よ、妖精?
その日は冬なのに暖かかった。
いわゆる小春日和ってやつだ。
あんまり暖かかったから拓也は部屋の窓を開けてそのまま昼寝してしまった。
うとうとし始めて1時間持っ経った頃だろうか、拓也が目を覚ますとそこに小さな子供がいた。
まだ寝ぼけているんだろうと思った拓也はまたそのまま寝てしまった。
連日の寝不足のせいでむっちゃ眠かったのだ。
日が暮れかけた時、さすがに寒くなって拓也は本格的に目が覚めた。
そして開けた窓を閉めて振り返った時、彼は目を疑った。
途中で目が覚めた時に目にした子供がまだそこにいたからだ。
(…え?)
拓也は混乱した。
心理面に20のダメージ。
思考回路が働かない!
拓也は麻痺している!
あれ…夢じゃないの?
ここ7階なんだけど…。
この子はどこからこの部屋に?
子供は拓也が見ている事に気付くとにっこり笑ってまたすぐに寂しそうな顔をした。
その子は年の頃3~5歳のように見えた。
何となく声はかけ辛かったけど、ここは声をかけるしかない。
自分が寝ている間に親類の子供か何かが遊びに来ただけかも知れないし…。
勿論事前に拓也にそんな話があったと言う訳ではない。
身に覚えがあるなら今こんなに混乱しているはずもない。
「えーと、ぼうやはどこの子かなぁ?」
話しかけられたのが嬉しかったのかその子の顔に笑顔が戻る。
その顔はとても可愛かったけれどその顔には全く見覚えがなかった。
(しかし誰なんだろうな…)
考えても考えても答えは見つからなかった。
記憶を洗いざらいさらってみても目の前の子供の顔は脳内検索に引っかからなかった。
「僕ね!春風の妖精なの!」
拓也の頭にはてなマークが踊っている所に突然男の子からのとんでもない答えが返って来たー!
第一声がいきなり妖精設定とか!マジっすか!
この子の親は一体どう言う躾を…。
いやここで変に詮索するのもどうかな…。
ちょっと話に乗ってみるか…そこから何か分かるかも知れないし…。
「よ、妖精さんはどこからこの部屋に来たのかなー?」
「窓が開いてたから遊びに来たの!」
これまたどストレートな返事返って来たー!
って言うかありえないでしょ…地上何メートルよここ!
と、取り敢えず話を合わせてっと…。
「そ、そっか…
じゃあそろそろ暗くなったから帰らないとね!」
「でもね、帰れなくなっちゃったんだ…」
そう言うとその子は淋しそうな顔をしてうつむいてしまった。
うん?…これは一体どんな事情があるって言うんだ?




