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LINK7 獅子の雷刃×決定的な差=歪む絆?

皆様、半年も更新が遅れて申し訳ありません!!m(_ _)m


今回から新キャラ&皆様待望(?)のあの人が登場致します!!


どうぞ!!

―津凪高校・剣道場



「はぁっ!!やっ!!せいっ!!」


「えいっ!!やぁっ!!せぇぇいっ!!」


フローリングの床、辺り一面が真っ白の壁と天井、額に飾られた数々の表彰状が特徴の清潔感溢れる体育授業向きの一室にて、防具を着けた二人の剣道部員が互いに気合いの籠った声を出し、竹刀を打ち込んで練習稽古をしていた。


「やあぁぁぁぁっっっっ!!!!」


一人の部員が竹刀を頭上まで上げた「面」の構えを取り、もう一人の部員に向かって走り出し兜目掛けて振り下ろそうとする。が…


「胴ぉぉぉぉっっっっ!!!!」


「きゃあっっ!!?」


それを紙一重の所で無駄な動きをせず回避し、且つ相手の胴目掛けて竹刀を強く突きその衝撃により吹き飛ばす、カウンター戦法で返り討ちにした。声の特徴から、勝ったのは男子で負けたのは女子の様だ。


「ふう…俺の勝ちだな。立てるか?」


「大丈夫です。自分で立てます。」


兜を脱ぎ、頭に巻いたタオルを取って汗を拭く鳶色の髪をしたスポーツ刈りの2年A組の生徒で剣道部部長の裂雷哮士(さくらい・こうじ)は手を差し伸べるが、同じく兜とタオルを取った黄色のライオンの鬣の様なウェーブがかったセミロングヘアーとハスキーかつ穏やかな声が特徴の、彼と同じクラスメイトで副部長を務めている宍尾駈瑠(ししお・かける)は、その手を借りず自力で立ち上がる。


「こうして部活とは別に鍛錬をするのは良いな。己の力がこう、日に日に高まっていく気がするな。」


どうやらこの二人は部活動が終了した後も、それとは別に毎日稽古を行っている様だ。哮士はそれにより自身の力が少しずつ強くなりつつある事を実感している。


「そうですね。これからも更に稽古を積んでいって…今度は勝ちますからね♪」


「ふっ…俺も負けぬがな。」


更なる精進を心掛ける駈瑠は、次の稽古試合で自分が勝つと宣言する。哮士も笑みを浮かべながらそう答える…。




―シャワー室



「ふう…。」


先程の稽古で大量の汗を流した哮士は、シャワーを浴びてその爽快感に気持ちの良い表情をしている。そこへ…


「哮士さん。私と一緒に浴びましょう♪」


「ぶっ…ばっ、馬鹿!!何故入って来た!?///」


タオルを巻かず一糸纏わぬ姿でスタイルの良い身体をした駈瑠が普通現れて彼の隣に来てシャワーを浴びる。当然、この状況に普段から生真面目な性格をした哮士は、顔を赤くしながら尤もな言葉を出す。


「良いではありませんか、一緒に浴びた方が効率が良いし…私達の『関係』ではこれが当然なんですよ?」


「そっ…そうなのか…!?ならば止むを得ない…な…。///」


しかし、駈瑠の言葉を聞いて何故か承諾する哮士。シャワーで隣り合う二人の影の内、一人は人間のそれとは違う別の「何か」であり、彼女の口にした「関係」の理由を示しているのかもしれない…。




―翌日



「大丈夫か深波?」


「…ええ、大丈夫…。流に負ぶってくれてるお陰で大分楽よ…。」


何時もの様に学校へと向かう流と深波だが、何故か流が深波を自分の背中に担いで歩いていた。


実は、今朝突然深波が眩暈を起こし体調が優れない状態となったのだ。前回のパロペット・スカイミテイトとの戦いのダメージが回復していないのだと考え、流も最初は学校を休む様勧めたのだが、当の本人は「彼が負ぶってくれれば治りそう」との事で、取り敢えずその案を呑んで登校しようと現在に至る…。


