表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白呪記  作者: 楽都
33/39

暗転1 ―番外編―

ブログで書いた番外編を載せときます。

ラクガキをフンフン♪と書いてたら、この話を思いつきました。

すいません、先の物語がどうしても作れないので、苦し紛れに・・・。

暇つぶしにどうぞーー。



 暗転1 番外編


「なあ、リオ・・・」

「ニャ?(どうしたの? ガウラ)」


 今日一日、ポネリーアと言う、港に面した町で私とガウラは奔走していた。

 ディッセントの王様から、傷付いた民の心を救って欲しいとお願いされたからだ。

 勿論そのお願いを私は受け入れ、フリージアちゃんと近衛騎士のイルさんライさん、そして守護獣のガウラと私を入れた五人で、町の中にある臨時救護テントまで足を運んでいた。

 


「黒ブチ猫のティム・・・あいつは幸せ者だな。守る者を見つける事が出来たんだ。きっと、あそこに住んでる猫達は幸せになれる」

 

 一段落着いた後、騎士団長のケネルさんと副団長のノキアさんと別れ、町の外にある丘の大木へ、私とガウラはゆっくり歩いた。

 

 太陽が沈み、辺りはすっかり漆黒が支配する。

 その夜空を照らすように、満月が雲から顔を覗かせていた。

 木の幹へと近づいた時、肌寒い風が吹く。

 私の頭へと葉っぱがひらひら落ちて来て、その葉をガウラが優しく取ってくれた。 


「ニャアアッ(そうだねぇ。すっかり親ネコの雰囲気出てたもん!ティムなら、野良でもたくましく生きてけるよねぇ・・・)」

「オレも、リオと出会えて良かったと思う。興味の無かった世界が知りたくなったんだぞ? リオが知ってる事をオレが知らないと落ち着かないから、積極的に言語を覚えようと努力したのは何年振りか・・・」

「ニャアアッ(そうだったの?)」

「“トイレ” と “年季の入ったおっさん” を覚えた。実際国王にも使ったし、これでリオの守護獣としても誇れる事が出来る」

「ニャ(え・・・)」


 頷き、自身に満ちてふんぞり返った様子のガウラに私は意識が遠のいた。

 

(も、もっとタメになる言葉を教えときゃ良かった!)

 

 と、頭を抱えたくなってしまった。

 これじゃあ保護者として、世間から何を言われるか分かったもんじゃない! そう口を開きかけた時・・・

 

「カイナの群れに居た時は、仲間意識なんて特に気にしてなかったんだ。仲間が危機に曝された時は、そりゃ威信にかけて助けなきゃと、自分に言い聞かせたからな。・・・でもそれ以外は、仲間を守るとか、そんな気持ちなんて持てなかったんだ」

「ニャ、ニャアア(ガ、ガウラ・・・)」 


 大木にガウラが座り、その膝の上に乗せられる。

 背中を優しくさすられ、琥珀色の瞳を私に合わせて来た。心なしか、彼の瞳が不安げに揺れている。


「なぁリオ、こんなオレはおかしいのか? ティムとオレはどう違う?」

「ニャアア・・・(ガウラ・・・)」 

「チビ達を精一杯守るティムは、群れのボスとしてちゃんと全うしていた。しかしオレは、カイナの中に居たチビ達を、あそこまで世話したいと思わなかった。これじゃあ、何の為の強者だ?」

「ニャ、ニャアア(ガウラ?)」

「もう群れに戻りたいとも思わない・・・じゃあ、あの頃のオレは、一体何だったんだ・・・!」


 私の体を力強く抱きしめてくるガウラ。

 同じ立場に居て、仲間想いでもあるティムと自分の違いを確認した時、自分の存在意義について不安に陥ったのかもしれない。なんとか心を和らげたいと、彼の顔をペロリと一舐めした。   


「ニャア、ニャアアッ(ガウラ、誰しも完璧な人なんて居ないんだよ・・・ガウラとティムが違うのは、きっと考え方が違う所から来てるかもしれないじゃない)」

「考え方?」

「ニャ!(そうだよっ! “愛しい気持ち”・・・それが湧きあがる時、誰かを守りたいって願うんじゃないかなぁ)」

「“愛しい気持ち”、“守りたい”、“願う”・・・?」


 目を見開き、私の顔を見るガウラ。

 彼の疑問に、全てを答える事なんか出来ない――でも、沢山の言葉の中からこれかな?と、差し出してみせる事なら私にも出来る。

 


「・・・リオは、やっぱりオレの女だ。ぜんぶ、オレの欲しい言葉をくれる・・・」

「ニャ、ニャアッ(そ、そう?)」

「今教えてくれた言葉は、全部リオに当てはまる・・・そうか、これが “守りたい” か・・・」


 そう言うと頬から口に、頬ずりといつものキスの雨を降らせて来た。

 彼が満足するまで身動きせずに待っていると、表情がふんわりと柔らかくなった。

 

「カイナの群れでは無理だったけど、リオとの子供なら “守りたい” と湧き起こるかもしれない。だからリオ、沢山オレとの子供を産んでくれな」

「ニャ、ニャアアアアッ(はっ、恥ずかしい事をサラリと・・・!!)」

「リオと子供の為に、いっぱい獲物を狩ってくる。そして、また “群れ” を作るんだ!」


 胸が温かくなるのは、守る存在が傍にいるから。自分も相手も幸せにしたいと、心の奥底で願う時がきっと来る。ガウラも私も、幸せになる為に先へ進むんだ。


 いつか辿り着く安息の地を求めて――



 暗転1 番外編(終)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