LINK14 一匹のはぐれ蛇×ヘビー級の事情=悪魔ロッカーは許さない
今回は詞音がメインのお話です。
相変わらずのエロ描写も多少ありながらも、サブタイトルからしてやや不穏な雰囲気も···
そして今回、以前書いてた作品からのキャラを復活させて登場致します。
かーなーり強引に話を進めた感たっぷりですが、どうぞ御覧下さい。
「(んんっ···何か···下の辺りが凄い···ムズムズして···徐々に···それがハードに感···じ···!!)うぅっっ···はっ···!!?///」
明朝5時と未だ殆どの者が眠っている時間帯に就寝中の詞音は、突然下半身辺りに妙な感覚が伝わるのを感じ、それが徐々に強まり、最後に自分の中からナニカが勢い良く抜け出た快感と同時に上半身を起こし、それと同時にその原因を目の当たりにした···。
「ペロ···えへへ···おはよ、詞音♪」
「はぁ···やっぱりか···。」
詞音は眼前にいる妙な感覚の原因である···寝間着と下着を脱がしスッポンポンとなった自分の「分身」を両手で優しく握り、顔は「分身」から勢い良く出た「白い涙」で汚れながら可愛らしい舌を出し、可愛らしい笑顔で朝の挨拶をする全裸状態の奏を見て、溜め息を吐きながら理解した。
「奏、朝からアレはマジで止めてくれ。勢い余って腰の骨···いや、下手すれば脊髄が不吉なサウンドと共に折れて一生動けなくなるかもしれねぇんだからよ···。」
「大丈夫。もしそうなったら責任取って奏が一生面倒見てあげるから安心して♪寧ろそっちの方が···ふふふ···♪」
「さらっとデンジャラスな事を笑いながら言うなよ!?」
「冗談だよ♪···半分は。」
「半分本気かいっ!!」
登校中、詞音は朝の出来事について自重する様奏に注意するが、当の彼女は反省するどころか、万が一それが行き過ぎた結果詞音が再起不能になったとしても自分が一生介護と言う名の飼育すると、不気味に笑いながら笑えない冗談を飛ばす始末だった。
「ん···誰だ?流からか。はい、もしもし?」
詞音のブレザーのポケットの中にあるスマホから着信音が鳴り出した為、流だと確認すると同時に通話に出た。
【朝から済まないな詞音。悪いけど、今日、俺と深波は休むから明日授業のノートを取らせてくれないか?】
「それは構わないけど···珍しいな、お前が学校休むなんて···まさか仮病じゃないだろうな?」
流からの用事···深波と共に本日学校を欠席する為今日の授業のノートの複写の頼みだった。それに了承するも、詞音は普段から真面目な流が当日欠席する事を珍しく思い、仮病では無いのかとからかい半分で問い掛ける。
【んな訳無いだろ。実はな···煌先生と朝の特訓をする条件として、今日一日中深波の言う事を聞く事になって···「な~がれ♪今日は一日お互いに産まれたままでいるって約束でしょ?ほら、脱いで脱いで♪」うっ···うわっっ!!!?や···止めろ!!!!///分かった!!分かったから下から脱がすのは止め···うっ···うわああぁぁっっっっ!!!?///】
実は、今日の明朝にて闇影と対リンキュバスとの戦いに備えた戦闘訓練を行う際、当初は行く気ゼロだった深波を「彼女の望みを何でも聞く」事を条件に説得した為だと詞音のからかいに軽くツッコみながら理由を話していると、電話の向こうで深波に抱き着かれ、「一日中互いに全裸状態で過ごす」と言うトンデモ条件を守らせるべく衣服を無理矢理脱がして始めた為、絶叫と共に通話が切れた。
「流ェェッッ!!!!?一体海噛さんにナニをヤられたんだァァッッ!!!!?///」
詳しい内容は不明だが、今この瞬間に文字通り深波の魔の手により流の身にナニやらトンデモない事が起きている事を瞬時に理解した詞音は、通話切れのスマホに向かって無意味にシャウトする。
「やっぱり深波お姉ちゃんは凄いなぁ···ねぇ詞音、奏達も二人と同じステージに勃と♪」
「字が違うから!!何のステージ!!?そのステージでナニやらす気!?///」
一方奏は、やはりリンキュバスである為か電話越しの深波が流にナニをヤラかしたのかを瞬時に理解し、自分達も彼等と同じ事をしようと提案するも、詞音は顔を赤くしながら却下の意をシャウトする。
ー3年D組
「それじゃあ、昨日皆に渡した進路希望調査書を提出して下さい。」
「進路つったってなぁ···。」
「急に将来なんて決められないわ···。」
「気持ちは解らなくは無いが、別に今すぐ決めろなんて言わないよ。ただ、進学するにしても就職するにしても皆がどういう進路を目指しているのかを知らないと相談の仕様も無いだろ?」
流と深波が本日実質ズル休みする遠因となった闇影は、生徒達に昨日渡した進路希望調査書を提出する様呼び掛ける。一部の生徒の中に、昨日中に自分の将来を決められないとぼやきながら提出している者がいる様に、簡単に決定出来る物では無いと思うのも無理はない。闇影はそんな彼等に、例え現段階でも自分達の希望の進路を知らない事には、相談も何も出来ないと諭しながら回収した調査書を纏める。
「ん···一枚足りないな?あ、お~い、起きろ起きろ。」
「···んだよ、みっさん···?」
「蛇塚、進路希望調査書はどうしたんだ?今日提出だって言った筈だぞ。」
回収した用紙が丁度一枚···つまり一人分足りない事に気付いた闇影は、机に突っ伏して居眠り中の、制服を気崩し左手首に蛇の絵が刻まれた銀色のバングルと何故か包帯を巻いた左腕に、尖らせた金髪が特徴の男子生徒の肩を揺さぶり起こし、進路希望調査書を提出する様呼び掛ける。その生徒···このクラスで唯一の不良生徒である蛇塚尚夜は、起こされて不機嫌そうな表情のままその鋭い眼を擦る。