「流の背中大きい…ずっとこうしてたいわ、えいっ♪」


「お…おい!!///あまり身体を押すな!!その…当たるだろ!!?///」


「当・て・て・る・の・よ♪」


深波は今の状況を絶好のチャンスと見て、妖艶な笑みを浮かべながら流の背中に更にしがみつき、自身の豊満な胸を押し付ける。体調不良の彼女を降ろす訳には行かず、止む無くこの状態で歩いていると、その道中に同じ生徒達から殺意の籠もった目で睨み付けられてしまう…。




―津凪高校・校舎内



「取り敢えず今日は保健室で休め。先生には俺が報告しとくから。」


「私、一生このままで良いんだけどなぁ…。」


「俺が困るんだよ!!このままじゃ何れ死ぬわ!!」


どうにか学校に到着した二人。流の進言に物申す深波だが、何時までも彼女を負ぶっていると今度は自身が無事じゃ済まないと反論される。よく見ると流の頭には無数のたんこぶが出来ていた。どうやら、睨まれただけでなく小石まで投げつけられた様だ。


「は〜い…。」


口を尖らせて不満げな表情をする深波だが、これ以上流に負担を掛ける訳にはいかないと渋々納得する。そんな会話をしながら歩いていると、あっという間に保健室の前に辿り着いた。深波を背中から降ろした流がドアを開けて入室すると…


「失礼しま…って…エエエエェェェェッッッッ!!!?///」


「あら、どうしたの?」


目の前にいる保険医の先生を見て絶叫した。何故なら、普通なら軽装の服の上に白衣を羽織っている筈なのに、あろう事か銀髪のショートヘアに縁無しの眼鏡をかけた妖艶な目つきをした翡翠色の瞳、そして、否が応でも目に行く程の爆乳の持ち主である保険医・彩盗巡さいとう・めぐるは、薄いピンク色のナース服にキャップと余りにも常識外れな格好で細足を組んで椅子に腰掛けていた…。


「どうしたじゃありませんよ!!何でそんな格好をしてるんですかっ!!?///」


「これは私の趣味よ♪後、君は此処に来た事無いから知らないけど、私日毎に違う格好をしてるのよ。主に男子生徒達からの要望でね♪」


巡の素っ頓狂な格好に強く突っ込む流に対し、彼女は趣味コスプレでやっているのだとさらっと答える。これは男子生徒達からのアホなリクエストであり、日によって違うコスプレをするらしい。因みに今週のコスプレは以下の通り…




日…カオスDAY


月…水着(銀のスリングショット+白衣)


火…メイド


水…ミニスカポリス


木…バニーガール


金(本日)…ナース


土…OL


※オプションはお好みで♪




「何なんだよこの如何にも怪し過ぎますって感じの店に出てきそうなメニューはアアアアァァッッ!!?カオスDAYって何だアアアアァァァァッッッッ!!!?」


流は、このブッ飛び過ぎたメニューの内容に喉が破れそうな程大声で突っ込んだ。そりゃそうだ、こんな「一万円ポッキリでお楽しみ♪」的な保健室がこの世にあってたまるか。しかし悲しい事に、この非常識な中身を歓迎する者(主に男子生徒&男性教員)が要るらしく、巡目当てで態と怪我をして此処に赴く…等浅はかな事をやらかす馬鹿が絶えないのが現状である…。


「巡せんせ〜い♪二階の窓から落ちて怪我しちゃいました〜♪」


「やっぱり来たよこの変態は!!」


行ってるそばから、今の現状の例を実施した変態…もとい竜駕が頭から血をダラダラ流し、顔のあちこちに擦り傷を作り、制服が汚れボロボロになった状態で赴いた。何故故意的だと思ったのか?奴のにやついた面が何よりの証拠だと言っておく。


