トレイルランニング
「マジ~、走ってるよ~。すげー、な、スゴークね~」
紅葉の見頃の御岳山で、ランナーを見ながら、伊沢仁は叫ぶ。
「トレランだね~。確かすげーな。」
相方の高橋瞳は冷めた言い方で答える。
「歩くだけだって大変なのに、すげー、かっこいい。マジ、チョーマジヤリテー。俺でも出きるかな」
「自分密かにやり出してる。面白いよ~。速い人は猿見てー。やれるよ。」
瞳はそう答えて、ランポーズをしてみる。
「ハァハァ、やっと追い付いた」
滝の汗を流しながら、大岳の山頂に着いた藤谷透。
「じゃあ、行きますか?」
プロの菅野和道はニヤニヤしながら言う。
「えー、マジ~」
半泣き状態の藤谷を見て、周りのメンバーに笑う。
「川ダイブしてきた」
「汗です‥」
「すげー代謝イイネー」
杉倉が感心してみせる。
「もぅー、わかってるクセに~」
「ハイハイ、補給しなくていいのか」
「わかってますよ~!」
藤谷は急いでジェルを飲み干す
瞳と仁は、山を下りきり、近場の温泉でゆっくりしている。
「マジで、トレッキングなめてた。オジサン、オバサンがやれる位だから、大したことないって、」
「でも、凄く充実するでしょ」
「確かに。トレッキングとトレイルランって、道具違うの」
「違うね~、リュック、靴はまたっく違う。雨具、防寒着はそれぞれのレベルで、違うかな。自分もやり始めだから、詳しくわかんない」
瞳と仁は、風呂から上がり帰宅路に就く。
神田阿川街。昔はスキー街としてにぎわった街は、今スポーツ街として賑わっている。スキー、スノボー、ランニング、自転車、ゴルフなどのスポーツ店が点在している。その一角にトレイルランニング専門店サーモンがある。
「マジ、入るの」
仁は瞳に聞く。
「物は試し。まず道具からね」
瞳は階段を下りていく。仁もそれについていく。地下一階の店舗は、広く、見慣れないリュックや、靴、ウエアが所狭しと並んでいる。
「あっ、走ってた人だ」
「こんにちは。どこで見たのかな」
「御岳山。その時、トレッキングしてて、山走る人見てスゲーと思って。」
仁は、菅野に答える。
「菅野さん、仁、トレランやりたいだって」
瞳は菅野に言う。
「次、陣場トレイルだったよね。瞳くん。はしってるかい」
「まぁ、ちょっとだけど、走ってます。陣場ってエントリーもう終わりですか」
「まだ大丈夫だと思ったよ。確か10月上旬までだよ。一緒に出ればいいんじゃない」
「いきなりレース。マジっすか。ヤバいです」
仁はひくつきながら答える。
「大丈夫だよ。山は歩いたっていいんだし。制限時間も緩いから。まずは実戦してみなよ」
「今日は仁のトレランの道具買いに来ました」
「いきなりレース。なんか怖いけど」
「仁君だっけ、高校の時は部活やってたん」
「一応、サッカー部。補欠でしたけど」
「体力は大丈夫だね。さてと、初心者用に一式出してみるよ」
菅野は、そういって道具をみつくろい出す。
「ざっとこんなものかな」
レジ台の上に、靴、リュック、ウエアが並んだ。
「リュック小さいですね、靴はランニングシューズみたい。ウエアカッコいいです」
仁は、感じたまま言う。
「まあね。そう感じるよな⁉️でもな、イロイロ機能的なんだよ。まずはこれつけて走ってみなよ、山を」
菅野は細かい説明を省いて総合言う。仁は、一式買い、店を出ようとする。
「まずは体験するのが一番だよ。陣場、自分も出るから、楽しみにね」
菅野は手を振りながら言う。