いってきます
皆が無理をしていないこと、心拍も思考も正常なことを確かめた透夜は、息をつく。
「よかった」
微笑んで、拳をかかげる。
「皆が平気そうなら、よい子の隠密団、全員集合! ミィとセオを守るために、がんばろー!」
「おー!」
応えて拳をかかげてくれた皆がすぐに散開する。
紅蓮は皆を呼びに、柳は周りの暗殺者の割りだし、藤と常葉はミィとセオの護衛だ。
何も言わなくても、最も得意なところを皆がわかっていて、瞬時に皆が動いてくれる。
「じゃあわがきみは……」
「一緒にいく!」
ロロァがちっちゃな拳をかかげてくれる。
「うわきは、しませんよ?」
笑ったら、ロロァも笑った。
「もしミィとセオが怪我したら、僕の出番だから!」
ちっちゃな胸を叩いてくれる。
しゃっと戻ってきた常葉が笑った。
「一緒に護ってあげるよ。いちばん強いからね!」
胸を叩いて、笑ってくれる。
「よし、じゃあ俺は柳が戻ってきてくれたら、突撃だな」
「と、とつげき!?」
目をむくロロァに透夜はうなずく。
「あの魔道具が他にもあったら、皆が危険だ。おそらく大元の魔道具が帝宮にあると思う。
だから、いってきます、ロロァさま」
唇をかんだロロァは顔をあげた。
「……絶対、無事に帰ってきてね」
心配の瞳で見つめてくれるロロァの前にかがんだ透夜は、微笑んだ。
「一生、ロロァさまをお護りするんです。こんなところで、いなくなったりしません」
フラグを自分で立てた気がするけど、だいじょうぶ!
とびきり可愛くて、とびきりやさしい、悪役令息だなんて絶対嘘なロロァは、しあわせになるって、決まってるから。
その隣にいられたら、至上のしあわせ
びんくりするほどはやく戻ってきた柳が、広げた地図に印をつけながら暗殺者の位置を報告してくれる。
「あと、ここ。何かある。魔法?
トゥヤが、天幕壊したから、繋がってたのが、揺らいだ? 見えるようになった、みたい」
柳が指したのは、帝宮の地下だ。
「ここから、魔力? の流れみたいのが、帝都中に走ってる」
ドドが張っていた真っ暗な天幕に繋がっていた魔力の流れが、途中で切れているらしい。
「確かに、あれだけの魔紋を起動させるなんて、あいつだけの魔力じゃないっぽかったよね」
うなずく藤の向こうから、紅蓮が手を振った。
「皆、連れてきたぞ! 帝都のなかで待機してくれてる! ユィルとキァナには空と木蓮を護衛につけた!」
「さすが紅蓮! ありがとう!」
魔道具が5つしかないのを忘れがちな透夜をいつもフォローしてくれる紅蓮がスパダリだ。知ってる。
「やりますか」
ぽきりと肩を鳴らした透夜に、隣に並んだ藤が笑う。
「ほどほどにね」
「まさか、灰滅させるだろ」
唇をつりあげた。
ドドをぼこぼこにできなかった分、暗殺者をぼこぼこにするのは酷いから、一撃で昏倒させてあげる。
ゴゴゴゴゴ──!
あふれる闘気に、藤が引いてる。
「……あーあ、魔人を覚醒させちゃった」
「可哀想に、全滅だね」
とても楽しそうに常葉が、藤が、紅蓮が、柳が笑う。
「そうなるように、がんばろーな!」
「おー!」
拳を重ねて、笑った。
透夜はロロァをふり返る。
「いってきます」
「いってらっしゃい……!」
ちっちゃな手を振ってくれる。
絶対に帰ってくるから、どうか笑顔で迎えてください