「全身あちこち痛いので、身体の隅々を検査してくだ…サボテンッ!!?」


「病院行け…頭のね…!!」


そして御約束通り、一応身体の具合が悪い筈であろう深波から顔面に鉄拳を叩き込まれそのまま死んだかの様に気を失いぶっ倒れた…。


「具合悪い子ってその子かしら?」


「あ…はい、そうです。」


巡に話し掛けられた流は、本来の目的を思い出し深波を彼女の近くまで誘導する。


「じゃあ深波、後はゆっくり休んどけよ。」


「あっ…待って流!!一緒に居…て…!!」


そして用が済んだ流は、そのまま教室へ向かうべく保健室を後にした。付き添いを求む深波の声に気付かずに…。


「もしかして彼氏?」


「…あんたには関係無いでしょ。さっさと診てちょうだい。」


巡に流との関係を尋ねられた深波は、不機嫌な表情をしながら診察する様促す…。




―1年B組



「そ…そりゃまた随分とデンジャラスな保健室だな…。」


「(詞音とのエッチの時は詞音の好きなコスプレをしようかな…。)」


流から保健室の内容を聞いた詞音は、やや眉をひくつかせながら率直な感想を漏らし、奏は心の中でとんでもない事を企てている。


「あんなんで保険医が務まるのかどうか疑わしいよ…。」


「だから鏡神みたいな変態が後を絶たないのね。」


「誰が変態だ!!紳士と呼べ、紳士と!!」


「どっから沸いて出たのよ!?」


「て言うかお前、怪我してたんじゃないのかよ!?」


噂をすれば影…七花からの悪口に強く反応した変態と言う名の紳士(自称)、竜駕が何時の間にか此処に居た。何故か先程負っていた筈の傷も無くピンピンとした状態で…。


「この世にエロが存在する限り…俺は不死身さ…バイブッ!!?」


「ウザい。」


七花は、意味不明な理屈をほざく竜駕へんたいに取り敢えず顔面に鉄拳を叩き込む。竜駕、本日これで通算3回のダメージである。


「最後まで言わせろよ!!それより流、深波ちゃんをあのままにしといて大丈夫なのかよ?」


「どういう事だよ?」


「あの先生、男だけでなく女子もイケるクチでよ…気に入った生徒に『洗礼』を与えてるって噂なんだ。だから深波ちゃんを置いてったのはマズいんじゃないかって話。」


「なっ…そんな訳…!!いや、有り得るかもしれない…ま、まさか…!?」


竜駕から巡の只ならぬ性癖や噂を聞き、顔を真っ青にしながら冷や汗を垂らす流。そして、その噂を元に脳内でこんな想像をし始める…。




※流の脳内イメージ



「さぁ海噛さん…全身の力を抜いて…。」


「あ…そこ…触っちゃ嫌…はぁぅんっっ!!///」


巡に制服を捲り上げた上半身周辺(特に胸)に聴診器を当てられ、最初は小さな声で敏感に反応する深波。その行為は徐々にエスカレートし、果てはスカートの中に手を突っ込まれた為思わず大声で反応してしまう…。


「あら…ココはちょっと触っただけなのに湿っちゃってるわね〜。何かの病気かしら?」


「…そうよ、悪い?///」


「じゃあ、貴女の身体をじっくり調べて『毒素』を出すから横になって…大丈夫、優しくするから…。」


「先生…いえ、巡御姉様…!!///」


初めは素っ気なかった深波だが、あまりの過激な「診察」にスイッチが入ってしまい、遂に巡の手に墜ちてしまう。そして二人は口と口を重ね、禁断の世界へと突き進んで行く…。




※妄想終了




「アウトォォォォッッッッ!!!!///」


「禁断の領域…是が非でも収めてやるっ!!ヒャッハァァァァッッッッ!!!!」


凄まじき妄想により不安が爆発した流は、これまで以上に激しく叫びつつ深波の居る保健室へと爆走し、竜駕は奇声を上げて流が勝手に想像した「禁断の領域での情事」の瞬間を記録出来る事を期待しつつ、ビデオカメラを持参して彼を追う…。




「深波!!無事かっ!!?」


「う…うん…。」


二階にある1年B組の教室から一階にある此処保健室まで、僅か約9.8秒の超速度で辿り着いた流は、人差し指を舐めている巡をそっちのけで深波に安否の確認をする。しかし、肝心の本人は何故か顔を俯かせており、寧ろ保健室に来る前の時より浮かない表情のまま、流への返事に首を縦に振って答えた…。


