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LINK15 非リア充な龍武神×陰湿な悪意=規格外な絆の誕生?

今回も流がメインでもない、かと言って詞音でもない。そうなったら今回誰がメインになると思う?


今回何時も以上にかーなーり長い上、無理矢理話を進めた感ありまくですので、休みながらお読みする事を推奨しますm(_ _)m

「······。」


とある闇の如く暗い一室にて、同じ色のフード付きのローブを目深く羽織った人物は何かを待ちながら一人窓際にて黙して立っている。


「報告しやす、雷都町(らいとちょう)にて任務完了しやした。」


「こっちも地獄ヶ河原町(じごくがわらちょう)で任務を終わらせたぜ。」


「そうか、御苦労だった。」


そこへ同じローブを目深く羽織った二人の人物が入室すると、先程の人物に特定の町で何らかの「任務」を完了したと報告し、それに労いの言葉を掛けられる。どうやら最初のフードの人物がリーダー格の様だ。


「他の町の担当の奴等も、任務を完了したって話だぜ。」


地獄ヶ原河原町の担当の人物の、自分達とは別の町の担当の連中の任務も完了したとの報告から鑑みて、どうやらこの連中はこの間導市(まどうし)周辺の複数の町にて、同じ任務を複数の人数が徒党を組んで行っている様だ。


「フフフ···よし、この調子でもっと我々の恐ろしさを『奴等』に思い知らせるんだ···!!」


複数の任務完了報告を聞き喜びに満ちたのか、リーダー格の人物はより多くの「特定の存在」達に恐怖に曝す様、同志達に呼び掛ける。









「全てのリア充共に鉄槌をぉぉぉぉっっっっ!!!!」


「「全てのリア充共に鉄槌をぉぉぉぉっっっっ!!!!」」


「全てのリア充共に鉄槌を!!」と、意味不明なスローガンを同志二人と声高々と叫ぶリーダー格の人物の正体は、津凪高校一の変態・竜駕だった。「特定の存在」達に対する「任務」も、全ては彼氏彼女がいるカップル···リア充達に対する嫌がらせだったのだ。


「そうだぁ···もっとぉぉ···もっと俺達『チーム龍武神』の怒りをリア充達に知らしめるんだぁぁぁぁっっっっ!!!!ブェェェェヘッヘッヘッヘェェァァァァッッッッ!!!!!!!!」


目深く被ったフードを取り素顔を晒した「チーム龍武神(りゅうぶしん)」なるリーダーの竜駕は両手を大きく広げながら目を大きく見開き、リア充達へ更なる恐怖···もとい、嫌がらせにより「自分達非リア充な男達の怒りをリア充達に思い知らせる」等と、非っ常ぉぉ~にしょうも無さすぎる目的を掲げ、某元神兼王兼現王兼肥やしの如く、三日月の様に裂けた口で狂気に孕んだ高笑いならぬバカ笑いを上げる。


このままでは「まるで意味が分からんぞ!?」状態となるので、事の発端となった2週間前に遡る···。




「闇の魔力が高まり過ぎた?」


「うん。奏にも聞いたんだけど分からなかったらしくて、海噛さんなら何か知ってるんじゃないかな、と思ったんだ。」


何時もの面々が集まる中、詞音は先日のロットゥル・スカイロウドとの戦いの最中、その魔契者である木嶋の狼藉により怒りをかられ、自身の持つ闇の魔力が制御しきれぬ程激しく噴出すると言う異常な状態と化してしまった事について、心当たりが無いかを深波に相談する。


「あの時の詞音、魔契者を半殺しにしちゃうくらい暴走してた。」


「半殺しって···どんだけ荒れてたのよ、あんた。」


奏からその時の詞音が木嶋に幾度も暴行を加え

半殺し状態にしたと言う事実を聞いた七花は、ドン引きしながら彼の行いをぼやく。


「ブチ切れたら闇の魔力が高まったなんて事、見た事なんて···!!そう言えば、前に黒凰って奴があの変態イカレ女をボコボコにしてた時に似た様な事が起きた気がする···!!」


怒りをトリガーに闇の魔力が噴出する前例に見覚えは無いと話し掛けた深波は、詞音と似た状態の存在を思い出した。嘗て自分を「友達」にするべく誘拐、そして凌辱した変態イカレ女こと、深海琉依にとある事情から激しい暴行を加え、果ては闇の炎の魔力を激しく高めた黒凰の存在を···。


「その後で現れた手下みたいな奴がこう言ってたわ。『我々の目的はゾディヴィルの集結が最優先だ』って。もしかしたらあんたのそれと何かしら関係が有るんじゃないかしら。」


そしてその黒凰の手下···閻龍の語る黒の理界の目的「ゾディヴィルの集結」を優先している事も合わせると、詞音の起きた現象と何らかの関係があるのでは?と深波は推測する。


「連中はゾディヴィルってのを集めて何を企んでんだろう···?流、お前はどう思···ってあれ、流は?」



黒凰等黒の理界がゾディヴィルを集結させる目的は何なのか···流にも意見を尋ねようとする詞音だが、何故か見当たらない。彼がこうしたリンキュバス絡みの話題に入って来ない事は珍しい。


「流なら私の隣にいるわよ。」


「···ぅ···ぁぁ···。」


「何だよ、居るなら話に入···って、ウェェェェッッッッ!!!?何じゃこれぇぇぇぇっっっっ!!!?」


深波の隣に確かに流は居るには居た···が、頬が病人の様に痩せこけ、掠れる程力の無い声を出す彼の死にかけた有り様を見て、話題に入って来ない事にぼやこうとした詞音は、絶叫してツッコミを入れる。原因は言わずもがな、深波からの激しい「奉仕」である。


「確かにこれじゃ話に入れないわね。んん···ちゅ···♪」


「ちょっ···ちょっとあんた!!///教室で堂々と何やってんのよ!!?///」


流石にこんな状態では話題に参加出来ないと思った深波は、自身と流の唇を合わせて魔力を注ぐ···接吻行為を行った。周囲の視線や七花の怒号等をガン無視してより激しく接吻する。


「ぷはぁ···!!元気になった?流♪」


「あ···ああ···すまないな皆。」


「いやまだフラフラじゃんか。て言うか海噛さんももう少し手加減してやりなよ。」


深波から解放されどうにか声が出せるくらいに回復した流は、余計な心配を掛けた事を皆に詫びる。しかし、完全では無い為未だ身体がふらついている彼を心配する詞音は、流との「ガッタイム」を多少は加減をする様深波に進言する。


「は?何寝言抜かしてんの。これは流をより強くする為でもあるんだから手加減する気なんて更々無いわ。あんただって奏とヤリまくったお陰で強くなってんじゃないの?」


「うっ···それは···!!」


しかしそんな進言を流を愛して病みまくりな深波が聞く筈も無く、彼女との「ガッタイム」により流との絆が高まり、魔力の強化や新しい魔撃が習得した様に、奏との「ガッタイム」により同様の恩恵を受けた事を逆に指摘されてしまい、事実先日の戦いで使用した魔撃・ガスティカーテンも最近習得したばかりの物である為、詞音は反論出来なかった。


「そうそう♪奏達とエッチな事をいっぱいしたら···」


「強くなれる事がちゃんと証明できたでしょ♪」


「「はぁ······。」」


自分達リンキュバスと交われば交わる程強くなれる···満面の笑みを浮かべてそう語りながら、それぞれの彼女から豊満な胸をグリグリと頭に押し付けられる流と詞音は、「ガッタイム」により強化されている実例があるが故にその事実を否定出来ず、そんな自分達を情けなく感じながら頭を垂れて溜め息を吐いた。


「あ、あんた達ねぇ···いい加減に···!!///」


「ウッガアアアアァァァァッッッッ!!!!!!!!」


「なっ···何···!!?」


所構わずふしだらな行為を平然とする深波と奏に七花は顔を赤くしながら咎めようとするが、その直前にこれまで黙していた竜駕が突然立ち上がると同時に大声で叫び出した為、思わず吃驚する。無理もない、自分の周囲の男友達がリンキュバスとは言え美少女と恋仲になった事自体未だ童貞の彼にとっては憤慨物であり、彼女達の「何時ものスキンシップ」を目の当たりにしたのが引き金となり、これまで蓄積していた怒りが爆発したのだろう。


