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白呪記  作者: 楽都
14/39

013 ポネリーアを救え! ―1―

食堂でのやりとりから。

 ガウラからの愛の告白を受け取りました。

 告白と言えば、この世界に来る前に笹井に告白されたんだよね。返事・・・保留のままだ。帰った時、返事を出さないと・・・おっと、イカンイカン、今はガウラの告白についてだ。


 もし私が人間で、ガウラも人間ならきっと受け入れたかもしれない。

 気持ちとしては嬉しいんだ。だけど、今私は猫なわけだし、はっきり言って獅子であり、人間にもなれるガウラには釣り合わない!!無難な答えを告げると・・・顎の下に人指し指を当て、クイッと押し上げられながら激しい愛を怒涛の勢いで囁かれる。


「リオ、愛は種族を越える。そう思わないか」

「ニャ、ニャア(猫と人間じゃ越えれそうも無いと思うけど)」


 素早く冷静なツッコミを入れた。

 一瞬詰まったガウラはめげない。


「リオとの愛の巣を作りたい」

「ニャアッ(猫は気ままなんだよ。一か所に留まらないかもっ!!)」

「リオの愛人は沢山居ても良い。だが一番の寵愛を受けるのは勿論オレだ」

 

 いや、やはり耐えれなくなったらそいつらを背後から始末すれば万事解決だなと、一人自己完結してにこやかに微笑まれる。愛人??! ガウラ、一人で妄想して爆走してるな。

 ってか私いつの間にか複数の愛人を囲んで、浮気してる猫を想像してない?諦めさせる為の言い方が不味かった??


 ブツブツ呟く悪人面のガウラの発言に、居たたまれなくなったマットさんが呆気に取られてつっ立ってるよ。上半身を捩り尻もちをついて・・・? ああっと、氷漬けにされそうになってるぅ!!

 とりあえず愛人発言をスル―してガウラになんとかしてと頼むと、指をパチンと鳴らす。もう少しでヘソまで凍りそうという場所に来て一気に氷がパキンと砕けた。


「リオ・・・」

 

 そんな事はお構いナシと情熱の籠った瞳で囁かれる。口で噛んでたガウラの薄緑の服をパッと離し、返答に困っていると、


「リオは確か異世界から来たんだったな。安心しろ、何らかのタイミングでお前も人間になれるぞ」


 知らなかったか? と王様がガウラをフォローしてる。オイッ、今この場でそれ言う気か。


「ニャアアッ(王様っ!!)」

「色んな要素が混ざり合ってなる場合もあると言う事だ。この世界の獣人もそうだが、ガウラはそっちじゃなく人間に進化したんだ。だから、リオが獣人か人間になればガウラと添い遂げられる。人間と獣が一緒になるのは、ここ最近じゃ珍しくないしな」


 ガウラは私が元人間だと知ってるからこんなに積極的なんだよ。 

 逆に元人間だと知らない王様は、ガウラと私が結婚するのに懸念する体格を不憫と取ったんだろう。


 ――人間になれば添い遂げられる。


 その言葉を聞き、思い出したようにハッとしたガウラは熱心に王様に話を聞こうとしたが、まず今は民の救急介護が先と、ガウラの質問をキッパリ撥ね付けたのである。飴とムチを使い分けてる。知識が欲しけりゃまず言う事聞けと。


「ニャアアッ(さすが王様。年食った人は言う事が違うね。年季入ってるぅ!)」


 右手を挙げて褒めちぎる。この話を終わらしてくれたので安心したのだが。その褒めた内容を聞き、ムッとしながらも律儀にガウラは王様に通訳する。


「年季の入ったオッサンは一味違うと」


ガチャンッ


ガチャチャンッ


 周りでスプーンやフォーク、皿まで落とす音が聞こえる。私達の会話に聞き耳立てていた兵士達、フリージアちゃんや二人の騎士も蒼い顔をして視線を外していた。自分達は何も耳にしていないと、とばっちりを受けないように黙々と食事を続ける者と三者三様だ。


「お前達二人は本当に遠慮が無いな・・・国王にオッサンはないだろう?私はまだ35だしな」


 教えるのを止めようかな――と、半ば不貞腐れながら王様が目を細めて私達二人を睨んでくる。

 ガウラ、馬鹿正直に通訳しなくても良いからネッ!! ていうか王様、一体何歳の時にフリージアちゃんが出来たんだろう??早くね??