「体力、血圧、脈拍共に何の異常も無いわ。…魔力を除けばね。」


「そうか…魔力以外異常無しか…って、えぇぇっっ!!?」


「海噛さん、リンキュバスなんでしょ?」


「あ…いや…その…!!」


巡から深波の診察結果を聞いて安心する流だが、同時に彼女のリンキュバスとしての正体に気付いた事に驚く。しどろもどろに誤魔化そうとする流だが…


「安心して。この事は内緒にしとくし、彼女や小森さんがリンキュバスだって事は前から知ってたから。」


深波だけでなく奏の正体を知っており、彼女達がこの学校に編入してきた時からその存在を把握していたのであった…。


「あんたも魔契者なのか?それとも…」


「それ以上は乙女のヒ・ミ・ツ♪」


流に素性を尋ねられた巡は、ずっと舐めていた人差し指を口元まで近付けて妖艶な表情をしながら内緒の仕草ポーズを取る…。


「はぁ…それで、魔力に異常があるってどういう意味なんだ?」


「水始君…最近海噛さんと何回ぐらいエッチした?」


「ぶっ!!?なっ…何聞いてんだあんたは!!///今そんな事言って…!!///」


はぐらかされて溜め息をつく流は、深波の魔力の異常について巡に尋ねる。すると、質問とは全く無関係なふざけた質問を逆に返されて顔を赤くしながら突っ込み入れるが…


「その様子だと、全く手を出してなかったのね…。」


その反応を見た巡は、先程迄の悪戯めいた態度とは一転した真剣な表情で肩を竦めながら小さく溜め息をつく…。


「なっ…何か不都合でもあるのか…?」


「不都合も何も無いわ。彼女がこうなった原因は水始君…貴方にあるの。」


「はぁっ!!?どういう事なんだよ!!?」


「ホント、ここまで鈍感だったとはね…。貴方は――」


変な質問をしたと思えば、深波の体調不良や魔力の異常の原因が自分だと指摘されて苛立ち声を荒げる流に、巡が呆れた表情を取りながらそれについて説明しようとした瞬間…


「な、何だっ!!?」


学校の何処かで爆発音が響き、校舎内に居る生徒達が驚き、騒ぐ声が聞こえ始める…。


「もしかしてリンキュバス騒ぎか!?」


「深波がこんな状態じゃ戦えない…!!鏡神、詞音と奏の所へ…!!」


「あの二人だけじゃ心許ないわ…流、私達も行こう…!!」


深波の今の体調を考慮して、今回は詞音と奏に任せる様竜駕に伝えようとする流だが、なんと深波は自分達も参戦しようと言い出す。


「何言ってんだよ!?そんな状態で行ってもむざむざやられに行く様なもんだぞ!!」


「煩いわね…少し休んで楽になったからこのくらいの魔力でも大丈夫よ。さ、流。」


竜駕の制止の声をはねのけて、僅かに魔力が回復したと言いながら流に参戦を臨む深波。


「…あまり無理はするなよ?」


「分かってる…。」


不安ではあるが、自分達も参戦する事を決めた流は、深波と共に現場へ向かうべく保健室を後にした…。


「あんな状態で行って大丈夫なのかよ…?」


「はっきり言って、今のままだと彼等が勝てる可能性は無いわ。」


「そういやさっき、流に何を言おうとしたんスか?それが深波ちゃんのあの様子と何か関係でも?」


「…もし水始君が無事なら伝えてあげて。実は…」


今の状態では流と深波は勝てない…そう断言する巡は、先程流に話そうとした話を竜駕に言付ける…。




流と竜駕が保健室へ駆け込んだ同時刻まで遡り…


「本日も気合いを入れて沢山鍛錬いたしましょう!!『夜の鍛錬』も含めて♪」


「馬鹿者…!!///」


左肩に黄色い稲妻のラインが入った黒い竹刀入れを担いだ制服姿の駈瑠は、ハキハキとした態度で本日の稽古に臨むが、同じ竹刀入れを担いだ哮士は、彼女の「夜の稽古」と言う言葉に顔を赤くして軽く突っ込みながら肩を並べて剣道場へ向かっていると…


「裂雷ぃ…2年の分際で部長に成り上がるなんて生意気なんだよぉ…!!」


目つきの悪い3年の男子生徒が、同じく3年の茶髪のソバージュに色黒の肌をした女生徒と共に立ち塞がり哮士を睨み付ける。彼も剣道部員だが、1年下である哮士が部長を務めている事が前々から気に食わなかった様だ…。