「んん···?あ~いいよそれ、俺別にやりたい事ねぇからよ。」
「···なら、何か趣味はあるか?それを元にしても良いからさ。」
「···それもねぇよ···!!」
進路希望調査書の提出について思い出したかの様に相槌を打つ尚夜は、進学も就職も希望は無い為、適当にする様闇影にあしらう。それならばと闇影は、尚夜の持つ趣味を聞き、そこから相談へ持っていこうと提案する。それを聞いた尚夜は、何故か少し顔を顰めながら趣味すら無いと答える。
「いや···流石に趣味は無いなんて事は無いだろ?進学就職抜きにして、人間誰でも趣味の一つや二つくらいはある···!!「しつけぇんだよっっ!!」」
「蛇塚···。」
「余計なお節介なんだよ!!大体よ、仮に進路や仕事が望み通りになったからってな、それで皆が皆万々歳な人生を送れる保証はあんのかよ!!?」
「それは···!!」
闇影のあまりのしつこさに、尚夜は勢い良く立ち上がり机を蹴飛ばしながら声を荒げて彼に食って掛かり、更には希望通りの進路に進めた生徒がこの先ずっと幸福でいられるのか疑問を突き付ける。その疑問に言葉が詰まる闇影。確かに自分達教師は生徒の希望する進路へ進ませる為の相談は出来ても、希望が叶った後の事までは保証出来ないからだ。
「···兎に角、俺は進路希望なんて無ぇから。」
「あ、おい待て蛇塚!!話は終わってな···!!はぁ···。」
少し落ち着きを取り戻した尚夜は、進路希望調査書の提出はせず、闇影が呼び止めるのを無視してそのまま退室してしまう。
「ちっ···やな事思い出しちまったな···!!」
退室後、そのまま授業をサボった尚夜は、先程の口論で何やら忌々しい過去を思い返し舌打ちしながら廊下をとぼとぼと歩いていると···
「蛇塚先輩···蛇塚先輩じゃないッスか!!お久し振りです!!」
「ん?お前···もしかして弾麻か?中学以来じゃん!!」
同じく廊下を歩いていた詞音と奏に出会い、少し嬉しそうな顔で挨拶を交わす。実は詞音と尚夜は中学校からの深い付き合いのある仲であり、二人の口振りからどうやら今日こうして対面するのは久々の様だ。
「まさかこの学校に通ってたなんて···言ってくれたら良かったのに···!!」
「色々事情があって···ん?お前の隣に引っ付いてるそいつ誰?」
「······。」
「あぁ、この子は奏って子で訳あってウチで預かって一緒に住んでるんです。」
「わ···訳あって一緒に住んでるって···!!弾麻···お前まさかあのガキに何かやらかしたとかの『訳』じゃないだろうな···!?」
「なっ···///ご、誤解ッスよ···!!あまり詳しくは言えないけど、兎に角色々訳あるんです···!!」
詞音はこの学校にいた事を連絡しなかった事を尚夜に突っ込むが、自分の服の裾を掴みながら後ろに隠れている奏について逆に言及されてしまう。リンキュバスの事を伏せて一緒に住んでいると話す詞音だが、外見が女子小学生にしか見えない奏と住んでいると言う事実に、自分を抱き寄せて「いかがわしい」訳なのかと小声で問い詰める尚夜に対し、詞音はそれを必死に否定する。いかがわしい事をヤられまくってる事実をひた隠しにして。
「ま、ちゃんと面倒見る覚悟があんなら深くは聞かねぇがよ。俺は蛇塚尚夜、宜しくな嬢ちゃん。」
「小森奏です。詞音とは相思相愛の仲で何れは結婚して、ゆくゆくは詞音専用の肉b···「ポォォォォズゥゥゥゥッッッッ!!!!!!!!///」」
詞音がしっかり責任を持てるなら事情に深入りはしない尚夜は、改めて奏と互いに自己紹介をする。···が、此処で奏が勝手に嫁宣言するばかりか詞音の評価がだだ下がりするヤベーイ事まで話そうとしたので、詞音は直ぐ様某時間停止能力っぽい台詞をシャウトしながら彼女の口を塞ぐ。
「お、お、お···面白い冗談をタマに言う子なんスよ!!そ、それより先輩、最近ベースの方はどうですか?」
冷や汗を流しつつ奏の口を塞ぎながら何とか別の話題に反らすべく、ベースの話を持ち出す詞音。すると···
「······!!」
「先輩···?」
「ん···あ、あぁ···まぁ、ぼちぼちって···とこ···か···な?わり、ちと便所行ってくるから。じゃな。」
ベースと言う単語を耳にした瞬間、眉を顰めながら何故か険しい表情をして沈黙する尚夜は、詞音に呼び掛けられ我に返りぎこちなく返事し、便所へ向かうべくそのまま立ち去っていく。
「一体、どうしたんだ···?」
尚夜の不自然な態度に首を傾げて疑問に感じる詞音。口を塞がれた奏が舐めまくったせいで唾液まみれになった掌が気にならないくらい。
ー弾麻家
「···この恐い顔した台風頭が詞音?」
「百歩譲って恐い顔は兎も角、台風頭って···まぁ、間違って無いけど。んで、その隣にいるのが今日会った蛇塚先輩だよ。」
その日の夜、詞音はアルバムを取り出し、中学生時代の自分と尚夜の写真を奏に見せる。しかし、鋭くなった目付きで睨み付ける様な顔をした右頭部の髪が渦巻き状になったコーンロウの髪形をした自分を「恐い顔した台風頭」だと揶揄する奏に少し眉を顰めながら肯定しつつ、隣にいる白い稲妻の様なメッシュを入れたこれまた恐い顔で不敵に笑う尚夜を差す。
「その頃の俺達二人は誰ともつるまず、ワル相手にかなりバイオレンスしまくって『風雷の悪魔』だって恐れられてたなぁ。」
