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パラダイス・ネスト~異世界における楽園の作り方~  作者: トヨム
二章・気がつけば迷走
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第44話 魔銃

 第44話 魔銃


 二人がかりであるために作業は順調で、五日ほどでユーリアのための武器、スターメイスがほぼ完成した。


 ハンマーヘッドの形状も決まり、グリップの握りの調整も済んだ。後は柄の部分の装飾と、護拳ナックルガードの装飾を残すのみである。

 つまり実用段階に到っていると言うことだ。


 やり方としては荒削りをマリオンが担当し、調整をユーリアが担当する。

 これは全体を通して同じだった。


 マリオンは削る対象にイメージをかさね、それを保護すべき領域と考えてそれ以外のところを削るというやり方をする。

 削らないところには魔力粒子と研磨粒子が行かないようにするものだ。

 ユーリアのような繊細な作業ではなく、対象の周囲を研磨のためのあれやこれやが高速で流れ、巡るというやり方なのではっきり言って早い。


 完成イメージも霊子情報処理能力りょうしコンピューターによって正確な形状が維持されていて揺らぎがないし、魔力はイメージに沿って流れるので精密な研磨ができる。


 マリオンには精緻な装飾などを作れる才能はないが、精密な狂いのない加工、機械的な作業は得意分野なのだ。


 ヘッドとグリップを雌ネジ、柄の部分を雄ネジとして形をつくり、それが出来たらユーリアに後の作業を任せる。


 同じ理由で完全な球体に同じ形状の棘を持つ『ヘッド』の仕上げはマリオンの担当となる。


 それらを渡されたユーリアは、柄に思い思いの装飾を施し、グリップを仕上げていく。

 グリップや護拳ナックルガードに関してはマリオンの側にはまったく知識がない。

 滑り止めの構造や、護拳ナックルガードの厚みなども含めてユーリアにお願いするしかなかったのだ。


 だがそれもほぼ終了した。


 ナナカマドと言うのは固くて丈夫な木材で、おそらく名前からして燃えにくい物なのだろう。

 しなりという点では『固すぎる』という評価なのだが、メイスのような使い方ならそう問題にはならない。


 最初に作ったのは全長で六〇センチ程のメイスだった。

 これに次いで長さの違う何種類かの柄をつくり、使いやすいのを選んで、チョイス。というやり方だ。

 残りは予備にすればいい。


 その後、ナナカマドの木を使って簡単な盾を作ったがこちらは完全な間に合わせだ。


 形は以前マリオンが解析した片手用の四角い盾(ヒーターシールド)で、ナナカマドの木では大きさ的に一枚から削り出すのが無理なので、木に穴や突起を付け、組み合わせて板のようにした組み木細工のような物だ。


 ユーリアが仕上げ作業をしている間に作ったのだが、ユーリアがおどろくほどの良い形にできあがった。

 参考にした物が良いものだったので腕を固定するグリップも悪くない。


『枠の補強があれば立派な木の盾になる…かも?』


 とユーリアが評価した。


『かも』というのは所詮全てが木だからだ。


(金属の外枠を付けて、グリップを金具と革に交換したら結構良い物になる)


 ユーリアは本気でそう思った。


 そんな良いできの盾なので、切裂角兎リッパー・ホーン・ラビットの攻撃を受け止めることもそれ程心配はいらなかった。

 陸妖精族ノーム達は魔法で持ち物を『強化』することができるのでなおさらだ。


 この草原では万全と言っていい装備だった。


 この盾のできに感心したユーリアの脳裏には、どこか知らない町でユーリアとマリオンが装備屋の夫婦として働いているイメージ浮かんでは消えたりする。

 だがこれは簡単に受け入れられる物ではない。


(だめよ…だめだめ…もっと気をしっかり持たないと…)


 ユーリアは頭を振って気をしっかり持とうとする。


 …無駄な抵抗?


