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LINK8 破綻する絆×強襲の黒鳳凰=深海より深し真の絆

長らくお待たせしました!!


今回は最初からヤンデレタイム…そして、多分ギリギリ一歩手前でエロ描写があります!!(^_^;)


苦手な方は撤退を、「行くぜ行くぜ行くぜっっ!!」って方は心して読んで下さいましm(_ _)m

「あ…がっ…はぁっ!!?み…深波…!!?」


「急所は外しているから死なないわよ…。ふんっ!!」


「がはぁぁっっ!!?」


深波に突然腹部を貫かれ、その傷から床が真っ赤に染まる程大量の血を流す流。しかし、彼女は命には係わらないとやや感情の籠もって無い声で答えつつ貫いた右腕を勢い良く流の身体から引き抜いた…。


普通の人間なら生命に係わる重症だが、流達魔契者は契約時にリンキュバスの魔力を分け与えられるだけでなく、身体能力も向上している為、身体を貫かれたぐらいの傷では簡単に死なないのだ…。


「…な…何で…こ…こんな……!!?」


流は、傷を抑えながら突然自分の身体を貫いた理由を深波に尋ねる。しかし彼女は無言のまままた顔を俯かせながら彼にゆっくり近付き…


「何でなの…?何で私を突き飛ばしたの?何で私の話聞いてくれないの?何で私を見てくれないのよっ!!?」


「……っっ!!」


顔を上げると、氷の様に冷たい表情、水色に黒が混じった様な濁った瞳で流を睨み付け、徐々にボリュームを上げて大声で彼を怒鳴りつけた。その迫力に息を呑み、言葉が出なくなる流。一体自分が何をしたのか…確かに突き飛ばした事も理由の一つなのだが、それだけで自分を傷付けたとは到底思えない…。ではその理由は何なのか…そう頭の中で考えていると…


「…もう我慢なんかしない…流からしてくれないのだったら私の好きに犯してあげる…!!」


「ぐわっ…!!?な…何し…ぁぐああああぁぁぁぁっっ!!!!」


そのまま流を押し倒すと同時に、彼の身体に体重を掛けて乗っかりマウントポジションを取り出した。無論今重症の身体である流は、苦悶の表情で激痛で絶叫する事となる…。


「良い声ね…んちゅ…へぁ…流の血おいし…。」


それを妖艶な表情で聞いて悦ぶ深波は、先程流の身体を貫いた為彼の血で塗れた右手に口を入れていやらしい水音を立てながら一心に吸い出し、それを止めると口をだらしなく大きく開け、そこから長い舌を出して恍惚な表情でその味を占める。すると…


「ク…ハハハ…アッハハハハハハハハハハ!!!!美味しいッ!!美味し過ぎるよォォッッ!!!!いっぱいかじっていっぱい舐めていっぱい吸い尽くしてあげる!!!!ふんっ!!」


「やっ…止めろぉ…止めろ深波…ごほっ!!ごほっ…!!」


パッチリした目を大きく見開き濁った瞳は鮫の様に鋭くなり、柔らかい唇はまるで鮫が獲物を喰らう様に大きく裂け、狂ったかの様に笑いながら自分の着ていたブラウスを引き裂き、ブラジャーまでも乱暴に取って投げ捨てて豊満な胸を露わにする。そして、「ハァハァ…」と興奮しながら流のワイシャツをも引き裂き、ズボンもベルトと一緒にずり降ろして下着姿を露わにしてしまう…。


「ヘハハハ…どう流?女の子にこうやって襲われるのって好きぃぃっっ…!?それとも…嫌い…?」


「深波…いい加減…止め…ぁうぅぅっっ…!!」


「好きか嫌いかどっちかって聞いてんのよ!!私が好きなの?嫌いなの?ほら…答えろよ…答えなさいよっ!!」


流にこうした状況の好き嫌いを尋ねる深波だが、肝心の本人が答えないばかりか止める様訴えた為、意見を答えるまで彼の首に手を掛けて徐々に力を入れながら締め上げると言う暴挙に出てしまう…。


