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LINK12 絶賛人気教師×クールな紫の幼馴染み=物語躍動の兆候?

新年一発目の更新です!!o(^-^)o


しかし、今回はバトルは疎か新しいリンキュバスすら登場しません。(^_^;)


その代わりは今回はタイトル通り…



※毎度の如くエロ描写あり、そして少々最低な表現がありますのでお読みの際はご注意を(^_^;)

―津凪高校



「そんなクレイジーな事が起きてたのか…!!」


「あの大人しい深海先輩が百合ヤンデレな上、魔契者だとわな…!!」


詞音達は、校門を潜り登校しながら琉依の意外で異常な一面、それによる深波への陵辱、彼女も魔契者の1人である事を流から聞き驚きを隠せないでいた。


「それで?結局その先輩はどうなったのよ?そんな大きな騒ぎがあったんならリンキュバスの事も世間にバレるんじゃ…」


「ところがギッチョン。これ見てみなよ。」


屋敷が半壊したり、琉依が大怪我をする程の戦いを繰り広げたと言う事は、それによりリンキュバスの存在までも知られ、果ては流達の事も明るみになるのでは?と懸念する七花の問いに答える様に、竜駕は赤い龍のステッカーが付いた黒のスマートフォンのワンセグ機能によるテレビの内容を皆に見せる…。


【昨夜未明、世界的有名学者・深海蒼至博士の自宅が突然爆発し、半壊したと言う事件が起きました。化学実験の際に使用する薬品の化学反応により誤って爆発させた方向で調べを進めています。これにより長女の琉依さん18歳が顔に大きな火傷を負い、現在入院中です。深海さんの自宅で働く使用人やメイド達も同様の証言をしており、警察はこれを事故だと判断している様です。次のニュースは…】


「俺達が見た内容とは少し違う…!!」


「どうやら例の記憶を消す羽根が原因みたいね…。」


流と深波の言う様に、あの騒動のニュースの読み上げた内容が自分達の見てきた一連の出来事とは一部捏造された物のようだ。使用人やメイド等の証言の中にリンキュバスについて口外されていない事から、記憶消去と言うよりは「都合の良い記憶」に改竄されたと考える方が正しい。


「ま、そのお陰で私達の事がバレずに済んで良かったけどね。」


「(黒凰…奴の力は計り知れない…!!今の俺達の力で倒せるのか…!?)」


証人等の記憶が改竄されたのが幸いして、自分達の素性が明るみにならなかった事に安心する深波とは対称的に、流は記憶改竄、リンキュバスや闇絆の証の強化が可能な黒凰の底知れぬ力や強さに1人不安を覚え眉を顰めていると…


『キャーーーー!!!!////』


「ねぇねぇっ!!今日『あの人』が出張から戻って来る日よ!!///」


「うんうんっ!!早く行こ行こ!!///」


複数の女子生徒達が校舎へ向かわず、逆方向の校門近くまで、まるでイケメン俳優やアイドルに会いに行くかの様に黄色い声を上げつつ顔を赤くして興奮気味になって、「何者」かに向かって走り駆け寄る。


「あ〜ちょっ…ちょっとちょっと!!!!校舎に入りたいからちょっと退い…退いてって!!話だったら後で聞いてやるから!!」


この学校の教師であろう、黒茶色のジャケットの下に青い太陽のワンポイントが特徴の黒いシャツと黒いズボンを着た、橙色の瞳に端正な顔立ちをした前髪がカールがかった黒い短髪の長身の青年は、複数の女子生徒達に囲まれて困り顔をしつつ前に進もうとしている。


「誰あれ?」


「煌闇影…3年D組の担任でここのOB。東大出身、スポーツ万能、加えてあのイケメンぶりで女子や保護者からの人気は学校一…行けすかねぇ奴だぜ…!!」


女子生徒に囲まれた青年・煌闇影(きら・みかげ)は、黒深子達生徒会や先程話題となった琉依等3年D組の担任及びこの津凪高校の出身の卒業生でもあり、他者より優れた身体能力や知識、他者より優れた身体能力や知識、的確な指導力や生徒の話も真摯に受け止める優しさと美しい容姿を持った、正に「理想の教師」を体現した人物である…。と、深波の質問にリア充嫌いな竜駕はやや吐き捨てる様に答える。


「あっそ。流の方が格好良いけどね。」


「詞音が一番…。」


「興味無い。」


深波等女性陣もまた、各々の彼氏の方を支持したり、嫌いでも好きでも無いと、闇影に対して全く目もくれないでいる。そんな話をしている内に、漸く女子生徒達の囲みから脱出出来た闇影は、やや乱れた服装を軽く整えて校舎へ向かうべく流達の近くに歩み寄る。