当時の詞音は現在とは違い、尚夜とコンビで幾多の自分達と同類の不良相手に喧嘩・喧嘩・喧嘩に明け暮れ、その界隈では髪形も相俟って「風雷の悪魔」だと畏怖されていたのだと語る。
「今ではどうしてギターをやるようになったの?」
「ん~そうだな。喧嘩ばかりで飽々してたから気紛れで『何か面白い事しよっか』と思って、学校の音楽室にあるギター触って試しに弾いてたらさ、これがすげぇ面白く楽しくなって、自前でギター買って練習したりして、ベースを買った先輩とバンド組んで一緒に弾いたりして、喧嘩してる時より楽しく感じたんだよ。」
詞音がギターに目覚めた理由は、意外にも喧嘩の日々に飽き始め、その暇潰しの一環として触れたのだと語る詞音。当初は碌に弾けなかったのだが、弾けば弾く程それに魅力を感じ、同じくベースに惹かれた尚夜と共に「JUNDOU」と言うバンドを組んで演奏し、何時しかギタリストを志すようになったのだと嬉しそうに話す。
「でも、三年前···先輩が中学を卒業した頃辺りから今日まで音信不通だったんだよ。同じ学校にいた事すら今日始めて知ったしな。」
しかし、尚夜が中学を卒業後から今日までの三年間、自分と同じ高校に通っていた事すら始めて知る程音信不通であった事を少し神妙な顔をしながら語る詞音。
「(そういえばベースの話をした途端、何か様子が変だったよな。この三年の間、先輩に何があったんだ···!?)」
詞音は天を仰ぎながら、日中の尚夜の様子について物思いに耽る。奏がズボンのファスナーから自分の「分身」を放り出してナニかをヤらかそうとしてるのに気付き、激しい攻防戦を繰り出すのは数分後の話だったとか。
ーマンション真桜・1027号室
ー仮に進路や仕事が望み通りになったからってな、それで皆が皆万々歳な人生を送れる保証はあんのかよ !!?
「はぁ···彼奴、夢を持つ事に何か嫌な思い出でもあったのかなぁ···。」
闇影は自室のデスクに座り、両手を組んで両肘を付きながら日中尚夜が言い放った言葉を思い返し、溜め息を吐いて彼が進路希望を持ちたがらない理由について考え込み、それを知り、彼に出来る事をも考える何時ものお節介振りを発揮している。
「失礼します。兄さん、珈琲をお持ちしました。」
「おぉ、諸葉。ありがと。」
「どうされました?そんなに難しい顔をして。」
「ん?ああ、俺が受け持つ生徒の進路についてちょっと···ね。」
其処へ部屋のドアをノックして珈琲の入ったカップを持って入室した諸葉は、それを彼のデスクに置き、闇影の表情から何を思い悩んでいたのかを尋ね、彼から生徒の進路についてだと聞く。
「進路ですか···兄さん、私も決まった進路があるので御相談に乗って頂けませんか?」
「···どんな進路なんだ?」
「その進路はただ一つ···兄さんのお嫁さんです♪」
「あ···ははは。そう···なんだ···。」
進路の話となり、諸葉はこの場を借りて自分の進路についての相談話を闇影に持ち掛ける。その内容は闇影が予想していた通り、「自分の嫁」だと満面の笑みを浮かべてハッキリ答える諸葉に苦笑いをし···
「(ですよね~。)」
何故か「画面」目線で自分の予想通りだと何者かに内心ツッコむ。その隙に、自分の進路···否、野望を実現せんと真横にあるベッドへ自分を引き摺り込もうとする諸葉に気付き、夜の···此処から先は以下省略。
「何省略してんだ!!これ俺どうなるんだよぉぉぉぉっっっっ!!!?///」
何者かにツッコミをシャウトする闇影だが、気にしない気にしない。
「♪~♪~♪」
深夜1時半頃、バイクに乗って走る一人の男性は鼻歌混じりで自宅に向かって帰宅する道中···
「ん?な···何だ何だ!!!?どうなってるんだ!!?」
彼の乗っているバイクが突然左右に激しく揺れ出して反対車線に移動し、ガリガリガリと何やら妙な異音が鳴り出す異常が起き始め、男性が激しく動揺していると···
「うっ···うわああああぁぁぁぁっっっ!!!!?」
反対車線からクラクションを鳴らしながらライトを照らす大型トラックが此方に向かって走るが、突然のバイクの異常により激しく動揺した男性は上手く対処出来ずそのまま正面衝突してしまう。
『······。』
「ふん···。」
その様子を事故現場から遠く離れた場所に立った電柱に隠れて目撃している何者かは、鼻で笑いながらその場から立ち去っていく。その上空を飛び去っていく、瞳を怪しく光らせた謎の存在と共に···。
ー津凪高校・1年B組
「~~~~ッッ······!!」
朝から机に座りながら、何故か眉を顰めて歯を食いしばり、不機嫌な表情を浮かべている詞音。その訳は···
「♪~♪~♪」
「(やっぱり「アレ」は逆効果なんだよな···くそったれぇぇっっ···!!)」
それとは逆に隣の席にいるニコニコとした笑顔を浮かべる奏にあった。実は昨夜の夜の攻防戦の最中、尚夜について思い悩み、多少苛ついていた事もあって思わず「反撃」したのだが、奏にとっては願ったり叶ったりの行動の為、逆に喜ばせ、より「締め付けられて絞り取られる」結果となってしまったのだ。ナニを締め付けられ絞り取られたのかって?それは知らない方が良いとお答えします。
「朝から何仏頂面してんだよ?奏ちゃんとヤリまくってる癖によぉ···!!」
「ほっとけ···それより、何か用か···!?」
「昨日の夜、交通事故が起きた事は知ってるよな?」