「ぁ…がっ…がぁっ…!!ず…ぎ…!!」


「聞こえないわよ…答える気無い訳?どうなのよっ!?」


「ぅ…ぎっ…!!」


なんとか質問には答えようとする流。しかし、首を強く圧迫されているせいで呼吸が出来ず、まともに声を出せない状態だったが、それが深波が彼の首に更に力を強める事となり、質問どころか声すら出せなくなる程徐々に意識が薄れつつある…。


「はっ…流…?流!!はぁぁぁ…ふぅぅっっ…!!はぁぁぁ…ふぅぅっっ…!!」


ここで漸く我に返った深波は流の首から慌てて手を離し、息が止まりそうになり衰弱した流の首の下を添え、彼の唇に自分のそれを合わせ、息を吹き込み様子を見てまた…と、人工呼吸を幾度も行った…。そして…


「ぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!!!!」


どうにか意識を取り戻した流は、何度も呼吸をして精神を安定させている。それを確認した深波は、直ぐ様彼の近くに寄り…


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…傷付けてしまってごめんなさい…!!」


「…っ痛っっ…!!傷が…!!?」


顔を俯せたまま、涙声で何度も何度も謝罪の言葉を木霊の如く呟きながら流の腹部の傷を丹念に舐めると、不思議な事にそれから流れる血は止まり、傷も徐々に小さく縮み、まるで初めからなかったかの様に塞がった…。


人間と魔契約したリンキュバスは、その魔契者の魔力を回復させるだけでなく、唾液や体液等で軽度の傷や病気を治癒する事も可能であるのだ…。無事に傷の治癒を成功した深波は徐に立ち上がり…


「…『約束』を破っちゃったから、もう此処には居られないわね…。私、出て行くわ。」


「なっ…!!?お…おい…!!」


流に顔を見せず背を向けたまま衣服に着替え、とある『約束』を反故した罰としてこの部屋から退去すると言い出した。それに驚く流を尻目に、深波は玄関前まで進みドアを開けて外を出ると…


「…巻き込んでしまってごめんなさい。でも…あなたと過ごせて本当に楽しかったわ…さようなら…。」


「ま、待て!!深な…っ痛っっ…!!」


小さく微笑んだ表情で最後の別れの言葉を口にしてその場から立ち去って行く…。流は引き止めようとしたが、怪我の痛みにより動きが鈍りそれは阻まれた…。


「深波…くっ…深波…!!」


一人きりとなった静かすぎる一室で、流は、自分への怒りと深波を追い込んでしまった後悔の念にかられ、歯を食いしばりしながら畳を右の拳で叩き付け、悲しげな表情で俯く…。




―翌日



「そんな事があったのかよ…!!」


「深波お姉ちゃんが…!?」


「何時かはやると思ってたけど、本当にやるとはね…。」


「……。」


流から事の顛末を聞き、詞音、奏、七花は驚きを隠せない表情で愕然とする。しかし、竜駕だけは何故か不機嫌な表情で腕を組みながら黙している…。


「それで、あんたはどうするつもりなのよ?」


「…取り敢えず学校が終わってから深波を探すつもり…なんだが…」


「何よ歯切れが悪いわね。あんたはあの女に何を言いたくて探すつもりなの?」


「それは…それ…は…」


下校後は深波を捜索すると答える流。しかしその声には力が無く、「探すつもり」とまるで探す気が無い言い方に聞こえる彼の煮え切らない態度に苛立ち、どういう理由があって深波を探すのかを今一度尋ねる七花。その質問にはっきりと回答しない流の態度を見て…


「チッ…探したくねぇなら探すなんて口にすんな!!こんな優柔不断な奴、放っとこうぜ。」


「お、おい鏡神!!急にどうしたんだよ!?」


突然竜駕が立ち上がり、普段の彼にしては手厳しい言葉を流に投げかけて、苛立った表情で舌打ちをしながらその場を立ち去る。詞音は竜駕を呼び止めようとするが…


「詞音も行こ。深波お姉ちゃんの気持ち、全然解ってない…!!」


「奏まで…ちょ…ちょ待てって引っ張んなよ!?」


奏も立ち上がり、深波の心を理解していない流に見切りを付け、詞音の手を引きながら彼と共に教室を後にした。


「はぁ…もう知らない、勝手にして頂戴。」


「井原まで…俺は…どうすればいいんだよ…!!」


最後に残った七花も、溜め息をついて諦めた様な表情を取りながら流の席から離れて行く…。一人となり、自分のすべき事が解らない流は顔を手で覆って悩み苦しむ…。




「これから…どうすれば良いのかしら…。」


一方深波は、目を赤く泣き腫らし着の身着のままで辺りを彷徨い歩いている。流(おもいびと)の下を離れた今、自分は何を成すべきか、今後はどうしたいのかを模索するが、幾度考えてもその答えが見つからないでいた…。


