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撫でて、気づいて、決意して。

「うん?…撫でて……る。」


九津見は口元笑顔で名秦の質問に答える。途中で名秦が何を伝えたいのかを理解し、九津見の顔に驚きの表情が現れる。二人はしばらく見つめ合い、アイコンタクトで現実を確認しあった。


「「えぇぇ!?!」」



二人は顔を見合わせ、大きな声を出し、驚きあった。名秦も九津見も、九津見自身が霊体になってしまっているから触れられないとばかり思っていたからだった。


名秦は、九津見に触れられた事に対する驚きにより、先程まで撫でていた九津見の頭から手を離し、空中をさまよわせた。霊体のはずの九津見に、名秦は今、触れることが出来た。もう一度九津見の頭に触れようと手をゆっくりと、緊張しながら伸ばす。


そして手が九津見の艷やかな長い茶髪に触れ、頭に到達する。そして、後頭部の方に手をスライドさせ、手を少しあげて、頭の天辺までまた手を持ってゆき、確認するようにゆっくりと、一回一回丁寧に繰り返し撫でた。


「触れられる…」


現実を確認するように、名秦は沢山九津見を撫でた。名秦の赤色の、ぱっちりとしているけど目の初めの方は少しキレがある、しっかりとした思いを伝えるような双眸は、今現在九津見に触れている自身の右手を不思議そうに見つめている。眉間にはシワを寄せて、触れられている理由を導きだそうと考えている。


泣き止んだにも関わらず、ずっと撫でられている九津見。満を持して自分の両手を、自分の頭を撫で続ける名秦の大きな手の元に持っていき、優しく掴んで自分から遠ざける。


「撫ですぎ…もう泣いてない。」


と目をそらし、名秦の手を遠ざける。赤くなった頬は泣いていた前よりも赤く染まっていた。九津見の手は、名秦の手を遠ざける為に、名秦の手を掴んだまま、久津見の膝上の近くまで下ろして止まった。


「あっごめん。」


流石に触れ過ぎた、と反省して、九津見に触れられている右手をゆっくりと自分の方に引く。


あれ…手も触れられた。自分の膝上の辺りにある、九津見の手に触れた自分の手を見て、九津見が触れた感覚があったことを確認する。そして、川の水に浸かっている自分の素足の方に目を向け、風に揺られた茶髪を耳にかけながら、恥ずかしそうにしている九津見に尋ねる。


「今、手も。」


九津見はその名秦の気づきに驚き「あっ」と小さく声を吐いた。今自分が無意識に、隣にいる名秦に触れたことに気づき、名秦に大きく開いた若葉色の双眸を見せる。


手が触れられる事の確認をしたいと願った名秦は、自身の両手を低く持ってゆき、手のひらを上に向けた状態で、九津見の方に向けて「手、乗せてみて」と唾を飲み、緊張ぎみに言う。


その名秦の言葉に答えるように、九津見は先程まで自分の髪を止めていた両手を、名秦が出した両手の上の辺りに出した。そして、ゆっくりと、恐る恐る名秦の手の平に、自身の手見ながら持っていった。


そして、九津見の指先が名秦の手の平の上に着陸し、そのままぺたりと自分の手の平をつけた。


「あ!さわれた!凄い!」


触れられるという事に驚愕しつつ、喜びの笑みを浮かべる九津見。そして、乗せている手で名秦の手をぎゅっと強く握る。

そして「さわれるよ!ひびき!」と嬉しそうに名秦の方に無邪気に笑い、瞳を名秦の手に向けて、楽しそうに名秦の手を触り続ける。


そんな彼女の愛おしい姿に名秦の顔は熱を上げる。頬の辺りを赤く染めあげて、口をつぐんだまま、自分の手を触り嬉しそうにする彼女の笑顔を何も考えず、ただただ見ていた。


「…?あれ?ひびきには触れてる感覚はない、の?」


と、何も反応しない名秦に向かって不安げに聞く。その質問に驚いたように開いた名秦の赤い双眸を、若葉色の不安を感じさせる九津見の双眸が見つめる。


彼女の質問に「あっ」と声を漏らし、焦り気味に答える。


「触られてる感覚あるよ」


と目をそらして答える。そして握られている自分の手をゆっくりと引いて、ゴツゴツとした小石の地面の上に空の方に体を見せて寝そべり、肘をあげて両手の手の平で照れで赤く染まった自分の顔を覆った。


「ぁぁ、暑くて頭ふらふらする。」


と寝そべって言い、赤い顔を見られぬように誤魔化した。


九津見はそんな名秦の唐突な言葉を聞き「え!?」と声を出して驚いて、慌てた様子で水から両脚を出し、小石の地面の上をじゃりじゃりと音を立てながら何処かに走っていった。


「無理無理、耐えれんわ…。」


と寝そべって顔を更に強く抑える名秦。「ふぁぁぁぁ」と疲れたようにため息をつく。


遠くから「あった!」と九津見の小さな声が聞こた。そしてすぐに、じゃりじゃりという音が、上を向いて寝そべる自分の方に近づいて来るのを感じた。そして「えぃ!」っと何かを投げるような放つような声を九津見が出し、その瞬間、名秦はバケツ一杯分程度あるであろう冷たい水に、体と顔を包まれた。


唐突にかけられた水に、染め上げられた顔を驚きの表情に変えてバッと体を起こす。「ゲホッゲホッ」と鼻に入った水に苦戦して咳を出させられる。制服全てをびちょびちょにした、九津見がかけたその冷たい水は、名秦に、彼女の力になりたいという感情をはっきりとした決意に変えた。

よしっ!新キャラ出せる!もう出せます!沢山待たせてごめんなさい。レビュー感想等お願いします!

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