あんぐり
護衛さんの数がちょっと多過ぎるかもしれないが、いちおう商人が子どもたちを連れて、食糧を仕入れて売りにゆく感じが出てると思う。
馬さんの負担にならない程度に、護衛さんにも交代で幌馬車に入ってもらい、人数を押さえながら向かうことにする。
皆の幌馬車は村人に怪しまれることなく、快調に出発した。
「ものすごく重いのをひいてくれてる馬さんのぽっくりぽっくりと一緒に歩いてると身体がなまるから、皆で近辺の暗殺者をぽこりながら進むっていうのはどうかな?」
スパダリっぽく、透夜は鍛錬プランを提策してみた!
「……せっかく商人の幌馬車で偽装してるのに、自ら暴露するみたいに打って出るなんて、あんぽんたんの極致じゃないの?」
歩くのが不服そうな藤に、うろんな目でつっこまれた!
いつもより刺さる。さみしい。
「じゃあ反復横跳びしつつ前進は?」
柳と紅蓮の目がきらきらして、常葉と藤の目が、どんよりした。
「ふつうに歩こうよー! 襲撃の時の体力が残らなくなるよ!」
常葉の抗議に、仕方なくうなずいた。
「わ、わかった」
しょんぼり落ちる透夜の背中を、背伸びしたロロァがぽふぽふ慰めてくれる。
天使だ!
さすがに急峻な山を越えて、ひなびすぎた村から出発するとは思わなかったのだろう、国境付近は平和だったが、帝都に近づくにつれ大きな町になってゆく。
馬車をひくには街道を通らなければならないので、どうしたって人の目にふれる。
「だから歩こうって言ったのにー」
襲ってきた暗殺者を一撃で昏倒させた透夜が吐息する。
「じぃじを背負って走るとか、あやしすぎるから!」
暗殺者を昏倒させながら繰り出す藤のつっこみが、ちょっと痛い。
「ぐるぐる巻きにして、街の衛士に提出だな」
透夜と常葉、紅蓮と藤、柳で一瞬で9人の暗殺者を昏倒させる。
出番だと剣を構えていた護衛の皆さんが、あんぐりしてた。
幌馬車から出てきた、じぃじも、あんぐりしてる。
「9人も引きずってくのやだから、通報弾、とう──!」
透夜の願いを聞きつけた火の精霊さんと風の精霊さんが、火の玉を空へと打ちあげてくれる。
『暗殺者の襲撃あり。9人捕縛済み。回収願う』
空に描かれた炎の文字に、エゥゲ王国の皆さんが、あんぐりしてる。
近くの街から応えるように炎の玉が上がった。
『りょーかいだって!』
「ありがとうー!」
『はちみつは!?』
精霊さんたちが、はちみつの味をおぼえてしまった!
「はちみつか……誰かはちみつ持ってないかな」
眉をさげる透夜に、ちいさな手が挙がる。
「僕、ある!」
胸を張ったロロァが、精霊さんたちに大切なはちみつを分けてくれる。
天使だ。
帝都に近づくごとに、暗殺者の数も回数も増えてゆく。
ほんとうにセオを殺す気なのかと思うと胸糞悪いこと、この上ない。
「ふん──!」
こめかみを撃ち抜く拳につい力が入ってしまって『ぱーん!』ならないように気をつけないと!
「まあいい鍛錬になるかなあ?」
首をかしげる透夜と背中あわせの藤の長い髪が風に流れる。
「ならないでしょ。弱──!」
藤のつっこみが、ひどい。
「でもまあ、真剣を向けられるのは、わるくないよね」
うふふふふ。
笑う常葉が、こわい。