「ねぇねぇキミキミ、もしかして暇〜?今から俺とどっか遊び行こうよ♪」


そこへ突然外見や口調もチャラい男が近付き、深波を軟派し出した。しかし、今の彼女はその軟派男はおろか、周囲にすら眼中に無い為、そのまま無視して通り過ぎようとするが…


「おい待てよ!!シカトしてんじゃねえよ!!」


余程短気な性格の持ち主なのか、無視された事に直ぐ腹立ち、深波の肩を力強く掴んだ。しかし、それがいけなかった…。


『煩いわね…!!』


「あがぁぁぁぁっっっっ!!!!?」


直ぐ様シャクリアに変化した深波にその腕を掴まれ、千切れんばかりに力強く握られた為その激痛に激しく絶叫する事になってしまう。ある程度懲らしめたと判断しシャクリアは、その男を振り落とす。


「ひぃぃっっ!!?ば…ば…ば…化物ぉぉっっ!!」


自分より非力だと思い込んでた筈の少女が悪魔だと知った男は、彼女の自分達人間とは違う異形の姿に怯え、情けない悲鳴を上げて一目散に逃げ去った。


「化物…か…。」


人間の姿に戻った深波は、男が最後に投げつけた言葉を口にしつつ、近くに捨ててある皹の入った大きな鏡に映った自分を眺める…。その時、彼女の心を示すかの様に突然空が曇りだし、激しい雨が降り出した…。


「今の私…すっごくブサイクな顔してるわね…。」


普段は海の様に美しい水色の瞳は焦点の合わない沼の様に濁り、藍色の髪も雨に濡れてボサボサで、顔も若干汚れている等、酷い有り様となった自分の姿を見た深波はそう呟き、再びトボトボと歩き出そうとしたその時…