「い、いきなりどうしたんだよ鏡神···!?」


「リア充リア充リア充リア充···チックショォォォォッッッッ!!!!」


「あっ、おい鏡神!!」


突然の事態に驚きながらも恐る恐る理由を尋ねる流だが、竜駕は返事をしないばかりか呪詛の如く幾度も「リア充」と不気味に呟いたと思いきや、何かを悔しみながらまたしても大声で叫びながら教室を勢い良く飛び出してしまう。


「一体全体どうしたんだ彼奴···?」


「ほっといたら良いのよ流。あんな変態がテンパろうと知ったこっちゃ無いわ。」


突然の竜駕の行動に困惑しながらも心配する流に対し、深波は彼の奇行に「どうでもいいですよ」と言わんばかりに冷淡な態度を取る。因みに今の光景を目にしたクラスメイト達も一時は驚きながらも、「何時もの事」だと思い、聞き流す始末だった。




「(畜生畜生畜生!!!!俺がどうかしてたんだ!!あんなリア充共と一緒につるんでる事自体間違ってたんだ!!やっぱりリア充は···俺の敵だぁぁぁぁっっっっ!!!!)」


目から滝の様に涙を流しながら廊下を爆走中の竜駕は、流と詞音の様に未だリンキュバスとの魔契約も、人間の彼女すら出来ない独り身(非リア充)の自分が彼等と共に居る事を間違いだと悟り、心の中で非リア(じぶん)とリア(かれら)は相容れない敵対関係だと叫ぶ···。




「(それからだ。俺は非リア充な野郎共を集め、リア充共に俺達の怒りと悔しさを思い知らせるべく制裁を下し続けて来た。)」


2週間のあの日から現在迄、自分と同じ境遇の仲間(非リア充な男)を津凪高校より全年問わず募り、敵(リア充)に制裁を下すべくチーム龍武神を結成した経緯を天を仰いで思い返す竜駕。尤も、制裁と言っても暴力の類いでは無く、カップル達を軽く恫喝したり、カフェやレストラン等で態と騒ぎ立てて彼等の気分を削いだりと、非っ常ぉぉ~に迷惑極まりない低レベルな嫌がらせ程度である。


「リーダー!次は何を仕掛ける予定ッスか!?」


「ん?ああ、そうだな···花見シーズンが近付いてリア充共がわらわら増えるだろうから、桜の木全てを緑のペンキとかをぶちまけて「葉桜」に変えた···葉桜見ハラスメントってのはどうだ?」


「「「おぉ~~っっ!!!!」」」


そこへ一人の同志から次なる制裁(いやがらせ)の予定について問われた竜駕(リーダー)は、来る花見シーズンによりリア充が増殖するのを予見し、桜の木全てを緑の塗料(ペンキ)等で「葉桜」に変貌させ雰囲気を(他の花見客を含めた)ブチ壊す「葉桜見ハラスメント」なる意味不明な制裁案をブッこみ、それに感嘆の声を上げで賛同する馬鹿(メンバー)共。


「勿論!その間も活動を続けていくのも忘れんな。良いな!!」


「「「ヘイッッ!!!!リーダー!!!!」」」


当然それまで活動を休止する···なんて事は無く、花見シーズンが来る間も今の活動(いやがらせ)の継続を呼び掛け、メンバー達はそれに強い返事する···。


「お前等かァァッッ!!!?最近カップル達に下らん嫌がらせを仕掛けているのはァァッッ!!!!」


···が、悪事とは長続きはしない物。突然体格の良いジャージ姿をした生活指導の男子教師がこの暗室もとい、津凪高校の視聴覚室の扉を勢い良く開けるや否や、チーム龍武神達の悪事について怒鳴り込む。


「な···何で俺達の仕業だって解っ···!!?」


「町でお前等の仲間が変な事してるのを目撃したってウチの生徒から連絡があって行ってみたら案の定、こいつ等見つけてとっ捕まえたら全部白状したんだよ。」


「「痛ででで···!!!!」」


何故自分達が犯人だと解ったのか···驚きながらもそう語ろうとした竜駕の問いに答える様に、両脇を挟んで龍武神のメンバー二人を捕獲しながら真輝人が現われ、彼等が制裁(いやがらせ)を仕掛けようとする場面を目撃した生徒からの連絡による物だと知る。


「一体誰が···!!?」


「あたしよ。」


学内の生徒による密告(チクリ)により自分達の行いがバレた事に眉を顰めながらその人物が誰なのかと口にする竜駕の言葉にこれまた答える様に、真輝人の隣に現れたのは七花だった。真輝人にチーム龍武神の悪事を話したのは彼女である。


「てめぇがチクったんかよ···!!」


「何よ、下らない事して他人様に迷惑掛けまくってるあんた達が悪いんでしょ!?」


真輝人等教師に密告し(チクッ)た七花を睨み付ける竜駕だが、彼女は腕を組みながら自業自得だと至極当然な言葉で返した。七花の言う様に、元を正せば他人様に制裁(いやがらせ)と言う迷惑行為に及んだ竜駕達の方が悪い為、擁護不能である。


「そう言うこった。大人しくお縄につくんだな。」


「お縄とか古ぃんだよ···って、痛だだだっっっっ!!!?耳千切れる!!千切れるからっっ!!!!」


真輝人の古い言い回しにツッコもうとする竜駕だが、その前に生活指導の教師に耳を引っ張られた痛みを伴いながら「お縄」につく羽目になった。


「馬鹿っぽい···!!」


「この貧乳茨女···痛ででででっっっっ!!!?」


すれ違い様に目が合った七花から冷めた視線と共に罵倒の言葉をぶつけられた竜駕は、またも彼女を睨み付けて暴言を吐くも生活指導の教師に耳を更に強く引っ張られて痛がりながら連行されてしまう。その後、竜駕達チーム龍武神のメンバーには1ヶ月の停学処分が下される事となった。




チーム龍武神の停学処分が下された1ヶ月後···。


「よし···これで彼奴を···ヒヒヒ···!!」


暗がりの中、何者かが特定の人物に対して何らかの準備が整うと、不気味に嗤い出す···。




ー翌朝



「あ~あ。今日からまたあの変態が出てくるなんてマジ最悪···!!」


「彼奴のスケベ根性はもう病気レベルと言っても過言じゃないよな。」


「···先に宙吊りにしちゃう?」


「それに加えて刺バットでボコボコにしてアレだから無駄よ。」


「あ···はは。でもさ、彼奴のお陰で深波と仲直り出来た事もあるから根は悪い奴じゃないけどな。」


チーム龍武神の停学期間が終了した今日から、深波はまた竜駕の手により「何時もの騒動」が起きる可能性が高くなる事にうんざりし、詞音はそんな彼のスケベ根性を病気レベルだとぼやき、奏は事が起きる前に宙吊りの刑を提案するが、七花はそれに加えた刺バットの制裁を加えた上での前例の結果から却下する等、竜駕に対してボロカスな意見を出しながら学校に入る皆に対し、苦笑いしながらも流だけは嘗て彼の叱責により深波との絆を取り戻せた事から擁護の言葉を出す。


「一応そうだけど···。」


「少なくとも、この前みたいな起きた事件を起こす程最低野郎じゃない事は信じたい。」


嘗ての仲直りの件を話題に出され、不本意ながらも多少は自覚している為肯定する深波の言葉を耳にしながら、流は続けざまに先日発生した、水泳部の女子更衣室の盗撮事件の様な最低最悪の行為までする奴では無いと、竜駕を信じる発言をする。その根拠は、過去に竜駕が生徒会の女子生徒達に「パンツ撮らせて下さいませ!!」とスライディング土下座して懇願すると言う脳味噌が腐りきった言動を目撃した事があり(当然9.5割殺しの刑が下った)、この事から彼は今回の様な事件を起こす「卑劣な変態野郎」では無く、「正々堂々な変態野郎」である事を確信しているからである。


「全く···男ってのは変態しか居ないのかしらね···!!」


「ちょっと···何さらっと流まで変態扱いしてんのよ···!?」


正々堂々であれ卑劣であれ、眉を顰めながら「男=変態」と言う図式を出す七花の発言にカチンと来た深波は、遠回しに流まで侮辱されたのだと感じ彼女に突っ掛かろうとするが···


