第三話
ダンジョンの様子を見てゴブリンでなければ退却をする生活を続けて三日目、ついにゴブリンのシフトの日に当たった。
よし!今度こそあのスマホを奪ってみせるぜ。決意を新たにまたしてもゴブリンの様子を伺う。
目を凝らし、よく見ていると…
○月○日 スマホの電池が切れたゴブリンが襲われるという事案が発生しました。
何か情報をお持ちの方は○○まで。
と言う看板が立てかけてあった。
交通事故かよ!というつっこみを飲み込み、引き続き様子を見ていると、今度のゴブリンは看板の影響があってか、全然スマホをいじるそぶりを見せない。
まさかもっていない個体も存在するのか?
スライムですら、スマホを持っていたので、おそらくモンスターたちみんな支給されていると睨んでいるんだけどなぁ
30分ほど様子を見ていると案の定ゴブリンのズボンのポケットが光った。
ゴブリン「もしもし、今のところ異常なしです。」
ゴブリン「はい。よろしくお願いいたします。」
ゴブリン「すみません、別件なのですが、来週一日有給をいただけないでしょうか?」
有給!?モンスターの世界にも有給システムあるんかい!と心の中でツッコミを入れた。
ゴブリン「いやぁ実家に帰りたいので、一日で結構ですので、何とかなりませんでしょうか?」
ゴブリン「そうですか… では近いうちになんとかよろしくお願いいたします。」
んん?有給申請取れなかったのか笑
モンスターの世界もブラックなのか… まぁ悪魔だしな…
なんて余計なことを考えていると、先日と同じように、マネージャーとやらの文句を言い始めた。
ゴブリン「あいつ自分ばっかり休みやがって、部下の手柄は自分のものにするし、本当ろくでもないやつだな…」
ここのモンスターの統制は終わっているな…これが会社なら、つぶれてしまうのかもしれない。
しかし、ダンジョンがつぶれることはあるのか??
またまた、モンスターの生態や働き方などを考えていると、ゴブリンはスマホをいじり動画サイトを閲覧し始めた。
上が上なら、下も下だな…
どうせ、電池残量が低下するまでこいつも動画見るんだろ??
そう思った瞬間…
ゴブリン「うわああああぁっぁぁああぁぁぁー」
緊張が走る…
ゴブリン「電池が10%切った!!やばい!!!」
びっくりさせるな!!それにしてもこいつも相当なアホだ…
先日と同じように画面が暗転した後、後ろから木の棒と、でかい石で「ゴンッ」
「グヘェア」
と謎の声を上げてゴブリンはうずくまった…
体がピクピクと痙攣している。今がチャンス!暗転して使えなくなったスマホを拾い上げ、袋叩きタイム!
しばらくして、光とともにGが入った袋が出てくる。
スマホは…!??
手の中にある!!!
よっしゃー!!10万G以上の価値のあるスマホもゲット!!!
興奮も冷め遣らぬまま、スマホを握り締め、ダッシュで宿屋へ向かう。なけなしのGをはたいて一部屋を押さえる。
部屋に鍵をかけ、奪ったスマホをしっかりと確認してみる。どうやらアルミ製でできているスマホで、背面には梨か林檎の様なマークがついていた。
ボタンも少なく、とりあえず電源をつけてみる。
……
一瞬光がともったものの、すぐに暗転してしまい、うんともすんとも言わなくなった。
「充電しないと使えないか…」
「どうやって充電するのか、明日街の人に聞いてみることにしよう。」