「ああ、ニュースで見たよ。確かバイクのタイヤが突然イカれて、トラックとぶつかって運転手が死んだって事故だろ。それがどうしたんだ?」
そんな彼に軽く嫌味をぶつけながら現れた竜駕は、昨夜に発生したあのバイク事故について話し出す。タイヤに何らかの異常が起きたのが原因であり、バイクの運転手は死亡したとの事だ。
「そのタイヤのイカれ具合がよ···破裂とかじゃなくて、まるで『腐った』かの様な感じだったんだとよ、それも車輪ごと。おまけにタイヤも数日前に交換したばっか···これってもう『アレ』だろ。」
「リンキュバスか···!!」
タイヤは数日前に交換済みであるにも関わらず破裂ではなく、車輪ごと「腐食」したかの様な通常では有り得ない異常が原因だと聞き、この事故···否、事件はリンキュバス絡みだと考える詞音。
「後な、態々お前に伝えたのには理由があってな···。」
確かにリンキュバス絡みならば魔契者である詞音に伝えるのは間違っていないが、普段なら流や深波に伝える頻度が高い竜駕が態々彼に話したのには、本日も二人が欠席しているだけでは無く、更なる理由があっての事。
「実はな····」
「······ッッ!!」
「詞音···!?」
その理由を耳にした詞音は、先程までの不機嫌なそれとは違って何故か険しい表情に変わり出す···。
「······。」
「ねぇ···詞音···竜駕お兄ちゃんとお話ししてから喋らなくなったけどどうした···の···!?」
「別に···!!」
その放課後の帰り道、竜駕との会話後から今まで口を閉ざしたままの詞音を見て不安に思った奏は、覗き込むように話し掛けるが、険しい表情で素っ気無く返事する彼を見てより不安を募らせる。
ー実はな···この事件は3年も前から続いててな···被害者は皆、音楽関係の仕事に就いてたり、音楽専門の学校に通ってたりしてたらしくてな。今回みたいな死亡事故や、辛うじて生きてても中には音楽生命を絶たれてちまった被害者もいてな、だからお前も···って、おい、どうしたんだ詞音?
「(3年間、音楽に関わる人間が皆リンキュバスのせいで殺されたり、音楽生命を絶たれている···3年···それが本当なら···!!)」
「被害者の共通点が自分と同じく音楽に深く関わる者」、「今回と同様の事件が3年間も起きていた」、と竜駕の言葉を思い返す詞音は、これ等の情報からある推測が頭に浮かぼうとした時···
「···ッッ···詞音!避けて!!」
『スパイラルフォール!!』
「何···うわああぁぁっっ!!?」
何者かの殺気を察知した奏の叫びに気付いた詞音は、上空から中型の緑色の激しい嵐が頭上から襲い掛かって来た事に気付き、飛び込む様に慌てて回避した。
『あら、今の魔撃を避けれるって事は···貴方も魔契者かしら?』
「リンキュバス···!!」
奏に呼び掛けられたとは言え、人間である詞音が今の中級魔撃・スパイラルフォールを咄嗟に回避した事から彼を魔契者なのかを尋ねたのは、黒い全身に括れたスタイルが良く、禍々しい形をした緑色の「O」のアルファベットの模様が刻まれ、ガスマスクの様な顔をした緑色の鋭い瞳の梟を模したリンキュバス「ロットゥル・スカイロウド」は翼を広げて降り立つ。
「お前があの事故を···3年間も音楽に関わった人達を傷付けた張本人なのか!?」
『御名答、頭の良い子は好きよ♪尤も···今から貴方は死んじゃうけどね···!!』
『詞音を殺そうとしたり···詞音に変な色目を使う奴は···皆···殺す!!』
昨夜の事故や3年間音楽に関わる人間達への襲撃事件の犯人だと詞音に指摘されあっさりと認めたロットゥルは、彼も始末しようと近付くが、その際の発言が「色目を使った」と判断したヴァトゥーラに変化した奏は、睨み付けながら静かに殺意を示す。
『行くよ···詞音!!』
「あぁ···闇絆の証!!絶響蝙蝠!!」
静かに怒るヴァトゥーラの掛け声に促された詞音は、彼女を絶叫蝙蝠に変化、装備して戦闘体勢に入る。
「悪魔リサイタル、開幕だ!!」
『やっぱり魔契者だったのね。そんなギターで私を殺せるなら、殺してみなさい!!』
自分の推測が適中したロットゥルは、詞音の持つ絶叫蝙蝠の形状から大した力では無いと判断し、挑発しながら鋭い爪を構えて襲い掛かる。
「俺のロックを···嘗めてんじゃねぇよ!!」
♪~♪~♪~
『グゥゥッッ···!!?なっ···何よこの音···頭が···割···れる···!!?』
自分の闇絆の証···自分のロックを侮られ怒りを顕にする詞音が奏でる絶響蝙蝠から放つギター音···リンキュバスが苦手とする超音波により、ロットゥルは激しい頭痛に襲われ頭を抱えて苦しみ出す。
「まだまだぁぁっっ!!!!」
『(どうしたんだろう詞音···?何か···今日のギター、あまり楽しくなさそう···。)』
絶叫蝙蝠の超音波は絶え間なく放つべく荒々しく演奏する詞音に、ヴァトゥーラはその様子から普段の様に読んで字の如く「音を楽しむ」心でなく、「何かを憎む」心を感じ取り心配する。
『···ッッ!!詞音!!後ろから何か来るよ!!』
「ああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
自分達の背後からロットゥルとは別の殺気を感じたヴァトゥーラは詞音に呼び掛けるが、普段以上に荒々しく演奏し興奮状態の彼の耳に届かなかった。
『···詞音、ごめん···!!』
「なっ···うおおぉぉぉぉっっっっ!!?」
このままでは危険だと判断したヴァトゥーラは、詞音に詫びながらリンキュバス態に戻り彼を抱え、翼を広げて上空へと飛翔して避難する。