「ん?ちょっとあんた達、何こっち見てニヤニヤしてんのよ···!!」


「ひっ!?」


自分達から離れた場所にいる二人組の男子生徒が嘲笑うかの様にニヤついた顔でこちらを見ているのを目にし、それが気に障った深波はつかつかと彼等の方へ急ぎ足で近付きその内の一人の胸倉を掴んだ。


「おっ、おい!!何やってんだよ深波!?」


「だってこいつ等、私達の方を見てこそこそと笑ってんのよ!!」


「だっ···だってよぉ···あんな『モン』見たら誰だって本人見かけたら見ちまうじゃねぇかよ···!!」


突然起きた暴挙を止める流に自分達を小馬鹿にしたように嘲笑われた事を明かす深波だが、胸倉を掴まれた男子生徒は怯えながらも「ある物」を見たが為に思わず先程の行動を取ったのだと弁解する。


「あんなモン?」


「これだよ。」


「ある物」について首を傾げる流の疑問に対して、もう一人の男子生徒がスマホの画面を見せ付けると、皆一斉に顔を凍らせた様な表情で驚く。その「ある物」とは···


「これは···!!?」


「何よこれ···!!?」


男子生徒のスマホ画面に写っている物···それは、乳房の部分を惜しげ無く出し、白い下着を身に付け、両足をM字開脚させ、両手をWピースをした少女の画像と言う破廉恥な内容だった。しかも···


「これ···井原さん···なのか···!!?」


目の部分が黒い横線で隠れてはいる物の、虹色の薔薇の髪飾りを付けた茶髪のショートヘアを特徴としている事から、この画像の少女は七花である事が判明する。


「···知らないわよ···こんなの出鱈目よ!!一体誰がこんな物を!!」


しかし、当の本人である七花は身体を震わせながら見に覚えは無いと、荒げた声で否定の言葉を叫びつつこんな質の悪い嫌がらせを仕掛けた犯人に対して激怒する。しかし···




「え?これあの1年の女子じゃね?」


「人は見かけによらないな。男嫌いなのはポーズかよww」


「ツンツン茨姫はデレデレ露出姫ww」




「違う···違うわ···これはあたしじゃ無いわよ!!!!」


自分の「破廉恥な画像」を目にしその正体に感付き始めた周囲の生徒達は、七花の方に目をやり心無い中傷の言葉を、それも本人に聞こえるくらいの音量で話し出す事態が起きてしまう。その光景に七花は、半泣きになりながらも否定の言葉を彼等に叫ぶ。


「いい加減にしないかお前達!!寄って集って女の子の悪口を言って恥ずかしくないのか!!早く教室に行け!!」


七花を中傷する光景に駆け付けた闇影は、そんな彼等に対して一人の少女の心を傷付ける行為に激しく叱責の声を飛ばしつつ教室に向かうよう怒鳴る。これまで温厚だった闇影の怒る姿に驚いた生徒達は、急いで自分達の教室へ向かう。


「大丈夫···と言うのは変な言い方になるかな。井原はこっちで保護するからお前達も教室に行きな。」


「···ありがとうございます。」


謂れの無い中傷で傷付いた七花にどんな言葉を掛けてやれば良いか曖昧ながらも心配の言葉を掛けて慰める闇影は、周囲の目から彼女を守るべく一先ず保護する事を決め、流達にも教室へ向かう様促し、意気消沈した七花を連れて立ち去って行く。




ー1年B組



「にしても···一体誰があんな酷い嫌がらせを···!?」


教師達による緊急会議が開かれた為現在の時間は自習となり、案の定クラスの連中が先程の騒動についての話題で騒がしくなる中、流は誰があの画像を流出されたのかを考えていると···


「彼奴がやったんじゃなくね?」


「あ~そりゃやりかねないよな。」


「井原さんを恨んでそうだからその仕返しじゃないの?」


「それ逆恨みじゃん!最低。」


クラスの誰もが画像を流出した犯人の有力候補···否、その人物だと言う前提で話し合い始める。七花に恨みを持ち、尚且つその嫌がらせの手法から鑑みて、ある人物ならやりかねないと···。


「おはよ~さん皆の衆。校内一のイケメン男子鏡神竜駕、一月ぶりに参じょ···!?」


「······!!」


噂をすれば何とやら···丁度その人物たる竜駕が遅れながらも自意識過剰な台詞をほざきながら1ヶ月ぶりに教室に入り込むが、彼を待っていたのは同級生(クラスメイト)からの冷たい視線だった。


「何?皆してゴミを見るような目で睨んでさぁ。」


「ゴミ以下の存在だからでしょ。」


「いきなり御挨拶だなぁ深波ちゃんは···一体何なんだよ?」


「···お前がこんな画像を送った犯人じゃないかって今噂になってんだと。」


「画像ぉ?何な···に···!!?」


教室に着くや否や、久しぶられる所か寧ろ「今すぐ消えろ」と言わんばかりの同級生の無言の冷たい視線を向けられ何の事だか解らない竜駕は、深波から相変わらずの毒づいた言葉をぶつけられながらも、原因が何なのかが解らず詞音から事の原因である画像が表示されたスマホを彼に見せられると、一瞬で表情を強張らせた。


「鏡神···お前は確かに変態だが、少なくともこんなやり方で他人を傷付ける様な真似なんかしないよな···って、鏡神···?」

 

先月七花の密告によりチーム龍武神のメンバーが停学処分を下された事への逆恨みによる犯行では?と噂するクラスメイトとは違い、流は潔白であると信じ画像を送った覚えは無いのか真偽を問い掛けるが、竜駕は表情を強張らせたまま無言のままで立ち尽くしている。


「······ッッ!!」


「あっ、おい鏡神!!?」


「あっ、待ってよ流!」


「やっぱ鏡神だろ?逃げたのが証拠だし。」


暫くして何かを決意したのか、竜駕は強張らせた表情から険しいそれに変えながら踵を返して教室を後にし出した為、流はその後を追い、深波もそれに続いて退室した。今の行動から「犯人」だと認めた証拠だと口々に話すクラスメイトの言葉を知る由も無く。




「待てって鏡神、一体どうしたんだよ!?」


「関係無ぇだろ···!!」


犯人の目星やその証拠探しの為なのか、早歩きで何処かへ向かう竜駕を引き止めようと同じく早歩きで追いながら声を掛ける流だが、振り返らず何故か不機嫌な態度で無関係だとあしらわれる。


「だから待てよ!!」


それでも食い下がる流は、何とか接近し竜駕の肩を掴んで強引に引き止めようとするが···


「···ッッ···しつけぇんだよ!!」


「うわっ!!?」


そのしつこさに苛立ちを覚えた竜駕は一旦立ち止まったと思いきや、声を荒げながら流を強く壁へと突き飛ばした。


「うっ···くっ···!?」


「さっきからウゼぇんだよ!!非リア充の俺が何処へ行こうとリア充のお前には関係無ぇだろ!!」


壁へ身体を強く打ち痛がる流を見下ろしながら、竜駕は先程の彼の行動を鬱陶しく思い非リア(じぶん)の動向等リア(ながれ)には関係無いと怒鳴る。


「流!!大丈夫!?」


「あ、ああ···大丈夫だよ···。」


「あんた···流を突き飛ばしてただで済むと思ってんの!?」


タイミングの悪い時に流を追っていた深波が今の場面を目にするや否や、直ぐ様流に駆け寄り身体を支えながら心配し、殺意を沸かせながら口を大きく裂かせ、愛しき(かれ)を傷付けた竜駕に対し糾弾する。


「何か騒がしくね!?」


「えっ!?何!?B組の喧嘩!?」


「修羅場キターー!!」


流が壁に衝突した物音、竜駕の怒鳴り声、深波の悲痛な声···これらの要素が合わされば他のクラスの連中が無視出来る筈も無く、教師達が会議で居ないのを良い事にそのまま教室の外へ現われて流達三人の姿を目にし、「深波を巡っての男同士の喧嘩」だと勘違いして冷やかし気分でワイワイ騒ぎ出す。