「な…これは…!?」


突如、彼女の目の前に黒い縦一直線の大きな裂け目が生まれ、そこから何者かが現れる。その人物とは…


『漸く会えたな。海噛深波…いや、シャクリア・シィヴァイト…。』


これまで何組もの魔契者やリンキュバスに謎の羽根を授けて来た黒い鳳凰の鎧戦士だった…。


「黒い鳳凰の鎧…あんたが蔵石の言ってた…!!」


『そうか…未だ自己紹介をしていなかったな。と言っても、あまり名前と言う物を意識していないが…黒凰コクオウとでも覚えておけ。』


黒い鳳凰の鎧戦士…黒凰は、これまで自分の名前について関心が無かったと、やや間の抜けた発言をしつつ即興で思い付いたであろう今の名を深波に語る…。


「(何なの…こいつから感じるこの威圧感は…!?魔力の強さも桁違いだわ…!!)…その黒凰サマが私に何のご用かしら?」


深波は、黒凰から発する膨大な魔力の量や、仮面で素顔が見えないのにも関わらずまるで刺す様に睨まれる感覚にただただ戦慄するも、身構えつつ現れた目的を尋ねる。


『貴様はこれまで数々の同胞を葬ってると聞いてな…いい加減目障りになってきたから…この辺でそろそろ消しておこうと思って現れたのだ…!!』


黒凰は深波の命を奪うのが目的だと話すと同時に、背中から半透明の翼を広げながら戦闘の構えを取る…。


「上等よ…返り討ちにしてあげる…!!」


『ふ…魔契者抜きで戦えるのか?』


『…!!あんたに関係無いんだよっ!!』


深波は再びシャクリアに変化し、黒凰と戦う体勢を取るも、魔契者…流が居ない事を指摘されると勢い良く走り出し、降り上げた鋭い右腕の爪で引き裂こうとするが…


『甘いな…ふっ!!』


『ぅがはあっっ…!!』


降り下ろす寸前で黒凰の左手に掴まれ、がら空きとなった腹部に右腕で殴りつけられ吹き飛ばされる。しかし黒凰は気を緩めず、右の掌を彼女に向けると…


『ファイアピック!!』


『きゃああぁぁっっ!!』


何とそこから太く赤い先端の尖った突起物の様な物が勢い良く放たれシャクリアに触れた途端、爆炎が起きた…。


『どうした?水属性の貴様が炎の魔撃マゲキ、それも初級いちばんよわい魔撃程度でもうグロッキーか?』


黒凰等魔契者は、魔契約したリンキュバスから分け与えられた魔力によりその属性の魔法攻撃…即ち、「魔撃」なる術を習得出来る。本来なら今の炎の初級魔撃ファイアピックでは、水属性のシャクリアにはダメージは然程受けない筈…にも関わらず、彼女は一度受けた程度で立ち上がるのがやっとな状態…恐らく、魔力が弱った分それによる相反する属性攻撃による耐性まで弱っている為である…。


『…はっ…舐めないでくれる?こんなの犬に噛まれた方がまだ効くわよ…!!それに…忘れてないかしら…!!』


シャクリアはファイアピックによるダメージを物とはしない…とやや強がりながらも立ち上がりつつ、右の掌に青い魔力を籠め…


『あんたの属性は私と相性最悪だって事に!!ドリルスプラッシュ!!』


『なっ…ぐあぁぁっっ!!?』


一瞬の隙を突き、そこからドリル状に尖った流水を勢い良く放つ水属性中級魔撃「ドリルスプラッシュ」を黒凰の腹部目掛けて見事に貫き命中させて吹き飛ばした…。しかし…


『嘘…でしょ…!?』


『…今…何かしたか?』


直ぐ様立ち上がり貫いた筈の腹部も全くの無傷と、まるでダメージを受けなかったかの様に平然とした態度でシャクリアにゆっくりと近付いてく…。


『くっ…だったら…!!アクアロー!!』


シャクリアは今度は魔撃の連射攻撃でダメージの蓄積を狙いべく、水で形作られた矢を放つ初級魔撃「アクアロー」を黒凰目掛けて放つ。しかし、それが放たれたと同時に彼(?)はその場で止まり出した為、魔撃をまともに喰らってしまう。が…


『……。』


『!!そんな…何…で…!!?』


今の魔撃でさえも全くと言ってた良い程ダメージは受けておらず、再びシャクリアの下へ歩き出す。シャクリアは黒凰の不死身ぶりに徐々に戦慄していく…。





―芥磨荘・103号室



「……。」


一方流は、学校から帰宅してからずっと降りしきる雨を窓から眺めていた。深波の事が気掛かりなのだが、未だに気持ちの整理がつかず、彼女に何を話すのか、この先どうすべきなのか分からず終いで過ぎ行く時間を浪費している…。


「…?はい。」


突然、インターホンが鳴り直ぐに玄関に向かいドアを開け来訪者を迎える流。


「よぉ…。」


「鏡神…一体どうしたんだよ?」


来訪者の正体は竜駕だった。しかし、その表情は普段のちゃらけたそれとは違い本日教室で見せた不機嫌な物である為、どうやら遊びに来たのが目的では無い様だ…。


「どうしたじゃねぇだろ。お前、こんな所で何管巻いてんだよ…!!」


「はぁ…?何って…!!」


「深波ちゃんが苦しんでるのにも気付かない上、探そうともせず何やってんだって聞いてんだよ!!」


質問の意図が分からず困り顔をする流を見て、竜駕は目をカッと見開き彼の胸倉を勢い良く掴み怒鳴りつける様に再び尋ねた。


「……え…!?」


「…昨日巡先生から、お前にこう伝える様言われたんだよ…!!」




「リンキュバスの様な悪魔達は皆、魔力を命としている種族。それを保つには人間の精気を定期的に補給しなければならない…まあ、人間で言う食事みたいな物ね。」


「まあ…大体解るな。」


「でもそれは、少々消費したらの話…大幅に消費した場合だと普通に動いたり、リンキュバス化するのがやっとで体力や魔力も半分にも満たない程度しか回復しない…。」


巡は、リンキュバスの基本的な特徴を語る。彼等の住む次元魔界では、大気中に発する瘴気を吸う事で体力や魔力に支障を来さないでいられる。しかし、人間界にはそれが存在しない為前述の手段をとるしか無いのだ…。