「あれは部員全員の多数決で決まった話の筈ですが?」


「んな事知るか!!まあいい…今日はてめぇの命日だ!!行くぞ!!」


「何時でもOK♪」


「闇絆の証!!発掘土竜!!」


男子生徒は哮士に対するこれまでの不満を晴らすべく、女生徒に指示を出すと彼女の姿は、一瞬だけ黒い全身に茶色の「M」の様な禍々しい模様で刻まれ、太目のドリルの様な一本角を生やし、左腕が同型のドリルで、茶色い瞳の土竜を模した仮面の様な素顔をしたリンキュバス「モルラ・ディグランド」となり、直ぐ様同じ色の瞳をした黒い土竜の顔を模したドリルの闇絆の証「発掘土竜(スパイラル・モール)」に変化し、彼の左腕に装備する…。


「てめぇの身体をコイツで蜂の巣にしてブッ殺したら、そこの女は俺の『ドリル』でさんざ突きまくった後で始末してやらぁぁっっ!!」


男子生徒は凄まじい速度で回転する発掘土竜を構えて、哮士と駈瑠への明確な殺意を吠えながら彼等に向かって行く。それに対し…


「止むを得ないな…駈瑠…!!」


「はい…!!」


哮士は冷静な態度のまま肩を竦めた後、剣道の稽古時の様に目を鋭くさせ、駈瑠は全身から黄色い光を発し、黒い全身をした獅子ライオンの鬣の様な複数の角を生やし、胸の部分に黄色い「L」の様な禍々しい模様が刻まれたスタイルの良い身体をした、刃の様に鋭い黄色の瞳をしたリンキュバス「レオナ・グランヴォルト」へと変化した…。


「何ぃっ!?てめぇも魔契者かよ!?」


「そうだ。そしてこれが『某』と駈瑠の絆の力だ…。闇絆の証…!!」


哮士は一人称を「某」と呼び変えつつ、右掌にある魔契者の証たる黒い獅子の紋章を翳す。すると、レオナの身体から周囲を包み込む程の黄色に輝く光と黒い雷が纏い、そして…




『グィヤァァァァッッッッ!!!?』


「…ァガアアアアァァァァッッッッ!!!?」


光が止んだ時には、何時の間にか発掘土竜に変化したモルラは発狂したかの様な断末魔の声と爆発音と共に消滅し、その魔契者「だった」男子生徒は左腕が稲妻の様に裂けた傷を負い、激しい出血とその激痛によりのたうち回る…。


「解るか?これが某と貴様の力の差だ…。」


レオナが変化した、全身が黒く、オールバック状に束ねた様な鬣をした黄色い瞳の獅子の鍔が特徴をした、日本刀の闇絆の証を肩に担いだ哮士は、男子生徒を見下しながら侍の様な口調で話す…。


「今後は下らぬ嫉妬に駆られず、己を磨く事だな…!!」


「ヒッ…ヒィィッッ!!」


哮士の刃の如く鋭い目で睨まれた男子生徒は、その迫力に怯えて左腕を押さえながら情けない悲鳴と共にその場から立ち去って行く。…にも関わらず、何故か闇絆の証を解除しない哮士。その訳は…


「貴公等…何用だ?」


丁度現場に辿り着いた流と深波が、彼の背後で立ち尽くしていたからである…。


「さっきの爆発音、もしかしてあんた等の仕業か?」


「某達を討とうとした輩を始末したのだから間違いでは無い。」


「なら、あんた達もリンキュバスの力を悪用する奴と戦ってるのか。もしそうなら…!!」


「手を組み、共に悪事を働く輩から人々を救おう…か?笑止、某達は身に掛かる火の粉を払った迄…。」


流は、哮士も自分達同様リンキュバスやその力を悪用する魔契者の脅威から人々を守って戦っているのだと思い、彼に仲間になろうと告げようとするが、一蹴された。


「そもそも、その程度の力量で某達と手を組もう等思い上がりも甚だしい…早々に立ち去る事を願おう。」


「…黙って聞いてたら言いたい事を!!だったら試して見る!?私達があんた達より弱いかどうかさぁ!!流、あいつ等に私達の絆の強さを思い知らせるわよ!!」


「…はぁ…解ったよ。闇絆の証!!女帝鮫の帰還!!」


体調不良だと言う事を忘れ、自分や流を侮辱する発言に激怒した深波は、実力を証明するべく哮士に指を差して戦いを挑んだ。そんな彼女を見た流は、溜め息をつきながら了承し、深波を女帝鮫の帰還に変化、装備し戦闘体勢に入った。


