階段は
もしかしたら地下に通じる裏道とかあるのかもしれないけれど、そんなのを探している間に皆が暗殺人形に戻ってしまったら大変だ。
拙速を尊んだ透夜は、警護していた衛士たちを一瞬で昏倒させた。
地下へと降りる階段に繋がっているのだろう扉には魔紋が不気味な光を放っている。
ふつうに入ろうとしても入れなさそうだ。
さわった瞬間に呪われそうだよ!
眉をしかめた透夜は早速精霊さんにお願いしてみた。
「精霊さん、これ、砕ける?」
『やってみるー』
パァン──!
『砕けたー!』
さすが精霊さん、スパダリすぎる。
「結界の精霊さんいないのに、すごすぎる! ありがとー!」
音が鳴らないように拍手して感謝する透夜に、精霊さんたちが笑う。
『さっき帝都の結界を魔道具で通り抜けた時に、結界の精霊さん、来てくれたんだな!』
「え、うそ! ごあいさつもしませんで!」
あわあわ頭をさげる透夜の前で、ちいさな光がきらきら揺れる。
『とーやの魔力、おいしー。ロロァ、守ってくれる?』
「我が身に代えて」
胸に手をあて、膝をつく透夜に、精霊さんがきらきら光をふりまいて笑ってくれた。
『この間お願いしてくれてね、僕、ロロァが、かわいーの。でもロロァ、僕の声が、聞こえないみたいだから、とーやに通訳してもらおうと思って!』
精霊にも愛されるなんて、さすがわがきみ!
「よろこんで!」
焼き肉屋さんみたいだよ。食べたくなったよ。じゅわっと滴る肉汁!
皆で無事に戻れたら、皆で笑って食べたいな。
願う気もちは、きっと生きる力になる。
『とーやの魔力を食べたらね、僕、強くなったみたいなの。ちょこっとした結界なら、破れるよ』
きらきらの結界の精霊さんが、誇らしそうに胸を張る。
「ありがとうございます! これから何かやばそうなトコに行くので、よろしくお願いします!」
丁寧に頭をさげたら
『がんばる!』
ちらちら瞬きながら拳をにぎってくれる精霊さんが、天使だ!
魔紋が砕け散った扉は、不気味な光も消えている。
透夜が押すと、すんなり開いた。
真っ暗な石で造られた階段が地下へと続いている。
敵の場所と数を把握した透夜は、かろやかに階段を蹴った。
階段は降りるものじゃない。
飛ぶものだ。
位置エネルギーから空気抵抗を引いた分がすべて速度に変換される。
さらに風の精霊さんに加速してもらうと、弾丸のように突撃できる。
このままつっこむと足が折れるかもなーと心配した透夜は、懐から折り畳み式の槍を取りだした。落ちながら軽くふるだけで槍ができる。暗殺人形の秘密道具だよ。
「あの扉の魔紋を壊して!」
叫ぶだけで精霊さんが応えてくれる。
『がんばる!』
パァン──!
砕け散る魔紋に、警護の衛士たちがどよめいた。
「な、なんだ!?」
「何が起こった!?」
「上を見ろ!」
「なんか、落ちてくる──!」
「ギャアァぁあ──!」
ドォオォオン──!
衛士ごと扉を槍で破砕した透夜の視界を、広大な部屋にそびえる魔道具が埋め尽くす。
その魔道具に繋がれているのは、魔導士たちだった。




