妖精はお菓子をお気に召しました。
妖精はとても喜んで飛び切りの笑顔になってはしゃいでいた。
気のせいか部屋がほんのりと暖かくなった気がした。
そう言えばまだ今日は暖房器具のスイッチを入れていなかった事に気付いた。
その能力、さすが春風の妖精と言ったところだろうか。
「ところで君はお腹とか空くの?」
「食べても食べなくても大丈夫だよ」
妖精はそう言ったものの少し寂しそうな顔をしていた。
これはアレだ、何か食べたいってお約束のフリだな?
そう思った拓也は彼にお菓子をすすめてみる事にした。
「お菓子でも食べる?」
「ええっ!いいのっ?」
妖精はその言葉にぱあっと笑顔になった。
やっぱり子供だけあってお菓子は好きなんだなぁ。
拓也は部屋に転がっていたお菓子の袋からクッキーを一つ妖精に与えた。
「へぇぇ…これがクッキー…モグッ!!!!おいしい!」
(まぁ他にもポテチとかあるけど…一気に沢山食べさせるのもアレか…)
拓也は妖精が美味しそうにクッキーを食べるのを見て彼をすごく気に入ったのだった。
この子ならずっと仲良く出来そうな、そんな気がしていた。
姿も見えないし声も聞こえないなら何も心配する事はないだろう。
拓也は安心して部屋の留守を任せて普段通りの生活をする事にした。
暇な時には話し相手にもなってくれるだろうしいいかな…そんな簡単な気持ちで…。
「じゃあ、行ってくるけど部屋で大人しくしていてね」
そう言って朝拓也は出かけていく。
トラブルなんて起きないと思っていた。
「おにーちゃん、私のお菓子食べたでしょ」
「はぁ?」
学校帰りの兄を捕まえて妹が急に突っかかってきた。
何だ何だ、まるで身に覚えがないぞ?
自分が犯人じゃないとすれば答えはすぐに導き出された。
しかしここはうまく誤魔化して切り抜けるかな。
「知らないよ!母さんでも勝手に部屋に入って食べたんじゃねーの?」
こう言う時はしらばっくれるに限る。
母さん、ゴメン!
「バカね!証拠は上がってるのよ!」
拓也の偽証はすぐに覆される事になった。
妹は絶対の証拠を掴んでいたのだ。
これを出されたら反論出来ない絶対の証拠を。
「証拠?」
恐る恐る拓也はその証拠を訪ねてみる。
しかし彼女のその態度からその根拠を覆せない予感はひしひしと感じていた。
ゴクリと息を飲み込む拓也。
「お兄ちゃんの部屋に私のポテチの袋が転がっていたって
動かない証拠がね!」
やられたっ!物的証拠は何よりも雄弁ッ!
勝手に部屋に入られたのはショックだったけどさすがにこれは言い逃れ出来なかった。




