LINK4 少女の強き想い×決意の悪魔ロック=新たなる絆の誕生
約三ヶ月ぶりに更新致しました!!
今回はやや一部犯罪シーンが書かれていますが、読者の皆さん及びなろうの全キャラクターの方達は決して真似をしない様にお願い致します。m(_ _)m
下らない注意書きはスルーして、第四話…御覧になって下さい!!
「これは一体…どういう事なんだ…!?」
詞音は目の前の光景に呆然としていた。青い光が全身を包んでいる深波と流(どうきゅうせいたち)が、異形の存在と化した奏…ヴァトゥーラと対峙している光景に…
「流、迷ってる場合じゃないわ。今はあのリンキュバスを倒す事に専念して。」
「…あ、あぁ…そう…だな…。」
流石に同級生の前で闇絆の証を現出させるのは…と半ば迷う流だが、深波の冷静な言葉も正しいと割り切り再び構えを取る。ヴァトゥーラも背中から巨大な蝙蝠の羽根を広げて、臨戦体勢を取り出した…と思いきや…
『詞音〜♪』
「えっ…!?ひぃっ…!!?」
「「なっ…!!?」」
なんと流達を無視して、詞音に向かって低空飛行して近付き、彼を抱き締める様に捕獲し上空へと飛翔した。
『詞音、奏を置いてくなんて酷いよ…奏はこんなに詞音の事が好きなのに…。でももう離さない…詞音が奏の事しか見れない様にたっぷり仕付けるから♪先ずはさっき置いていったお仕置きをしないと…ね♪』
「うわああぁぁっっ!!はっ…離せっ!!離せよ化物!!」
『今離したら死んじゃうよ?あと、化物なんて言葉使っちゃダメ…。そんな事言うお口から仕付けていかないと…。』
ヴァトゥーラの恐ろしい言動や行動にただただ怯える詞音は彼女の中でジタバタ暴れ出す。しかし、リンキュバスの力は人間のそれより何十倍もあり、それを振りほどく事は容易ではない。仮に振りほどいたとしても、自分が今いる場所は地上から約3000mの上空。離れればあっという間に真っ逆さま…。どうする事も出来ずヴァトゥーラの思うがままになるしかない詞音。だが…
『きゃああぁぁっっ!?』
「うあおぉぉぉぉっっっっ!!!?」
突然謎の攻撃が彼女を襲いその弾みに手離された詞音が落下しそうになるが、何者かの手により何とか無事救われる。その攻撃の正体は…
「よし!!良いぞ深波!!」
『確かに良い作戦だけど、流以外の男にあまり触りたくなかったな…。』
無論、流と何時の間にか宙を浮きながら不満げに気絶した詞音を抱き抱えているシャクリアだった。これは、女帝鮫の帰還をヴァトゥーラ目掛けて投刃して詞音を離させ、瞬時にシャクリアの姿に戻り彼を救出する…と言う流の作戦だった…。
『これが最後の警告よ。連続吸血事件の犯人は貴女なの?返事次第ではこのまま逃がさないから…!!さぁ、答…!!『…んを…った…。』え…?』
シャクリアはヴァトゥーラに厳しい追及の言葉を投げ掛けるが、彼女は俯いたまま何かを呟きゆっくり顔を上げ…
『詞音を取った詞音を取った詞音を取った詞音を取った詞音を取った…奏の詞音を…とったああああぁぁぁぁっっっっ!!!!』
『ああぁぁっっ!!?なっ…何よこの子…あ…頭が…割れる…!!』
「くっ…なんて威力なんだ…!?」
詞音の名を呪詛の如く何度も呟き、大きく泣き叫んだ。その泣き声は人間や動物のそれと同じとは言い難く、肉体や精神に大きなダメージが行き渡る超音波級の威力である。
「と…兎に角…今の内に逃げるぞ…!!」
『そう…ね…!!これ以上は持ちそうにないしね…!!』
流は両手で耳を押さえながら、この隙に退却する様シャクリアに指示を出す。シャクリアもそれに従い、詞音を抱えながら地上に降りて共に撤退した…。
―津凪高校
「あれから弾麻を家に送ったけど、やっぱり休みか…。」
「当然よ。」