「いきなり何すんだよ奏!!俺の演奏を邪魔してんじゃ···!!」
突然闇絆の証を解除し、自分を上空へ連れ出されて当然驚いた詞音はヴァトゥーラを怒鳴るが、彼女の視線の先にある光景に目を向けると絶句した。何故なら···
『ワッ···グル゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ッッッッ!!!!?』
「犬が···溶けちまってる···!!?」
先程まで自分が居た場所に偶々通り掛かった野良犬が、声にならない悲鳴をあげながら、全身がまるでドロドロと腐ったかの様に徐々に溶け出し、最後には骨をも溶けてなくなり犬だった「それ」は腐り切った液のみが残ると言う凄惨な物だった。
「もし奏が上に引き込んでくれなかった俺も···!!」
「如何かな、生まれ変わった私の力は?」
ヴァトゥーラが咄嗟に自分を上空へ連れ出さなかったあの野良犬の様になっていたのだと詞音が戦慄していると、やんわりとした表情の壮年男性が現れて今の所業は自分の仕業だと得意気に話す。
『ゴメンね店長。あのお子様の判断力は予想外だったわ。』
「構わんよロットゥル。此処で始末すれば同じ事だ。」
現れた男・木嶋はロットゥルの魔契者であり、何故か彼を「店長」と呼ぶロットゥルはお子様···ヴァトゥーラの咄嗟の判断力が想定外だと詫びるが、木嶋は二人を消せば同じだとやんわりと返す。
「魔術型の闇絆の証···!!」
「そう、この『絶望を運ぶ梟』はあらゆる物を腐食させる能力さ。こうやって···ね。」
木嶋は自身の魔術型の闇絆の証「絶望を運ぶ梟」の詳細を説明するべく、指に嵌めた緑色の梟の紋章が刻まれた黒い宝玉が埋め込まれた指輪から光を発し、一本の緑色の梟の羽を具現化させ地面に軽く落とした瞬間、その部分はまるで酸を浴びせたかの様に溶け出した。
「ならあのバイク事故も···!?」
「その通り。尤も、あれは一定の時間が経てば自動的に発動するようにしたがね。」
地上へ降り立ちながら昨夜のバイク事故について言及する詞音の質問に、バイクのタイヤに絶望する梟の力を時限式に発動した物だとペラペラと悪びれもなく木嶋。
「何故聞かれもしない事を態々話したか解るかい?君達は···此処で溶けてなくなってしまうからだよぉぉっっ!!」
木嶋が事件の真相をペラペラと話した理由は、今この場で詞音とヴァトゥーラを腐食させて殺す為だと、やんわりとした表情から一転して狂気に満ちた顔に変貌させながら絶望を運ぶ梟の力で生み出した羽を彼等にダーツの如く投擲する。
「おっと!!当たらなければどうと言う事···!!」
「そうだろうねぇ!!ロットゥル!!」
『私を忘れちゃ駄目♪翠緑の嵐よ、彼の者達に天の裁きを!スパイラルフォール!!』
それを難なく回避する詞音とヴァトゥーラだが、それは織り込み済みだと語りながら何時の間にか上空に飛び立っているロットゥルに呼び掛けると、彼女は先程同様スパイラルフォールを二人の頭上目掛けて放った。
「くそっ···!!」
『詞音!!昨日の夜に覚えた魔撃を使うよ!!』
「···なるへそ。具現せよ、我を守護する優しき風の布!!」
「『ガスティカーテン!!!!』」
上空からの突然の魔撃に動揺する詞音だが、ヴァトゥーラと共に上空に両手を正面に翳し、紺色の風の魔力で構成された正方形のバリアを生み出す防御魔撃・ガスティカーテンにより辛うじて防いだ。因みにこれは、昨夜の夜の攻防戦を経て新たに取得した物である。
「ほう、意外にやるようだね。」
『でも、何時まで持つかしらね?』
「俺を···嘗めるなぁぁっっ!!」
しかしそれでも余裕を崩さない木嶋とロットゥルを相手に、詞音はヴァトゥーラを絶叫蝙蝠に変化させ、睨み付けながら二人に立ち向かっていく。
「うっ···くっ···この···!!」
何処かの廃倉庫の中で、一人の男が何やら苦悶に満ちた悔しげな表情で何かを動かしており、そして···
「クソがぁぁっっ!!はぁ···はぁ···!!」
その男···尚夜は怒りを爆発させながら何かを···赤と銀を基調としたベースを勢い良く放り投げた。端から見れば自分の思い描く演奏が出来ない苛立ちから来た行動だと思うが···
「うわああぁぁっっ!!?」
「···ん?何だ!?」
そんな苛立ちを掻き消すかの様に突然の激しい物音と悲鳴が聞こえた為、尚夜はその原因を探るべく現場の方向へと向かう。無論、ベースも抱えて。
「く···そっ···!!」
あれから立ち向かった詞音だが、木嶋の絶望を運ぶ梟の力を警戒しながらロットゥルの攻撃を回避しながらの戦いは、実質二対一と人数的にも分が悪く、徐々に追い込まれてしまう。
『勢いが良かったのは最初だけみたいね。』
「そう言ってやるなロットゥル。所詮は元不良学生だった彼の力量を考えれば仕方の無い話さ。」
「···何で昔の俺の事を知ってんだよ···!?」
詞音はロットゥルと木嶋の挑発の言葉の中にある「不良学生」と言うワードを耳にし、何故自分の過去について知っているのかを尋ねる。
「弾麻詞音君。君は気付いてない様だが、私は君"達"の事を知ってるんだよ。ずっと前からね···!!」
「君"達"···ずっと前···まさかお前···!!?」
どうやら木嶋は詞音の事を以前から知っていた様である。だが、詞音は「自分達を以前から知っている」と言う発言から先程から抱いていた一つの推測を···最も信じたくない推測が頭に浮かぶ。
