力学
ある朝俺は、自分が『坂上力也』だと、唐突に理解した。
だが、本当の俺は力也ではない、という事も同時に理解した。
「あら、力也おはよう。珍しい。今日は早く起きれたのね。」
「おはよう、母さん。うん何か目覚めちゃった。」
いつもの食卓。
用意された朝食。
テレビで、隕石が月付近に接近したとのニュースが流れている。
聞いている様な、聞いてない様なぼんやりとした頭で朝食を食べ終えた。
「じゃぁ行って来るね。」
「はーい、気を付けてね~」
母に見送られ、駅とは反対方向の学校へと向かった。
「おーっす!リッキー今日早いじゃん!どした?」
「ちょっと早く起きただけだよ。」
「ほんとだ~リッキーおはよ♡今日体育男女混合だってさ。」
「まじ?何やるんだろな?」
友人の燿大と美樹が話しかけて来る。
俺が力也と認識した上で。
・・・いや、当たり前か。
今ここにいる俺は『坂上力也』なのだから。
キーンコーンカーンコーン・・・
ガラガラガラ・・・
「席着け~」
担任が気だるそうに教室の扉を開けた。
教卓に向かう担任の後ろに、黒髪で色白の、それでいて頬と唇が淡いピンク色の女子生徒が着いて来た。
途端に教室内がざわめく。
「気になるだろうが静かにしろ~みんなの察しの通り転校生だ。はい、自己紹介。」
「姫川まどかです。宜しくお願いします・・・」
開いている窓の風で揺れる長い髪から良い匂いがした様な気がする。
花のように可憐な女のコだな、と見惚れていると彼女と目が合った。
瞬間。
彼女は顔面を蒼白させた。
美少女の転校生はあっという間にクラスメイトの人気者になる。
「何よ、ちょっとかわいいからって。」
美樹が口を尖らせつぶやいた。
「嫉妬かよ~美樹もかわいいぜ。」
「うるっさいな~リッキーは?リッキーもああいうコが好き?」
「え?何で?」
「ずっと見惚れてるから・・・」
「え?そうかな?」
『好き』だから見ていたのではないと思う。
彼女を見ると懐かしい様な、悲しい様な気持ちになる。
ん?これが俗に言う『恋』ってやつか?
何か違う気がするな、と思いつつ数日が経ったある日。
下校したものの、忘れ物に気付き教室へ戻った。
「坂下学クン。」
「え?」
まだ人がいたのか。
驚き振り返ると無表情の姫川が俺を見つめていた。
ちゃんと話すのは初めてだ。
「学クンでしょう?」
『坂下学』・・・すごく懐かしい名前を聞いた気がする。
「どうしてこの世界にいるの?あなたは私が殺したはずなのに・・・」
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この作品はある写真(学生らしき男女6名)からヒントを得て、「群像劇良いな♡高校生いっぱいの恋愛もの書きたい♡」と思ったのに何故かこうなった作品です。
あらすじ部分だけ思いついて、超短編だから投稿出来ないな~と思った時にラジオ大賞なるものを知りせっかくなので応募してみようと思い参加に至りました。
作者はこの作品とは全然違う大人恋愛ものを連載中ですので良かったらそちらもチラ見|д゜)して頂けると嬉しいです♡