教室にある詞音の空席を見てそう呟く流と深波。自分に異常な程なついてくる少女の正体がリンキュバスであった事実を知り、その存在により危険な目に遭わされれば、肉体的にも精神的にも多少病み、体調を崩すのは無理もない…。
「おはよ、青年少女達。今日弾麻は体調不良で休みだそうだ。誰か仲良い奴がいたら連絡事項を伝えてやりな。」
「あっ、それ俺が行きます。」
「おおそうか、じゃ頼むわ水始。それじゃ、授業を始めるぞ。」
真輝人の言葉を聞き、詞音の自宅に行く事を進言する流。無論彼の見舞いでもあるが、真なる目的はリンキュバスについての説明の為でもある…。
―放課後
「さて…ちゃんと話しておかないとな。」
「流、話をするのは簡単だけど信用してくれる保証はゼロに近いのよ?」
「それは解っている。でも、素性が明らかになった以上話さない訳にはいかないだろ?それに…」
「それに?」
「リンキュバス全部が悪い奴じゃないって事を、君みたいな変わった悪魔も居るって事を知ってもらいたいし…な。」
「流…そうね。じゃあ私も行くわ。」
事情説明の為に詞音の自宅に赴こうとする流に深波は、詞音がリンキュバスそのものが悪意ある存在でそれらを信じる可能性は低いと話すが、そうした偏見を失くす様説得する為でもあると言う彼の言葉を聞き、笑みを浮かべて流と同行しようとする。そこへ…
「あ…。貴方、ここの生徒だったんですね。」
「君はあの時の…!?」
二人の前に現れたのは、昨晩奏を追ってる最中、流と出合い頭にぶつかった少女だった。
「はい。私、1年A組の針生彗蚊(はりう・すいか)と言います。もしかして、今からお友達のお見舞いへ?」
「ああ、昨日具合が悪くなったそうでね。」
「そうだったんですか…。」
「何か用?」
突然現れた彗蚊の質問に普通に答える流に対し、深波は眉間に小さな皺を寄せる程目を細める等、明らかに不機嫌な表情で冷たく彼女に用事を問う。
「ご迷惑でなければ、私も御一緒させて貰って宜しいですか?」
「別に良いけど、どうしてだ?」
何と彗蚊は、詞音の見舞いに自分も同行するよう二人に頼んだ。流が何故見舞いについては行きたいのかを尋ねると、彼女は突然何故顔を赤くして…
「実は私…だ…弾麻君のファ…ファンなんです…!!///」
「「ええぇぇっっ!!?」」
詞音のファンだとカミングアウトした…。あまりの意外な答えに口をあんぐりとさせる流と深波。
「だ…だからその…!!お、お二人をダシにして弾麻君に会おうとかじゃなくて…た、ただ…心配で…!!///」
「わ、解った解った。一緒に来ても大丈夫だよ。」
「ほ…本当ですか!?あ、ありがとうございます!!」
流は、未だに真っ赤な顔で言わなくても良い事を暴走しがちに話す彗蚊を宥め、同行を許可する。それを聞き大喜びする彗蚊。
「…本当にただのファンなら良いけどね…。」
彗蚊を何故か快く思わない深波は、二人に聞こえない様にそう呟く…。
―弾麻家
「ごめんください。」
『はーい。どちら様ですか?』
「俺達弾麻君と同じ学校の友達です。お見舞いに来ました。」
「あら、そう…。今開けますからね。」
流がインターホンを鳴らすとそこから詞音の母親の声が聞こえ、流達を迎えるべく玄関のドアを開けた。
「お邪魔します。」
「いらっしゃい。詞音なら二階に居るわ。」
「はい。では、上がらせて貰います。」
「どうぞごゆっくり…あ…!!」
「どうしました?」
詞音の部屋に向かおうとする流達を、詞音の母親は突然何かを思い出したかの様に制止する。
「あの子、昨日帰って来てから誰とも口を利かず『悪魔が…悪魔が…!!』って、譫言の様に繰り返して怯えていたの…。何か変わった事を言ってたら教えて欲しいの。」
「……。」
