出発だよ
「そこを何とか! 幌馬車の作り方を風の精霊さんに探してもらって、布とか木材とか切ったりしてもらって、火の精霊さんに布をくっつけてもらって、幌馬車を作ってください、お願いします!」
ご不満そうな精霊さんたちを拝む透夜に返ってきたのは、ぶーいんぐだ!
『えー』
『ちょっと、前に約束したお菓子をつくってもらってないんだけど!』
ぎゃあ!
報酬、未払いでした!
「全力でごめんなさい! この仕事が成功したらお金をもらえるはずなんで! はちみつたっぷりのお菓子の報酬は後払いでお願いします!」
『えー』
『ぶー』
透夜と精霊さんたちが話しているのが聞こえたみたいに、ロロァが手を挙げた。
「僕、おやつ、持ってる。はちみつたっぷり」
ふかふかのパンに、はちみつをたっぷり染みこませた、はちみつパンだ!
「食料にと思って持たせたんだよ」
「紅蓮、えらい!」
短い紅蓮の髪をなでなでしたら、くすぐったそうに紅蓮が笑う。
「わがきみ、おやつをちょこっともらってもいいですか?」
「とーやに、あげる」
大切なおやつを、笑って差しだしてくれるロロァが天使だ。
「精霊さん、わがきみがおやつくれたよ。これ食べて頑張ってー!」
『おおお!』
『はちみつだ!』
『あまーい!』
『すごーい!』
「……今まで何もしてあげられなくて、ほんとにごめん」
しょんぼりうなだれる透夜の肩を、精霊さんたちが、ぽふぽふしてくれる。
『とーやの魔力のほうが美味しいからいいんだよ』
『はちみつは別腹だけど!』
精霊さんたちが笑ってくれる。
『幌馬車、作ってみよー!』
きらきらの力をかざしてくれた。
精霊さんと皆の努力で、幌馬車ができました!
たたらっらったったー!
透夜と仲間たちは、幌馬車を手に入れた!
「じゃあ馬さんに元気になる魔法を精霊さんたちに掛けてもらったら、出発!」
『おやつはー?』
『はちみつはー?』
「こ、今度こそちゃんと払いますから、もうちょっとお待ちください……!」
涙目な透夜に、ぷくりとしたものの、魔法を使ってくれる精霊さんたちが天使だ。
「元々馬車の周りで歩くつもりだったと思うけど、護衛さんたちは歩いてね」
「了解です!」
「僕、あるく!」
ロロァが手を挙げる。
なんて、えらい、わがきみ!
「お、俺も!」
セオが手を挙げた。
「……セオ、言っておくけど、わがきみは、俺の、わがきみだから」
ちょっと心配になった透夜が低い声で告げたら、セオが笑って背を叩いた。
「わーかってるって! トゥヤ!」
「……人のものほど輝いて見えたりしない?」
声をたててセオが笑う。
「見える! でもトゥヤを哀しませたりしないよ。俺を救ってくれたのは、トゥヤだから」
透夜はゆるく首を振った。
「じぃじだよ」
セオのちいさな顔が、くしゃりと歪む。
「……うん」
透夜の手が、セオの頭をわしゃわしゃなでる。
「じゃあ疲れるまで、皆で歩こう!」
「おー!」
拳をかかげた皆の後ろで、幌馬車にじぃじと一緒に乗りこもうとする藤と常葉を引きずった。
「常葉と藤は歩くの!」
「えぇ──!」
泣きそうになってるけど、だめだから!
「鍛錬だよ。じゃあ馬さん、お願いします!」
ブルルルル!
ひなびてるけど食材は豊かな村で仕入れた食糧を積んで、出発です!