 とりあえず充分オッサンじゃねーか、ナイスミドルとは程遠いと心の中でツッコむ。二人の睨みあいを眺めつつ腕から逃れ、急いで残りのミルクを舐め取った。  


 奥の部屋から仲間の料理人が慌ててやって来て、自力で立てないマットさんに肩を貸してこの場を後にする。マットさん、足が凍傷になってなければ良いんだけど・・・私は顔を引き攣り見送った。

 食事をした後、私とガウラ、それとフリージアちゃんと近衛騎士の二人は被害に遭った町を訪れる話になった。王様曰く、「リオ達の手助けしてこい。それと、お仕置きが決まったぞ。お前達エヴァディスにお灸を据えられて来い。因みにフリージアに傷一つでも付けたら一般兵に格下げな」だって・・・。幾らなんでもちょっと可哀そうな気がするなぁ。だってそれを聞いた時の三人の顔色が一気に悪くなったんだもん。

 


******


 それぞれ町に出るのに身分が分からない様、変装して着替えて城門前で集合する事になった。

 三人はそれぞれ瞳の色が変わるメガネを着用して、頭に布を巻いて髪が見えない状態。フリージアちゃんは鷲色の髪をピンク色にしてツインテールにしてる。

 この仕掛けは留め具に魔力を込めてあって、髪の毛に付けると付属している色に様変わりするらしい。素晴らしいピンクの色合いを持つ蝶を模した装飾は、国を渡り歩いているコロボックルに売って貰い、後で魔術師に頼んで変色の魔力を込めて貰ったんだって。一定の時間保つには自分の魔力を注ぐしか無いらしい。


 兎に角、お姫様だと分からない様に変装すれば良いみたい。ピンク色・・・ある意味メッチャ目立つんだけど良いんだろうか?? 二人の騎士は旅人の服装を着こみ剣を腰に取り付けている。ガウラも剣を貰う為に、王様と共に兵士の訓練所に連いて行った。

 

 私はというと・・・猫なので何も持てる筈も無く、ちょっとヤサグレル。手持ち無沙汰で近くにある大木の所で爪とぎしてると、イルさんに首根っこを掴まれ持ち上げられた。

 

「お前、何してる」

「ニャ、ニャアア!!(まっ、またこの持ち方っ!!チョット爪とぎしてただけジャンッ!!)」

「フンッ、覇者にしてはホントに鈍くさい。俺はまだお前を覇者と認めたわけではないからな」


 ポイッと音がするかのように放られて地面に落とされる。イルさんは言いたい事を言って満足したのか、スッキリした顔で城壁に凭れ掛かっていた。

 一方私の方は沸々と怒りが湧いて、それを木にぶつける為に爪とぎを再開。

 両手でガリガリ引っ掻いて、止どめとばかりにジャンピングキック。乙女らしからぬ行動に、それを見たライさんとフリージアちゃんが慌ててやって来て、私に謝ってくれた。



 剣を所持したガウラと合流して漸く城から出る私達一行は、王様とディルに見送られて王宮を後にする。

 私達が出たのを確認すると、また結界を作り直していた。丘に沿えられた眺めの良い城門から出て、石垣を進んで行くと、だんだん町の入口に近づいて来た。



 海に面した港町、ポネリーアだ。


 ウミドリが鳴き、港には木で作られた大型船が複数船舶している。どうやら船自体には特に目立った損傷は見られない。それを不思議な顔で眺めると


「船に魔術師が耐久魔法を掛けているんだ。だからちょっとした衝撃では壊れる事も無いし、風の魔法で航路を進むんだよ」

 

 ふむふむ、この世界では魔法が余程進んでると見た。私の世界での科学が進歩したのとどっちが効率いいんだろうね。平凡な頭で考えてもこれ以上いい考察なんか出ない。なので最後にライさんに動力源は何??って訊いたら物凄い怖い顔のイルさんに「これ以上は極秘だ」って会話を終了させられた。・・・っもう!!