「(やっぱそうだよな…。)解りました。」
母親から自身の推察通りの話を聞き理解した流達は、再び詞音の部屋に向かった。
―詞音の部屋前
「弾麻、水始だ。俺の話を聞いてくれないか?」
流は、二階にある詞音の部屋のドアをノックしながら彼に応答を求める。しかし、幾ら叩いても中の詞音は無反応である。それでも再度ノックをして彼に呼び掛ける流。すると…
「帰れよ!!悪魔とつるんでる奴の話なんか聞きたくねぇよ!!」
「弾麻…。」
激しくドアを叩き付け、リンキュバスと関わりのある流に出ていく様怒鳴り付けた。昨日の一件から奏だけでなく、彼女と同類である深波、ひいてはその魔契者である流をも忌み嫌い出したのだ。
「悪魔?一体何のお話…?」
「流…今日の所は帰りましょう。」
「…ああ。そうだな…。」
詞音の取り付く島もない様子に、深波は彗蚊の質問を無視しながら流に日を改めて出直す様促す。三人は階段を降りて玄関へと向かい、弾麻家を後にした…。
「はぁ…一眠りすっか…。」
その様子を窓から少し覗き直ぐにそれから視界を離した詞音は、どっと疲れた表情をしながらベッドに仰向けに寝転がりながらそのまま眠った…。
「(ん…誰か居んのか…?母さんか?ったく…勝手に人の部屋に入んなって何時も言って…!?)」
詞音がゆっくり目を開けると、自分を見つめている何者かがぼんやり見えたので母親が部屋に入って来たのだと思ったが、視界がはっきり見えた瞬間目を大きく見開いた。何故なら…
「おはよう…詞音♪」
そこに居たのは母親ではなく、自分が畏怖していた奏だった。良く見るとここは自分の家では無く、何処かの廃工場を改造した物であり、周りの家具も古い物を綺麗に修復してある。
「な…何でお前が此処…に…!?何だこれ!?」
詞音は奏に問い詰めるべく起き上がろうとするが、何時の間にか手錠で両腕をベッドに拘束されている為それが出来なかった。
「詞音のお家はこっそり尾行して調べたの。部屋に入れたのは窓を小さく割って、鍵を開けたの…。」
完全な犯罪行為の下、詞音を連れ出せたのだと暴露しつつ彼にゆっくり近付く奏。
「くっ…来るな!!来るっ…ひっ!!?」
「もう離さないよ…詞音はここで一生奏と暮らすの。絶対外へは出さないから…。」
奏は普段のパッチリとしていた綺麗な瞳とは違うドロドロと濁った瞳をしながら、詞音の首後ろに腕を絡み、豊満な胸を彼の胸板に押し付ける様に抱き着く。それと同時に奏は口を開き…
「詞音は今、命が危ないの。奏が絶対守ってあげるから…。だから大人しくしてて。」
「…は…!?お前…何言って…!?」
詞音の身を案じ出すと言う、今の状況と全く噛み合わない発言をし出した。流石に詞音もどういう意味だ、と尋ねようとするが…
「こうしないと…ぐすっ…詞音が…詞音が『あいつ』に…殺されちゃうから…!!」
全身を震わしながら涙を流し、尚も詞音を強く抱きしめる奏。何故自分が命を狙われるのか…その理由が分からず困惑する詞音。すると…
「「!!?」」
突然壁が爆発し、それによって発する爆煙から二人の人物が現れた。一人は白いワイシャツの上に黒いベストを着たバーテン風の男性。もう一人は…
『やっと見付けたわよ弾麻詞音…あんたの命、吸わせて貰うわよ!!』
背中に「へ」の字の形をした翼を持ち、頭部に白い縞模様の触角の様な角を生やし、二又に別れた嘴をした、全身に同じ縞模様をしたスタイルの良い黒い蚊を模したリンキュバス「モスキルア・フォレスドレイン」であり、詞音の殺害を宣言した…。
「闇絆の証!!渇望の吸血蚊!!」
男が詠唱するとモスキルアの身体が茶色い光に包まれ、巨大な黒い蚊の顔を模した、その口の尖端が鋭く尖った刺突短剣の闇絆の証「渇望の吸血蚊」に変化し、右腕に装備された…。