「だけど、それを解決する方法が一つだけある。その方法は…人間の体液を取り込む事よ。君の様な思春期の子に分かり易く言えば…エッチする事ね。」


「う…お、おぅ…!!///」


人間の体液を取り込む…それ即ち、人間とリンキュバスが交わると言う意味だと知り、竜駕はにやつきそうになるが真剣な表情を取ろうとすると言う、どっちつかずな感じで理解する。


「…ん?ちょっと待てよ…じゃあ深波ちゃんの体調が悪い原因が流だって言うのは…!!」


「さっき彼女の体液を調べて解ったわ。水始君が海噛さんに魔力の補給をしてなかった事に…。」


「あの…馬鹿が…!!」


流に告げたかった事を一通り話し終えた巡は、左の掌で眼鏡をクイッと直し溜め息を付く。竜駕は、事の原因たる流に対し拳を握り締めながら憤る…。




「そんな…!!」


「後、こうも言ってたぞ。深波ちゃんを大事に出来ねぇお前じゃ、どんなに弱っちい奴にも勝てねぇってな…!!」


「あいつを大事に…はっ…!!」


竜駕から聞いた今の言葉に、流はある言葉を思い返す…。




―やはりお前達は未熟だったな。属性の相性はおろか、闇絆の証の本質すら気付いていない…。




そう…先日の戦いで初の敗北を許してしまった相手…宍尾駈瑠/レオナ・グランヴォルドの魔契者・裂雷哮士の言葉を…。


闇絆の証の本質…文字通りリンキュバスとの絆が重視した者程その強さが増していく。一見当たり前の事なのだが、流はそんな基本的な事に気付いていなかった…それがあの戦いの決定的な敗北要因だったのだ…。


「(今思えば深波がしつこく迫って来た事何度かあったけど、そんな理由があったんだな…。なのに俺は…あいつの事を避けて…!!)」


深波がこれまで自分の身体を執拗に狙ってくるのが単なる快楽を得る為だと勝手に思い込んでいた流は、彼女をあんな状態にまで追い込んでしまった事を後悔し始める。


「…解ってんならさっさと深波ちゃんを探せ。右の手の甲見てみなよ。」


「右の手の甲…?こ…これは…!!?」


竜駕から解放された流は、彼に促され右の手の甲に目をやると、魔契者の証である鮫の紋章が青く点滅していた。


「紋章の点滅はそのリンキュバスが弱ってるって証拠だ。そこに手を当てるとリンキュバスの居場所も分かる。それ以上は言わないぜ…。」


「……っっ!!」


紋章の点滅はリンキュバスの危機を教える信号…つまり深波は、今現在命に関わる事態に陥っている事を示す。それを知った流は徐に立ち上がり彼女を探すべく部屋を飛び出した。


「やれやれ…俺もヤキが回ったもんだな。」


「ホント…何時ものあんたにしては珍しいわね。」


「お前も居たんかよ。流が心配だったか?」


竜駕の背後には、何時の間にか七花がそこに立っていた。実は彼女も流に発破を掛けようと此処へ赴いたのだが、竜駕の突然の怒号の声に驚き、今まで入るに入れないでいたのだった。