 ◆・◆・◆


「はっ」


 という気合いの声とともにスターメイスが空振(●●)る。


 ヂヂッ。という鳴き声とともに切裂角兎リッパー・ホーン・ラビットが地面に落ちて痙攣を経た後、絶命した。


 空振りの効果は思いがけない物だった。

 出来上がったこのスターメイス。ユーリアの魔力を使い周囲に土属性の魔力の波を放出する能力があった。


 直接的な打撃以前に殴った対象に『激震』によるダメージを与える。


「すごい…生まれて初めて能力スキル付きの武器の制作に立ち会えた」


 ユーリアは感動していた。いたが…


能力スキルって何?」


 と、マリオンは首をひねった。


 まあ『特殊な能力のことだろう』というのはなんとなく分かる。

 そもそも『能力スキル魔導核』を使えば能力スキル付きのアイテム――この場合は魔導器コンダクターと呼ばれるのだが――が作れることはすでに知っている。

 能力スキルというのはそういう物だとマリオンは思っていたのだ。


 だが同じ能力スキルという言葉を使ってもこれはちょっと意味合いが違うように感じられた。

 

 だが話は簡単で…


「素材によっては最初から特殊な能力を持っている物がある。他にも制作過程で特殊な能力を持った武器などができることもある」


 と言うことらしい。


 実例としては防具などには割と多く、『耐火』の能力スキルを持った盾とか、耐寒の能力スキルを持った皮鎧とかがある。

 これは魔物の皮などがそういう性質を最初から持っているために作った武器にその耐性が引き継がれ起こる現象だ。


「有名なのだと竜の鱗とか…あれは『不壊金剛』と『属性防御』のスキルをたいてい持っている」


 どうもそういうことらしい。


 ここには『鑑定』などという能力スキルは無いのだが、あったらきっと名前とか攻撃力の他に所有能力スキルの欄とかあったかも知れない。


(するってーとあれかな、長柄剣ロティオンとか何か変なスキルを持っていたりするのかな?)

