いっしょ
「味方なんて、1人もいない! 皆、父上の愛人の子どもの方が優秀だと思ってる。僕なんてすぐにいなかったことにされるよ。愛人に子が生まれたから……父上は……もう、僕が、邪魔なんだ……」
ひび割れたつぶやきが、砕けて落ちた。
キァナの頬を、涙が伝い落ちてゆく。
ロロァのちいさな顔が、くしゃりと歪んだ。
「……僕と、一緒だ」
「…………え?」
「僕も、いらなくなって、捨てられたの。とーやが、僕を、救ってくれた」
きゅ、と闇衣をにぎる指に、透夜は首をふる。
ロロァの前に、膝をつく。
「俺を救ってくれたのは、あなたです」
ちいさな手に、額をつける。
真っ赤になったロロァが、とろけて笑った。
ぎゅ、と瞳を歪めるキァナに、透夜は微笑む。
「きっと、キァナにもいるよ。たったひとりが」
「トゥヤがいい!」
叫んだキァナが、透夜の左手をつかんだ。
「だめなの! とーやは、僕の!」
ロロァのちっちゃな手が、透夜の右手をにぎりしめる。
右手と左手を引っ張られた透夜は、痛みではなく、感激にうるむ瞳で天を仰いだ。
ああ、これこそがモテ期……!
来てほしいけど、来たら来たで申しわけなくなるモテ期?
いや! こんなこと一生に一回しかない! だからこそモテ期!
酷い目を見たからこそ錯覚しちゃう、ちっちゃい子どもに懐かれてるだけだとかいう真実は聞こえない!
そしてモテ期が早過ぎる件について。
『昔は、どうしてだろう、かっこよく見えたんだよねえ(今は全く微塵もそう思わない)』12000000000000000%な件について!!
………………泣いていいかな?
「トゥヤ、笑うか泣くか、どっちかにしないと気もちわるいよ」
唯一冷静な常葉に突っこまれた!
「あの、あの、とーやはあげられないけど、居場所なくて、殺されそうなら、一緒に来る?」
天使なロロァが首をかしげる。
「……ぼ、僕、殺されちゃうのかな……」
『そんなことない、平気だ。お父上はきっとキァナを愛してる』
それが幻想だって、知ってる。
子どもを愛せない親がいることを、知ってる。
子どもを憎む親がいることを、知ってる。
『邪魔だから』で子を殺す親がいることを、知ってる。
『邪魔だから』で親を殺す子どもがいるように。
だから透夜は、ふるえるキァナの頭を包みこむようになでた。
「……トゥヤ……」
涙の頬をなで、目をあわせて微笑んだ透夜は立ちあがり、常葉の肩を叩く。
「ちょっと見ててくれ」
言わなくてもわかってくれるけど、キァナとロロァを安心させるように告げた透夜に、常葉はその意図まで解したように微笑んだ。
「いってらっしゃい。気をつけて」
ありがとうと目で告げた透夜は、軽く跳ぶ。
天井裏から屋根へと更に跳んだ透夜は駆けた。
ゾンデ高位貴族の執務室へ。
ゲームには、ゾンデ高位貴族は出て来なかった。
BLゲームで大切なのは攻略対象の輝かしいスチルや、きゃっきゃうふふな、いちゃいちゃスチルであって、両親ではない。全くない。
王などは物語の進行上登場し、それが攻略対象の王子の母であったりするのはよくあることだが、それは王だからだ。他の親族はまず出て来ない。
なので透夜に全く情報はないのだが、貴族の邸宅の間取り図くらい大体解る。
お子様には深夜時間だが、大人には夜更け時間だ。
悪い相談をするなら、真夜中がいい。