「べ、別に関係無いでしょ!!それより、何であんたがあそこまでしゃしゃり出たの?」


「別に…俺はリア充は嫌いだけど、女を泣かす奴がもっと嫌いだ。だから、あの馬鹿に深波ちゃんを探す様発破を掛けた…そんだけの話。」


「ふ〜ん…あんたも素直じゃないのね。」


「うるせぇ。」


普段の彼らしかぬ行動の理由を聞き、その真意を何となく察した七花は、意地悪そうな顔で笑みを浮かべて竜駕をからかい、彼もまたそっぽを向いてそう答える…。





『あっ…くぅぅっっ…!!』


『どうした、もう終わりか?』


一方シャクリアは黒凰の猛攻に地に膝を着ける程弱っており、対する彼(?)は依然無傷の状態でおり、どちらが優勢なのか言うまでも無い…。


『(何であいつは無傷なの…?攻撃は確実に当たってるから全く効いて無い筈が無い…。なのに、傷一つ付いてないなんて…!!)』


『どうやら本当に終わりの様だな…そろそろ楽にしてやろう…!!』


シャクリアの戦意が折れかけていると見た黒凰は、止めの一撃を放つべく右手を彼女に翳し魔撃で葬ろうとしたその時…


「水よ射抜け!!アクアロー!!」


『ぐぅぅっっ…!!?』


突然何者かの放ったアクアローが彼(?)の背後に直撃し、シャクリアは寸での所で助かった。今の魔撃アクアローを放った相手は勿論…


「深波!!大丈夫か!?」


『なが…れ…!!?』


彼女の想い人たる、流であった…。


『ほう…漸く騎士ナイトの御登場と言う訳か。一度は彼女を捨てた愚かな人間が何の用だ?』


「……。」


黒凰は、シャクリアを蔑ろにした流に対し侮蔑を籠めた言葉を言い放つ。しかし流は、一切反論はせず無言のままシャクリアに近付こうとするが…


『今更縒りを戻したい、とでも言うつもりか?愚かな…シャドウバインド!!』


「なっ…これは…ぐああぁぁっっ!!?」


『流!!』


一度自分のパートナーであるシャクリアを見放した彼を許さない黒凰はその前に阻み、黒い魔力を籠めた右掌を翳すと、流の影が人形となって動き出し、彼を抱き締める様に拘束する闇属性の魔撃・シャドウバインドを放った。


『我は決して許さぬ…一度結んだ絆を容易く捨て、それを今更拾おうとする身勝手な人間をっっ…!!』


「…ぁがああぁぁっっ!!!!」


黒凰は、シャドウバインドにより身動きが取れず倒れたままの流の身体を力強く踏みつける。これまで静かだった感情を少しずつ揚ぶらせながら…。


『流…ゲホッ…ゲホッ…!!…あんたの…目的は…なんなの…よ…!!』


シャクリアは大きい過ぎるダメージの痛みに苦しみにむせながらも流の心配をする。それと同時に、黒凰が何故これまで多くのリンキュバス達に力を与えたり、絆を蔑ろにする人間をここまで憎むのか尋ねる。


『…良いだろう。冥土の土産に教えてやる。先ず、我の腰のバックルを見よ。』


『バックルって…これは…!!?』


シャクリアは黒凰の腰にある、時計回りに十二匹の動物が刻まれそれに囲われた鳳凰の紋章が同じく刻まれた鉄のバックルを見て愕然とした…。


『どうやら知ってる様だな。我々は悪魔組織「黒の理界ダーク・コンプリート」…。』


「黒の…理界…!!」


『黒の理界はリンキュバスやその魔契者への戦闘支援及び訓練、定めた人間の抹殺を主な任務としている。そして…現在最も最重視されているのが、リンキュバスより更なる力を得たリンキュバス…十二体のゾディヴィルの覚醒…!!』


「『ゾディヴィル…!!』」


黒の理界の目的…それは、十二体存在するとされている通常のリンキュバス以上の力を持つ存在…ゾディヴィルを集結する事である。そうなれば、数々のリンキュバス達に力を与えた理由も説明が付く…。


『そして、我もまたその内の一人…。これまで、我が与えた力を持ったリンキュバス達を悉く倒して来た貴様達なら、我等の同胞になり得るのだと確信していたが…とんだ期待外れだったな…。』


「ふざ…けるな…!!」


『流…?』


黒凰の話を一通り聞いた流は、拘束され倒れつつも彼(?)を睨み付ける…。


「さっきから勝手な事ばっか言いやがって…お前等の勝手な判断でどれだけの人達が犠牲になったと思ってんだ!?お前等に人間を裁く権利があるとでも思ってんのか!?」


『…黙れ!!』


「ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」


『流!!』


黒凰がこれまで陰で暗躍した行為について怒りをぶつける流だが、それに勘に障ったのか先程以上に激昂した彼(?)が魔力を籠めた右手を握り締め、シャドウバインドの拘束力を高めた事により呻き苦しむ…。


『貴様に何が分かる!?悪魔だと言う理由だけで蔑まれ、苦しんだリンキュバスの痛みを!!』


黒凰はのっぺりとした仮面の奥で怒りの感情を露わにする。彼(?)が人間を異常に憎む理由は、単にそれが取るに足りぬ存在と言う生易しい物では無い。もっと根深い怨みと憎悪を抱いているのだ…。