 マリオンは考えた。


 変な、とか失礼だがその可能性は高いだろう。


 鑑定という便利能力がないここでは能力スキルなどと言うものは過去の経験則と実際に使用しだ現実の能力で計るしかない。

 であればやたら丈夫でやたら切れる長柄剣ロティオンは『能力スキル付き』の武器であるかもしれない。


 だがユーリアの知っているのはこのくらいらしい。


 マリオンはそのうち誰か詳しい人に聞いてみようと心の隅にメモしておくことにした。


「まあ、それはともかくそのメイスは差し詰め『激震のメイス』というところかな…」

「! うん、良い名前」


 マリオンの提案にユーリアが飛びついた。

 安直ではあるが悪くはないだろう。

 ティファリーゼも頷いているところを見ると合格点というところであるらしい。


 現在マリオン達は進行速度をゆるめて見晴らしの良い草原の真ん中でキャンプを張っていた。

 前々日からティファリーゼが熱を出したために移動を停止したのだ。

 マリオンはさすがにこの山越えで疲れがたまったかと考え。少しゆっくりすることにした。


 マリオンは魔力を直接目で見ることができる。


 人間であれ、動物であれ、それの持つ生命力というような物がうっすらと靄のように光って見える。

 強い力を持ったひと、過去の例で言えばソルタとか、トゥドラとか、ああいう鍛えられた人は強い。

 他にも若い人の方が年寄りよりも強い傾向があり、体調の悪い人などはこの光が弱くなる。


 ティファリーゼの生命力はかげることなく明るいのでマリオンはあまり心配をしていなかったが、別に急ぐ旅でもない。

 熱のある人間を連れて旅を強行する必要もないだろう。


 そして『休み』となると結構、時間ができる。

 その時間を利用してメイスを完成させた訳だ。


 その後丁度、襲ってきた切裂角兎リッパー・ホーン・ラビットを利用して戦闘のテストと相成った。


 盾と鎧で敵の攻撃を防ぎながら強力な一撃をお見舞いする。

 これがユーリアの基本的な戦闘スタイルだ。


 だからといって遠隔攻撃ができない訳ではなく、ある程度の距離なら石槍投射ジャベリンの魔法などで攻撃もできる。


「こうしてみるとユーリアってなにげにスペック高いよね…」

 マリオンは感心する。


 盾とメイスという選択はやはり正解だった。と、マリオンは思う。このチョイスはユーリアの長所にあっている。


 メイスの重量は多分六キロくらいあるのだが、リーチが短い所為で取り回しがしやすいようだ。

 とはいっても六キロというのは工事で使う大ハンマー並みの重さなのでユーリアの力もはっきり言ってすごい。

 その重いメイスをかなり自由に振り回し、切裂角兎リッパー・ホーン・ラビットを攻撃している。

 ほぼ無敵である。


 それに分業も良い。


 獲物となるのは何も魔物ばかりではなく、近づくと逃げる一般動物もいるわけだが、こちらはマリオンの担当だ。

 マリオンの遠距離攻撃が容赦なく発動する。


 そんな訳でマリオン達の獲物しさんは旅を通して確実に増えているところだ。


 ◆・◆・◆


「私の担当は飛び道具~」


 夕方、一日の営業(?)を終え、仕舞いに入ったマリオンは暢気に鼻歌を歌っていた。


「旦那様ご機嫌ですね…」


 こういうのも以前に何度かあったのをティファリーゼは記憶していた。


 ご機嫌という訳でもないのだが憂いがないときなどつい鼻歌が出てしまう。

 今まであまりそういう機会がなかったのはこれまではやはり気を張っていることが多かったためだろう。


 それにティファリーゼの熱がきっちり下がったのもまったり感に拍車をかけている。


 そして、なんと言っても『激震のメイス』の完成はマリオンの精神にかなり良い影響を与えていた。

 クリエイティブな行為というのはそれだけで人の心に慈雨のように作用するのだ…


 元々マリオンは絵を描いたり、プラモを作ったりするのはかなり好きだった。

 そういう楽しみが、ちょっとベクトルが違うがマリオンの中によみがえっていた。


 つまり地球にいたころの気分を久しぶりに思い出したのだ。


「そういえば、飛び道具と言えばあれがあったよな…」


 それはちょっとした連想ゲームだった。


 『地球』→『友人』→『ガンおた』→『銃』という感じだ。

 だが端で見ているものには唐突だった。


「?」

「ユーリアこれしらない?」


 そう言ってマリオンが取り出したものを見てユーリアは衝撃を受けた。


「魔銃…」


 そう、かつて盗賊を倒したときに戦利品として手に入れ大型長銃だ。

 ライフリングがされていないのでライフルとは言わない。


「ああ、これってやっぱり魔銃っていうのか…完全にかぶるなあ…何か新しいの考えようか…」


 名前のことである。

 人は時に無謀なことに踏み込むものなのだ。


「ところでユーリア、これって?」


 とはいってもすぐに名前が思いつくものでもない。

 マリオンはそれをひとまず後回しにして、左手に持った銃を指さしながらユーリアにクエスチョンを投げてみる。


「うん、魔銃と呼ばれている。聞いた話だと三年くらい前から噂になってきた武器らしい。最近はちらほら見かけるようになった」


 果たして彼女の返事は簡潔だった。


「ほう…」


 そして興味深い話でもある。


 ユーリアがスミシアに出て来てから二年くらい。それ以前の話は当然伝聞という形になる。

 三年前というのは師匠と兄弟子から聞いた話らしい。


(三年ほど前に噂になると言うことは開発されたのはさらに少し前、どんなに遅く見積もっても四年ぐらい前から『銃』という概念がここにあったと言うことだよな…その頃誰かが銃を伝えたんだ…)


 それは良い話であり悪いというか残念な話でもあるようにマリオンには思われた。


 少なくともこの銃を伝えた人間は間違いなく地球人だろう。そういう確信がある。

 そしてその時期から考えてマリオンが探していたガンおたの友人ではないと思われるのだ。


(だけど…少なくとも、地球人が最低一人ここにいる可能性は高い)


 同時期にいくつか新発明が発表されたと言う話を以前に聞いたがこれをどう考えるべきか…

 他にも地球人がいるのか、それともこの一人が多方面の才能を持っているのか…


 マリオンがそんなことを考えている内にユーリアが『魔銃』をガチャガチャといじり始めている。


「興味ある?」

「うん」

「じゃあ、説明しよう…でもその前に銃口を人の向けるのはだめ。絶対だめ…弾が入って無くてもやめなさい」

「はっ、はい」


(まさか自分がこんな物騒な常識を人に解く日がこようとは…)