「···突き飛ばしたのは悪かったよ。けど、もう俺に構うな。やっぱ俺とお前等じゃ合わねぇわ···!!」


「あっ、ちょっと待ちなさいよ!!土下座しないよ!!土・下・座!!」


「鏡神···!!」


思わぬ騒ぎになった事で逆に冷静になったのか、取り敢えず突き飛ばした事を流に詫びる竜駕だがこれ以上自分に構うなと、実質絶交の言葉と本心を告げてその場から立ち去って行く。土下座を求める深波の怒号を背に受けながら。




「アァァッッ!!彼奴マジムカつく!!」


「落ち着きなよ深波。別に怪我してる訳じゃないしさ。」


「折角流が心配してやってんのに突き飛ばした挙げ句関係無ぇとかほざいて···今度会ったらマジぶっ殺す!!」


放課後の帰り道、夕飯の買い出しの為外へ歩く流と深波。深波はその道中に今日の竜駕の流に対する言動が相当腸が煮え繰り返っている為、苛立ちを抑えられずにいた。突き飛ばされたが怪我迄していない為落ち着く様に宥める流だが、彼の好意を無下にしたばかりか突き飛ばした事自体が許せない深波は「ぶっ殺す」と物騒な発言をまでする始末だった。


「全く···ん?」


「どうしたの流?」


困り顔で小さく笑う流は何かを見掛けたのか突然立ち止まり、今の行動で一時的に怒りが止まった深波に何事かと尋ねられると、彼女と共に遠目から見掛けたある光景を見据える。




「そうッスか、解りました。あざっす!ふう。次は······もしもし鏡神だけど、ちょっと聞きたい事があるんだが···。」


二人が見据えた先にいる光景···それはスマートフォンで誰かとの通話を終え、直ぐに別の誰かと連絡をしている竜駕の姿がそこにあった。




「丁度良いわ···今すぐあのクソ野郎を八つ裂きにして···!!」


「···え···!?待つんだ深波···!!」


目下殺そうと考えている竜駕を偶然目にし、再び口を大きく裂かせながら直ぐ様そのまま実行(ころし)に移すそうとする深波だが、彼が口にした言葉を耳にした流は片手を差し出して制止する。




「ちっと大事な話があるから、今日の夜12時に学校に来てくんねぇか?直接会って話がしたいんだよ。ああ、悪いな。んじゃ。さて······。」


その話の内容とは、何者かと深夜0時に津凪高校で会って話し合いの約束の様だ。スマートフォンを切って会話を終えた竜駕は、これまで見せた事が無い程真剣な顔付きでその場を後にした。


「彼奴、今夜学校で誰に会うつもりなんだ?」


「まさか犯人の目星が付いたとか···!?」


「解らない···ただ、これだけは解る。彼奴は自分の手で犯人を暴くつもりだ。」


「自分の濡れ衣は自分で晴らす為に?」


「それもだろうけど、今朝と言いさっきの表情と言い···もしかしたら鏡神は···!!」


竜駕の通話の内容を聞いていた二人は、あの画像を送った犯人が判明したのかまでは不明だが、少なくとも彼が自分自身の手で真相を明らかにするべく情報収集をしている事だけは理解した。無論深波が語るように自分が無実である事を証明する為だが、流はあの画像を見た時の竜駕の険しい表情と今見せた真剣な表情からある理由が頭に浮かんだ···。




ー井原家



「············。」


灯りをつけず薄暗い自室にて制服を着替えず、七花はベッドの上で体育座りをして意気消沈した表情で蹲っていた。目の周りが紅くなっている事から、彼女は先程まで泣いていた事が容易に想像出来る。如何に普段は他人なら教師にすら強気で接する彼女でも、自分の見覚えの無い破廉恥な画像を晒された挙げ句、周囲から奇異の目で見られて心が深く傷付くのは当然だ。


「···誰から···?」


そこへ、横に置いたスマートフォンから着信音が鳴り出し徐に手に取ると、非通知の相手である事に怪訝な表情をしながらも通話に出る。


「はい···。」


【事件ノ真相ヲ知リタクナイカ···?】


「···誰よあんた···!?」


【知リタクバ、深夜0時ニ津凪高校ヘ来イ···!!】


「あっ、ちょっと待ちなさいよ!?」


電話の主は機械に通した様な不気味な声であの事件の真相を知っている口振りで深夜0時に津凪高校へ向かう様七花に伝えると、彼女からの質問には一切答えず一方的に通話を切った。


「事件の···真相···!!」


あの不気味な声の主が放った言葉を反芻する七花。得体の知れない奴の言葉は信用出来ないが、真相を知りたくないと言えば嘘になる。


「深夜0時···もう10分も無いじゃない!!」


ふとスマホに表示された時間を目にすると時刻は何時の間にか23時51分と間も無く日付が変わる時間になっていた事に気付いた七花は、慌てて津凪高校へと向かうべく部屋を後にした。




ー津凪高校



「············。」


「こんな時間に何の用だよ鏡神、いや···『リーダー』?」


空が闇の如く真っ黒に染まった深夜0時にて、普段着として背中に赤い龍の刺繍が特徴の黒いスタジャンを羽織り、腰にカジュアルなシャツを巻き青いデニムを履いた姿の竜駕は、こんな真夜中に呼び出されて不満げにぼやく相手···嘗てチーム龍武神のメンバーだった男子生徒と相対する。


「鳥海、もっかいだけ確認するけどよぉ···お前、あの日確か体調不良で外れたんだよな?」


竜駕は腕を組みながら1年C組の男子生徒・鳥海(とりうみ)に、あの日は体調不良を理由に「外れた」事を再度確認した。あの日···リア充への制裁(いやがらせ)が学校にバレてしまいチーム龍武神が停学処分を下された日に彼が制裁に参加しなかった事を。夕方の電話の相手は同じメンバーであり、その確認の為の電話だったのだ。


「それがどうしたんだよ···!?」


「お前ホントはあの日、周辺のゲーセンやら喫茶店で屯してただろ?店に聞いて回って確認したよ。」


しかし、体調不良は嘘であり本当はある理由で喫茶店やゲーセンに長時間屯していた事を店の人間に聞いて回り、それが事実である事を鳥海に言及する竜駕。


「まぁその理由は後で話すとしてだ···お前、合成写真が得意とか言ってたなぁ············これもお前の仕業じゃねぇのか?」


鳥海が何故仮病を使ったのかは一時置いた竜駕は、鳥海が合成写真が得意である事を指摘しながら例の画像が映った自分のスマホを突き付けながら、それを流したのも彼の仕業なのかと勘繰った。


「何の事だよ···!?んなモン知らねぇよ···!!俺がやったって証拠があんのかよ!!あぁっ!?」


「良く出来た代物だよ···。でもな、コイツこんなにおっぱいデカくねぇし、頭の髪飾りも間違ってるし、何より······お前とはクラスが違う。だから···」


見に覚えは無いと声を荒げて否定する鳥海の言葉を無視し、画像の捏造ぶりを皮肉る竜駕。だが、この画像に写る「七花」が実際の彼女とは違う点が多々ある事を指摘した。


「それが何だよ···!?井原と同じクラスじゃないせいで違いに気付きにくかったから犯人だって言いたい訳!!?はっ!!だったら1年B組(おまえのクラス)以外の連中全員だって怪しいだろうがよ!!」


こんな真夜中に呼び出して変な勘繰りをした挙げ句、何やら無理のある根拠を理由に「七花」の画像を流した犯人扱いをする竜駕に怒りを爆発させて激昂する鳥海。だが···


「······やっぱお前が犯人なんだな···!!」


「はぁっ!!?何で今ので俺が犯人だって···!!」


「俺はこの画像の女の子を『コイツ』としか言ってないのに、何で井原だって解ったんだよ···!?」


「あっ······!!?」


鳥海は怒りにより慎重さが崩されたせいで、竜駕が画像の少女の正体を明かしていないのにも関わらず、その正体が七花である事を口にしてしまい、自らが犯人である事を自供してしまった。


「さっきの体調不良(けびょう)についてメンバーの先輩に話を聞いた序でにお前の事も聞いたよ。お前が女子水泳部の盗撮をやらかしてそれが原因で引きこもったって話をよ···!!」