『も…もう止めて!!流はもう私とは何の関係も無いわ!!殺すんだったら私を殺して!!』


シャドウバインドの拘束力に呻き苦しむ流を見て、シャクリアは黒凰に彼を解放する様悲痛な声で懇願する。もう自分とは無関係だからと…。


「…みな…み…聞いてくれ…!!お…俺は今まで…君があんな事をする理由を…知らずに…いや、知ろうともしないで…勝手にビビって…勝手に距離を置いてた…!!こんなんじゃ負けて当然だよな…。」


流は身体を締め付けられながらも、自分の思いをシャクリアに告げる。魔力の補給を怠り、彼女を苦しめて来た自分を皮肉りながら…。


「だから…俺は…もう君と距離を置く真似はしない…!!これからは嬉しい事も…楽しい事も…苦しい事も…全部一緒だ…!!深波…もう一度…俺と一緒に戦ってくれ!!」


『なが…れ…!!』


流の思いを聞いたシャクリアは、歓喜の涙を流した…。いくら魔力の補給の為とは言えあんな酷い事をした自分を許し、再び共に戦おうと言ってくれた彼を好きになって良かったと、心から思った…。


「その為には先ず…こいつを破ってみせる…!!うおおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」


『何…シャ、シャドウバインドが…うわああぁぁっっ!!?』


流はシャドウバインドの拘束を破るべく、持てる限りの力を大きく溜める。すると彼の全身が青く輝き、無数の大きめの泡の様な物が纏い出す。やがてそれは無限に溢れ出し、流の影で形成されたシャドウバインドを解除したばかりか黒凰をも吹き飛ばした。


「はぁ…はぁ…深波!!」


『流…!!』


「ごめん…直ぐに回復させるから…!!」


『んんっ!!?///』


流は直ぐ様シャクリアに駆け寄り、謝りながら彼女に魔力を補給すべく迷い無く口付けた。普段は自分からするキスを流の方から仕掛けて来た為、シャクリアは顔を真っ赤にする。


「ぷはぁ…!!これでおあいこだな。気分はどうだ?」


『うん…大丈夫…。///』


体調を尋ねる流に、未だに顔を赤くしているシャクリアは一通り回復した事を告げる。しかし、未だ戦いは終わっていない…。


『ふむ…右往左往して漸く真の絆を築いたか…。見事だ、感動的だ。ならば…この一撃がそれをも上回るかどうか、試してやろう!!はあぁぁぁぁっっっっ…!!!!』


黒凰は半透明の翼を広げて飛翔し、流達の絆が修復…いや、より強固になった事を賞賛しつつ全身から黒い炎の魔力を纏い、気合い溜めをする。


『黒い炎…!?』


シャクリアは、黒凰の魔力を見て疑問を感じる。彼(?)の属性は確かに炎だが、それなら通常は赤い色の筈…にも関わらず、それが黒い物である為不思議に思う…。


「深波…例え相手がどんなに強かろうとも、俺達には強い絆がある…!!」


『流…そうね。あいつに私達の絆の強さを存分に思い知らせてやる!!』


流の言う通り今は目の前の敵を倒す事に専念するべく、彼と共に新たな絆で戦う事を決意するシャクリア。


「闇絆の証!!女帝鮫の帰還!!」


流がそう叫ぶと、シャクリアは青い光に包まれ女帝鮫の帰還へと変化、彼に装備…いや、彼と一つとなったのだ…。


「うおおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」


それと同時に流は、先程同様身体から青い光と無数の巨大な泡…水属性の魔力を纏いそれを溜めていく…。


『ブレイズチャージ!!』


黒凰は両の掌を力強く合わせ、黒い炎の魔力をブレイズチャージした。そしてその掌で円を描くと、黒い魔法陣が発生しそこから巨大な黒い太陽の様な炎のエネルギー体が生まれ…