「最高の血である事を期待するよ…!!」
「ひぃっ!?」
「させない!!はああぁぁっっ!!」
血を「カクテル」と呼び、渇望の吸血蚊を構えながら詞音に向かって走り出す男に対し、奏はヴァトゥーラに変化して詞音を庇う様に前に立ち、武器を受け止めようとする。が…
「魔契約してないリンキュバスなんて…取るに足らないよ…!!」
『きゃああぁぁっっ!!?』
それに構わず、渇望の吸血蚊でヴァトゥーラの左肩を勢いよく刺した。抜き取った武器の尖端は当然彼女の血に塗れているが、ここである異変が起きる…。
「何だ…!?血が消えて…いや違う…あの針が血を吸い取ってるんだ…!!」
詞音の言葉通り、渇望の吸血蚊のあの二又の尖端に付着した血が又の中に飲み込まれて行く様に吸収されているのだ…。
『フフ…あ〜美味し♪人間だろうとリンキュバスだろうと、一日一回は必ず血を吸わないと気が済まないのよね〜♪』
「!!まさか…例の吸血事件は全部…!?」
『当たり〜♪全〜部あたしの仕業なんで〜す♪』
モスキルアは、先程のヴァトゥーラの血を吸えた事に悦びの声を上げる。それと同時に、詞音が尋ねた質問に悪びれた口調で吸血事件の張本人である事を明かす。
「お前…!!」
『最後に何であたしがあんたを狙ってるか教えてあげるわ…。』
その口調に怒りを顕にする詞音を他所に、モスキルアは何故彼の命を奪おうとするのかを明かすべく、一旦闇絆の証の状態から人間態へと変化した。その正体は…
「なっ…!!?」「見覚えあるかしら?」
なんと、先程まで流達と共に詞音の家に出向いた彗蚊であった…。但し、今は眼鏡をかけてなく、おさげ髪をほどいて茶髪のセミロング状態と全く違う雰囲気を持っていた。
「お前は…!!」
「血を吸う美少女なんてのもロックだった?そんな娘に殺されるなんて有難い話は滅多にないんだから…死んでちょうだい。」
彗蚊は冷たい口調で言い放つと共に右の掌を前に翳し魔力を籠め、茶色い光弾を詞音に放とうとする。が…
「させるか!!」
「ちぃっ…!!」
「深波の言ってた通りだな…。弾麻!!大丈夫か!?」
駆け付けた流が投刃した女帝鮫の帰還で、その攻撃は無事阻止された。
「水始…!!」
『やっぱりあんたが犯人だったのね…!!なんか怪しいとは思ってたわ!!』
「へぇ…地味な見た目だったのに良く気付いたわね。」
『人間は騙せても、近付いた時に感じた魔力の波動までは騙せないわ。その上、あんたの不自然な言葉を聞いてからは密かに監視して、別れた時も魔力を探知していてここに辿り着いたのよ。』
「不自然な言葉…?」
―今からお友達のお見舞いへ?
「…ああ、あれね。」
彗蚊の不自然な言葉…流達とは初対面の彼女は当然彼等の友好関係を知らない。にも関わらず、見舞いと聞いて「友達」だと断言した事である。詞音の顔を知り、且つ昨晩の現場近くに居た事から彗蚊が犯人だと確信したシャクリアの推測は正しかったのだ…。
「何故弾麻の命を狙おうとしたんだ!?」
「しょうがないじゃない…あいつがあたしの『食事』を偶然見ちゃったんだから…。」
「何…本当なのか弾麻!?」
「…ああ…一ヶ月前…何時もの様にあの二丁目の公園で練習をし終えて帰る途中で、あいつがさっきみたく武器の状態で人を刺してしたのを偶然目にしたんだ。それに気付いたあいつは俺を口封じに殺そうと追い掛けてきた。けど、途中で何故か急に姿を消して…それからは今日まであいつに会わなかったんだよ…。」
詞音が命を狙われる理由とその発端が明らかになると、彗蚊はヴァトゥーラの方に指を差し…
「けど…そこであんたが余計な事をしたせいで面倒臭い状況になったのよ。」
『……!?』