 マリオンの内心の衝撃に気付かずにユーリアは目を輝かせた。


 ◆・◆・◆


「ここに魔導器コンダクターのようなものが入ってるんだ」


 そう言ってマリオンは銃の機関部を指さし説明を始めた。


「ここに爆発を起こす術式が二つに分けて組み込まれていて、この撃鉄というのを後に引いて、この引き金を引くと、バネの力で撃鉄が移動して、二つに分かれた術式が一つに合わさって完成。

 銃を持った人間の魔力で爆発の魔術を発動して、その爆発の圧力でここに納められた弾丸が勢いよく撃ち出される…そうだな機械式の弓みたいなものだ」

「そうか…機械弓の弦の代わりに爆発を使っているんだ…すごい発明…」


 ユーリアは感心しながらその話を聞き入っていた。


「こういう武器って以前に聞いたことある? 僕もティファも見たことも聞いたこともなかったんだけど」


 マリオンの質問にユーリアはゆっくりと首を振った。

 もちろん横に。


 だがそれでも分かることはある。

 例えば今まで見たことはなかったが機械弓と呼ばれるようなものはここにもあると言うことだ。

 そういったことを期待してマリオンは質問を重ねる。


「他にもクラインみたいなアイテムバックというやつが最近発明されたという話も聞いたけど…知ってる?」

「聞いたことはあるよ…どんなものか見たことはないけど…多分希少なものだから簡単には手に入らない」

「それもここ最近?」

「そう」


 うーむとマリオンはうなる。


(とすると…やはりごく最近に魔法技術のブレイクスルーが起こった可能性が高いな…となると僕みたいな地球人が…最低でも後一人…いや、現に二人いるんなら…もっといても不思議じゃない…)


 実例としてマリオンがユーリアに教えた『工作魔法』も一つのブレイクスルーといって良いものだ。

 もしこの後、この魔法が陸妖精族ノームの間に広がって行くのなら、この世界の加工技術は飛躍的に上がるだろう。


 向こうにあったものをこちらの魔法技術で再現する。

 単純に言うとそれだけのものだ。


 銃と言うのもおそらく同じ発想だ。

 銃と言う物を知っている人間がこの世界でそれを再現しようとした。

 おそらく発端はそんな物だろう。


(まあ…アイテムバック…亜空間倉庫のような物がどうねじれると誕生するのかは良くわかんないけど…)


 ひょっとしたら某青いずんぐりむっくりが活躍する漫画のファンとか?


「それでも会えるなら会ってみたいな…」


 マリオンはぽつりとこぼす。


「これを作った人にですか? 旦那様」

「そう、会えるんならね…ちょっと話を聞いてみたくはある」


「ごめんなさい、私は聞いたことがない」


 ユーリアが申し訳なさそうにつぶやいた。


「気にしないでいいよ、ちょっと興味があっただけだから…それよりこの魔銃に関して知っていることがあったら教えてほしい」


 ユーリアは続けて知っている限りのこと教えてくれた。

 ユーリアがこの魔銃の現物を始めた見たのは半年ほど前のことだった。


 ユーリアの修行する工房に『弾丸の制作依頼』というのが持ち込まれたのがきっかけだった。

 師匠であるライナルトも始めて見る『魔銃』の現物に興奮した。

 はっきり言って興味津々である。


 だが依頼の内容は折り合うような物ではなかった。


 金属に限らず何かを球形に加工することは高度な技術が要求される。

 さらに弾丸として使用できるほど均一で整ったものを作るのはきわめて難しいと言えるだろう。


 マリオンの感覚ではユーリアのように手作業で仕事をする陸妖精族ノームにとってかなり至難の業だろうと感じる。

 ユーリアの工房もそういった理由で断ったんだろうとそう考えた。

だが…

 