そして、体調不良(けびょう)を理由にチーム龍武神の活動(いやがらせ)を抜けた本当の理由···それは、鳥海こそが女子水泳部の盗撮事件の犯人であり、部室に設置した盗撮用のカメラを回収するのに彼等と共にいては露見する危険性があった為であるからであり、またそれが結局発覚したせいで引きこもる要因となった事を、竜駕はメンバーを通して知った。


「······そうだよ···彼奴が···井原がチクりやがったせいで···俺は周りから『盗撮変態野郎』の烙印を押されて人生が滅茶滅茶になったんだよっっ!!」


全て暴かれてしまった鳥海はぶちまける様に今回の事件について認めた。チーム龍武神が停学処分を下された後、盗撮カメラを回収した後も同様の手口を行おうとしたが、ある日偶然忘れ物を取りに学校へ向かった七花に見つかり、カメラを設置した事を教師達にバラされてしまい、クラスの連中から「変態」だと罵られいじめられて、今や家に引きこもる事になったのだと。


「············。」


「なぁ、お前なら解るだろ?同じく彼奴のせいで停学食らったお前なら···俺の受けた屈辱がよ···?」


高校生活が終わってしまったのははっきり言って自業自得であり今回の事件も逆恨みによる物なのだが、それを全く自覚していない鳥海は、同じく七花により手痛い目に遭った竜駕に、自分の心境について同意を求める。


「······ふっ···そうだな。確かにあの貧乳のせいで何度か死にかけた事もあったしなぁ···。」


鳥海の身勝手な動機をこれまで黙して聞いていた竜駕は、小さく笑いながら自分も数々の悪業により七花から同じ数だけ制裁を、時には死にかける程のそれを受けていた事から同意を示す···。







「······ふざけた事抜かしてんじゃねぇよ······!!」


「ぶぁっっ!!?」


···かと思いきや、両の眼で鋭く睨み付けながら強く握った右拳で目の前の最低男の左頬を勢い良く殴り飛ばした。


「なっ···なっ···!!?」


「一緒にしてんじゃねぇぞ、あ?女のケツを追い掛ける事はやっても、てめぇみたくこそこそした汚ねぇやり方で女を傷付け泣かせる様な真似だけはしねぇんだよ···!!」


いきなり殴り飛ばされて痛む頬を押さえて困惑している鳥海(さいていおとこ)を見下ろしながら竜駕は語る。この校内で女子生徒達への犯罪ラインギリギリのアウトな悪事をやらかまくってる時点で最低男(とりうみ)と何ら変わらないのだが、「常に正面きっての行動」と「女は決して泣かせない」をモットーとしており、それに反する真似をする鳥海とは全く違うと豪語する。




「······。」


遅れながらも今しがた津凪高校に到着した七花は、今の会話を物陰から一部始終聞いて立ち尽くしている。確固たるモットーを掲げながらも、暗に自分の仇を取る為に怒りを顕にしていると感じ取ったからだ。


「···言いたい事はそんだけかよ···!?」


「何だと···!?って···寒っ!!?何で急に寒くなるんだよ··!?」


無言で立ち上がった鳥海が今の説教に対して反省どころか挑発的な言葉で返すと同時に、何故か周囲の気温が急激に下がりだした為、竜駕は身体を抱える様に寒がる。


「どうしたよ?さっきみたく元気に啖呵切ってみろよ、リーダー。」


「何でてめぇは平気で···まさか···!?」


寒がる竜駕とは逆に鳥海は全く寒がらず平然としており、先程同様に彼を挑発する。その態度から、竜駕は「ある事」を予感した···。


「そろそろ出てきても良いぜペギーア。」


『ペロペロ···ん~?お話もう終わり~?』


「リンキュバス···マジかよ···!?」


竜駕の予感に答える様に鳥海の背後から、括れたスタイルの良い黒い全身に、周囲に禍々しい形をした水色の「P」の模様、鋭く長い黄色の嘴、平べったい刃が付いた両腕、水色の瞳が特徴の、ペンギンを模したリンキュバス「ペギーア・アイスキャム」がアイスキャンディーを嘗めながら暢気な口調で話しながら現れる。


「へぇ、リンキュバスの事まで知ってんのか。相変わらずの情報通だな。なら、今の俺がどういう力を持ってんのかも教えといてやるよ···!!」


ペギーアの姿を見てリンキュバスの名を口にした竜駕の反応を見た鳥海は、彼の情報通な部分に感心しつつ魔契者となった自分の持つ力の詳細を明かすと言い···


「冥土の土産としてなぁ!!フリーズエッジ!!」


「うわっとぉぉっっ!!?」


何時の間にか水色の魔力を籠めた右掌から氷で生成された刃、氷属性の初級魔撃・フリーズエッジを放ち竜駕を始末しようとしたが、回避されてしまう。


「ちっ!だがまぐれも今だけだ!ペギーア!!」


『オ~ケ~。』


只の人間である竜駕が魔撃を回避した事に舌打ちする鳥海。だが、今のはまぐれだと決め付け、今度はペギーアと共に攻撃しようと考え、彼女と共に魔撃の詠唱を唱える。


「無数なる魔の氷柱よ、彼の者を貫け!!アイシクルニードル!!」


『無数なる魔の氷柱~針千本呑ませてあげて~。アイシクルニードル~。』


鳥海は本来の詠唱を、ペギーアは彼女の性格所以なのか独自のそれを唱えて両掌から無数の水色の氷柱を一直線に放つ中級魔撃・アイシクルニードルを竜駕目掛けて同時に放った。


「うわっひぃぃっっ!!?」


2人分のアイシクルニードルのあまりの物量から先程とは違い真横では回避しきれないと判断した竜駕は、下にしゃがみこみ頭部スレスレの所でどうにかこれも回避した。


「くそっ···このままじゃ向こうの思う通りだ···!!ここは一旦···逃げるっきゃない!!」


今の状態では格好の的になるだけだと思った竜駕は、アイシクルニードルが止んだのを見計らいどうにか体勢を整えるべく、「三十六計逃げるに如かず」の言葉通り、鳥海とペギーアに背を向けてこの場から走って逃げ去って行く。


「逃げようたってそうはいかねぇ!!行くぞペギーア!!」


『りょ~か~い。』


事件の真相を知った竜駕をこのまま見逃す筈が無い鳥海は、ペギーアの背におぶさって彼の口を永遠に封じるべく追跡する。


「ちっ!やっぱ俺を殺すつもりかよ···って、うわぁぁっっ!!?」


「きゃっ!!?」


「ボケっと突っ立ってんじゃねぇ···って、井原!!何でお前が此処に!?」


「あ···あたしは誰かに電話で呼ばれて···!!あんたこそ、こんな時間に何してんのよ?」


逃走しながら鳥海が自分を口封じに殺そうとしているのを聞きより急ごうとする竜駕だが、そこへ今まで物陰で隠れていた七花と遭遇した。思わぬ来訪者(ななか)の存在に驚きながらも何故此処に居るのかを尋ねる竜駕だが、何者かに呼ばれたと返答しながらも逆に彼女から同じ質問で返される。


「あれは井原···!!丁度良い、あの女も消してやるぜぇぇっっ!!」


「あれって···リンキュバスって奴!?何であんたが関わってんのよ!?」


「···話せば長くなるから···逃げながら説明してやる···よっと!!」


「えっ···ちょっ···ちょっと!!?///何してんのよ!!?///」


七花の姿も目にした鳥海は自分の人生を台無しにした張本人を竜駕諸共あの世へ送ると、逆恨みの度合いをより高め出した。それを目にした竜駕は、この現状について説明しつつ逃走する手立てとして、七花の両足を抱き抱え···


「しっかり捕まってろよ!!」


「ちょっ···ちょっ···ちょっと待ちなさいよぉぉぉぉっっっっ!!!?///」


所謂「お姫様だっこ」の状態となり顔をトマトの如く真っ赤にした七花の制止を聞かず、竜駕は再び鳥海とペギーアから逃げるべく、校舎内を目標に走り出す。





「······~ってな訳だ。だから俺は単独で···」


「······。//////」


校舎内に入り廊下を走ると言う、普段なら教師から雷を落とされかねない行為をしながら七花に事の顛末を説明する竜駕。だが当の彼女は、突然の異性(りゅうが)からお姫様だっこと言う予想外の出来事に未だに顔を赤くさせ呆けている。