「おはよう皆。そこの2人は初めて見るな。俺は…」


「さっき聞いたから言わなくて結構よ。」


「……!!」


流達に朝の挨拶する闇影は、自分が出張の間に編入した深波と奏に自己紹介しようとするが、深波には竜駕から聞いた為必要無いと素っ気無く返され、人見知りな奏には詞音の後ろに隠れられてしまう。


「あらら…"煌"が"嫌"われちゃったなぁ…あははははははは!!!!」


「「「「「「………………。」」」」」」


「…は…あれ?」


初対面であまり良い印象が持たれて無いと感じた闇影は、少しでも馴染んで貰おうと思い親父ギャグを一発かまして1人大笑いするが、流達からはジト目で睨まれる等かえって逆効果だった。


「あー…コホン!!///兎も角だ、もし何か相談したい事があったら何時でも俺に尋ねな。じゃ、今日も1日頑張れよ!!シュッ!!」


親父ギャグがスベった事を咳払いをして誤魔化した闇影は、相談事があれば自分を頼る様告げると、左の人差し指と中指をくっつけて小さな敬礼の様に構えて校舎へ颯爽と向かって行く。


「見た目に反して若干おっさん臭いわね…。」


「ギャグつまんない…。」


「あんなのの何処が良いのか全っ然分かんないわ。」


「もう『みっさん』で良いんじゃないかな?」


「あ、それ3年のほぼ全員がそう呼んでるみたいだぜ?」


「あ…はは…って、チャイムが鳴ってる!!皆、早く入らないと遅刻するぞ!!」


闇影(25歳)の言動や仕草から、「おっさん」と言うイメージが印象付く一同だが、ショートホームルーム開始のチャイムが鳴り出したのを聞き、大急ぎで校舎へと走り出す…。




―1年B組



「おはよ皆。今日からまたウチのクラスに転入生が入って来るぞ。またも美少女がな。」


『おっしゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!今度こそぉぉぉぉっっっっ!!!!』


朝のショートホームルームにて、真輝人から新しい女生徒がこのクラスに転入する話を聞き、男共(流と詞音を除く)は発狂するかの如くテンションを上げて「次こそ俺の彼女に!!」と狂喜乱舞しながら期待を抱く一方…


「先生ちょっと質問、何でウチにばかり転入生が入って来るんですか?」


「ん?そりゃこの話の都合だからだよ。」


『メタ発言止めろこのメタ親父っっ!!!!』


「てな訳で、入って良いよ。」


1人の生徒の「何故このクラスに転入生が頻繁に訪れるのか」と言う素朴な質問に、身も蓋も無い言葉で返す真輝人にクラス一同はメタ発言をする親父、略して「メタ親父」と呼んでツッコむ。そんな彼等のツッコミをさらっと流した真輝人は、転入生に教師教室へ入る様ドアに向かって声を掛ける。


「……。」


『うおおぉぉぉぉ……へっ?』


ドアから現れたのは、腰まで伸びた紫色のツインテールに翡翠色の瞳をした小柄な体躯だが、胸が小さめでやや無表情と控え目な要素を持った美少女だった。


「神斬…諸葉です…。」


『(何だガキかぁぁぁぁ…………!!!!)』


ボソッと呟く様に名を名乗り小さく一礼をする編入生の少女・神斬諸葉(かみきり・もろは)を見た男共(大半は巨乳派)は、これまで深波や奏の様な巨乳な美少女を期待していた為か、全くの逆な結果に内心溜め息混じりに激しく落ち込んだ…。


「(なぁ深波、まさかまたリンキュバスとかじゃないよな?)」


「(んー…魔力とか一切感じないからただの人間ね。)」


「(そっか…。)」


これまで「転入生=リンキュバス」のパターンが続いていたが故、諸葉もまたこのクラスの何れかと魔契約したリンキュバスではないか?と懸念する流は小声で深波にその確認の為魔力の探知を頼み、諸葉からはそれが全く感じない為普通の人間だと言う深波の答えに首を小さく縦に振った…。


「そんじゃ神斬、適当な席を選んで座りな。今日は教科書とかは隣の奴に見せて貰え。」


「はい…。」


「そいじゃ、授業を始めっぞ。」




―休み時間



「な〜んか拍子抜けだな。黒凰って奴が巨乳リンキュバスな美少女を刺客として送ってくるかなぁ…と思ってたけど、まさかの井原に負けず劣らずのツルペタロリでしかも人間だったからホンッと拍子抜…ケタロス!!?」


