、優しく私の髪を洗ってくれる。ペゴニアに洗ってもらってる感覚と全然違う……。そりゃ比べたら、ペゴニアの方がうまいけども。そうじゃない。そうじゃないのよ!!
「お嬢様、痒いところはありませんか?」
「にゃ……にゃいです……」
あくあはシャンプーだけじゃなくって、トリートメントやコンディショナーも同じように丁寧にしてくれた。
ふぁー……わ、私だけこんなに幸せでいいの? こんなに幸せだと幸せ死しちゃうかも。
「じゃあ、次は体を洗おうか」
「ふぁ、ふぁい」
もうされるがままである。流石に恥ずかしかったから前を洗うのだけはなんとか阻止して自分で洗ったけど、私の足を綺麗に洗ってくれている時のあくあを見てると、せっかく洗った部分を汚してしまいそうになった。
最後に洗顔をした私は、あくあに抱き抱えられるようにしてバスタブの中に入る。
ふぅ……落ち着きましょう。そう落ち着くのよカノン!!
え? 待って、結婚したら毎日こんなのが続くの?
朝からこんなにもイチャイチャして、1日の最後には○っ○○するってことでしょ?
無理じゃん……そんなのもう絶対に無理じゃん。私、幸せすぎて爆発するよ?
ちょっとこれは……早急に、早急に! あくあに他のお嫁さんをもらってもらわないといけないかも。
私だけじゃこの幸せを受け止めきれない。幸せを共有して言い合える人がいないと……というか私だけがこんなに幸せでいいのだろうかと、世界中の全ての女性に申し訳ない気持ちになって、さすがの私も心が痛む。嗜みちゃん大勝利とかふざけたことを言ってる場合じゃない。
お風呂から出てもあくあは優しくて、私の髪を丁寧に乾かしてくれたり、私の髪を三つ編みにしてくれたりした。って、あくあってそんなことまでできるの!?
「あー、実は妹のらぴすがお風呂から出た後にやってたから、慣れちゃったんだよね。で、その流れでしとりお姉ちゃんや母さんにもたまにやってたから、ペゴニアさんには負けるかもしれないけど安心してくれ!」
え? 待って、らぴすちゃん、毎日こんなことされてたの!?
白銀家やばくない? ていうかソレに耐えられるらぴすちゃんしゅごい……これはもう明日から、らぴすちゃんじゃなくって、らぴす先輩って呼ばなきゃいけないかも。
「あー……でも最近、思春期なのか恥ずかしがってさせてくれないんだよね」
そりゃそうだよ!! 私は心の中であくあに突っ込んだ。
「はぁ……た、助かった……」
あくあが用事で離れた隙を狙って一人でだらけていると、捗る達が部屋にやってきた。
「で、どうだった……?」
だらしない顔でにやける捗るを見てドン引きしそうになるけど、気持ちはわかるし、ついこの前まで自分も完全に同類だったのでなんとも言えない気持ちになる。
「い、言えるわけないじゃない! で……でも、すごかった」
「「「おぉ……」」」
みんなから、感嘆の声が漏れる。
私の初体験は私にとっての大事な思い出だ。だからこれ以上は言いたくないから、わかりやすく話を違う方向へと振る。
「って、そんなことよりも! 捗る、貴女何やってるのよ……」
シスター服を着た捗るをみんながジトーっとした目で見つめる。
むしろ私のことよりも問題はこっちでしょ。
「あー……実はですね」
捗るは今までの経緯を私たちに説明する。そして全員で頭を抱えた。
「ちょっと待って、なんでそんなことになるのよ」
「いやぁ……私の溢れ出る才能と魅力のおかげ、とか? てへっ!」
こ、こいつ全然反省してない……。
ちなみに姐さんの顔を見るのが怖くて、捗るはおろか、私とティムポスキーですらもはや目を合わせない。ただポキポキと何かを鳴らす音だけが聞こえる。
「捗るさん……」
「すっ、すみませんでしたあああああああああああ!」
見事なスライディング土下座である。最初から謝るなら変なことしなきゃいいのにと思うけど……話の経緯を聞いたら、誰かを助けるためだったのだから別に悪いことをしてたわけじゃないんだよね。
「別に怒っているわけではありません」
「えっ?」
怒ってない? 私はティムポスキーと顔を見合わせると、姐さんの方へと視線を向ける。
「寧ろ困っていた女性を助けたのだから、捗るさんの行動は誉められるべきです。でも……自分で拾ってきたペットは、ちゃんと最後まで自分で育てないといけないわよね」
「は……はい。お、おっしゃる通りだと思います」
ペッ、ペット……姐さんにとっては、あの変な集団もペット感覚なんだ……。
まぁ確かにパンケーキちゃんはペットっぽいかも。
「私も姐さんの言う通り、ちゃんと捗るが管理した方がいいと思うわ。多分だけど、放置してたらそのうちとんでもないことになりそうだもん」
「ソ、ソウデスヨネー」
片言で喋らないでよ。捗るが片言になるともうチジョーにしか見えない。って、聖あくあ教ってリアルにチジョーなんじゃ……でもあの人たち、自分達はSYUKUJYO側だって思ってそう。まぁ確かに悪い事じゃなくて良い事をしてるんだけど、うーん、正義の味方? なんか違う気がする。
ソレに、今回の事とかスターズが落とされる一歩手前みたいなもんじゃん。冷静に考えるとやばくない? かといってお母様に相談してもなぁ……ここはやはりおばあちゃんかな?
そんな事を考えていると、捗るが私の顔を覗き込む。
「ん……嗜み、お前なんか首のところ蚊に刺されてるぞ?」
「えっ、捗る、どこ? どこ?」
ティムポスキーが貸してくれた手鏡で蚊に刺された場所を確認する。すると、首筋に赤い跡がついていた。
あっ……これって……。
「こ、これ、あくあの唇の痕……」
「はぁ!?」
飛びかかりそうになった捗るを姐さんが秒で押さえる。
「ちょ、ちょっと待って姐さん、カノンも、何も何もしないから」
いや、絶対に嘘でしょ!? さっき、ギャグ漫画みたいに飛びつこうとジャンプしたじゃん!
「嘘じゃないって! ちょ、ちょこーっとでいいから、嗜みさん、その部分に私の唇を! いや、1ペロでいいんでペロペロさせてください! そうすれば、私もあくあ様と間接的に繋がれる! ぐへへ!!」
「ほら、やっぱりアホなこと考えてるんじゃない!!」
捗る……せっかくさっきは姐さんに叱られなかったのに……。
本能に忠実すぎるが故に結局姐さんに説教される友のことを、私とティムポスキーは悲しい目で見つめる。
ちなみにもうお風呂に入った後だから意味ないよと捗るに言ったら、綺麗にその場に崩れ落ちた。
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