「···って、お~い、聞いてるか?」


「ハッ···あ、あんたに言われなくても解ってるわよ!!///事件の事も···あんたが···犯人じゃないって事も···。」


竜駕から呼び掛けられて我を取り戻した七花は、事件の真相を···その犯人が彼では無い事を憎まれ口を叩いて答える。そんな会話をしながら教室の窓付近まで進んだ時···


「そのガラスは倒れない!!」


「えっ···あっ!!?」


鳥海が何らかの言葉を叫んだ瞬間、竜駕と七花が横切ろうとする教室の窓ガラスが突然、彼等目掛けて倒れそうになる···


「そうは烏賊の···何とやらぁぁっっ!!!!」


「きゃあぁぁっっ!!?」


···が、一旦立ち止まった竜駕は一切振り向かずに勢い飛び上がって後ろへ回避し、倒壊した窓ガラスが激しい音を立てて割れ終わるのを見計らうと、今度は逆に正面へ勢い良く飛び上がって逃走距離を稼いで再び走り出す。


「きゅ···急に飛び上がらないでよ!!吃驚するじゃな···!?」


「······!!」


「鏡神···。」


今の突発的な動きに激しく驚いた七花は竜駕に文句を言おうとしたが、自分を抱えながら普段の猥褻顔(七花の個人的意見)とは違う真剣な表情で必死に走る彼の顔を見て、きょとんとして黙する様に大人しくなった。


「逃げながらイチャつくなんざ随分と舐めきった真似をするリーダーだな···!!ペギーア!!アイスキャンディー5本追加だ!!本気出しな!!」


『5本も!?うん!!ペギーア本気出す~!!身も心を凍え強くしちゃう雰囲気にいざチェ~ンジ♪フリ~ジングミスト~。』


「げっ!?廊下が凍っちまった!!」


自分を棚に上げて七花を抱える竜駕をイチャ付いてると思い込み苛立つ鳥海は、ペギーアに毎日特定数食べさせているアイスキャンディーの本数を5本の追加を条件に、本気の強さを出す事を要求する。それを聞き、目を輝かせて気合いを入れたペギーアが彼女独特の詠唱を唱え発動した、氷属性の魔族のステータスを上昇させる魔撃・フリージングミストにより校内の周囲に真っ白い霧が発生し、廊下がスケートリンクの如く一瞬で凍結する程の極寒地獄と化した。


『それそれ~♪』


「ヒャッホォォォォッッッッ!!!!」


「くそっ···凍った廊下のせいで走りにくい···!!」


そしてペギーアはそのまま凍結した廊下をスケートの様に軽快且つ高速で滑って追跡し、鳥海もその軽快さにテンションを上げて調子に乗る。一方の竜駕は、七花を抱えるハンデに加えて凍結した廊下では滑りやすく走りにくい状況に陥ってしまう。その上···


「窓ガラスは全部倒れなぁぁいっっ!!」


「何!!?」


鳥海がそう叫ぶと、何故か教室だけでなく外側の窓ガラスが全て竜駕に向かって倒れ出すと言う、不可思議な現象が起きてしまう。


「ちっ···井原!!先にごめん!!」


「えっ···きゃあぁぁっっ!!?」


両側から窓ガラスが倒れ出し回避しようが無いと判断した竜駕は七花に詫びながら、何と彼女を覆い隠す状態で廊下に伏せて倒壊の直撃を喰らう。


「これが俺の新しい力『嘘吐きペンギン

』。口にした事が全て『嘘』になる力だよ。尤も、これ生物には効かないんだけどな。」


窓ガラスを直撃し倒れ伏した竜駕を見下ろしながら、左の人差し指に填めた水色のペンギンが刻まれた黒い宝玉が埋め込まれた指輪を誇示するように左手を見せつつ、水色の氷で造られたペンギンの嘴を口に付けた一見間抜けな姿をした鳥海は、魔術型の闇絆の証「嘘吐き人鳥(フォージェリー・フェノメノン)」の「無生物以外の口にした事象を『嘘』にする」能力を明かした。


「っ痛ぅ···人に罪を擦り付ける下衆な真似をするてめぇにお似合いの力だな···!!」


「鏡神···!?頭から···血が···!?」


よろけながら立ち上がる竜駕は、七花が言う様に今の窓ガラスにより頭から流血させた痛々しい状態で、嘘吐き人鳥の能力の詳細を聞き、何の落ち度の無い少女を傷付け、その罪を自分に被せる腹積もりだった下衆野郎(とりうみ)に似合いの能力だと皮肉る。


「強がんなよ。嫌いな女庇って大怪我した挙げ句、俺を倒す力すら無い。いい加減諦めて仲良く殺されろよ!!」


「(確かに···「嘘」で物を壊せる以上、このまま逃げんのは得策じゃねぇし、正面から行って倒せる相手じゃない···!!)」


大怪我により弱まった相手の皮肉なぞ負け惜しみの強がりだと切り捨てる鳥海の言う様に、嘘吐きペンギンの能力で周囲の物を「嘘」により障害物に変えてしまいかねない以上逃走は危険、魔契者では無い自分に出来る事を必死に考える竜駕。


「はぁ···しゃあねぇな···。コイツで何とかするか···!!」


何やら極力使いたくない策なのか、溜め息一つ吐いた竜駕は懐から黒い液体が入った小型のクリアブラックの瓶を取り出し、それを片手で振り始め···


「龍血···喰らいなっっ!!」


「ハッ!何の悪足掻が···!!」


謎の瓶の名であろう「龍血(リュウケツ)」をペギーア目掛けて勢い良く投げ付ける。しかし、今更こんな悪足掻きが通じる筈もなくペギーアが片腕を払っただけで呆気なく割れてしまい鳥海からも嘲笑われる。が···


『熱チチチチッッッッ!!!!!?』


「うわっ···熱ッッ!!!!」


その瞬間、ペギーアの腕に駆けて全身に黒い炎が燃え上がり出すと言う事態が起き、二人は突然の異変に慌て出す。どうやら龍血は、火炎瓶の類いの様だ。


「何よ今の···てか、何であんたそんな物を···!!?」


「今のうちに逃げるぞ!!」


「逃げるって何処に···!!まさか···!?」


「そのまさかだよぉぉぉぉっっっっ!!!!」


「ちょっと待ちなさ···キャアアアアァァァァッッッッ!!!!!!?」


何故火炎瓶の様な危険な薬品を持っていたのか当然の如く疑問に思う七花の言葉を聞き流しながら彼女を再び抱え込み、逃げようとする竜駕。先程彼が考察した通りならば逃げ道は存在しない筈···と思いきや、皮肉にも嘘吐き人鳥の「嘘」によりガラスが無くなり隙間風が吹く外側の窓に身を乗り出した竜駕は何の躊躇いもなく飛び降りると言うトンデモ行為を施行した。


「ほい!!またまた逃げろ~♪」


「(えっ···!!?)」


地上に激しく着地したと同時に直ぐ様先程同様に走り出す竜駕。しかし、普通ならあんな高い場所(3階)から飛び降りて着地すれば足に尋常ならぬ衝撃が走り、歩くどころかまともに立つ事すら出来ない程の痛みで悶絶する物だが、そんな素振りを全く見せず余裕こいて走る竜駕の姿に七花は更なる疑問を感じる。


「ねぇ···あんた···一体何者なの?さっきの火炎瓶だって···どうやって···!!」


「ん?あぁ、あれは俺様の超・絶・発・明!!な代物だよ!!」


「はあぁぁっっ!!?」


竜駕のあまりにも不可思議過ぎる面について尋ねる七花。すると、あの龍血はなんと彼が独自に造り出した発明品であるらしく、それを聞いた七花は思わず声を上げて驚く。


「物凄いっしょ?マジ最っ高っしょ!!?超絶天ぇん才っしょぉぉぉぉっっっっ!!?」


そんな七花の反応に構わず竜駕は、何やら三段階に自画自賛する台詞をテンションを上げて叫び出すと言うこれまた意味不明な事をやらかす。


「馬鹿っぽ···!!?」


意味不明な言動に七花が何時もの台詞で罵ろうとした瞬間、何かが刺さった様な鈍い音が聞こえ出し···


「えっ···きゃっっ!!?ちょっと鏡神、どうし···!!?」


それと同時に糸の切れた人形の様に突如倒れ出す竜駕。突然の出来事に動揺しながらも彼の身を案じる七花だが、ある物を見て絶句する···。


「嘘でしょ···鏡神···鏡神!!?」


彼の背中に何らかの刺し傷があり、そこから溢れる様に流れ出す真っ赤な血を···。


「このクソがぁ···手間取らせやがってよぉ···!!」


竜駕を揺さぶる七花を余所に、何時の間にかペギーアと共に追い付き睨み付けながら右掌を翳している鳥海の姿がそこにある事から、フリーズエッジを放ち重傷を負わせたのは彼である事は明白だ。