「良いだろう。傲岸不遜なその態度、矯正してくれよう…!!」


哮士も、肩に担いだ闇絆の証を両手で構え直し、彼等と戦う姿勢を見せる。


「会って間も無いけど…失礼!!」


深波とは違いそれ程戦おうとは考えていない流は、哮士に軽く詫びを入れつつ女帝鮫の帰還を力一杯振り投げる。しかし…


「……。」


「か…かわさない!?」


『かわさないならかわさないで、真っ二つにしてやるわっ!!』


なんと哮士は、目を閉じながら闇絆の証を構えたまま微動だにしないでいる。胴体に女帝鮫の帰還が当たり、彼の身体はシャクリアの言葉通り真っ二つ…!!


「なっ…!?」


『消え…た…!?』


…かと思いきやそれは蜃気楼の如く消え去ってしまい、女帝鮫の帰還はそのまま空虚を突き抜ける事となる。標的を失い、女帝鮫の帰還が一先ず流の手元に戻った次の瞬間…


「敵の討伐を確認せずに武器を納めるとは…随分余裕だな…!!」


「なっ…何時の間に…ぐあぁぁっっ!!?」


『流!!』


突然消えた筈の哮士が彼の眼前に現れ、闇絆の証で流の右腕に斬り付けた。恐らく、残像が生まれる程の速度で回避しつつ接近し、彼が女帝鮫()帰還(を戻したタイミングで姿を現したのだろう…。


「ぅくっ…なら、これだぁっ!!」


近距離の相手に中距離からの攻撃では回避され易いと悟った流は、哮士と同じ土俵に立つべく女帝鮫の帰還を剣の持ち手に構えた攻撃を仕掛ける。が…


「目には目を…と言う訳か…。だが…!!」


「か…片手で…!?」


「そんな安直な考えで某を斬れると?笑止!!」


「『がぁぁっっ!!?/きゃあぁぁっっ!!?』」


なんと左手だけで女帝鮫の帰還を受け止め、もう片方の手に持った闇絆の証を横一文字に振り上げて流達を弾き飛ばした。しかし…


「(い…今のは何だ…?吹っ飛ばされた瞬間、身体に強い痺れが…!!)」


ただ単に反撃された程度なら強烈な痛みだけで済む筈…にも関わらず、強力な痺れまで受けた事に疑問を抱く流だが、哮士の持つ闇絆の証に目をやると瞬時に理解した…。


「闇絆の証に…雷が…!?」


その刀身に、黄色い雷がバチバチと激しい音を立てながら纏っていたのだ。無論、それだけが理由ではない…。


「どうやら闇絆の証を完全に理解していない様だな…。」


「どういう事だ…!?」


『お話しましょう。我々リンキュバス…即ち全ての闇絆の証には「最低限は持っている」闇と、炎・水・風・地・氷・雷の計七つの属性が存在します。そして…それぞれの属性には当然相性も存在し、私達の「雷」は貴方達の「水」にとっては最悪の天敵あいしょうなのです!!』


「くっ…!!」


哮士に代わり、闇絆の証に変化したレオナが刀の鍔の瞳を点滅させて説明する。闇絆の証にはリンキュバス…悪魔を象徴する闇属性と、それぞれの得意分野を活かした六つの属性の何れかと、最低二つは付加している…。


これをこの戦いのケースに当てはめると、「水に電気を通る」…という常識がある様に、自分達のぞくせいでは彼等のぞくせいには勝てないのだと悟り、流は愕然とする…。


『…だから何?「相性が悪いから降参します」で諦めるとでも思った?私達を嘗めんじゃないわよ!!』


「深波…そうだ…俺達は未だ…負けちゃいない!!」


相性の悪さを指摘されても尚、戦意を喪失せず哮士達に強く反論するシャクリアの声を聞いた流は、弱気になっていた気持ちを振り払い、ダメージによる痛みに耐えながら再び立ち上がる…。