「何故だかあんたはあの男を守る為にあたしに立ち塞がりやがった…!!その日から…あんたはあたしがあの男を始末しようとする度にしつこく邪魔ばかりしてきた…!!」
「……え…!?」
「本当なら未契約のあんたを殺す事は簡単だったけど…見た目が蝙蝠だったから、いっそあんたに罪を着せる為に敢えて別の人間共の血を吸わせて貰ったわ!!あんたがあの男を守る度にね…アッハハハハハ!!!!」
「貴様…口封じを邪魔されたら、今度は弾麻を守ってたこの娘に罪を擦り付けやがって!!貴様だけは絶対に許せねぇ!!」
詞音抹殺の邪魔をし続けた奏に自身の罪を被せる為だと告げて高笑いをする。それを聞いた流は、この自己中心的な彗蚊のやり口に怒りを露にしながら女帝鮫の帰還を構えた。
「あらやる気?なら全員一滴も残らず吸わせて貰うわ!!」
そう言いながら彗蚊は、再び渇望の吸血蚊に変化し男の右腕に装備させる。
『行くわよ血里(ちさと)!!』
「畏まりました…血は四つでございますね!!」
「お前達の好きにさせるか!!こっちも行くぞ!!深波!!」
『了解!!』
モスキルアの魔契者・血里は渇望の吸血蚊を再び構え、流達に向かって走り出す。流も負けじと女帝鮫の帰還を横一文字に降り投げる。
「そんなスタンダードな攻撃など当たりはしな…!?」
『甘いわね。ブーメランである以上戻って来るのよ♪あんたを斬り裂くまでね♪』
「ちっ…!!」
血里は右に身を寄せてその攻撃を回避したが、女帝鮫の帰還は彼の背後目掛けて襲い掛かる。無防備の背中にダメージを与えられる…!!そう確信するシャクリアだが…
「…何て事は想定内ですよ!!」
『えっ…きゃああぁぁっっ!!?』
「深波!!」
「残念ですね…魔契約してからは全ての角度が見える様になりましてね。」
魔契約により視界が360℃の角度から見える様になった血里は、飛んでくる女帝鮫の帰還に茶色い魔力を籠めた渇望の吸血蚊を勢い良く、しかも背を向かず的確に突き刺したのだ。これにより女帝鮫の帰還はシャクリアの姿へと戻ってしまう。腹から血を流した状態で…。
『闇絆の証状態なら血は吸えない…とでも思った?アハ♪残念ね。』
渇望の吸血蚊は生物以外の血は吸えない…当然武具等の無機物には無効である。しかし、闇絆の証の様にリンキュバス…生物が変化した武具ならば強い魔力を籠める事によりそれを貫き、血を吸収する事が可能となるのだ…。
『うぅっ…!!』
『さ〜てと、このままこいつの血も吸い付くしたい!!と言いたいとこだけど、さっきの攻撃で血里の魔力が尽きかけなのよね〜…』
今の血里の魔力では、渇望の吸血蚊の能力によりシャクリアの血は吸えない…にも関わらず、何故か余裕の口調で話すモスキルア。すると…
『血里、「あいつ」から貰った「アレ」、使って!!』
「畏まりました。」
そう血里に催促すると、彼は胸ポケットの中から中心に赤い文字が小さく記された、ナイフの様に尖った透明色の一本の羽根を取り出した。そして、直ぐ様その根本を渇望の吸血蚊に勢い良く突き刺すと…
「なっ…何だこれは!?」
「渇望の吸血蚊が…!?」
忽ち全身が赤い光で帯び、謎の羽根は粒子と化し消滅した。これと言って特に変化は無い様に見える。が…
『来た来た♪新しい力を感じるわ!!血里!!そいつにブッ刺しちゃって♪』
「畏まりまし…た!!」
『ああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』
「深波!!貴様…ら…!?」
モスキルアに促されるまま、瀕死状態のシャクリアの傷に再び勢い良く突き刺す血里。すると、シャクリアの身体から赤いエネルギーの様な物が渇望の吸血蚊に吸収されていく…。
『アッハハハハハ!!!!魔力まで奪える様になって…気に入ったわ!!』
