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白呪記  作者: 楽都
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031 リオが居なくなった後の彼ら

 〜〜ライウッド視点〜〜


 異世界の覇者、リオちゃんとその守護獣ガウラ、ルビリアナという上級魔族とその使い魔、鼠のハンスは絶魔の牢獄から見事に逃げきる事が出来た。

 牢屋に耐久魔法を掛けられてはいても、空間転移を封じる魔法は牢獄全体に掛けられていた訳でも無く、牢屋の中だけと陛下から聞かされた時は驚いた。牢獄全体に掛けるとなると、不具合も出るらしい。


 エヴァディス宰相から先に牢獄から出る様にと言われた時は、真っ先に頭を下げて出口へと向かった。一刻もここから早く、逃げ出したかったのもあったと思う。

 光の魔法を唱え、暗い地下通路を足早に進み、階段を駆け上って謁見の間を出る。通路を半分歩いて意識が朦朧としかけた時、誰かに後ろから腕を強く引っ張られた。


「ライ! お前、今まで何処へ行ってた?」

「イ、イル・・・? 」


 幼馴染のイールヴァだった。銀髪の髪に目付きの悪い灰色の瞳は、遠縁のエヴァディス宰相を思い出し、思わず背筋が寒くなる。


「お前が来るまで、俺はずっと姫の居る自室前を警備してたんだぞ。朝方になってようやく他の騎士を捕まえて交代して貰ったんだ。見ろ、この目の下のクマ! 下手な言い訳してみろ、幾らお前でも容赦しないからな・・・!!」

 

 眉を吊り上げ、恨めし気に言い放つ僕の幼馴染イールヴァ。

 確かにいつものキリッとした表情からは疲れた色が見え、目の下にはクマもある。心なしか、イルが持つ宝剣カルナックから雷がバチバチとほとばしり、自分の出番を待っているかの様だ。


(エ、エヴァディス宰相を彷彿とさせる顔で、怒りながら笑ってる!! コワッッ!!)


 僕は今までの事を、どう整理して答えれば良いのか非常に困った。何故かというとエヴァディス宰相から、“絶魔の牢獄の事は他の者には内密にしろ”と命令を下されたから。僕もそれには賛同なんだけど・・・ 


「〜〜イ、イルゥ、僕も寝てないんだよ。それに今からエヴァディス宰相に報告書を書かなくちゃいけないし、昼までには出さないとまた怒られるんだ。悪いけど、また今度!!」

「ライッ!」


 イルからの静止を振り切り、走ってその場を逃げ切った。

 王宮の近くにある兵士の宿舎室に戻り、ケネル隊長に事情があって訳を話せない事を話す。事情を察してもらい、今日一日は姫の身辺警備で僕の替わりを申し出てくれて、無事に睡眠時間を確保する事に成功した。


 騎士団員専用の広い部屋の中に入り、通路をさらに進むと自分とイル、二人専用の部屋へと辿り着く。

 それぞれの反対の壁に机とベッド、洋服ダンスが二つずつ。境界線の代わりに、娯楽で見る本やカード、私服やらが乱雑に散らかった所が僕の場所。物が一つも落ちてなく、綺麗に整頓されたスペースがイルの場所となっている。

 ・・・几帳面な所はホント、エヴァディス宰相にそっくりなんだよ。

 ちょっとイルの場所を汚したら、額に青筋付けて怒るんだ。こんな所、姫に見られたらきっと笑われるだろうね。「ライウッドは相変わらずだ」って。

 リア様の母君と一緒になって笑うもんだから、余計イルに追いかけられて揉みくちゃにされる。イルからの頭ゴリゴリ攻撃はとても痛いんだ・・・でも、これが僕達の昔からの日常でもあるかな? 


「よいしょ・・・プハッ! ああ、疲れたぁ・・・」


 革の鎧を脱いで床に放り、淡い山吹色の上下服だけとなった僕は、ガラクタが散らかる机に向かう。自分で作った張りぼての人形や、怪獣なんかの寄せ集めを眺めて人心地ついた。今までの記憶を掘り起こして、経緯なんかを隅から隅まで用紙に書き起こし、騒動に巻き込んだ獣達に文句を呟く。


「はぁ、僕が怒られるのはみんな、リオちゃんとガウラのせいだよね・・・」 


 もしまたディッセント国に帰って来たら、何か奢って貰おう。猫である彼女と、獣だったガウラにお金があるのかは期待できないが。お金の代わりに自ら捕まえた魚や、ガウラの食糧にもなる小動物を持って来られても困るけど。


