あーん
「こわいぃい──! 何あれ!?」
「あんなにすごい魔法、初めて見た──!」
「ちょっと待て、あの巨大な竜巻が、魔法!?」
「人間じゃ無理だろ」
「魔族とか余計こわいぃいい──!」
帝都の民がざわざわしてる。
「自然災害って怖いなー!」
透夜だけが笑顔だ。
頭も身体もぽこぽこになった帝王は、うめきながら目を明ける。
「おとうさま」
「だ、だいじょうぶ、です、か」
心配そうにのぞきこむユィルとミィに、王は目をむいた。
「ユィル! ミィ! ──っ!」
切れたらしい、血のにじむ唇で頭を押さえる帝王に、透夜と仲間たちの冷たい目が刺さる。
「……わ、たしは……なに、を……?」
ぼうぜんとつぶやく王に、息をのむ。
「……まさか……」
透夜と仲間たちが顔を見あわせる。
「……記憶が……ユィル……? ああ、ユィルか! 大きくなって……!」
王の瞳から、涙があふれる。
抱きしめられたユィルの瞳が、くしゃりと歪んだ。
「……おとうさまは、私が、いらないんじゃ……」
「まさか──! ……っ……頭、が……」
帝宮の地下にある大元の魔道具は壊したけれど、もしかすると王の身体に仕こまれた魔道具はまだ生きているのかもしれない。
──ぽこぽこにしちゃって悪かったかな。
早合点してしまった透夜は反省しつつ進言する。
「陛下、ちょっと口を開けてくれますか」
突然進み出た子ども(透夜は12歳だよ、本人が忘れがち!)に王は腫れたまぶたを瞬いた。
「……き、みは……」
「はい、お口あーん」
ぼうぜんとする王を、訳がわからないながらもユィルとミィが励ました。
「おとうさま、トゥヤはすごいんです、とにかく口を開けましょう」
「おとう、さま、あー、ん、です……!」
ユィルとミィが可愛い。
ふたり並ぶと、血が繋がっているんだとわかる。
顔だちも、雰囲気も、よく似てる。
うっとりしたらしい王は、素直に口を開けてくれた。
「……あー、ん……?」
おじさんの『あーん』に萌えは……あるのかもしれないが! なんとなく前世の自分を思いだすような残念な気もちで口のなかをのぞきこんだ透夜は吐息した。
「精霊さん、この間のまたお願いします。防御魔法展開、魔道具粉砕起動!」
『はちみつ!』
『はちみつぅ──!』
「ロロァさま、はちみつお持ちですか!」
しゃっとふり向いた透夜に、しゅっとロロァが手を挙げてくれる。
「はい!」
衣のあちこちにお手製のぽっけをつけて、ちっちゃいはちみつの瓶をたくさん精霊さんたちのために常備して笑顔で差しだしてくれるロロァが天使だ。
「よしじゃあ粉砕します、口開けたままでお願いしますー、痛いからって手を挙げてくださっても止まりませんー」
「…………え…………?」
引きつる王ににっこり笑顔の透夜の魔力が指先に凝集する。
「いきますよー!」
透夜の繰りだす魔法が、王の奥歯で光る魔道具を粉砕した。
「あぎゃぎゃギャギャ──!」
精霊さんのおかげで防御魔法は完璧に発動しているし、細かい魔道具の屑も風の精霊さんが集めてくれるけど、歯の中に仕こまれた魔道具を粉砕する衝撃は、顎が砕けそうな感じかもしれない。
起きてるとちょっとつらかったね。
涙目な父に、ミィとユィルがわたわたしてる。
おそろいで、かわいい。