「その呼び方すんなって…何度言わせる気!?」


「少しは違う事考えろ…!!」


廊下を歩きながら「編入生が巨乳なリンキュバス」だと言う期待を裏切られた事を嘆きつつ余計な事まで口を滑らせた為、七花と深波から顔面がめり込む程両サイドから鉄拳を喰らってしまう竜駕。


「はぁ…。ん、あれは…?」


「どうしたんだ流?」


「あれって…」


何時ものしょうもないやり取りに呆れて溜め息をする流は、ある光景を目にして足を止める…。


「魔霧先生と…さっきの煌って先生?」


「なんか魔霧先生に頭下げてるみたいだけど…?」


職員室前にて今朝出会った闇影と自分達の担任である真輝人が何やら話し合っており、詞音が言う様に闇影が真輝人に手を合わせつつ頭を下げて何かを頼んでいると言う、妙な光景を目撃する。


「話、終わったみたい…。」


「何の話をしていたんだ…?」


そして、真輝人が何かを承諾したかの様な顔をして闇影の肩に手を当てて職員室の中に入り、闇影が深々と頭を下げている事から会話は終了した様だ。流が会話の内容を気にしていると…


「ん?おお、また会ったな皆。」


「さっき魔霧先生と何の話をしてたんですか?」


「あぁ…見られちゃったのかぁ…。ま、良いか。」


丁度闇影本人が此方に向かって来て挨拶をして来たのを機会に、先程の真輝人との会話の内容について尋ねる流。それを指摘された闇影はやや困り顔をしつつする頭を掻くが、あっさりとその内容を語るべく口を開く。


「今日お前達のクラスに神斬って女の子が編入して来ただろ?実はあの子…」


闇影は、流達のクラスに編入した諸葉の事について話す…。




「俺の幼馴染みなんだ。」




「「「「「「エエエエェェェェッッッッ!!!!!!?幼馴染みィィィィッッッッ!!!!!!?」」」」」」


闇影と諸葉が幼馴染みだと言う「スパーキング!!!」ならぬショッキングな事実を聞き、目玉が飛び出る程驚き絶叫する流達。


「ああ。諸葉は昔、この町に住んでて家も俺の隣って事で良く一緒に遊んだりしたんだけど、7年前に家の事情で引っ越したきり殆ど会って無かったんだ。でも一週間前、彼女のお姉さんから久々に連絡があってあの子が編入するって話を聞いた時にはびっくりしたよ。」


「あんたにびっくりだよ」と心中ツッコむ流達一同に構わず諸葉やその家との関係について話した闇影は、「本題に入るか」と一度間を空けると、先程までの穏やかな表情から少し真剣なそれに変えて話を続ける。


「さっき魔霧先生に話を…いや、あるお願いをしたんだ…。」


「あるお願い?」


「ああ…『もしあの子が何か学校内で悩み事や困り事があったら、可能な限り相談に乗ってあげてくれ』ってな…。」


闇影が真輝人に頼んだ内容…それは、自身に代わって勉学・進路の悩み・いじめ等、学校内で起こり得るであろう問題に諸葉が衝突すれば、彼女の助けとなって欲しいと、まるで保護者の様な切実な願いだった…。


「それ、態態に魔霧に頼む必要あるの?大体、あんたが直接やればいいじゃない!」


「おい、深波…!!」


話の内容を聞いた深波は、真っ向からその考えに疑問視する意見を闇影にぶつける。確かにそれは彼自身で行えば済む上、諸葉の担任である真輝人に保護者の如く念を押す必要が何故彼にあるのか?と、至極尤もな意見に闇影は徐に口を開き…


「ちょっと身の上話を1つ…俺な、子供の頃に両親を事故で亡くしたんだ…。」


「「「「「「………………!!!!!!」」」」」」


「その後は諸葉の家に引き取られて暮らしたんだ。あの子…俺の事『兄さん、兄さん』ってまるで本当の兄貴みたく慕ってきて…それが凄く嬉しくて俺も彼女を本当の妹の様に良く可愛がってたんだ…。」


「「「「「「………………。」」」」」」


「だから俺、『家族』をくれた恩返しに諸葉には良い学生生活を送って欲しくて昔の担任だった魔霧先生に少し無理を聞いて貰おうとしたんだ。俺は3年、あの人はお前達の担任だし…な…。」


闇影は曇った表情のままその理由を語る。幼少期に両親を亡くし天涯孤独だった彼にとって、自分を引き取り家族の様に接してくれた神斬家…諸葉に対し絶大な恩義を感じており、それに報いるべく彼女に快適な高校生活を送ろうと考えた。