「たかだか人間風情が···俺達選ばれし魔契者に楯突いた事をじっくり後悔させてやるよ!!ペギーア!!」


『良いよ~。アイスの追加お願い~。』


魔契者である自分より劣る人間である竜駕に翻弄された事に憤慨する鳥海は、リンキュバスであるペギーアに竜駕と七花を甚振った後に殺す様命じると言う、この期に及んで自分の手を汚さないクズっぷりを醸し出す。ペギーアの方は褒美(アイス)の為なら殺人をも無自覚に行うと言う、これまでのリンキュバス以上の質の悪さを示している。


「···っくっ···!!」


「鏡神!!無理に立っちゃ駄目よ!!」


これ程の重傷を負っているにも関わらず、満身創痍ながらも尚立ち上がり守るかの様に七花の前に立つ竜駕。そんな彼を思わず支える七花だが···


「井原···今から龍血をまた彼奴にぶつかけて怯ませる···その隙に···お前だけでも···逃げろ···!!」


「は···何言ってんのよ···!?」


「マジでヤバくなってて···こうして立ってんのもやっとで···お前守って逃げんのも無理そうだから···お前だけ逃げな···!!」


やはり先程の頭の怪我と今の魔撃で体力の限界に近付きつつあり、最早七花を抱えながら逃げるのは不可能だと判断した竜駕は、自分が再び龍血でペギーアを怯ませるている隙に、彼女1人で逃げるよう促す。


「馬鹿言ってんじゃないわよ···あんた自分で何言ってるのか解ってんの!?大体あんた1人で何が出来るのよ!!あたしは嫌よ···他人を見捨てて自分だけ逃げるなんて絶対嫌!!」


当然そんな案を呑める筈が無い七花は、それに猛反対して竜駕に怒鳴る。その無謀な案は、彼の命が確実に失われるからだ。


「···四の五のぬかすしてんじゃねぇ···よっ···!!」


「きゃっ!!?」


頑として逃げようとしない七花に痺れを切らした竜駕は、彼女を勢い良く突き飛ばし懐から龍血を取り出し片手でそれを振り···


「最後の龍血···喰らいやがれぇぇっっ!!」


残り1本···最後の龍血を残りの力を振り絞ってペギーアと鳥海目掛けて投げ付け、激しい黒い炎を発生させた。


「早く···逃げ···ろ···!!」


「でもあんたは···!!」







「早く逃げろ!!七花ぁぁぁぁっっっっ!!!!」


「!!!!」


未だに逃げようとしない七花に業を煮やした竜駕は、龍血を投げて力尽きているにも関わらず、初めて彼女の名を呼び、大声で逃げるよう叫んだ。


『熱いな~···アイス溶かしちゃいそうな物を持ってる君、頭に来ちゃったよ···!!』


「この程度の炎で俺達を焼き殺せると思ってたのか?残念でした~。」


黒い炎が止んだ先に見える物···龍血で自分達を倒すつもりでいた竜駕を嘲笑う鳥海と、身体を焦がしながらも自分の好物(アイス)を台無しにしかねない龍血(きけんぶつ)を持つ竜駕に怒りを覚えたペギーアの姿がそこにあった。


「リンキュバス···パネェ···な···。」


龍血の炎を諸に受けながらも身体に火傷を負った程度のダメージしか喰らわなかったペギーアを目にした竜駕は、その頑丈さに感嘆の声を上げながら限界を達したのか、崩れる様に膝を付いて気を失う。


「鏡神···鏡神!!ねぇ···起きなさいよ···!!起きて···起きてよっっ!!」


『コイツはペギーアが殺してあげるよ···!!』


悲痛な声を上げながら竜駕の身体を揺さぶって意識を取り戻そうとする七花だが目を覚ます気配はなく、そんな事を御構い無しにペギーアは 直接手を下すべく2人にじりじりと近付く。


「仲良く地獄に送ってやるよ···ペギーア!!」


『うん、良いよ~。じゃ···さよなら~♪』


魔力を籠めた右手の爪を勢い良く振り下ろすペギーア。魔契者やリンキュバスならまだしも、たかだか人間2匹ならばそれで充分···。







「起きてよ···起きてよ!!竜駕ぁぁぁぁっっっっ!!」


守る様に竜駕の身を抱きながら彼女もまた、初めて彼の名を悲痛な声で叫ぶ七花。振り下ろされた魔の手により若き命が奪われてしまう···!!




「『ストリームサークルッッ!!』」




『···ッッ!!···って···あ···れ···!!?』


···その直前に何処からか投擲された女帝鮫の帰還によるストリームサークルの一撃によりペギーアは呆気なく胴体を真っ二つに斬り裂かれ、死を直前にしても尚暢気な口調のまま爆発した。


「遅れて済まなかった···大丈夫か井原さん!?」


間一髪で危機を救った流は女帝鮫の帰還から元の姿に戻った深波と共に、七花に遅れた事を詫びながら彼女の身を案じながら駆け寄る。


「あ···あ···あんた達遅過ぎるのよ!!危うく死ぬ所だったんだからね!!」


「命の恩人に向かって何よその口の利き方!!」


どうにか助かった事で茫然としていた七花だが、流達の姿を見て我に返ると同時に本当は礼を言いたかったの筈がどうにも言えず、彼等の到着の遅滞ぶりを責めると言う天の邪鬼な態度で接してしまい、深波を怒らせてしまう。


「そんな···ペギーアが···!!お前は何処まで俺の邪魔をしたら気が済むんだよ!!お前さえ···お前達さえ居なかったら···ヘブッ!!?ヘルンッ!!?」


「今のはあたしと鏡神の分よ···!!」


そんな何時ものやり取りをしている中、ペギーアをあっさり失われた事に憤慨する鳥海は、この期に及んで七花と竜駕を責め立てる。···が、七花から竜駕の分を含めた頬が凹む程激しい2発のビンタを喰らい、地に沈んだ。


「!!そうだわ···!!鏡神···鏡神が酷い怪我をしてて···!!あれ···彼奴は何処···!?」


竜駕の名を出してふと気付いた七花は、自分を守り抜いて重傷を負った彼の方を振り向くが、何時の間にか姿を眩ましていた。


「鏡神も来てたのか?」


「落ち着きが無いわね···あの変態がどうかした?」


「実は······」


七花は、竜駕もその場に居た事を初めて知った流と深波に事の経緯を話す。「自分」の破廉恥な画像を流した真犯人が鳥海でありリンキュバスの魔契者であった事を、そして···


「彼奴がそんな事を···!!」


「有り得ないわ。私達は普通の武器で殺すどころか、怪我とかするなんて事は起きないから。それが出来る武器を造るとなったら、それこそリンキュバスと関わらないと出来ないし···!!」


尋常ならぬ身体能力、人間の造った武器で殺傷不可能なリンキュバスに火傷を負わせる龍血(かえんびん)の精製技術を持つ竜駕のただならぬ素性に流は驚愕するが、深波はただの人間である彼にそんな事は出来ない為、逆を言えばリンキュバスに関与すれば可能であると考える。


「そう言えば彼奴、矢鱈とリンキュバスの情報にも詳しすぎてたし···!!」


深波の意見を聞いた流は、これまで起きたリンキュバス事件の情報も竜駕から聞いていた事に気付き、その内容があまりにも的確過ぎた事から一つの答えが閃いた。


「(まさか彼奴が···!!いや、そんな筈は無い···そんな事は···!!)」


今挙げた数々の情報や事実から、流は竜駕が「ある存在」の正体なのでは?と推測しかけるが、普段の言動は兎も角、今回の様に七花を命懸けで守った事からその推測を否定した。




