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悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


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53/55

たぶん違う




 心配そうに見あげてくれるキァナの前に、透夜はかがむ。


『親が暗殺しようとしている』告げたらきっとキァナを追いつめる。

 だから、ただ聞いた。


「身分を捨てて、平民になることになるけど。それでもよかったら、うち、来る?」


 ぎゅう、と唇をかんだキァナは、何もかもを悟ったように目をふせた。

 長い水のまつげが、ふるえてる。



「……トゥヤと、行く」


 そうっとのばされた手を、ぎゅっと、つなぐ。



「よし」


 抱きあげて、笑った。


 目をまるくしたキァナの顔が、真っ赤になって、ふうわりほどける。



「で、でも、とーやは、僕のなんだからね!」


 闇衣のすそを引っ張って見あげてくれるロロァが、天使だ。





 ててれってってってー!


 キァナが仲間になった!





 喜ぶ間もなく、透夜は目を細める。


「なるべく早く、ずらかった方がいい。暗殺者が来るかもしれない」


 見開かれたキァナの瞳が、かすかに揺れる。



「……僕はほんとうに……いらない子なんだね」


 壊れそうなつぶやきをさらうように、抱きしめた。




「親がくそなことを、哀しまなくていい。苦しまなくていい。そんな気もちさえ、もったいない」


 さらさらの水の髪をやさしくなでて、ささやいた。



「誰かに求めるんじゃなくて、自分で自分を大事にできたら、自分で自分を大切に思えたら……自分を愛せたら、きっと、世界が変わってく」


 くしゃくしゃちいさな頭をなでて、笑う。



「それでも欲しいなら、俺が言ってやるよ」


 まっすぐキァナの瞳を見つめる。



「キァナが、たいせつだ。

 生きてくれたら、俺が、うれしい」


 ちいさな顔が、ぐしゃりと歪んだ。



「……僕のものに、なってくれないくせに──!」


 ちいさな拳に胸を叩かれた透夜は、ふるえる身体を抱きしめる。



「キァナだけの誰かを見つけるまで、俺が、キァナを守る」


 心からの言葉だった。



「……トゥヤは、だめ……なの……?」


 涙の瞳で見あげられたトゥヤは、切ないモテ期を実感した。


 いやモテてるんじゃなくて、子どもに懐かれてるだけとか、聞こえないから!

 初めてやさしくしてもらったから勘違いしてるとか、痛いくらいわかってるから!


 モテるなんて、ものすごく、うらやましくて、楽しいことなんだと思ってた。



 でも、身体も、心も、ひとりにしか、捧げられないから。



「ごめんな、キァナ」


 ささやいて、そっと腕を解く。



「俺のあるじは、ロロァさまなんだ」



 心配そうな涙に揺れていたロロァが、真っ赤になって跳びあがる。



「トゥヤの、いじわる!」


 ふんと顔を背けたキァナが、涙の上目遣いでロロァをにらんだ。



「これからって可能性もあるんだからね!」


 わたわたしたロロァが、涙の上目遣いで透夜を見あげる。



「ふ、ふぇえ、とーや、もてたら、やだ──!」


 しがみついてくるロロァを抱きあげた透夜は、首をふる。



「最初にやさしくしてもらったら、かっこよく見えるものなんだよ」


 せつなく、ささやいた。


 つらい目に、苦しい目に遭ったからこそ、ちょっとやさしくしてくれた変なの(透夜でないことを祈る)にひっかかりそうでとっても心配だ。


 皆がちゃんと相手を見つけるまで見守りたい!

 暗殺者からも、物理的にも守らないとね。


 だからきっと



「モテじゃないと思うんだな……」



 自分で認めました。


 ありがとうございました。








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