だいすき
ロロァの気もちは、ちいさな子どもの独占欲かもしれない。
幼いそれは、愛とは呼ばないのかもしれない。
それでも、透夜の胸にあふれる気もちは
前世でも感じたことのない、燃えて、凍えて、焦がれて、苦しい、哀しくて、うれしくて、あなただけしか見えなくなる、この気もちは
きっと
「……わがきみ」
くしゃくしゃの泣き顔で、ささやいた。
こんなの絶対スパダリじゃない。
情けなくて、みっともなくて
でもあふれる気もちは
あなただけに向かう気もちは
「だいすきです」
ささやいたら、真っ赤な頬で笑ってくれる。
世界のしあわせを集めたみたいな瞳で、抱きしめてくれる。
「とーや」
ふわふわの、ちっちゃな唇が、おでこにふれる。
ちゅ
あまい音に、卒倒した。
鼻血を噴いていないことを、必死で祈った。
こんなの、絶対、絶対、スパダリじゃない。
でも、これ以上のしあわせなんて、どこにもない気がした。
あなたの従者になれたことが、至上の、さいわい
あなたの傍が、至上の、しあわせ
疲れ果てた皆でぐうぐう眠って、起きたら元気に出発だ。
「じゃあトゥヤと行くから、もうバギォ帝都には行かなくていいかな!」
泣きはらした目を朝日に眩しそうに細めたセオが胸を張る。
「いや、行ってください。俺たちの任務が、セオを帝都に送り届けることなんで。セオがいなくなったら、任務失敗! 連続失敗でお金がもらえないとか、死活問題だから! 重大な任務に連続で失敗する隠密団に、誰も依頼してくれなくなっちゃうから! お金は大事なんだよぉおおお!」
泣いた。
常葉と藤と柳と紅蓮が、肩をぽんぽんしてくれる。
ロロァのちっちゃな手が、頭をなでなでしてくれる。
「わ、わかった。愛らしいと高名なミヒァル殿下に、ごあいさつにゆこう!」
によによしたセオは、ちょっと肩を落とした。
「……僕は王太子じゃなくなるから、伴侶候補でもなくなってしまうけど」
ちいさな声に、目をむいた。
「え、そうなの!?」
のけぞる透夜に、セオがうなずく。
「今回、バギォ帝国に来たのは、顔あわせなんだ。帝太子と王太子だが、伴侶になることでエゥゲ王国とバギォ帝国の融合、大陸に誇る大国への成長を目指すものだった。
……まあ、俺じゃなくても、エゥゲの誰かが来るだろう」
吐息するセオに、透夜は眉を下げる。
「ミィの伴侶になりたいなら……」
セオは首を振った。
「血みどろの将来と、愛らしい男の子が伴侶になってくれない将来なら、後者でいい」
ふっと髪をかきあげて笑うセオは、BLゲームのセオとは随分違う気がする。
キァナも、ロロァも、きっとあの『どき☆ワク☆イケメンパラダイス♡』のキャラクターのままじゃない。
ゲームに出て来なかったユィルも、孤児の皆も、きっと元気に大きくなってくれる。
BLゲームの世界なのだとしても、皆、違った道を歩いていい。
強制力なんてものがやってくるなら、絶対に、叩き壊してみせる。
つらい思いばかりしてきた皆が、自分の心で選んだ道を、生きるために。
拳をにぎった透夜は、セオの頭をわしゃわしゃなでて、笑った。




