ずっと
ロロァが言ってくれること、透夜は頭では理解できる。
それが、あたたかな光に満ちた、やさしい言葉だって。
でも
「……わがきみは、ゆるせるのですか」
自分を虐げ、殺そうとした輩を。
真っ暗な目をしているだろう透夜に、ロロァはちいさな手を伸ばした。
「おいておくの」
やさしい手が、頭をなでてくれる。
「ゆるすとか、さいわいを祈るとか、今は絶対無理だから、おいておくの。そしたらね、いつか、僕が大人になって、とーやとの子どもを授かったりして……」
えへへ
赤い頬で、ロロァが笑ってくれる。
「僕がいっぱいしあわせになったら、昔のつらいことも、苦しいことも、ぜんぶ愛せるように、なるかもしれない。ゆるせるように、なるかもしれない。だから、僕がドロドロにならないように、おいておくの」
やさしい言葉を、降らせてくれるのに
「絶対に、ゆるせない──!」
真っ暗な目で死んでいった59人の仲間が、目の前によみがえる。
ふるえる身体を、ちいさな手が、抱いてくれる。
「とーやのかなしみを、くるしみを、死んでいった皆の痛みを、僕が、抱きしめるから。いっしょにドロドロに落ちるより、いっしょに、やさしい光のほうへ」
ふるえる指を、にぎってくれる。
「……俺は、汚くて、情けなくて、真っ暗で、全然、スパダリじゃなくて……」
「うん」
「……でもロロァさまが、だいすきなんです」
「うん」
「ロロァさまのためなら、ロロァさまを悪役令息に落とすギビェ家を、帝家を、エゥゲ王家を皆殺しにして笑うくらい、ロロァさまが、だいすきなんです」
「うん」
「……汚くて、情けなくて、真っ暗で、すぐにドロドロしちゃうけど……全然スパダリじゃないけど、ロロァさまといっしょなら……やさしい光のほうへ、向かいたいと思うから」
「うん」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの情けない顔で、告げる。
「一生、ロロァさまのお傍に、いたいです」
真っ赤な頬で、ロロァが笑う。
「僕も!」
ちっちゃな腕で、抱きしめてくれる。
「ずっと、ずっと、傍にいてね」
とろけるように、笑ってくれる。
真っ暗に落ちた手を、すくいあげてくれる、あなたが、わがきみ
ぎゅうぎゅうロロァを抱きしめて、わあわあ泣いた透夜に、声が降る。
「あのー、透夜、もしかしなくても、セオとミィが危ないんじゃないかな?」
お漏らし失神ドドをものすごく厭そうに縛りあげて転がした藤のつっこみに、透夜はあわあわ顔を拭った。
「そうだった! その前に、皆、平気か? 頭のなかかき回されだろ、気もち悪くない?」
「僕、回復する!」
ロロァがちっちゃな手をかかげてくれる。
「平気だ、透夜が叩き壊してくれた」
微笑む紅蓮に、皆がうなずく。
「いやー、やばかった。なんか、ちょっと前は、あーだったなーって」
頭をふる藤の長い髪が揺れて、常葉の緑の目が据わる。
「蹴り殺してやりたいけど、ロロァさまのお言葉もあったしね、我慢するよ。僕らがドロドロになっちゃうだなんて、癪だもの」
ふんと常葉が鼻を鳴らして、柳もこっくりうなずいた。
照れくさそうに赤い頬でロロァが笑ってくれる。
わがきみはいつだって、天使だ。




