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白呪記  作者: 楽都
31/39

030 ルビリアナ・レット・クロウ

後半、少しエロいです。

 

 熊魔王さんに、ルビリアナさんを連れてファインシャートに行けない事を告げられたソルトス王子が、暇つぶしにガウラに剣の使い方を教えてくれる事になった。嫌がる私を寝室へ連れて行こうとしていたガウラの襟首を掴み、飛竜さんを謁見の間まで呼んで瞬きする暇も無く紫鉱城ラドギールを出る。


 動きの無い王子さまが、どうして飛竜さんを呼べたのか不思議に思って見上げる。ガウラの隣で背に乗っている王子さまに聞いてみると面白い答えが返って来た。


「自らが発する、闇の魔力を体から高ぶらせて飛竜に察知させた」と、特に難しいと言うわけでもなく、上級魔族なら誰でも出来ると教えてくれた。だから紫鉱城ラドギールに初めて来た時、特に動きの無かったルビリアナさんも飛竜さんを呼べたのかと、納得したんだ。

 闇夜から幾多の建物を見下ろし、ゆっくりした空中飛行は幕を閉じる。海岸でそれぞれ降ろされ、王子さまによるスパルタ教育が始まった。


(え・・・これ誰?)

 

「ガウラ、お前覇者の守護獣のくせに剣の使い方がまるでなってない! 大きな動作で切り掛かるから軌道を読まれ、ちょっと小突けば頭に来てすぐに反撃に打って出る、しかもその捌き方だと隙を付かれて逆に攻め込まれる、お前剣技を舐めてんのかっ!?」

「っ、はぁ、はぁ・・・じゃあ、どうしろと・・・?」 


 冷静さを装った表情は一転、顔つきが変わり鬼のような形相の王子さま。

 サラサラの砂の上で、足に砂が纏わり付き姿勢が崩れるガウラ。一瞬の隙を付かれ、首元に刃を当てられていた。


「・・・」


 地面に片膝を付き、身動き出来ないガウラは冷や汗を流している。冷酷な表情の王子さまは、お構い無しに淡々と喋り出す。 


「砂に気を取られて窮地に陥ったな。地形が命取りになる場合もある。ガウラの場合鍛え方が悪いのもあるが、周りを見て何が自分にとっては不利で、何を生かせるかも考えて動け。――よし、次は魔術で俺に攻撃してこい。お前の得意な魔法を使っても構わない」


 ガウラの首元から刃をどかした王子さま。右手には大剣を握り、だらんとした状態で立っている。その体勢は、ガウラの放つ魔法をいつでも受け入れられる状態だ。

 