「某の剣や駈瑠の雷を受けて尚立ち上がる者が居たとは…見上げた精神力だ。だが…」


その諦めない姿勢に哮士は、流達の精神力に対し一定の評価を出しつつ…


「それだけでは未だ足りぬ…そろそろ某達と貴公等との力の差をハッキリさせようか…。おおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」


深波が最初に言い出した、「自分達の絆の強さの証明」を明確にするべく、闇絆の証を横にゆっくり構え、獅子の如く猛々しい大声を出して気合い溜めをする。すると、彼の全身に激しい黄色の雷の魔力が纏われる…。


「我が奥義の一つを披露してしんぜよう…!!行くぞ駈瑠!!」


『はい!!』


「魔雷充填!!」


哮士は、「魔雷充填(サンダーチャージ)」なる謎の言葉を唱えると同時に雷の魔力が纏われた左手で闇絆の証の刀身を、素早く、力強く流れる様になぞる。すると今度は、刀身に獅子が暴れるかの様に黄色い稲妻が纏う…。


「雷吼流奥義!!雷吼刹華!!」


哮士が闇絆の証を右斜めに構え、それを瞬時に振り払うと、刀身に籠められた雷が刃状の斬撃波となり凄まじい速度で流達目掛けて獅子が駈けるかの様に地を走る。これが、彼が極めし雷吼流(らいこうりゅう)奥義の一つ、「雷吼刹華(らいこうせっか)」である…。


「あれが…あの人達の本当の力…!!」


『流!呆けてないで私達も反撃よ!!』


「わ…分かった!!」


迫り来る雷吼刹華を見て一瞬目を奪われる流だが、シャクリアに激を飛ばされ自分も水の魔力を溜めようとする。が…


「なっ…何だこれは…!?」


左手に力一杯を魔力を籠めた筈だが、その魔力量は掌を埋め尽くすどころか、半分に満たない程矮小だった…。この程度では彼等の奥義を押し切ることさえ出来ない…そう考える流だが…


「…っく…くそっ!!うおぉぉぉぉっっっっ!!!!」


最早も迷っている暇は無く、止む無くその魔力を女帝鮫の帰還に与え、半ばやけくそ気味に雷吼刹華目掛けて振り投げた…。


『な…流!!これじゃ全然足りないわ!!』


シャクリアが声を上げるも、今更手遅れ…。半分以下の魔力が籠もった女帝鮫の帰還は勢い良く雷吼刹華と激突するも…


『キャアアアアァァァァッッッッ!!!?』


「み…深波ぃぃぃぃっっっっ!!!!うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!?」


案の定、女帝鮫の帰還は容易く押し返され、その激しい雷は流をも巻き込み二人同時に大きく吹っ飛ばされてしまう…。




「やはりお前達は未熟だったな。属性の相性はおろか、闇絆の証の本質すら気付いていない…そんな半端な者などには過ぎた力、さっさと切り捨ててしまえ…。」


最初に自分が言った通り、流と深波の力は弱い…気を失っている彼等にそう吐き捨てると、哮士は踵を返してその場を後にする…。それを見た駈瑠は…


「(もしかして哮士さん…ああやってあの人達に闇絆の証について教えて差し上げたのでしょうか…?今までそんな事しなかったのに…。)」


敢えて心を鬼にして、流と深波に戦いの基礎を伝授したのでは…?と心の中で一人、哮士の真意を推測する…。


哮士は元々、駈瑠以外の人物と必要以上に関わる事は無く、ましてや敵に対して闇絆の証についてあそこまで説明する等、只の一度もなかった。そう考えると、この戦いはある意味彼の優しさの表現だったのかもしれない…。駈瑠は、そう推測しつつ愛しき彼を追い掛けて行く…。