しかし、3年の担任である自分が1年の諸葉に校内で気を掛ければ、依怙贔屓だと疑われる可能性がある…。そこで、嘗てここの恩師たる真輝人にそれを託すべく話をしたのだった…。


「だからお前達…友達になってやれとまで言わない。もし諸葉が何か困ってたりいじめられてたりしたら力になってあげてくれ!!あの子、無口だけど本当に優しくて良い子なんだ!!頼むっっ!!」


「煌…先生…。」


自分の諸葉に対する過剰なまでの想いを流達にぶつけ、彼等にも彼女の助けになる様深々と頭を下げる闇影。教師としてでは無く、家族(あに)として…。




―放課後



「ふぅ…。」


本日全ての授業が終わり学生等がそれぞれ帰宅する中、闇影は校門前の壁に凭れながら腕を組み、途中で生徒に挨拶したり、写真を撮られながらも何者かの帰りを待ち続けている。そして、暫くすると…


「兄さ…煌先生!!」


闇影の姿を見かけ、直ぐ様彼に向かって嬉々として表情で駆け寄る諸葉は「兄さん」から「先生」と呼び方を訂正しつつ彼に明るい声を掛けて彼に近付く。


「諸…神斬〜〜!!!!」


闇影もまた、諸葉への呼び方を他人行儀な物に変えつつの7年ぶりの再会に少し目を潤ませ笑みを浮かべて彼女を見つめる。早く目一杯再会を分かち合いたい2人は、急いで学校を後にする…。




―マンション真桜(まおう)・10階



「ホンッと久し振りだな諸葉。」


「はい♪こうして闇影兄さんとまた会えて本当に嬉しいです♪」


広々としたリビングにある黒いソファーに腰を掛けた闇影は、その前にある小さなテーブルの向かい側で座布団の下に正座をする諸葉と7年ぶりの会話に弾んでいる。


「にしても大きくなったなぁ…。昔のお前はめちゃくちゃ小っさくて、引っ越す時なんか『兄さんと離れたくない!!』ってワンワン泣いて俺にしがみついて…」


「やっ…///そんな昔の話持ち出さないで下さい…!!///」


闇影が7年前にこの町を引っ越す際にボロ泣きした事を口にした為、諸葉は顔から火が出るかの如く紅くしながら慌て出す。


「はははは!!それはそうと、新しい学校はどうだ?新しい友達とか出来たか?」


「!!…いえ、此方に来たばかりですのでまだ…。」


「学校に馴染め、友達が作れたか?」と言う闇影の何気ない質問に、一瞬眉を顰め「まだです」と先程までの弾んだ声とは異なり、淡々とした口調で答える諸葉…。


「そっか…。(しまった!!悪い事聞いてしまったなぁ…!!)」


それに勘付いた闇影は小さく納得しつつ、元々人見知りが強い諸葉が直ぐには人と馴染みにくい事を熟知しているにも関わらず分かりきった質問をしてしまった事に内心後悔と反省をし始める。そのせいか、会話も途切れ少しの間沈黙が続く事態に…。


「…あ〜そ、そうだ!!今日の晩飯は再会記念に何処か食べに行こう!!美味い物沢山食べて力を付けよっか!!何食べたい?」


そんな不穏な空気を消すべく、闇影は明るく振る舞って諸葉を外食に行こうと誘う。


「兄さんとなら何処でも構いませんよ。」


「そっか。じゃあ、6時頃に出るから着替えようか。」


漸く先程の弾んだ声で受け答えした諸葉を見て安心した闇影は、外食へ向かう為に着替える様彼女に促し自分も着替えるべく脱いだジャケットをハンガーに掛け自室へと向かう。




―ステーキハウス・DAY・BIRTH・DAY(デイ・バース・デイ)



「……///」



「こんばんは店長、2名でお願い。」


頭にワインレッドのリボンを付け、紫のワンピースを着た諸葉は、橙色のネクタイを巻いた紺色のスーツの下に黒いロングコートを羽織った、昼間とは違うアダルティックな雰囲気を醸し出す闇影の姿に紅くした顔を俯かせている。それに気付かない彼は、この店の店長であろう白いコック服の下に黒いコックパンツを履いた、頭が角刈りで短い顎髭と如何にも厳つい風貌をした30代の男性に声を掛ける。


「おう、良く来たな煌ちゃん。ん?そこの子は初めて見るな。お前さん…まさかロリコンに走ったんじゃ無いだろうね?」


「違うわ!!///この子は昔引っ越した幼馴染みで今日から俺の学校に編入して来たんだよ。」


外見とは裏腹なソフトな口調で出迎える店長・伊田信明(いだ・のぶあき)は、未だ顔を紅くして隣にいる諸葉を見て闇影にロリコンの気があるのかと、やや引き気味に尋ねるも、同じく顔を紅くした彼にツッコまれ訂正される。2人は旧知の仲であり、会う度に闇影は軽口を叩かれそれを信明にツッコミを入れる…と言うやり取りを毎回行っている程である。