『······。』


その様子を校舎の屋上で見下ろしていた···流がその正体が竜駕なのではと疑いかけた存在である黒凰は、特に彼等に襲い掛かる訳でも無く背中から透明色の翼を広げて飛び去って行く。どうやら七花への電話主は彼(?)の様だ。




ー津凪高校



「聞いたか?あの画像、合成した奴らしくてバラまいたのは鏡神じゃなくてC組の鳥海って奴なんだとよ。」


「罪着せんには最適だけど、やり方がマジ最低だな···えっ···!!?」


「何だよ、変な声出して···えっ···!!?」


翌日、男子生徒2人があの画像は合成された物でありその真犯人が鳥海であるが判明した事を話し合っている事から、竜駕と七花の潔白が証明された様だ。そんな会話の途中、通りすがる生徒の姿を目にした彼等は絶句した。


「······。」


彼等に少し目をやるも直ぐに立ち去って行ったのは、今話題になっていた竜駕だった。だが、やや暗い表情をしており、額にかけて頭部に包帯を巻き、頬には白い絆創膏を貼った痛々しい姿で廊下を歩く。


「鏡神。」


「ん?何だお前かよ。」


そんな何時ものらしくない状態の竜駕の後ろから、自分同様の被害者である七花が声を掛けてきた。


「ちょっと顔貸して。」


「は?何言って···って、おい!!?」


「いいからこっち来て···!!」


本日特にまだ何かをやらかした訳では無い竜駕を、真剣な表情で彼の手を引いた七花は強引に何処かへ連れ出した。


「あ、おはよう2人共。大丈夫だったか?疑いが晴れたとは言えあんな目に逢ってさぞ嫌な気持ちだったろうな···。まだ何か変なちょっかい掛ける奴がいたら魔霧先生や俺にでも···!!」


「ウザい、煩い、鬱陶しい。」


「ガビーーン!!」


そこへ今回の事件で傷付いたであろう2人に気に掛けて来た闇影だが、七花が通り際に吐き捨てた三拍子の罵倒に古臭い台詞でショックを受けて「orz」の体勢で落ち込む。




ー屋上



「何だよ!一体何のつも···!!」


「······!!」


突然強引に連れ出されて不機嫌な態度を顕にする竜駕だが、真剣さと悲しげな眼差しで自分を見つめる七花の表情に目を留める。


「あんた···水始達が来た時、何処に行ったのよ···!!」


「え······あぁ、あれね。そりゃお前あれだよ······巡先生クラスのエロい身体した全裸に白衣を着ただけの巨乳美女のお医者がいる病院···ヘブッ!!?」


「真面目に答えて···!!」


突然あの場から消えた理由を尋ねられた竜駕は、彼らしく尚且つ「そんな奴おらんやろ~」的な適当な返事をするが、七花からビンタを喰らい同じ質問を尋ねられる。


「いや、あの···だから···よ?」


何故かその理由を答えずしどろもどろに良い淀む竜駕に、七花は彼に優しく抱き着き···


「何か理由があるから言えないなら別に良いけど、これだけは約束して。もうあんな無茶な真似は絶対にしないで。」


昨夜の様な命を落としかねない無茶なやり方をしない様忠告する。自分の命を救う為とは言え、それで彼の命が失われては何の意味も無いのだから。


「···解ったよ。ちと無茶し過ぎたしな。」


「信用出来ないわね。あんたの事だからその場限りの出任せ言ってまたやりかねないから。」


「じゃあどうすんだよ···!?」


流石に今回の自分の動きは命が危うい物だと反省し約束する竜駕だが、当の七花は口約束程度では完全に信用出来ないらしく···







「あんたを一生監視する為に···一緒に居て貰う···から···///」







「···What···!!?」


顔を赤めながら竜駕を監視するべく一緒に居る···言い換えれば「あたしが付き合ってあげる」と言う一種の告白をブチかました。あまりの唐突な展開に目を点にして英語で話す竜駕。


「か、勘違いしないでよねっ!!///これは今回の事だけじゃなくて、あんたがまたアホみたいな真似したり女子達に変な事やらかすのを未然に防ぐ為の···不本意な処置に過ぎないんだから!!///他意は無いんだからねっ!!///」


そんな竜駕を余所に七花は、顔をトマトの如く真っ赤にしながら「あくまで今回の事も含め普段の女子への破廉恥な行為を未然に防ぐ為の監視」だと、「他意は無い」と念を押し、テンプレ通りの台詞を喚きながら屋上を後にする。が···


「何突っ立ってんのよ。早く来なさいよ···竜駕!///」


「えぇっ!!?まだ何も言っても動いても無いのに何この理不尽···!!?···って、あれ?今···また名前を呼んで···!?」


どうやら今より「監視(おつきあい)」が始まっているらしく、状況を飲み込みきれず未だに突っ立ってる彼に付いてくる様理不尽な命令をする彼女にツッコミを入れる竜駕だが、その際またしても名字(かがみ)では無く名前(りゅうが)で呼んだ事に反応するも···


「言っとくけど2人だけの時だけだから、それ以外の場所で呼んだら即・殺・斬!!だからね!!早く来なさいよ竜駕!!」


「俺ぁ犬じゃねぇっての···はいはい解りましたよ···七花。」


どうやら名前の呼び合いは2人だけのみ限定の様であり、自分達以外の者がいる時に呼ぶと「即・殺・斬!!」の刑だと忠告し再び名を呼ぶ七花に、竜駕は最早ツッコむのが面倒になったのか、小さく笑みを浮かべて同様に彼女の名を呼びながら適当に返事しつつ駆け寄った···。

鏡神だ。(前書きの答え合わせ)


読んでお解りの通り、今回のメインは説明不要の変態ヤローこと竜駕と七花でございます。


冒頭から第三勢力を匂わせといて、リア充共にセコイ嫌がらせをする「チーム龍武神(りゅうぶしん)」なる組織を結成、くっだらな過ぎる制裁(いやがらせ)を下すと言う暴挙に、読者様の殆どが「やると思った」と頭を過った事でしょう(^_^;)


もしこれが年末なら「シャケ」にしようかと思いましたが執筆が遅れに遅れて「葉桜」になってしまいました。(知らねーよ)


これを七花にチクられての逆恨みにより合成画像をバラまく卑劣な真似を···と思いきや犯人は別におり、寧ろそんなコソコソした真似を嫌い、例え生徒会に9.5割殺しになろうとも「セイセイでドウドウ」とやるのが竜駕のポリシーです。ちょっと何言ってるか解んない?それが正解です(^_^;)


そのポリシーを平気で破る真犯人の鳥海もまた魔契者であり、生物以外の対象を条件に口にした事象が全て「嘘」に変える凶悪な能力を持つ闇絆の証「嘘吐き人鳥(フォージェリー・フェノメノン)」、来月あたりだと大暴れする力だと個人的に思ってます。

因みに「人鳥」と書いてペンギンと呼びます。



その魔契約したリンキュバス、基本属性最後の登場となる氷属性持ちのペギーア・アイスキャム。これまでのリンキュバスと違い暢気な態度の持ち主ですが、好物のアイスキャンディーの為なら無自覚に人を平気で殺すと言う、これまで以上に危なすぎる性格のリンキュバスです。


それをただの人間である筈の竜駕は、人間の造る武器じゃ殺傷どころか怪我すらしないリンキュバスに火傷を負わす火炎瓶「龍血(リュウケツ)」を精製、所持しており、魔契者を思わせる身体能力で上手く立ち回る大活躍ぶり!!


龍血を使うシーンは察しの通り、同じ名前のエビフライ頭の筋肉バカのパク···オマージュした物です。設定が前に書いた竜駕と似通い過ぎてて吃驚しました(^_^;)


果たしてこの変態が黒凰なのか、はたまた···!?


それに惚れたのか、ツンデレに接しながら監視と言う名目で付き合う事にした七花。これは意外過ぎる、ふざけんな、メインキャラのエロシーン出せやとお怒りになる方もいらっしゃいますが、フラグ自体既に出してましたので悪しからずm(_ _)m


次回はお待ちかね(?)、今回ほぼ出番無しの闇影が大きく絡みます。この男が出てきて只で済む筈が無い···!!どんなストーリーになるかお楽しみに!!ノシ

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