「そう、君が慕っていた先輩、相棒である蛇塚尚夜君も犠牲者の一人だったのだよ!!」
「!!!!」
『う···そ···!!?先輩さんも···!!?』
木嶋から告げられた事実···それは3年前の襲撃事件の被害者の中には尚夜も含まれており、それを機にベースが弾けなくなってしまったと言う最悪の事実だった。予想していたとは言えそれを聞かされた詞音は目を見開いて驚き、ヴァトゥーラも信じられず驚愕する。
「······!!」
その現場を物陰から見ていた尚夜は、詞音とヴァトゥーラの素性に気にも留めず、怒りと哀しみが混じった表情で震えた左腕を押さえながらあの日を思い返していた。3年前、何時もの様に詞音と共に演奏した後の帰り道、突然工事中の建物から落下した鉄骨に巻き込まれて重傷を負い、奇跡的に回復し日常生活に支障は無い物の、左腕が複雑骨折した影響で二度とベースが弾けないと言う死刑宣告を下された日を···。
「何で···そんな事を···!!?」
「···私も昔はギターを愛していたんだよ。その才能から有名な音楽の学校に推薦を貰ったくらいにね。だが···それを妬んだ同級生によって二度とギターが弾けない身体になってしまい、推薦も白紙···私の輝かしい音楽家の人生は終わってしまい、今やしがない梟カフェを経営する事になったんだよ···!!」
事件の動機は、木嶋もまた詞音同様にギターを愛し、ギタリストを目指しておりその才覚は有名な音楽学校の推薦が決まるくらいだったが、それに嫉妬した同級生の知人の悪漢達により腕を潰され、ギターが弾けなくなり推薦も白紙と化し、音楽家の道を閉ざされてしまい、今や梟カフェの店長の道を進む事となったと語る。
「それだけならまだ良い···だが、路上ライブをしていた当時の君達二人を見て思ったんだ···『何故私の進みたかった道を私の道を閉ざした奴等と同類の輩が平気で進んでいるんだ』と···!!その時私は決めたのだ!!私の持ちたかった夢を進む者は全てこの手で地獄へ葬り去ろうと!!はははははははは!!!!」
だが、当時は元ワルだった詞音と尚夜が楽しそうにギターやベースを弾いているのを目の当たりにした木嶋は、自分の夢を潰した悪漢達と同類の二人が自分と同じ夢を持つ事に憎しみを抱き、ロットゥルと魔契約し自分の嘗ての夢を持つ、またはそれに携わる者を全て抹殺と言う逆恨みを決意したと高笑いしながら言い放つ。
「···けんな···!!」
「ははは···!!?」
「ふっ···ざけんじゃ···ねぇぇぇぇっっっっ!!!!」
全てを聞いた詞音は怒りを爆発させて叫ぶと同時に、全身から闇の魔力を炎の如く激しく迸らせ、木嶋の耳障りな高笑いを止めさせる。
「ひっ···そ···そんな虚仮脅し、私の力で腐らせてやる!!喰らえっっ!!」
『詞音!!早く避けて!!』
「······ッッ!!」
虚仮脅しだと言いながら明らかに怯えた木嶋は、絶望を運ぶ梟の羽を詞音目掛けて投擲した。しかし、ヴァトゥーラに回避する様呼び掛けられても詞音は微動だにせずただただ木嶋を睨み付けており、羽は直撃···!!
『···えっ···!?』
「···今···何かしたか···!?」
「そ···そ···そんな馬鹿な···何故腐らない···何故私の力が効かないんだぁぁぁぁっっっっ!!!!?」
···する前に詞音の全身を覆う闇の魔力により一瞬で焼失してしまい、ヴァトゥーラは驚き、木嶋は絶望を運ぶ梟の力が届かない事に激しく狼狽する始末だった。
「······!!」
「ひっ···来るな···来るな来るな来るな来るなぁぁぁぁっっっっ!!!!」
無言で近付き始める詞音に激しく怯える木嶋は、黒凰から授かった透明色の羽を指輪の宝玉に突き刺して緑色の光を発し、「羽を一本のみしか具現化出来ない」デメリットを消し、絶望を運ぶ梟の羽を複数本具現化して投擲するが結果は同じであり、それにより魔力が尽きかけてより追い詰められて、錯乱したかの様に周囲のガラクタを乱暴に投げつけてまくるが、それすらも焼失するだけだった。
「なっ···何をしているロットゥル!?早くこいつを殺せ!!殺せぇぇぇぇっっっっ!!!!」
『はっ···そうよ···たかだか人間に遅れなんて···!!』
詞音の迸る闇の魔力に呆けていたロットゥルは木嶋の怒号で我に返り、所詮は人間でしか無いと見下しながら詞音を殺さんと襲撃する。だが、それが行けなかった。
「ウィンド···チャージ···!!」
~♪~♪♪~♪♪~♪~
「ストーム···シャウト···!!」
『ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!?し···まった···私とした事···ガアアアアァァァァッッッッ!!!!?』
詞音は紺色の魔力を籠め、ピックを持った左手で絶響蝙蝠にウィンドチャージし、これまで以上に激しい音楽を奏でながら魔力で作られた紺色の嵐をも放つ必殺技「ストーム・シャウト」により、ロットゥルはまたも彼の闇絆の証を失念、侮ったが為に苦しみながら大爆発を起こして死亡する。
「解除···!!」
「そんな···私の力が···!!?」
戦いを終え、絶響蝙蝠をヴァトゥーラの姿に戻した詞音は、ロットゥルの死亡に伴い絶望を運ぶ梟を失った事に意気消沈する木嶋の方に目を向け···
「ひっ···!!?」
「お前は···お前だけは絶対に許さねぇ···!!」
ロットゥルを倒しても腹の虫が治まらない詞音は、力を失い睨まれて自分に怯える木嶋に近付き、彼の襟首を掴み···