「まぁ、そーいう事にしとこう。適当な席に座りなよ。注文はいつもの奴で良いか?」


「ああ、この子のも同じやつで頼む。」


闇影と諸葉との関係をやや適当に理解した信明は、2人を席へ向かう様促しつつ闇影から「いつものメニュー」の注文を受け、厨房へと向かう。




「兄さんはここの店長さんとはお知り合いなんですか?」


「ああ。ここは俺が高校生の時にバイトした事があって、店長ともその時に初めて会ったんだ。」


闇影は信明との出会いについてを諸葉に語る。嘗て高校時代の自分が初めてバイトをした場所でもあり、信明ともそこで知り合った。その当時も現在の様なやり取りで闇影をいじったりしていたが、時には自分の悩みを聞いて力になってくれたりと、頼れる相談相手として良き関係を築いていたのだと…。


「とても良い人なんですね…。」


「余計な事を言わなければね。」


「煌ちゃんをいじるのが俺の生き甲斐なんだよ。」


「そんな生き甲斐捨ててしまえ。」


「酷いわね煌ちゃん…。はい、ご注文の『バーステーキオニオンソース』とグレープジュース2人前♪」


信明の事について話していると、その本人が鉄板プレートから分厚い肉が「ジュージュー」と焼ける音を立て、食欲をそそる香りのした、闇影が良く注文するメニュー「バーステーキオニオンソース」を2皿と、何故かワイングラスに入ったグレープジュース2つを乗せた一回り大きいプレートを持って現れ、闇影と諸葉のテーブルに乗せた。


「それじゃ…7年ぶりの再会を記念して…」


「「乾杯。」」


今さっき届いたグレープジュースのワイングラスを手に取った闇影と諸葉は、7年ぶりに再会出来たこの日に感謝して互いのグラスを軽く当ててジュースを軽く飲み合うと、食事に取り掛かる。


「このお肉…とても美味しいです…!!」


「おお、気に入ったか?ここはリーズナブルな値段な割りに中々良い焼け方をした肉を食べさせてくれるからな〜。」


バーステーキを食べ、その味を賞賛する諸葉の言葉を聞いた闇影は、嬉しげな表情で笑みを浮かべ自分の「いつものメニュー」が好評だった事に喜びを感じる。


「ねぇ…兄さん。」


「ん、何だ?」


「てっ…店長さん以外の周りの人達に…私達は…どんな関係だと思われてると思いますか…?///」


突然諸葉はナイフとフォークを手から離し、闇影に信明以外の客達からは自分達が如何なる関係だと思われているのかを、またしても頬を赤めながら尋ねる。


「そうだな〜…親戚のおじさんとその姪、歳の離れた兄妹…くらいに思われてるかな?」


闇影はナイフとフォークでステーキを切りつつ目を上の方に向けて思考を巡らせる、と言う危なげな動作を取りながら、伯父と姪、兄妹と大抵思い付く答えを口にした。


その直後、後ろを向かずにフォークを背後に勢い良く無音で投げて壁に刺さり、その直ぐ側で顔を青くした信明については、「それか諸葉は俺の嫁♪」と懲りずに闇影を冷やかす言葉が小声で彼の耳に入った為だと答えておこう。


「そう…ですよね…。変な質問してごめんなさい…。」


「あ…ああ、別に構わない…よ?」


闇影が質問の答えを聞き終え妙な質問をした事について自分に詫びる諸葉の様子に目をやると、彼女は急に顔を俯かせつつガタガタと震えた手でナイフとフォークを握り何やらブツブツと小声で呟くと言う、非常に奇妙な行動を取り出した。


「諸葉…大丈夫か?どっか具合でも悪いのか?」


そんな諸葉の様子に闇影は、体調の不調についてを心配して彼女に声を掛けていると…


「あっ、待った待ったお客さん!!お勘定!!」


「なっ…店長、どうしたんだ!?」


「食い逃げだよ…ほんの少し目を離した隙に逃げやがったんだ…!!」


突然信明が大きな声で叫び出した為直ぐ様其方に目をやると、出入り口のドアの前で歯を食いしばって憎々しい表情を取った彼がそこにいた。どうやらほんの僅かな隙を付かれて無銭飲食の末逃亡した客がいた様だ。