―アパート・芥磨荘103号室



「(未熟…か…。)」


あの後、漸く駆け付けた竜駕や詞音と奏により流と深波は保健室まで運ばれ、巡の治療を受けて何とか大事には至らなかった。しかし、戦いの傷は身体より寧ろ心の方が深刻だった様で、流は今回の戦いについて一人反省をしている…。


「(何故あんな少ない魔力しか溜めれなかったんだ…?然程消費してしないのに…!!)」


右掌を見つめながら、魔力が少ない原因を色々考え込む流。しかし、どう考えても心当たりが思い浮かばない。徐々に眉間に皺を寄せて段々苛立ちそうなっているその時…


「な〜がれ♪負けた事は一旦忘れてリラックスしない?」


「ひゃっ!!?///なっ…何処触ってんだよ!?///」


背後から深波が現れ、流の肩を組んだと思いきや、片方の手で流の股間を弄る。不意を付かれた為、思わず変な悲鳴を上げてしまう流。


「良いじゃない…もう今更隠さなくても全部知ってるんだし、ね?だから…。」


慌てて深波から離れる流だが、それでも彼の背後に引っ付こうとしては離れ、また引っ付いて…そんな行動が十数回も続いて行く内に、段々彼女を鬱陶しく感じる。自分は今日の敗北を此処まで反省しているのに、何故そんな真似を平気で出来る…?そう心に思いつつ、次の一回で遂に…!!


「いい加減にしろぉっっ!!」


「きゃっ!?」


「一体さっきから何のつもりなんだ!?今日あんな事が起きたのによくそんなふざけた真似が出来るな!?君も少しは反省したらどうなんだっ!!」


堪忍袋の緒が切れた流は、勢い良く深波を突き飛ばし、烈火の如く怒鳴り散らした。今までなら笑って済ませられるが、今回ばかりは違う…。初めて敗北した以上、次の戦いでは同じ轍を踏まぬ様新しい戦法を模索しなければならない…。にも関わらず、深波は何時もの様に自分の快楽の為に流の身体を触りまくる…。これには多少神経質になっている彼も激怒せざるを得なくなった…。


「…済まない…言い過ぎた…。」


怒鳴り終え暫くして、我に返った流は俯いてしまった深波に謝罪し、ばつが悪いのかそのまま後ろを向く。すると深波は、俯いてた状態のまま彼に近付き…




「うっ…!!?」




背後からリンキュバス化させた黒く鋭い右腕で彼の身体を貫いた…。




「み…な…み…!!?」


それに気付いた流が振り返ると、普段は海の様に透き通った美しい水色の瞳が暗く澱んだ深海の様に濁った物となった深波がそこに居た…。

7話と序盤から初の敗北…ちょっと早過ぎじゃね?と思う方は多いでしょうが、この敗北により…これ以上はネタバレなので御容赦を(^_^;)


保険医はあの赤い盗賊だった彩盗巡さいとう・めぐる(ICV:伊藤静)でした!!以前よかエロ度を引き上げたつもりですが如何でしょうか?(眼鏡+コスプレ)こんな先生が居たらなぁ…と妄想した方は絶えないでしょうな~( ̄∀ ̄)あ、今回から妄想と言うのも付け足しました♪



そして、流達を下した二人の紹介…



裂雷哮士さくらい・こうじ…ICV:小西克幸

普段は向上心ありきな爽やか系な剣道部部長…しかし一度真剣を持てば侍口調へと変化します。この時の性格は、声的に「内藤くん」を人間態にした物だと考えて下さい(^_^;)因みに本当は、哮介にしたかったのですが「金獅子の魔法使い」と被るので変更しました。(^_^;)


宍尾駈瑠ししお・かける/レオナ・グランヴォルド…ICV:井上麻里奈

人当たりが良く、努力家な子です。落ち着きのあるお姉さんと言った所ですかね?(聞くな)現在闇絆の証の名前は不明です。別に思い付かなかったじゃなくて…!!はっ、本音が…(^_^;)

因みにネタバレですが、井上さんは以前書いてた二次作品のコラボ編であるキャラが女体化した時のキャストに当てる予定でした(^_^;)


さあ!!遂に深波のヤンデレタイム始動!!どうなってしまうのか!?


またまた時間が掛かりますが第8話までのお楽しみで。



ではではm(_ _)m

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