「・・・あれ、欲しいのなんか無い?」


 考え抜いた末、彼らから差し出されるであろう生臭い物を予想した時、陛下やイルから怒られ損じゃないかと、大きな溜息を吐いてしまった。











 〜〜エヴァディス視点〜〜


 異世界の覇者、リオ殿とその守護獣、ガウラ殿はルビリアナ・レット・クロウとその仲間を従え、絶魔の牢獄から姿を消す事に成功した。黒い靄がリオ殿とガウラ殿を埋め尽くす瞬間、我々を見下し、勝ち誇った様に嘲笑う彼女の顔が忘れられない。

 覇者のリオ殿がファインシャートから姿を消したのはかなりの痛手だ。それは我が主、ハシュバット国王陛下も痛感しているに違いない。


「陛下・・・」 

「・・・」 


 彼女達が居なくなった方向を向いて、牢屋の中から睨み付ける様に佇んでいる。纏う雰囲気も更に変わって、睨んでいる方向に立ち竦むライウッドはかなり怯えていた。

 長年付き従って来たのだから、陛下の心情を察する事が出来る。激昂を抑え込み、内心ハラワタが煮えくり返る思いじゃないだろうか? この場に居れば、ライウッドは高い確率で陛下から怒りの矛先を向けられてしまう。最悪の予想をして、絶魔の牢獄から素早く退避する事を促した。


「エヴァディス、二人の上級魔族を殺してこちら側が不利になるか聞いても良いか?」 

「はっ、・・・紅い瞳の方の魔族は存じませんが、長髪の魔族は確かデルモントに渡る魔法を使います。彼を殺せば、こちらから向こうへ繋がる術が絶たれるという事でしょうか」

「そうか。長髪の魔族は利用価値あり・・・と」 

「てめぇら、さっきから何二人でブツブツ喋ってんだ!」

「はぁ、早く国王を倒して一休みしたいですね」


 ブロードソードを鞘に戻し、替わりに陛下愛用の鞭、“タナディノス”を手に取る。巨大竜の牙を先に括り付けた鋼の鞭は、大岩をも砕く。陛下は一通り全ての武器を自在に使いこなせるが、狭い場所で鞭を使うのは得策では無いはず。おそらく用途は――


「我、縦横無尽に風を制する――オート・クイック――!!」


 窓の無い牢屋の中で、微風そよかぜがふわりと吹く。

 陛下の体に、特に足に風が集まり、いつもの倍は素早く動ける魔法を発動した。


「なっ!(速いっ)」

「ハーティスッ!!」

 

 長髪の魔族の方に素早く移動して、首に手刀を落として気絶させた。風の力を借りて繰り出す攻撃は、動きもさることながら普段よりも腕力が上がる。長髪の魔族が気絶で済んだのは、守護魔法のお陰だろう。利用価値があれど、そのまま殺しても気には病まないに違いない。現に、陛下は冷たい表情で気絶した彼を眺めているからだ。


 気絶した魔族の胴体に愛用のタナディノスを巻き付け、動けない様に頑丈に縛っている。床に落ちている、レプリカの鍵を拾い上げ指で捻り壊した。今の陛下の顔は嬉しそうだ。少し機嫌が良くなったのかもしれない。


「さてと、後はお前だな。どう料理して欲しい? 切り刻むか、目玉をくり抜くか、全身の骨を砕くか・・・好きなの選んで良いぞ」


 両手をはたき、ほこりを落とす。鞘からブロードソードを抜き出し、持ち手の頭の部分に人差し指をあて、剣を回して遊んでいる。


「よくもハーティスを! 人間のくせに・・・!!」

「先程長髪愚弟だと罵った姉が喋ってたろう? “魔族と人間の違いはあるのか?”とな。たいして双方の違いなんか無い・・・と私の中では結論付けるが。お前は違うと言い張るんだな」

「それ以上近づくな!・・・遮りの炎、我を守る為に作り上げん――ファイアウォール!!――」


 詠唱を終わらせた途端、灼熱の炎が舞い上がる。

 気を昂ぶらせた紅色の瞳の魔族は、陛下との間に轟々とした炎の壁を作り出した。鉄の棒のこちら側まで魔族が追い詰められた時、全身が震えているのを確認する。炎を物ともせず、近付いて来る陛下に徐々に恐怖を感じているのかもしれない。


「魔族が嫌いとも言わないな・・・だが一つだけ、言わせてもらおうか」

「・・・っ、?」


 左手で魔族の首元を締め上げる。炎の中に佇み、平気でいる陛下を見て驚いているようだ。


「国を治める者の立場から言わせれば、人間の命を脅かす魔族を野放しには出来ない。“縄張り”を侵されたら全力を以って排除しなくてはな? それはお前達、魔族も同じだろう」