「ふぅ…私も回復出来て何よりです…。」
赤いエネルギーの正体はシャクリアの魔力だった。彼等の発言から、元々渇望の吸血蚊は「血を吸収する」だけの能力だったが、あの羽根を刺した事により「魔力を奪う」能力が付加されたのだ。更にそれは魔契者の魔力をも回復させてしまう効果もあった…。
『うぅ…あぁぁっっ…!!』
「深波!!くそっ…魔力まで奪わるなんて…!!」
『さ〜て…この死に損ないの次は…あんたの魔力といこうかしらね!!』
「ま…まずい!!避け…があぁぁっっ!!?」
「…させませんよ?」
モスキルアが自分の魔力をも吸収しようとした為素早く回避する体勢を取ろうとする流だが、それを上回る血里の素早い攻撃により左の二の腕を斬り付けられる。そして、付着した彼の血を吸収し、魔力をまた回復させる。
「水始!!海噛さん!!」
『これで邪魔はなくなった♪さて、本番といこうかし…!?』
『うぅっ…詞音は…死なせない…!!』
「邪魔しないで頂きますか?」
『ああぁぁっっ!!』
流達の動きを封じたモスキルア達は、本来のターゲットである詞音を抹殺しようと彼に近付こうとするが、肩の傷を引き摺ったヴァトゥーラが前に立ちそれを阻止する。しかし、血里に左手で叩かれ倒される。
「さて今度こ…そ…!?」
『詞音は…はぁ…奏が…守…もる…はぁ…!!』
再度詞音に近付こうとする血里だが、ヴァトゥーラは倒れたまま彼の左足首を掴んでそれを阻止する。
「未成年(こども)の出る幕じゃ…ないんですよっ!!」
『がはぁっ!?』
あまりのしつこさに苛立つ血里は、掴まれた左足を振り払い、そのままヴァトゥーラを詞音の隣まで蹴り飛ばした。体力が弱っているのか、その拍子に奏の姿へと戻る…。
『ホンっとしつこいわね…だったら二人仲良く殺してあげるわ!!血里!!』
「畏まりました…!!」
尚も詞音を守ろうとする奏に怒りを募らせ、彼もろとも彼女も抹殺する様血里に促すモスキルア。それを受諾した彼はゆっくり二人に近付く。
「お前…何でそこまでして俺を守ろうとするんだ…!?」
詞音は奏に、何故自分を懸命に守るのか、監禁する程守られる様な事は一切していない筈だと付け加えて彼女に尋ねる。
「右も左も解らず…この世界に来て不安だった時…偶然聞こえた詞音のギターが…とても心地好く…奏の心を落ち着かせてくれたの…。」
「理由って…そんだけ?」
「うん…♪」
次元魔界から土地勘も無くこの世界に渡る事は、如何にリンキュバスとは言え、未だ心が幼い奏にはとても厳しい物だった…。しかし、この世界で初めて聞いた詞音の奏でるギターの音色により、不安に満ちた彼女の心が大きく癒された。それが、奏が詞音に強い想いを抱く切欠となったのだと言う…。
「…ホンっと馬鹿だよ…命を救おうしてくれてたのに、Myメロディに絶賛だったファンを化物呼ばわりしてた俺は…ホンっと馬鹿だよ…!!」
詞音はこの一ヶ月間、命を陰ながら懸命に守ってくれていた奏の強い想いに全く気付かなかった自分を嘲笑しながらそう呟く。
「ファンの期待に応えるのが一ロッカーの務め…!!目を瞑れ…。」
「うん…♪」
奏の想いが届き、何をすべきか理解した詞音は紺色の光に包まれた彼女の身を寄せて口を小さく尖らせ、同じく奏の口に優しく合わせた…。すると、詞音の左肩が服越しに黒い蝙蝠の紋章が浮かび上がる…。
「これは…まさか…!?」
「弾麻も…魔契者に…!?」
「これよりデビルロッカー・弾麻詞音の初リサイタル…開幕だぜっ!!」
新たなる魔契者となった詞音は、左手を前に翳し「あの台詞」を叫ぶ…。
「闇絆の証!!絶響蝙蝠!!」
詞音の詠唱により奏は紺色の光に包まれ、左肩に掛けた黒い鎖、全身が黒いボディ両サイドに付いた黒い蝙蝠の羽根、ネック部分の一番下にある紺色の瞳をした黒い蝙蝠の絵が刻まれた電気弦楽器の闇絆の証「絶響蝙蝠」へと変化した…。
