ごめんなさい
復讐は、自分がぐちゃぐちゃになるって、ロロァが教えてくれた。
ほんとうだと思う。
本人が復讐を望んでいないのも、わかってる。
でも、傷つけられたユィルを、キァナを、ロロァを思うと、心が燃える。
人を踏みにじって嗤う輩が、何の報いも受けないなんて、あんまりだ。
ほんとうは、違うって知ってる。
絶対に、自分のしたことは、自分の身に降り注ぐ。
生きる今も、死んだ後も、きっと。
だから、報いを受けないなんて、ありえない。
どんなにのうのうと高笑いで生きているように見えても、必ず報いはやってくる。
わかっているのに。
復讐したら、自分に罪が降りそそぐ。
わかって、いるのに。
止まれない。
「ついでだから」
言い訳をたずさえた透夜は、これは私怨だからと、精霊さんたちにお願いする。
「こんなこと頼むのは酷いから自分の魔力だけでやる。力を貸さないでね」
『とーや……?』
精霊さんたちが戸惑うように瞬いて、精霊さんたちの力が途切れた瞬間、透夜は魔力を解放する。
噴きあがる竜巻が、狙い通り、ひとりを派手に巻きこんだ。
「うぉおぁああア──!」
吸いこまれたバギォ帝王が、ぽこぽこにされて落ちてきた。
透夜が指をひるがえす。
うなりをあげる竜巻が、キァナの生家、ゾンデ邸を呑みこんだ。
「ぎゃあぁあァアア──!」
ゾンデ家当あるじと愛人が吸いあげられ、ぼっこぼっこになって落ちてくる。
ついでなので、邸も吸いあげて、はちゃめちゃにしてみた。
「家が、宝石が、金貨が、資産がぁあアア──!」
泣きわめいてくずおれるゾンデ家を確認した透夜は指の向きを変える。
命を取ったり、拷問したりしない。ユィルのために。キァナのために。ロロァのために。
報いは必ずやって来るとわかっていても、それでも自分に力がある今、ユィルがキァナやロロァが受けた痛みを、味わってほしいと思うんだ。
ロロァの生家、ギビェ邸を竜巻が襲う。
民から吸いあげた贅を尽くした屋敷が、一瞬で塵になる。
ロロァの父を、継母を、義弟を、風がからめとる。
石礫で、めきょめきょにしようとした透夜は、跳んだ。
風が、止まる。
石礫が、止まる。
「ひ、ひィイ──!」
泣き叫ぶ三人に、肉薄する。
「ロロァさまに、後でしかられるから。
……こんなのロロァさまが受けた痛みのほんの一部にしかならないけど」
透夜は、拳をにぎる。
「思い知れ」
復讐の拳が、ロロァの父に、継母に、義弟にめりこんだ。
「が、は──!」
内臓が潰れたのだろう、血を吐いて崩れ落ちる三人を見ても、何も思わなかった。
だって、ロロァが受けた体の傷は痕になり、心の傷は癒されることはない。
ずっとロロァを傷つけ続ける。
この三人が血反吐を吐いて儚くなったって、何の意味もない。
拳をめりこませて、血を吐かせないとわからない透夜は、愚かなのだろう。
──ロロァは、止めてくれたのに。
止まれなくて、ごめんなさい。
だって、どうしても、ゆるせなかったんだ。
立ちすくむ透夜を、駆けてきたロロァのちいさな腕が抱きしめる。
「とーや」
「……ロロァさま……ごめん、なさい……俺、止まれ、なくて……」
こぼれ落ちる涙を、ロロァの指がすくってくれた。