「何だって…!!食い逃げ犯の特徴は!!」


「黒いニット帽に…黒いジャケットを着た男…!!」


「よぉしっっ!!諸葉はここで大人しくしててくれ!!」


信明から食い逃げ犯の特徴を聞いた闇影は、諸葉に店で待機する様声を掛けて犯人を捕まえるべく勢い良く走り出し店を飛び出した。


「おっ…おい、待てって!!煌ちゃん!!」


「兄さん!!」


突然飛び出した闇影の行動に一瞬唖然とした信明と諸葉も、無茶な事をやらかそうとする彼を追うべく店を後にした…。




「へっへっへ…こんだけ走りゃあ店の奴も追いつかね…」


「DAY・BIRTH・DAY」から数km程離れた場所で、食い逃げ犯の黒いニット帽に黒いジャケットを着た無精髭を生やした中年男性は、勢い良く逃走したのにも関わらず、息一つ切らさない余裕の表情で食い逃げに成功した事にせせら笑っていると…


「見つけたぞっっ!!」


「…って、何っ!!?」


何時の間にか闇影が現れた為、目を見開いて驚いた。実はこの食い逃げ犯、数日前くから何軒も食い逃げを行っている指名手配犯であり、常人を超えた速い足の持ち主でもある為、追い付く相手が誰もいない程だった。それが初めて自分に追い付いた相手が目の前にいるせいで額から冷や汗を垂らしている…。


「さあ、大人しく自首するんだ!!」


「クソがぁ…!!」


闇影に自首を勧められた男は、自棄になって懐からナイフを取り出しその刃先を彼に向けると言う、「追い詰められたのなら追い詰めた奴を殺せばいい」と悪人の典型的な暴挙に出た。


「そんな凶器(もの)を使わないと何も出来ないのか…!?」


「うるせぇっっ!!死ねぇぇぇぇっっっっ!!!!」


ナイフを前にして臆するどころか、凶器無しでは自己主張出来ない事を強い瞳で睨みつつ指摘する闇影の言葉に激昂した男は、凶器(ナイフ)を彼目掛けて勢い良く、真っ直ぐ一直線に刺し殺そうとする…。が…


「ふんっ!!」


「なっ!!?くっ…このっ…!!は…離れねぇっっ…!!?」


闇影は全く無駄な動き1つも無く、ナイフを持つ男の右手首を右手のみで掴んだ。直ぐ様伸ばした手を戻そうとするが、その細腕からは想像出来ない程の握力で掴まれたせいで中々闇影から離れられないでいた。だが、このまま終わりでは無い…。


「刃物は人に向ける物じゃなくて…」


「えっ…?うっ…うわわわわっっっっ!!!!?」


「料理や食事に使う物なんだよぉぉぉぉっっっっ!!!!」


「うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!!?」


何と闇影は男の右手首を握った状態のまま刃物は何の為に用いるのかを語りつつ、彼を垂直に大きく持ち上げて勢い良く振り下ろし一本背負い投げで「一本」取った…。


「兄さん!!大丈…夫…です…か?」


「ふぃ〜…ああ大丈夫。さ、警察に連絡するぞ。」


「随分また派手に投げたモンだねぇ…。」


その直後に漸く追い付いた諸葉と信明だが、右手首を軽く捻って余裕の表情をする闇影と気絶して倒れた食い逃げ犯を見て、唖然とするしかなかった…。


その3分後に連絡した間桐(まどう)署警察官の乗るパトカーが現れ、食い逃げ犯は逮捕。被害に遭った信明は勿論、闇影や諸葉等店の客達は事情聴取を受け、闇影には後日間桐署から犯人捕獲の手柄として感謝状が贈られる事となる。




「悪いな諸葉、折角の再会記念日が滅茶苦茶になっちゃって…。」


「いいえ、気にしてませんから。それより凄いですね兄さん、警察から感謝状を戴けるなんて。」


事情聴取や感謝状の話のお陰で現在22時。その帰宅途中、闇影は食い逃げ犯のせいで再会を祝う時間が不意になってしまった事を諸葉に詫びるが、犯人を捕獲した功績から感謝状を授与される事を賞賛された。


「ま、鍛えてるからね♪」


闇影は右手で拳を作って肘を曲げてぐっと力強いポーズを取り、肉体の鍛練を日々行っている事をやや自慢気に誇示して諸葉に笑みを向けていると…




―闇影ェェッッ…煌…闇影ェェッッ…!!