「ひっ···助け···ぶぐぅぅっっ!!?」
怯えながら命乞いする木嶋の言葉に耳を貸さずに、勢い良く彼の顔面を殴り付ける。
「お前のくだんねぇ逆恨みで夢を潰された人達の怒りはこんなモンじゃねぇんだよ!!」
「がっ!!ぶっ!!ベヘェッッ!!?」
木嶋の胸倉を、首を締め付ける程掴む詞音は、彼の所業により自分の様に音楽家としての夢を持つ者達の命を逆恨みで奪った事を糾弾しながら彼に激しい暴行を繰り返す。その度に全身からあの闇の魔力が噴き出している事に気付かず。
「あっ···がっ···!!」
「詞音···もう···止めて···!!」
幾度も殴られ、顔面が大きく腫れて血塗れになり、最早声すら出す気力も無い木嶋。だがそれでも暴行を止めない詞音に奏は、涙を流しながら心を痛めている。
「これで···最期だ···死ネェェェェッッッッ!!!!」
闇の魔力はより激しく迸らせ、眼球の強膜が黒く染まり瞳の色も紺色に変わる程違う「何か」に変貌しつつある詞音だが、そんな事を気にせず木嶋の命を絶たんと、魔力を籠めた拳を振ろうとする···。
「馬鹿···止め···!!」
「止めてぇぇぇぇっっっっ!!!!」
詞音の暴走を見かねた尚夜は直ぐ様彼を止めようとしたが、その前に奏が泣きながら詞音の背中を掴んで制止したのを見て二度隠れた。
「離セ奏ェェッッ!!コイツハ···コイツダケハ俺ガ···!!」
「詞音の···詞音の夢は···自分のギターで皆を楽しませる事なんでしょ!!?奏が好きなのはそう言ってた時や、ギターを楽しく弾いている時の詞音が好き···。でも、今の詞音は真っ黒な気持ちでそいつを殺そうとしている···。そんな詞音···奏は···嫌い···!!」
止められても尚木嶋を殺そうとする詞音だが、自分の夢を楽しく語り、自分の好きな事に全力な彼への愛を語り、憎しみに囚われた今の彼は「嫌い」だと言う奏の言葉に動きを止める。
「先輩さんだって今の詞音を見たら悲しむしこんな事をしても喜ばないよ···。詞音が先輩さんにする事は、先輩さんの分まで全力で音楽を楽しむ事じゃないの···?」
「!!!!」
「だからもう···こんな事はもう止めて···お願いだから···!!」
尚夜の分まで音楽を楽しむ···それが自分が尚夜にしてあげられる事だと奏の言葉に悟った詞音は木嶋を解放し、同時に発していた闇の魔力は鎮まった。
「ごめんな奏···俺、先輩が夢を失くして苦しんでいたのを今までずっと知らなかった事がどうしても悔しくて···許せなくて···だから···!!」
「もう良いの。詞音の真っ黒な気持ちは奏が全部食べてあげるから···ね?」
我に返った詞音は、木嶋やロットゥルの手により尚夜が夢を奪われた事を知らずにいた自分が許せなかったが故の行いだと奏の胸に蹲り、涙ながらに詫びる。奏もそんな詞音の闇は自分が受け止めると頭を撫でながら優しく語る。
「······。」
それを一部始終見ていた尚夜は、現場から立ち去る二人を呼び止める事はせず、何かを決意した顔でその場から立ち去った···。
『ヴァトゥーラ・スカイハウルめ···折角弾麻詞音と貴様が「覚醒」する機会を棒に振るうとは···!!』
別の廃倉庫の屋根に立って先程の戦いを傍観していた黒凰は、闇の魔力を迸らせた詞音を制止し、二人が「覚醒」する機会を棒に振るった奏にのっぺりとした仮面の下で怒りを顕にするが···
『だが···弾麻詞音の事情に免じて、今回だけは見逃してやろう···!!』
本来なら乱入して制裁を加えるつもりだったが、今回の詞音の事情により不問とし、背中からあの透明色の翼を広げて飛翔し、現場から立ち去って行く···。
ー翌朝
「はぁ···結局良い考えが浮かばなかったなぁ···。」
闇影は教室の廊下を歩きながら、尚夜が進路について積極的になる案を昨晩目の下に隈が出来る程あれこれ思考したが、結局良い案が浮かばなかった事に溜め息を吐く。
「みっさん。」
「ん?おぉ···蛇塚か、おはよう。丁度良い、少し話せる···か···って、お、おい、何を···!!?」
そこへ背後から当の尚夜に呼び掛けられた闇影は朝の挨拶をし、彼と進路について話をしようとするが、突然彼が着込んだジャケットのポケットに手を突っ込んで「何か」を入れてその場から無言で立ち去ろうとするので驚く。
「何をして···って、おい!!俺のジャケットはゴミ箱じゃないんだよ!!」
ポケットに入れた「何か」を取り出すと、何とくしゃくしゃに丸めた紙屑だった為、流石の闇影もジャケットを「ゴミ箱」の様に扱う尚夜を呼び止めて怒鳴り付ける。
「バ~カ。よく見ろよ。」
「は?よく見ろって···これは···!!」
立ち止まって悪態を吐きながら紙屑を確認する様促す尚夜に、闇影は首を傾げながら「紙屑」を広げてその内容を目にすると一瞬で歓喜の表情に変わり、その反応を確めた尚夜は再び立ち去る。
「最っっ高の夢じゃないか蛇塚!!お前の希望が叶う様に俺、全力で相談に乗るからな!!応援してるからなぁぁっっ!!」
「ちっ···声がデカいっての···!!つーか良い歳して手を振んなよ···!!」
渡されてからくしゃくしゃに丸めた「紙屑」···内容が書かれた進路希望調査書を片手に、漸く尚夜が進路を見つけた事が相当嬉しかったのか、生徒達に笑われている事に全く気付かない程、大きく手を振り大声で呼び掛ける等、無駄に喜び過ぎた動きをする闇影に尚夜は悪態を吐く。
「あっ···おはようございます先輩···。」
