理由
「首?」
と九津見はセーラー服の襟の辺りの合間に、自分の右手をするりと入れて手探る。「ぁ」と声を漏らし見つけたものを取り出そうと、優しく手で引っ張る。名秦が先程見たのは、今、九津見が取り出した、ハート型の赤い宝石が埋め込まれた銀色のチェーンのネックレスだった。
「それ……。」
名秦は自身の赤い双眸を細めながらそのネックレスに注目する。心当たりがあり、名秦は自分が着ている学ランの、首元の辺りのボタンを急いで開け、左手で左の襟を引っ張り、見覚えのある“それ”を右手で中に着ている体操服の、襟の合間から取り出した。
「…やっぱり。」
名秦が首につけていたのは、ハート型の透明の宝石が埋め込まれた金色のチェーンのネックレス。九津見が持っているのは同じ形の赤い宝石が埋め込まれた銀色のチェーンのネックレス。それはとても類似していて、見てすぐに色違いのネックレスだとわかった。
「あれ?もしかして、同じネックレス?」
と久津見が興味ありげなワクワク顔で言った。名秦はその言葉からある事に気づいた。そのネックレスは名秦の母が九津見にあげたものだった。九津見の母と名秦の母は仲が良く、九津見は度々、名秦の家に泊まりに来ていた。その為、名秦の母は久津見を娘のように可愛がっていて、自分が持っていたネックレスを小学校入学の御祝いとして九津見にあげていたのだった。
つまり、持っているネックレスが同じだということを疑問に思うのは可笑しいのである。久津見が名秦の母からネックレスを貰った時に、名秦は自分の母に「僕もネックレスが欲しい」とせがんで、色違いの透明な宝石の埋め込まれたネックレスを貰っていた。「ずっと着けていよぅね!」と貰った時に約束し、名秦の母が、二人が中学一年生の時に亡くなった後も久津見と名秦は、その時に貰ったネックレスを肩身離さず着けていた。
だから、二人が同じネックレスを持っている事を疑問に思うのは可笑しいのである。
そんなことを疑問に思ったという事から、名秦は一つの答えを導き出し彼女に尋ねる事にした。
「生きていた頃の記憶は残っているの?」
名秦は自分の着けているネックレスを服の中にしまい、学ランの開けたボタンを閉めながら、隣の彼女の方を向き、尋ねた。川風が優しく名秦の焦げ茶色の短い髪をなでてゆく。同時に九津見の茶色い髪長い髪も揺らした。リンクする2つの動きはまるで、二人が持っている色違いのネックレス達が自分達の存在の理由を思い出させる為に、風を操り動かしているようだった。
茶色い長い髪、若葉色の瞳の九津見。
焦げ茶色の短い髪、赤色の瞳の名秦。
次は…どんな子を出そう…。金髪とか