魔鋼ダマスカスはさすがに少し難しいよ。でも私たちの魔法なら鉄や鋼ならたいして苦労はしないで作れる…多分…馴れ」


「あっ、そうなんだ…」


 マリオンの肩はずっこけた。

 どうやらできるらしい。


 陸妖精族ノーム達が鍛冶士として優秀なのは土属性の物質に上手に干渉できるという能力があるからだ。


 先ほどの盾の強化の反対に、物質を柔らかくすると言うこともユーリア達陸妖精族ノームには得意分野だ。

 おまけに結晶装甲はいろいろな場面で役立つ。


 例えば熱に強いこととかだ。


 鍛冶仕事というのは高温で金属を加熱し、叩くというような作業なわけだが、この結晶装甲を厚くするとまっ赤に焼けた金属にも直接触ることができる。

 おまけに対象の金属は陸妖精族ノームが触ると普通よりもずつと柔らかく加工しやすくなる。


 同じ量に切り出した金属を丸く丸めるとこはたいして手間のかかる作業ではない。


 研磨などにしても陸妖精族ノームにはそのクリティカルなポイントが自然と分かるそうで、だから工具だけですさまじく堅い金属や石に挑むことができるのだ。


 魔鋼ダマスカス真銀ミスリルなどはその性質からただの鉄などに比べるとずっと扱いが難しいが、それでも他種族にとってのそれよりずっと素直に加工に応じてくれるのだとユーリアはいう。


 この『金属』が『応じてくれる』という言葉に陸妖精族ノームの種族特性を見る思いがする。


 ライナルトはこの魔銃を調べさせて欲しいと申し出たが当然のように拒否された。

 そしてライナルトの方も弾丸の制作は断ると決めた。


「確かにお金にはなる、けど来る日も来る日も丸い玉作りでは陸妖精族ノームのプライドか許さない」


 まあそういうことらしい。


 言ってみれば、一流の職人を同じ職種だからといって工場に押し込め、朝から晩まで単純作業に従事させるようなものだろう。

 ライナルトは当然のように断ったのだ。


「これがもし、魔銃の構造が分かって改造や改良まで仕事の内に入ってきたら受けたかもしれない」

 

 ユーリアはマリオンの許可を得て魔銃をばらして構造を調べながらそんなことを教えてくれた。

 彼女にしてみてもこの魔銃は興味深いものであるらしい。


 そしてもう一つ、以前に彼女が見たものはこの魔銃よりもずっと小さい物だったそうだ。

 弾も小さく、砲身も短い。


 これは狙う対象に合わせて威力の違ういくつかのタイプがあると言うことかもしれない。

 魔銃が数種類あるとしたら、銃の発明自体はさらに前に倒れ込むことになるだろう。

 それがどう影響するのか…

 だが今はそれを確認する方法はない。


「まあ後回しだな…」

 マリオンはこの思考を思いっきり棚に上げた。


「しかし困ったな…あれも魔銃これも魔銃か…名前がかぶってしまった…魔力を撃ち出すから魔銃、魔術で弾を撃つから魔銃…そのうち魔法を打つから魔銃なんてのも出て来たりして…」


 それは何気ない一言だった。

 会話の流れの中で出て来たただの与太話。

 だがその言葉を聞いたときにユーリアが目をキュピーンと輝かせ、そしてなにやら決意に満ちた顔を見せた。


 だがマリオンはそんなことには気付かずに思考を発展させる。


「やっぱり何か僕の銃に名前を考えないといけないな…」


 やめた方が良いと思う。


「僕の銃は高重力場の力線で相手を攻撃するんだから…重力ガン? えっと…殺人光線…って人が対象じゃねえし…じゃあ破壊光線?」


 だんだん怪しくなってきた。


「うーん……重力波破壊銃グラビティーブラスト!」


 おおっ、漢字だと前時代的だが横文字は悪くない。

 破壊光線よりはずっと良い。


 マリオンの自分の銃に『グラビティーブラスト』の名を付けた。

 一安心である。


「あの…マリオンさん」


 しかしそんなことをやっている内に事態は深刻の度を深めていた。

 マリオンがユーリアを振り返ると。


「組み立てられなくなっちゃった」


 盛大にばらされた魔銃の前でユーリアが涙目になっていた。


「あー……大丈夫大丈夫。組み立てかたは分かるから…」

(良かった霊子情報処理能力りょうしコンピューターにデーターを保存しといて…)


 以前自分でばらしたときのデーターが丸々残っていた。


 しかし、さすがユーリア。どじっこモード搭載型である。

お越し下さいました皆様ありがとうございます。

感想などございましたら是非お寄せ下さい。心待ちにしております。


次回更新は7月12日日曜日を目指しております。

是非またお越し下さい。


トヨムでした。

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