「やっぱギターは馴染むな…悪魔リサイタル、スタート!!」
『何がリサイタルよ!!そんなギターで何が出来んのさ!!血里!!』
「畏まりました!!」
ただのエレキギターなど自分達の敵では無いと軽んじるモスキルアは、血里に詞音を襲う様指示を促す。相変わらず同じ言葉を発してから渇望の吸血蚊を構え、彼に向かって走り出す。
「甘く見んなよ…まずは試し弾き!!」
♪〜♪♪〜♪〜
『…ぁぐぅぅっっ!!?』
絶響蝙蝠のギター音が鳴ると、モスキルアが突然悶え出す。それにより渇望の吸血蚊の動きが鈍り、血里の右腕ごと地にひれ伏そうになる。
「どうしました彗蚊様!?」
『い…今のギター音が…頭に…響く…!!』
「え…?私はそれほど響きませんが…?」
「嘘ぉ…ただの試し弾きだぞ…!?もしかすると、リンキュバスのみに有効な超音波を出す能力か?」
頭痛に苦しむモスキルアだが、血里には多少騒音だったが彼女程苦痛では無い。ただ弾いただけの詞音も驚きながらも、「リンキュバスの聴覚に強い音波を刺激させ、苦痛を与える」能力だと認識した。
「音が武器になるなら俺の独壇場になる!!続けていくぞ、奏!!」
『うん!!』
♪♪〜♪♪〜♪♪♪〜
『ぁああぁぁぐぅぅっっ…!!』
自分にとって最適の能力だと自覚した詞音は、絶響蝙蝠の弦を自在に操るかの様に演奏(こうげき)を続行し、モスキルアにダメージを与えていき、遂には渇望の吸血蚊を維持出来なくなりリンキュバス態へと戻ってしまう…。
「くっ…流石に立て続けは私の耳にも毒だ…!!」
『はぁ…はぁ…ちょ…調子に乗ってんじゃねぇよ…いつまでもそんな攻撃が…効くと思ってんじゃねぇよっっ!!』
モスキルアは頭痛に耐えつつ、怒りの咆哮を上げながら掌に自分の全魔力を籠め、巨大な茶色の光弾を詞音に放った。
「ヤバい…!!」
『大丈夫…奏が詞音を護るから…思いのままに弾いて…。』
「…了解…!!」
♪♪♪〜♪♪♪〜
強大な攻撃に怯むも、ヴァトゥーラの言葉を信じ、目を閉じて自分の心のままに音を奏でる詞音。光弾はそのまま彼等に直撃し、爆発と爆煙を起こした…。
『はぁ…はぁ…これでくたばっ…!?』
爆煙が晴れた先には、絶響蝙蝠を構えた詞音が筒型で螺旋状をした紺色の超音波で構成されたバリアに包まれた姿があった…。
『そ…そんな…そんなのって…!!?』
「彗蚊様の全魔力を籠めた攻撃を…あんな物で…!!?」
「これでフィナーレだ…!!」
狼狽するモスキルア達とは正反対に、強く静かな口調と共に、紺色の魔力を籠めた詞音の右手が弦を強く弾くと、自身より一回り大きい紺色の強力超音波を「止めの一撃として放つ。
♪♪♪〜♪♪〜♪♪♪〜
『ぃああぁぁっっっっ!!!!あたしはこんなの…認めないわよ!!うああああぁぁぁぁっっっっ!!!!』
何も出来ず超音波に直撃したモスキルアは、自身の結末に納得出来ぬまま、頭を抱え、全身を震わせて破裂したかの様に爆発した…。
「そ…そんな…す、す…彗蚊様が…負け…て…ひああぁぁっっ!!」
モスキルアを失い完全に戦う意欲を無くした血里は、怯えながらその場から逃げ去ろうとする。しかし、直ぐ様絶響蝙蝠からヴァトゥーラの姿に戻った彼女が彼の前に飛んで回り込みそれを阻止した。
『詞音を殺そうとした償い…受けて貰うんだから…!!』
「ひいぃぃっっ!!?」
「ちょっと待ってくれ…!!」
「水始…大丈夫か?」
「何とかな…それより聞きたい事がある。あんた達にさっきの透明な羽根を渡したのは誰なんだ?」
流は、深波に肩を貸しながら血里を殺そうとするヴァトゥーラを制止し、彼とモスキルアが自分達にとって都合の良い能力を付加させた羽根を授けた者の正体を彼に尋ねる。