 五人でまずエヴァディスさんの居る所まで行く道中、ライさんがこの世界の事を知らない私の為に昔話・・・覇者についての伝承を簡単に説明してくれた。


「純白の獣があればあらゆる災厄から逃れられると、この世界では言い伝えがあるんだよ」


 <パンナロット>とは“全ての属性を統括出来る白精霊”という意味で、この精霊の恩恵があれば悪しき魔法を跳ね返し、全ての属性を操り、全ての獣を跪かせられる精霊を使役できると伝承されている。白精霊と同じ穢れ無き色を持つ覇者が、<パンナロット>を持つのに相応しいと言う事だ。

 

 純白の猫で<パンナロット>を使役していた、以前の覇者の事を記録している本を見ると、当然それに私が当てはまるんだそう。<パンナロット>の恩恵をどの種族も欲したいと願っている・・・だからもし私が獣人か人間に変わる事が出来れば、更に沢山の種族から襲われる可能性を指摘された。



「つまり君の遺伝子が欲しいんだよ、この世界の住人はね」

「実際既に水の魔法を発動させたらしいしな。厄介事が増えるのは俺達の関係が無い所でして貰いたいもんだ」

「イールヴァ!! 何て事を言うのっ!リオ様、気にしないでくださいね」


 フンッとイルさんはぶっきら棒に付け足す。それを見たフリージアちゃんが諫めてくれてるが。正直いい加減イライラして来た。どうしてこう突っ掛かって来るんだか、イルさんはたまに私に難癖付けたりする。

 イラつき自分の毛むくじゃらの腕をガジガジ噛んでると、私の心を感じ取ったガウラが慰めるように優しく背を撫でてくれた。

 

 そろそろ町に入るからガウラに布で体をふんわり包んでもらい、顔だけ見える状態にして貰う。

 理由がこの世界では猫は普通にいるらしいが、私のように真っ白な猫は居ないんだって。私を見られたら、その・・・ううっ雄猫がやって来て奪い合いの乱闘しかり、雌猫にはやっかまれる可能性があると。勿論猫だけじゃ無い、色々な獣や獣人も私に興味心身で接触して来るって教えてくれた。


 甘い愛の言葉を囁いて、告白を恥ずかしげも無く告げるガウラは、確かに私を守ってはくれる。それが打算から来る行動なのか、善による行動なのか、私にはまだ判断が付かないけど―――それでも居てくれて心底安心したんだ。今頼れるのはガウラしか居ないもん。

 

 胸のモヤモヤを閉じ込めて、伝承に詳しいライさんに歩きながら、不用意に一匹で行動しないようにと窘められた。不安な気持ちを抱えた住民たちが私を見たら、独占したいと願い争いが起こる可能性が出てくると。

 これから民の為に尽くす為にもと釘を刺され、一匹で動き回らないように約束させられる。一先ず目先の問題から片づけて行こうと皆で意気込んだ。



 町の中へ入り中央まで来ると火は消されてはいたが、その爪痕が残っていた。

 ガウラの暖かい腕の中から町の中を視界に納めると、悲惨とも呼べる広がった地を見て一瞬声を失う。


 崩れて瓦礫と化した外壁

 焼け焦げた幾多の家

 割れて地面に置き去りの店の看板

 上部を叩き壊された竜神らしき像


 破壊されたモノ達を呆然と眺め、体が震える。

 猫になって初めて見た町がコレ?

 王様やガウラ、フリージアちゃんやマットさんと仲良くなったから、一緒に町を見たかったんだ。ココに住んでる人はどんな人だろう?どんな景色だろう? 何を特産物にしてるんだろうって・・・出来れば美味しい物食べて過ごしてみたかったんだ。


「ポネリーアは海に面した首都だけあって、この大陸では一番大きい都市だ。貿易に精通し、陸・海側の検問所でもちゃんと審査して通る者を識別する。・・・だから内部から結界を解除される事は今まで無かったんだがな」


 ポツリとイルさんが言葉を零す。口を噛み締め、表情に悔しさが混じったような雰囲気をさらしていた。


「そうね。私達は特に安全な王宮で暮らしていたから、その問題を解き出せる事が出来なかったんだわ。町に出て何か分かると良いけど」

「大丈夫だよ、リア様。僕等はこれからそれを探し当てるんだ。その後修復していったらいい」


 フリージアちゃん、ライさんの言う通り!

 私も手伝う!!と、そう希望を込めてニャアアと鳴いた。




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