隠しキャラ?
「……うわあ」
思わずドン引いた透夜と、倒れてる藤と常葉と柳を見つけたらしい男の子の顔が、ぱあっと音がしそうなほど明るくなる。
「なんだ、ちゃんといるじゃないか、可愛い男の子たちが! もちろん下着で踊ってくれるんだよな!?」
おねだりがゲスい。
なんだ?
隠しキャラの隣国の王太子って、こんなだったか!?
目をむいた透夜は、前世の記憶をあわててサーチする。
セオ・ジオ・エゥゲ
世界に名立たる強国エゥゲ王国王太子。プライドが天より高く、自分がいちばんじゃないと気が済まない。わがまま俺様王子。かわいい男の子に目がない。
愛らしい主人公を手に入れようとイケメンぶりと強権を発揮する。
「そうだった!」
こいつがいちばん、乱れてた!
イロイロと!
隠しキャラだし、楽しくはっちゃけよー! な造形だった。
バッドエンドルートでは、しあわせに結ばれました、の後に、たくさんの可愛い男の子がゾロゾロ出てきて『愛人のひとりに追加されました』ってなるんだよ!
ぼうぜんとする主人公のスチルが衝撃で、またこれも出すのが難しくて、条件を看破したら『さっすがBLゲームマスター!』ほめてくれた。
だがせっかくの渾身の頑張りで出したスチルが、可愛い主人公の絶望の目だ。
『フルコンプには必須だけど、このスチルいらねぇえ!』ドひんしゅくだった。
誰も楽しくなさそうなのに、ごく一部では大変な人気となり、二次創作がオンラインでたくさん展開されたとか、こそこそ見ちゃったとかまで思いだしたァア──!
……まあ、心構えしてても、依頼を受けないと圧力で潰されちゃいそうだから、仕方ないけどさ。
「おにいさん、俺のために葉っぱ一枚で踊ってくれ!」
おねだりが、ゲス過ぎる。
ものすごく呆れた顔の透夜と、汚物を見るような目で藤と常葉と柳に見られたセオが、ちょっと涙目でぷるぷるしてる。
「な、なんだよ! 俺はエゥゲ王国王太子だぞ! えらいんだぞ!」
ふんと透夜は鼻を鳴らした。
「身分をふりかざして、自分は偉いとのたまう輩は、あんぽんたんだ」
不敬とか何とか言って、ぽこりに来たら、ぽこり返してやるぜ!
ゴォア──!
殺気で威圧する透夜に、尻もちをついたセオが、内またになってる。
「うわぁあん! おにいちゃんが、俺をいじめた──!」
泣きじゃくるセオに、透夜の目が遠くなった。
「……あー、うん、ワガママ俺様培養されたセオにはきつかったか。そりゃわるかった」
わしわし頭をなでてあげようと手を伸ばした瞬間、飛んできた矢を、その手でつかみ取る。
次の瞬間、射手に向かって正確に投げ返した透夜に、ぞろぞろ現れた闇衣の者たちが眉をあげた。
「ほほう、これはこれは、もしやバギォ帝国の冒険者『よい子の隠密団』の皆さんかな?」
長くのびた白いひげをしごきながらやってきた、闇色のローブをまとうおじいちゃんに、おもらししちゃったのかもしれないセオが抱きついた。
「じぃじ! おにいちゃんが、俺をいじめた──! 処刑だ、処刑──!」
うわあ、すげえ悪役令息っぽく育ってるなあ。
攻略対象だぞ?
隠しキャラだぞ?
色モノ系だけど。
きみの役割を思いだせ!
思わず拳をにぎってしまった。