「あ…あの羽根か…あれをくれたのは…うっ!!?」
口を開こうとした瞬間、例の羽根がここから遠く離れた場所から勢い良く血里の額目掛けて飛来し彼に突き刺さり、粒子となって消滅すると同時に、糸の切れた人形の様に倒れてしまう…。
「なっ…!!?お、おい…どうしたんだ!?しっかりしろ!!」
「ん…んん…!!」
詞音は気絶した血里の身体を揺すり、目を覚ます様呼び掛ける。すると血里は目を開け、今度こそ秘密を話すと思いきや…
「君達は誰だい?」
「「えっ…!!?」」
「こんな所に居たら危ないよ。…おっと、そろそろ仕事の時間だ。じゃあね。」
「あっ…おい、待て!!」
「まさか…記憶を…!?」
なんと羽根について話すどころか、流達やモスキルアの事を完全に忘れてしまいそのまま自分の職場へと向かってしまう…。
「(ここまでかなり遠い場所から正確に羽根を飛ばして、都合の良い能力の付加や記憶を消す事が出来るなんて…一体何者なんだ…!?)」
「水始に海噛さん…化物呼ばわりしてホントすまない!!」
流が謎の人物の正体について考えている時、詞音は自宅での二人への暴言について頭を下げて謝罪した。
「いや、良いんだ。こうしてお前がリンキュバスを差別しなかった事だけで十分だよ。」
しかし、リンキュバスへの差別心を無くなった事が何よりであり、詞音を許す流。こうして魔契者(なかま)にもなれたしな…と付け加えて。
「これからは同じ仲間として、友達として協力していくから…宜しくな、『流』。」
「ああ、此方こそ宜しく、弾麻、いや…『詞音』。」
完全に和解した流と詞音は、互いに名字から名前で呼び合い、固い握手をする。
「私達も忘れないでね。」
「詞音…ずっと居て良いの?」
「ああ…もう離れろなんて言わない。これからは俺の隣で一緒に曲を奏でてくれるか?」
「……うん!!」
ずっと一緒に居て欲しい…この言葉を詞音の口から聞けた事がとても嬉しい奏は、満面の笑みを浮かべて彼に抱き着く。こうして、四人の若者は、新たなる絆を生み出し、結束力を高めていく…。
流達が居る廃工場から数100m離れた場所で、あの漆黒の鳳凰の鎧の戦士が背中に透明色の翼を広げてながら棒立ちしていた。どうやら彼がモスキルア達に羽根を授け、血里の記憶を消し去った張本人であった。
『今は未だ…我が正体を明かす時では無い…。』
そう冷たく呟くと闇夜の中へと去って行き、自身の鎧と同じ「黒」と夜の「闇」が混ざり合うかの様に、その身を覆い隠していく…。
漸く流達に仲間が出来た…!!
でもこういった非日常な出来事で仲間を増やす場合、一度は主人公達を敵視させる→そのキャラクターがピンチ→主人公の助けシーン→キャラクターが新しい力を得て敵を倒す→和解…といったプロセスが大事だと私は考えています。「もっとすんなりしたやり方があるだろ!!」って方には面倒臭く見えてしまいますけどね…。
吸血事件の真相は、針生彗蚊ことモスキルア・フォレスドレインが真犯人でした。吸血=蝙蝠=奏だとミスリードさせて、その実、同じ吸血動物である「蚊」が犯人だと言う、極安直なアイデアです。やっぱ三ヶ月も経つと文章レベルやアイデアまでガクッと下がるなぁ…(T_T)
そして、大体バレバレですが詞音も魔契者に!!闇絆の証「絶響蝙蝠」はエレキギターと武器とは程遠い物です。ギターで超音波攻撃…はい、モロ「山羊座怪人」のパクリです、ハイ…。
モスキルアにチートな透明の羽根を渡した、あの黒い鳳凰鎧の戦士は未だ未だ秘密です。
次回は私の苦手属性を登場させます。先に言うと、そのキャラも仲間になる予定でございます。期待せずにお待ち下さいませ!!m(_ _)m