「……っっ!!?」


突然、何処からか全身を貫くかの様に凄まじい視線と悪魔の如く憎々しくドスの利いた声で自分の名を呼ぶ声が聞こえた為、驚きつつ背後を振り向く闇影。しかし、背後には誰もおらず、人の気配すらしなかった。


「どうしたんですか…!?」


「あ、いや…何か『闇影ェェッッ…闇影ェッッ…!!』って俺を恨む様に呼ぶ声がしてな。ま、気のせいだろう。」


諸葉に背後を向いた理由を尋ねられた闇影は、今の事実を話し「気にするな」と軽く流し止めていた足を再び動かす。しかし…


「気のせいな訳が無いでしょう!!もしかしたら通り魔や強盗…いえ、ストーカーの可能性が…!!兄さん格好良いから勘違いした女達に…いえ、させません…!!早く家に帰りましょう!!」


突然諸葉は、驚愕の真相を知ったかの様に目を見開き闇影にまるで別人のごとくはきはきとした口調で怒鳴り出し、先程彼が聞こえた声の正体を勘ぐり出したと思いきや、いきなり闇影の手を握り早く帰宅するよう促しつつ足を進めた。


「ちょっ…ちょと待てって諸葉…そんな急がなくても…って痛っ…痛い…痛いって!!?」


急に手を引かれて強引に歩かされる闇影は、引っ張られて手が痛む事を諸葉に訴えるも、弱まるどころか更に強く握り、手を引く力も増すばかりだった。


「(兄さんは誰にも渡さない…!!兄さんは…私が守る!!)」


闇影の訴えを耳に貸さない諸葉は、彼を引っ張りつつ美しかった翡翠色の瞳をまるで暗く澱んだ沼の様に黒に近い深緑に変えて闇影の「絶対死守」を心の中で誓い続けている…。




―マンション真桜・闇影宅



「諸葉の奴…昔と随分変わったなぁ…。」


風呂に入るべく洗面所で衣服を脱ぎつつ諸葉の豹変ぶりに声を漏らす闇影。確かに彼女は自分に対して実の兄の様に慕ってはいるが、この7年間でああまで変わる物なのか…?と思いつつ衣服を全て脱ぎ脱衣篭に入れようとするが…


「えっ…!?何…これ…!?///」


脱衣篭の中にレースの入った紫のパンツが入っていた為目を見開いて驚く闇影。無論彼の物では無い。第一こんな物を1人身の25歳の男が持ってたら確実に変態の烙印を押される事風林火山の如しである。


「(まさかこれって諸葉のか…!?なら今日食事に出た時はノーパン…いやいやいやいかんいかんいかん!!!!落ち着け煌闇影!!///)」


パンツを見て一瞬諸葉に対して邪な劣情を催すも、超高速で首を横に振ってそうした感情を赤いバイクをモチーフにしたバイク乗りの如く振り切って浴室へと向かう闇影。




「ふう…あ、石鹸変えるの忘れてたなぁ…。」


浴槽から洗面器で掬ったお湯を浴びその暖かさに開放感に浸り身体を洗おうとする闇影だが、昨日石鹸を使い切った為新しい物を補充するのに気付きやや困り顔をしていると…


「石鹸でしたら私が持ってきました♪」



「おお、ありがと諸葉♪取りに行くの正直面倒だったから助かった…ってファオォォォォッッッッ!!!?///」


諸葉が石鹸を持って来た事に感謝して後ろを振り向いた闇影は、一糸纏わぬツルペ…もとい、未発達の裸体をした彼女を見て顔を紅くしながら大きな奇声を上げて驚いた。


「お背中を流しに参りました♪」


「なななな…何でお前まで入ってんの!!?///しかも背中流すとか…何で!!?///」


「何って…これからこの家でお世話になるんですからこれくらい当然の事じゃないですか。さあ兄さん、お背中を♪」


「あ…ああ…///」


突然の衝撃的な出来事にパニクってしまった闇影は、文字通り流される形となってついつい諸葉の申し出を受け入れてしまい背中を洗って貰う事となってしまった。


「〜〜♪」


「(大丈夫落ち着け。相手は諸葉、見知った相手、何も怖くない。何も怖くない。何も怖くない。何も怖くない…!!///)」


鼻歌をしつつタオルで背中を流す諸葉に対し、精神崩壊させず落ち着かせようと必死に強い暗示を心の中で掛け続ける闇影。しかし…


「ちょっと擦り過ぎて肌が赤くなっちゃいましたね…タオルはやめて…はぁ♪///」


「(ピョッ!!!!?///)」


なんと諸葉は、タオルで洗うのを止めてそれに付いた泡を自分の胸元にたっぷりつけてそのまま闇影の背中に擦り付いた。何故か艶めかしい声を小さく漏らしながら…。それと同時に闇影も心の中で奇妙な声で驚き身体を小刻みに震わす。しかし、それで歯を食いしばりなけなしの精神を保とうとするが、次の彼女の行動で精神崩壊(それ)は起きてしまう…。




