表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/92

元凶




 一瞬で王太子の顔になったセオが、ちいさな身体で対等の存在であることを示すように顎をあげた。


「迎えに感謝する、バギォ帝国帝王。エゥゲ王国王太子、セオ・ジオ・エゥゲである」


 じぃじと護衛さんたちが隣でうやうやしく頭をさげる。

 膝を折るふりで、透夜と隠密団の皆は、バギォ帝家から距離をとった。


「……こいつか」


 透夜の声が低くなる。

 常葉が、藤が、柳が、紅蓮が、獲物に手をのばすのを、目で制した。


 今、帝王を殺したら『よい子の隠密団』は逆賊だ。


 暗殺人形の顔など、ひとつも、おぼえていないのだろう。

 命令のままに動く駒を少し失ったことなど、痛くも、かゆくもないのだろう。


 それは透夜にもありがたいことだった。



「心置きなく、やれるなあ」


 かすかに嗤う自分がいる。


「……とーや?」


 ロロァが心配そうにすそを引っ張った。

 見つめた透夜は、ロロァと目をあわせるためにかがむ。



「わがきみは、復讐を、どう思いますか」


「……ふくしゅう?」


 透夜はうなずく。



「仲間をたくさん殺した者は、いなくなるべきでしょう?」


 どこかあまい声だった。


 ほんとうの正義なんて、誰もに等しく認められる正義なんて、どこにもないのに。


 人の数だけ、思いの数だけ、正義は存在するのに。

 正義の鉄槌をふり下ろす、それは滴り落ちるような甘い腐臭の、とろけるような愉悦の薫る、復讐だ。



「トゥヤ」


 今にも刃をむきそうな透夜を止めたのは、常葉だった。


「僕らを止めておいて、トゥヤが出るとかないよ」


 長い髪を揺らして、藤が鼻を鳴らす。


「やるならひっそり、誰にも犯人がわからないように、だろ?」


 白い歯を見せて笑う紅蓮が、とても頭よさそうだ。


「皆で、行く」


 柳の言葉に、目が覚める。



 そうだ。

 復讐するなら、皆で。

 孤児を暗殺人形に変える秘法を叩き潰すなら、皆で。



 顔をあげる透夜の手を、ロロァのちいさな指がにぎる。


「……ふくしゅう、だめだよ。とーやが、皆が、真っ暗になっちゃう。そんな価値、こいつにない」


 目をまるくした透夜が、皆が、吹きだして笑う。



「ロロァさまが、いちばんひどい!」


 お腹を抱えて藤が笑った。





 帝家のほうから、身なりのよい男が進み出る。

 記憶は壊されているが、その顔にぼんやり見覚えがあった。


 指令を受けたような気がする。


 壊された記憶が頭の奥で、ゆうらり、よみがえろうとして、消えてゆく。

 指令をだした者の貌も声も忘れるように、強力な暗示が掛かっていたのかもしれない。

 思いだす記憶さえ、ないことにされていたのかもしれなかった。


 それでもわずかに見たことがある気がするのに、使う方には手駒の顔をおぼえる気はないらしい。

『よい子の隠密団』の顔を見ても、表情はひとつも揺らがなかった。


「冒険者同盟の『よい子の隠密団』の皆さんですね。バギォ帝国宰相を司る、ドド・ボフマです。国境からの護衛、ご苦労でした」


 白い髪をなでつけながら微笑んでねぎらってくれる宰相は、冒険者にも名乗ってあいさつしてくれる、よい人らしい。


 人を人とも思わない帝家とは、すこし違うのかもしれなかった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