「・・・」

「守護獣なら何か出せるだろう。まさか何も出せないなんて言わないだろうな?」


 無言を貫き動かないガウラ。どうしたんだろう・・・? 前に何度か、ツララや氷の矢を出現させていたのに。

 心配してガウラを眺めていると、王子さまは方向転換して私に向かってくる。好戦的な紫色の瞳をギラつかせて、大剣を上下に振り下ろし、衝撃波を放った。


「フ、フギャアアッ(うそぉぉっ!!)」

「・・・リオッ!!」


 カマイタチの様な弧を描いた月閃は地を這い、砂はえぐれ、真っ直ぐこっちに向かってくる。


「ニャアアアッ(死んだら化け猫になって出てやるぅ!!)」


 体をちぢこませ目を固くつぶり、間近に迫った攻撃に備える。剣による衝撃波が何かによって相殺され、耳に爆音だけが残った。


「ニャ・・・(どうなったの・・・?)」


 恐る恐る目を開けて確認する。私の目の前に現れたのは、ピリマウムによる白い守護魔法陣と――


「ニャアア・・・(ガウラ・・・)」

「・・・」

「氷を出せないわけじゃないのか」


 キラキラ光る氷粒が周りを彩る、巨大な氷柱が砕けた無残な残骸だった。



 *****


「ニャアアアッ(こんの塩王子! 私が猫だから何しても良いと思ってんじゃないでしょーね!!)」


 一旦休憩を告げた王子様は、背に固定した鞘に大剣を戻して飛竜に体を預けて座っている。

 ガウラは疲れてるのに、急いで私の元へと戻って来てくれた。膝の上に私を乗せて好きにさせてくれている。口だけ元気な私は、無言の王子さまに喧嘩を吹っ掛けていた。


「ニャオッ、ニャオオッ(猫舐めんじゃねーぞ! 塩を傷口に擦り込むぞ!)」


 全身の白い毛を逆立てながら威嚇する。負け犬の遠吠えみたいな文句しか言えない自分が恨めしい。実際に王子さまは怪我一つしてないし・・・

 口を尖がらせ、ガウラに項垂れかかると彼はしきりに私に頬ずりして来て、体力を回復させていた。


「ガウラとリオ、お前達二人は実際に魔法を使った事が無かったのか」

「ニャアア(う・・・私がトイレに行けなくって腹が立った時に出たみたいだったし、出そうと思って出した訳じゃないもん。・・・勿論、自覚なんか無かったし)」

「オレは、リオに危機が迫った時にしか氷は出せない。リオに関する悪意のある攻撃や中傷を確認した時も、頭に血が昇って氷は自在に出せるみたいだが」


 ガウラに頬ずりされながら、お互いの欠点をさらけ出してまた落ち込む。私なんて、“パンナロット”という精霊が居なきゃ唯のオマケみたいなもんだもん。他の精霊を使役するなんて、沢山の獣達を従える事なんて私には出来ない。皆は私を買い被ってるだけだ。


「ニャアア(頼りない猫でゴメンね、ガウラ・・・)」

「頼りなくても良い。リオがオレの傍に居てくれればそれでいい」


 KY<空気読めない>ガウラ、そこは頼りなくなんかないって言う所でしょ・・・って、もう良いか。だって、ガウラは本当に私を必要としてくれてるんだから。

 頬や口元に沢山のキスの雨を降らされ、胸に抱き込まれる。いつもの定位置にやっと慣れて、暫く身動きしないでいると王子様は口を開いた。


「もうすぐデルモントで祭りがある。その時に“パンナロット”や、他の精霊に会う事が出来るだろう。その時契約したらどうだ」

「ニャアア(お祭り・・・? デルモントでもお祭りがあるんだ)」

「ああ、今回の祭りは大きな意味を持つ。“パンナロット”がいれば、俺達の目的は成就されるも同然だからな」

「ニャ?(目的?)」



「「疑似でも構わない、太陽や星をデルモントで眺める事が出来るなら――」」



 乱れたシーツに男と女、裸の二人が寄り添い静かな一時に身を任せる。

 暗い部屋の中は独特の匂いに包まれ、紫色の鉱物が程良い雰囲気を醸し出す。

 普段は息切れを起こさないルビリアナは、逞しい胸に引き寄せてくれるバフォメットの紫色の瞳を見つめて、自らの柔らかな体をすり寄せた。


「バフォちゃん、異世界の覇者がやっと来てくれたのよ。今度のお祭りは今までよりも盛大な物になるでしょうね」

「グウウ・・・」

「皆、この時を今か今かと待ってたのよ。ファインシャートの人間共だけ幸せになるなんて、不公平だと思わない?」


 バフォメットの胸板に手を這わせ、唇を寄せる。

 火照った体は疼きが治まらず、貪られる感覚にお互い眠りに落ちそうもない。 


「ハーティスやゼルが、あの国王から逃げ出せるとは思えない。だけどこっちにはリオちゃんが居るし、無体な事が出来ないわ。女神やパンナロットからの寵愛を得たリオちゃんの反感を買うなんて、ファインシャートの精霊全部を敵に回す事になるんだものね」

「グウウ」

「ただでさえ、水の精霊の力を借りたい時なのにね? あっ、今は精霊の眷属がなんとか清涼水を作り出してたんだっけ・・・今頃、大変だろうなぁ」

 

 クスクスと笑って喋っていると、バフォメットの体の下に反転させられ、長い舌で全身くまなく舐められ、体を求められる。ベッドは激しく軋み、背中が仰け反り、喉から甘い嬌声が絶え間なく出た。バフォメットからの激しい愛撫に心も体も蕩け、欲されるまま彼に体を委ねる。


「お祭り、楽しみだなぁ・・・でも、その前にファインシャートから帰ったら皆の家に遊びに行かないとね。お土産、何がいいかなぁ?」

「グオオオッ」

「今から考えなきゃね・・・バフォちゃん、聞いてる? はぁ、もうしょうがないんだから・・・」


 本能の赴くままにお互いを必要とし、睦み合いが終わったのは半日が過ぎた頃。

 森の中の木製の屋敷は静寂さに包まれ、闇が二人を祝福する。



【魔法】は詠唱を必要とする、ルビリアナやハーティスが使ったダークゲート、あと無詠唱も入ります。

【魔術】はエヴァディスが自らの剣を用いた縛朱壁―アンチウォール―、リオがガウラに守護獣任命した時など。物や血を用いた発現を魔術とさせて下さい。


区別しないと頭がこんがらがる作者ですが、白呪記ではこうさせて下さい。本当に知識無くてゴメンナサイ!これからも懺悔したり、大幅修正しょっちゅうです。申し訳ないとしか言えない・・・(汗)

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