「あ、そうだ。一番綺麗にしないといけない『ここ』も洗わないと…♪」


更に諸葉は最も洗うべきだと述べつつ、その箇所…闇影の「影松」に手をやってしまい…




「イチゲキインザダアクシャドオオオオォォォォッッッッ!!!!///」


遂に闇影の精神は完全に瓦解してしまい、凄まじい勢いで身体を洗い流し、彼の言葉を借りるならば"真っ裸"のまま"マッハ"で浴室から超高速で脱出してしまう…。




―闇影の部屋



「(一体何がどうなったんだ!?諸葉をああまで変貌させて…俺が…いや彼女が一体何したってんだよこの世界の神はぁぁぁぁっっっっ!!!?)」


闇影はベッドの布団に潜り、諸葉が自分に対し積極的且つ変態的に迫って来る様に変わり果てた現実についてまだ精神が落ち着いてないのか?この世界の神たる存在に訴える。もしいるならこう答えるだろう…「面白いから♪」だと。


「黙れ作者!!」


と、何やら訳の分からない台詞を叫んだ闇影だが、暫く布団に潜っている内に段々と眠くなりその意識を手離してしまう…。




「zzz…んん…ん?」



深夜2時…完全に爆睡した闇影は寝返りを打とうとするが、動きに僅かな違和感を抱きふと目を覚ますと…


「zzzz…♪」


「(ええええぇぇぇぇっっっっ…ちょっと待っ…エエエエェェェェッッッッ!!!!?///)」


何と、自分のパジャマの胸元をガッチリ掴んだまま可愛らしい寝顔で闇影の横で眠る諸葉の姿がそこにあった。一応彼女を起こさぬ様心の中で絶叫して驚く闇影は、諸葉から離れようと胸元を掴んだ彼女の手を取ろうとするが…


「(いや待て。このまま手を取って離そうとしたら突然目が覚めると…)」




※妄想



「兄さん…お風呂で欲情したりこんなベッドの中で私の手を取って…そんなに成長した私を犯したかったんですね。良いですよ、兄さんの好きにしちゃって♪その代わり…私も兄さんを好きに犯しちゃいますね♪では…いただきます!!」


「よせ諸葉…止めろ…止めろぉぉぉぉっっっっ!!!!///」




※妄想終了




「(何て事が起きるかもしれない…!!///)」



これまでの諸葉の行いを考えると、今の妄想が現実の物に成りうると予想した闇影は彼女を起こすのを躊躇した。しかし、こんな状態では諸葉を意識して寝ようにも眠れない…今後はこんな事が毎日起きるのかと不安に思う闇影が、翌朝睡眠不足で目の下に隈が出来たのは言うまでも無い…。

如何でしたか?



今回は前書きでも申した通り、バトルは起きずリンキュバスも登場しませんでしたが、代わりに以前書いた二次作品の主人公とその仲間を登場させました!!



煌闇影(きら・みかげ)…ICV:草尾毅

知ってる方は知っている、知らない方はやっぱり知らない説明不要の「光を導く」元主人公です!!o(^-^)o今回は家庭教師では無く津凪高校OBの高校教師としての登場です。しかし、親父ギャグやら諸葉の心配ぶり等ギャグ寄りなややおっさん臭くシスコン属性と化してしまったのも虎馬路って奴のせいなんだ…(^_^;)←ナニイテンダ!?


神斬諸葉(かみきり・もろは)…ICV:桑島法子

名前は変わりましたがこの子も説明不要のクール系美少女ですo(^-^)o但し、今回は闇影に対してブラコン…いや、下手すればヤンデレ化(もう手遅れ)するかもしれない程変化させて登場させました(^_^;)

因みに彼女の名字は水晶皇帝さんとの「あるやり取り」の中で生まれた彼女の「本名」から取らせて頂きました。水晶さん、ありがとうございますm(_ _)m


伊田信明(いだ・のぶあき)…ICV:小山力也

こちらは初登場のキャラクターです。見た目、口調、この名前から言わずもがなモチーフは「一億稼ぐガチャポンのバイク乗り」です(^_^;)最初は「太陽の子」をモチーフにしようかなと思いましたが、書いてる内に闇影を弄るには堅すぎるなぁ…と思い此方に変更しました(^_^;)



闇影(この男)が登場して何も起きない筈が無い。物語に良き変化か悪い変化を齎すのか…この先の展開について次回も期待せずお楽しみに!!(^_^;)

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