「がはっ・・・!! は、なせ!」











 暫く陛下に首を絞め続けられ、紅い瞳の魔族は床に落ち、気絶したようだ。

 動かない魔族を尻目に、陛下から捕縛用の縄を渡すよう命じられたので、牢獄内に保存してある縄を渡し、動けない様に彼の両手、両足を縛っていた。


「陛下、体の方は大丈夫ですか!?」


 急いで牢屋の鍵を開け、国王陛下の元へ行く。

 肩から腕にかけての衣服はもう焼け焦げていて、服の意味を成さない状態だ。体を見ると切り傷は無く、軽度の火傷で済んでいるのにはさすがに私も驚いた。


「はぁ、風で炎による熱傷を直接逸らしたは良いが、やはり少し無理をした。もう体が動かん・・・」

「・・・当たり前です。守護獣のディルを呼び出していたのですから、魔力があまり残って無いのではないですか? 私の肩に寄り掛かって下さい」


 怒りたい気持ちを押しやって、陛下の腕を自らの肩に掛ける。

 私の怒りの気持ちが伝わったのか、陛下は気まずそうに口を開いた。


「悪い、エヴァディス。今日一日は体が使い物にならないみたいだ。私も少し休ませて貰う・・・政務の方、宜しくな?」

「はぁ、承りました。一日だけですから。明日になったら、通常通り国政を取り仕切って下さい」


 二人の魔族が居る牢屋の鍵を閉めて、陛下と絶魔の牢獄を出る。

 陛下の言う、パーティは終焉を迎えやっと静かな空間に戻ったようだ。暗い通路へ出て、光の魔法で照らされ陛下と二人、ゆっくり歩きだす。


「あの二人の魔族はどうしますか」

「今日、魔術師をプロテカの神殿に使いをやるのだろう? 水の精霊の眷属、ティアレストの発言次第だな」

「?」

「ティアレストが無償で水の増量をしてくれるとは思わない。幾ら温厚な眷属でも、何かを代償に引き渡せと言われたら困るしな」


 魔族と眷属、どう関係があるのか解らなく、陛下に尋ねた所――


「ティアレストに、もし異世界の覇者を引き合わせろと言われたら、向こうに渡るすべが無い。だったら二人の魔族は生かした方が得策だ」

「そうでしょうか・・・しかし、二人の魔族を生かしても向こう側に渡れるかどうか・・・」


 あの凶暴な二人の魔族を思い出し、一癖縄では行かないと思い悩む。だが、陛下は一縷いちるの望みに賭けている様だ。


「長髪魔族達を連れ戻しに、一度はルビリアナ・レット・クロウも戻ってくると思う。リオは・・・二日しか共に居なかったが、彼女は優しい部類に入る。必ずもう一度ファインシャートに戻ってくるだろう」


 淡々と喋る陛下の言葉に、違和感を感じる。どうしてここで異世界の覇者、リオ殿が出てくるのか一瞬解らなかったが・・・最後の結果に行き着いた時、私は目を見開いた。あの女の、上級魔族の真の狙いとは―――!!


「その時、私達の手にかけられ二人の魔族が死んだと、ルビリアナから聞かされたらどう思う? ある事無い事吹き込まれたリオは私達に怖じ気づき、ファインシャートから離れデルモントで永住するだろう。そうなるとパンナロット以下、全ての精霊は魔族の方へ移行する事になる。・・・エヴァディスなら、この意味が分かるな?」


 信じられない思いを抱き、その可能性を否定できない自分が恐ろしくなった。

 異世界の覇者、リオ殿が居なくてはファインシャートが安全でいられない事の問題を指摘され、思考が止まってしまった。

 もう、彼女はこの世界に無くてはならない存在になっている?

 この事実に気付いた者から、様々な者達からの接触が予想されるだろう。


「二人の魔族をおとりに使って、自らの命を危険に晒す事無くリオを手に入れる・・・その作戦は大成功みたいだ。おまけに、こちら側で捕まえた二人の魔族は五体満足の状態で牢屋に繋がれ、あわよくば自分達の世界に連れ帰る事も予想した上で、あの女は策してるだろう」


 リオ殿を手に入れた側の世界が生き残る・・・?

 このからくりに気付いた時、我々は、魔族は、これからどう動くのか。途方もない問題に突き当たる事になる――




ここで失礼します。自分のブログ作りました。

内容は“白呪記”メンバー、“ロマンシング獣記”メンバーが盛り上げて行くブログです。小説では書く事が出来ない、制作秘話と作者を

まじえた小話なんかです。

 

 始めたばっかりなんでおかしな所が多いですが、少しずつ色々書けたら良いなと思います。HP名は“ひょっこり猫が我が道を行く!”

で、アドレスはhttp://blog.goo.ne.jp/qwertzxcです。

覗いて見てくれれば嬉しいです。中身は・・・ギャグっぽいです。

ラクガキ程度に、各キャラの顔も軽くさらしてます(笑)

皆さんのお暇つぶしになれば良いと思います。ではでは!!<楽都>


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