「おはよう、先輩さん。」
「ん···あ···お、おぅ···おはようさん。」
そこへ現れた、少し痩せ細くなり、何故か浮かない顔をしている詞音と奏を見た尚夜は、昨晩目撃した二人の「素性」を思い出し改めて少し困惑するも、それをおくびにも出さず朝の挨拶を交わした。因みに詞音が痩せ細くなっているのは、昨晩奏に「慰めて」もらったからであり、浮かない顔の原因は···
「あの···先輩···!!」
「どした?」
「その···すいませんでした!!俺···先輩の気持ちを考えずに···その···腕の事を知らないでベースの話をして···!!」
浮かない顔をしていた詞音は突然、尚夜に向かって昨日の戦いの中で木嶋の口から彼がベースが弾けなくなった事を聞かされるまで知らずに、その話題に触れてしまった事を頭を深々と下げて謝罪をした。
「···え?は?何?腕の事を···あぁあぁ、その事か。そんな気にすんなよ。お前に余計な心配を掛けたくなくて俺が言わなかっただけで知らなかったのは当たり前だしさ。」
後輩(詞音)からの突然の謝罪に一時首を傾げる尚夜だが、直ぐに察すると、彼に無用な心配をさせない様に自分が勝手に言わなかっただけで責任を感じる必要は無いと、詞音の肩に手を置きながら励ます。
「だけど···!!」
「先輩命令。この件はもう終い、必要以上に詫び入れんな。わーったか?」
「···はい···!!」
「そんで良い。」
それでも気に病む詞音だが尚夜からの「先輩命令」と言う名目でこの話題を終わらせる彼なりの気遣いを察し笑みを浮かべて快く返事し、それを聞いた尚夜もニカッと笑みを浮かべる。
「ところで先輩さんって進路希望って決まったの?」
「ちっ···やっぱ聞こえてたか···!!まぁな。」
話題を変えるつもりなのか、奏に希望進路を決めた事について尋ねられた尚夜は、闇影の馬鹿でかい声援のせいでバレてしまった事に舌打ちしながらも肯定する。
「どんな進路に決めたんですか?」
「知りてぇか?」
「はい。」
「うん。」
「そっかそっか···秘密だ。」
「って···言わへんのか~い!!」
二人に進路の内容を聞かれる尚夜は、勿体ぶる態度を取って打ち明ける···と思いきや結局答えなかったので、詞音は思わず何故か関西弁でツッコむ。
「おら、早くしねぇとホームルームに間に合わなくなるぞ。行った行った。」
「げっ!!もうこんな時間!?早く行くぞ奏!!」
「イク?じゃあ一緒におトイレへ···」
「違げーよ!!教室に決まってんだろ!!///」
これ幸いに朝のチャイムが鳴り出し、尚夜はこれを口実に二人を教室へ戻る様に促す。ホームルームの時間ギリギリだと漸く気付いた詞音は、奏と共に何時ものやり取りを交わしながら慌てて教室へと走り出す。それと同時に尚夜も踵を返して教室へ向かう。
「(ありがとな弾麻。お前がそれ程俺の事であそこまでキレてた事が少し嬉しかったぜ。)」
尚夜は昨晩の詞音を見て、自分がベースを弾けなくなってしまった悔しさと怒りを自分の事の様に怒っていた事を嬉しく思う。
「(けどな···もう、俺の事は気にしなくて良い。お前はお前の道を思いきり進みな。今回の件で俺も···俺の道を進む為に腹を括るぜ。)」
詞音に自分の事は気にせず、彼の決めた道を存分に進む様応援する尚夜は、今回の事件を機に漸く自分の進みたい道を歩く決心をする。
「(一度腐っていた俺に、夢へ歩く為の切欠をくれてサンキューな···俺の自慢の悪魔ロッカーな後輩!!)」
そして、自分に夢へ進む切欠を与えた詞音を「悪魔ロッカー」と、後輩にして嘗ての相棒が魔契者である事を口にしながらそれに嫌悪する事なく大きく感謝する尚夜。
「(さて···先ずはリハビリしたり、必要なら手術もしねーとな。)」
夢を腐らされた一匹狼ならぬ一匹蛇は、リハビリだの手術だのと、何やら「夢」へ歩む為に潤った動き···「潤動」し始める。因みに、尚夜の進路希望調査書に書かれた希望は···
「ベーシストかベーシスト育成業」
以下が致しましたか?
昔の詞音や、今回登場した尚夜との意外な接点に驚いた方は多数、だと思います(^_^;)
中学時代に「風雷の悪魔」、更生の切欠となった弦楽器により組んだバンド名が「JUNDOU」···はい、あの某歯車の兄弟戦士から取りました(^_^;)
蛇塚尚夜 ICV···うえだゆうじ
「地の帝王の世界」から復活させました!!しかし、生徒会って柄じゃないので、闇影の受け持つクラスで唯一の不良及び詞音の中学からの先輩って設定に変えました。ここでも楽器が弾けなくなる設定ですが、今回はそれを掘り下げてストーリーを描きました。イメージキャストも、うえださんと、ぶっきらぼうだが根は良い奴な「元喧嘩屋」と非常にベストマッチしていると思ってます。
そんな彼に「夢を呪いに」変えたロットゥル・スカイロウド···と魔契約した木嶋の所業や過去も、尚夜の元となった先祖が宮本武蔵な元ギタリストなあの人の悲惨な過去から取りました。闇絆の証···「絶望を運ぶ梟」も相俟って性根が腐ったおっさんです。
そんな所業にブチ切れ、半殺しに追い込んだ詞音の身に起きた「全身に迸らせた闇の魔力」···黒凰曰く、「覚醒」の機会であり、それを止められた事に憤ってますが、その詳細はまたの機会に。
将来の進路も少し触れましたが、進路って単語を見て殆どの方が「とある高校生」を頭に過ったと思います(^_^;)
次回は意外なアイツがメイン!?誰がメインになると思う?お楽しみに。




