2回表 ブルペン
屈辱の敗戦から10日が経っていた。おれはこの10日間このチートみたいな能力を持つエルフたちをどう打ち取るかだけを考えてきた。もちろんその間ルースさんの家にお世話になっている身として農作業もめちゃくちゃやらされたけどな!
10日かけて俺はやっと攻略法を考えた。こんどこそうまく行くに違いない。そうだ辺境に住むエルフ程度が倒せなくて何が投手王だ!
「ルースさん、俺はやっとあなたへの必勝法を思いつきました。勝負してください。」
「いいだろう決戦は明日の昼休みだ。村民全員を呼んで盛大な打ち上げ花火を私が見せよう。」ルースさんがニカッと笑うと俺も満面の笑みで手を差し出した。いいぞ俺!これでこそ男だ!
その夜は興奮でなかなか眠れなかった。当たり前だ明日はこの世界での俺の第一歩になるのだから。眠れないのだからベッドで横になっていても仕方がない
的当てでもしておくか。
「ノボルさんも眠れないんですね」
9分割の的当てをしていると後ろから急に話しかけられた。
「うわっ!びっくりしたあー、誰かと思えばライアンか。お前はどうして眠れないんだ?」
ライアンは農作業で良く一緒になる15歳の少年だ。エルフは長寿で子供をたくさん生むことを良しとしないので同年代の子が少ないのだろう、この10日間でずいぶん俺になついてくれていた。
「私もノボルさんと同じ理由ですよ。明日の一騎打ちにワクワクしているんです。もしノボルさんが勝ったら魔法を持たないものが魔法を駆使する相手に勝利できることになるんですよ。小さい頃から魔法が使えないハーフエルフの僕にとってノボルさんは希望の光になるんです。」
そう言うことだったのか・・・もちろんルースさんにハーフエルフがいるのは聞いていた。でも混血の人種は魔法が使えないなんてひどい世界だなあ全く。
「明日は必ず勝つ!そのために応援もよろしくな!」
そう言って俺たちは固い握手を交わした。ん?ライアンの手はずいぶんとでかいな、ルースさんたちの1.5倍はあるんじゃないか?
「ライアンはどうしてそんなに手がでかいんだ?」
「それもハーフエルフの特徴です。ハーフエルフは魔法が使えないという弱点を補うように体の一部分が以上に発達する性質を持っているんです。
他のハーフエルフは足が長かったりもちろんアソコが以上にでかい奴がいたりしますよ。」
なんてうらやましい能力なんだ!!野球においてフィジカルは最も有効なアドバンテージになり得る。アソコがでかいのは男としてうらやましいけどなあ・・
まあとにかくライアンは手がでかいというピッチャーにとっては必須の条件を備えている。変化球がなく魔法に頼ってきたこの世界じゃライアンの才能は開花することはなかったのだろうけど、俺が来たならもう大丈夫だぜ!そこで俺は一つ提案をしてみる。
「ライアン、一つお願いがあるんだけどいいか?」
「何でしょう?ノボルさんのお願いなら何でも聞きますよ」
「なら都合がいい、ライアン、もし俺がルースさんに勝ったら俺と人間の国に行かないか?」
ライアンはすこし驚いていたがすぐに首を横に振った
「うれしいお願いですけどそれはむりなんですよ、人間がエルフを受け入れるはずがありません。彼らは自分たちが大陸から追い出したエルフに野球で負けるのを恐れています。ノボルさんは記憶喪失だから私たちと仲良くやって行けていますが普通のヒト族は私を見ただけで逃げてしまいますよ」
その昔、まだ野球がなかった時代にエルフはここアメリー大陸に繁栄していた。
しかしエウロップ大陸の大船団がせめて来て最新兵器でエルフたちを追い出し、アメリー大陸西部の山脈地帯に生活区域を定められてしまった。
最初はエルフたちも抵抗したけれど銃や大砲に勝てないと分かると元々穏やかな性格なので抵抗をやめてしまった。そうやってエルフは森の民になったって訳だ。しかし野球がこの世界に広がったことで状況がかわった。エルフが魔法を使って人間の野球チームをボコボコにして幅を利かせるようになった。それを恐れた人間は大陸西部から逃げ出して東部で野球に魔法が使えないヒト族などを集めて魔法禁止の野球ギルドを作った。
それ以降エルフと人間の関係はよくないらしい。
「魔法禁止リーグか、今の俺のステップアップのためにはちょうどいいかもしれないな!ますます人間の国に行きたくなってきたぜ。
というか魔法禁止リーグならライアンも出れるんじゃないのか?何で駄目なんだ?」
「私がこの村を出るためには掟で村長を一騎打ちで倒さなければ行けないんです。ノボルさんには倒せるかもしれないけど私には無理です・・・」
「そんなことないぜ、勝算は・・・・あるっ!!」
結局一睡もできずにライアンは特訓し俺たちは次の日を迎え決戦の舞台に立ったのだった




