灯火を君に
そこには何もないように見えてガラスだけがあった。黒い予感。何処に意識があるのか分からなくて、僕はそれを探す。
どうする夜。砂が零れ落ちる音。だからかまわないで。
息が出来ない。それすら。
自分が自分でなくなるというのはこういうこと。そもそもの始まりは何処?
体と心が別離する感覚。どうすればいいんだろう?「大切なそれ」がないから、よく分からない。
青。群青?違う。これは把璃。僕はもうここから出られないんだ。
求めるもの。分からないということ。
感覚を信じる。僕のどこかにそれは残っているのか?
分からない。夜の時代。早すぎた痛み。
自分の一歩一歩が奇妙でならない。これは僕の道か。走らされているのか。
濁った水で聞こえない耳。
僕の声だけ?
――分かるということ。心を、ここに。
「どうしても僕を取り戻さないといけない」
朝の高鳴り。残酷な音。
ガラスの壁面は空想の崖。
僕は立つ。僕が立つ場所が僕だ。
透き通っていく。
走る線路。でもこれは僕のものだ誰のでもない。
何処へ行こうか。好きに選んで。
「早すぎることは、悪いことじゃないわ」
だから君にあげよう。
これは巴里。灯火を君に。