『全て燃え尽きろ!!クリメイション・スフィア!!』


両の掌を前に翳し、巨大な黒い炎のエネルギー弾で敵を葬る必殺技「クリメイション・スフィア」を流に放った…。


「俺達は負けない!!アクアチャージ!!」


流も、右手に籠もった水の魔力を女帝鮫の帰還にタッチしてアクアチャージを完了させる。すると女帝鮫の帰還の周囲に、先程の流の様に無数の青い泡と激しい水流が円を描くかの様に纏い回る…。


『これが私達の必殺技…!!』


「『ストリーム・サークルーーーーッッッッ!!』」


流が女帝鮫の帰還を大きく振り投げると、それは勢い良く回転し、周囲の水流と泡で出来た刃で敵を斬り裂く必殺技「ストリーム・サークル」をクリメイション・スフィア目掛けて放った…。


「いっけぇぇぇぇっっっっ!!!!」


『何…ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』


ストリーム・サークルと化した女帝鮫の帰還はクリメイション・スフィアを容易く斬り裂き、その勢いは激流の如く止まらずそのまま黒凰に直撃し、彼(?)の胴体を真っ二つにし大爆発を起こした…。


『やったわ!!』


「ああ。俺達の勝ちだ!!」


女帝鮫の帰還を見事にキャッチした流は、シャクリアと共に勝利の余韻に浸る…。「属性の相性」、「絆の大切さ」…それが彼等を大きく成長させた…。




流達と戦った場所より遠く離れた無人の場所で、真っ二つに倒れた黒凰。だが…


『中々の成長ぶりだったな…だが、我は鳳凰の如く不死身…。』


生きているばかりか真っ二つになった胴体をくっつけて何事もなかったかの様に立ち上がると言う、何とも面妖な能力を見せた…。


『水始流にシャクリア・シィヴァイト…中々面白い奴等だな…。』


黒凰は、のっぺりとした灰色の複眼をシャッター状に口元まで開き、何処か楽しそうに口を緩める…。




―その夜



「はぁ…はぁ…深波…好きだ…愛してる…!!こうして壊したい程…!!///」


「はぁ…はぁ…私も…愛してる…!!貴方にだったら壊されても良い…!!だからもっと…もっと壊して…!!///」


流と深波は、漸く真の絆を手にした記念に、一つの寝床で互いに裸となり、激しく絡み、愛し合った。より絆を強固にする為、より強くなる為…。




「ふぃ〜…俺って意外に単純なんだな。『お前』と一度交わっただけでああまで変わっちまうなんて…。」


「ふふ…良いのよそれで。寧ろまだ壊され足りないくらいよ♪」


流は、初体験にて自分がああまで変化した事に小さく溜め息を付くが、深波はそれが普通だと言いつつまだ物足りないと、彼の股間を優しく撫でる。


「ま、それも悪くない自分がいるけどな。深波、これからも宜しく。」


「私も宜しく♪」


優しい笑みを浮かべて互いに言い合うと、二人は優しくキスをする。二人の夜はまだまだ続く…。


流と深波が遂に…ヤッちまったな!!(下ネタでごめんなさい)


今回はかなり後付けっぽい設定が多く加味+無駄に長文のせいで大変読みにくい事態となり大変申し訳ありません。m(_ _)m


魔撃は、リンキュバスの戦闘方法が格闘のみと言うのも物足りない、魔契者も何らかの攻撃サポートが必要だと思い付け加えました。


次に、今までリンキュバス達に力を分け与えていた謎の黒い鳳凰鎧の戦士…リンキュバス達をまとめ上げる悪魔組織「黒の理界ダーク・コンプリート」の一員・黒凰コクオウが流達の前に登場!!ダメージを受けても全く無傷…持久戦では絶対アドバンテージを取るでしょう。その正体はまだまだ秘密です。


深波をヤンデレ化させる程追い込みヘタレた流を叱咤激励したのは何とあの竜駕へんたい!!奴だって何時も変態では無く言うべき時は言う、やる時はやるんです!!(^_^;)


最期は「プロレスごっこ」(うぉい!!)。あまり激しく無くギリギリ一歩手前の描写をして大丈夫なのか不安になりつつもヤってしまいましたが、皆さんはどうお考えですか?(聞くな!!)


次回はそんな二人の初デートを書きます!!普通逆じゃないかとツッコまないで下さいませ(^_^;)


そして、ある方のキャラクターとミニコラボしますのでその辺もお楽しみに。



ではでは。m(_ _)m

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