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悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


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49/55

キァナ




 キァナが護衛にと望んでくれる気持ちはうれしいんだけど!

 ごめんよ、俺は、わがきみの従者だから。


 すまない気もちで透夜はキァナのデータを思いだす。

 BLゲームマスターとして、各キャラクターのプロフィールは完璧だ。


 キァナ・ゾンデ

 由緒正しき高位貴族家の長子で、眼鏡の秀才。長い水色の髪と水色の瞳が印象的な麗しの少年。最初は主人公にやさしくしてくれるが、自制の賜物で、選民意識が強く、実は平民を見下している。


 攻略するためには、平民でも優秀なところを見せつけなければならない。

 治癒魔法の修練を頑張るか、学術でよい成績をおさめなければ、見下されたまま終わる。


 しかし、あまりに学術の成績が悪いと、キァナが鼻で嗤いながら補講してくれるイベントが発生する。このスチルのキァナの目が、汚物を見下ろすあまりにも素晴らしい睥睨だったため、一部の人に大人気、大反響となった。


 だがこのスチル、出すのが大変難しかった。

 スチルコンプ率99%で止まってしまう皆のくやし涙が、オンラインであふれた。


 BLゲームを愛する皆の涙を救いたい!

 決意した透夜は寝食を削ってゲームをやりこみ、このスチルを出す詳細なパラメータを看破し、即座に公開した。


『すげえ、BLゲームマスターだ!』


 褒め讃えてくれる人が出て、そうだ、この時に『BLゲームマスター』の称号を獲得した気がする!

 自称じゃないんだ。ほんとだよ。


 となるとキァナは透夜のアイデンティティを確立してくれた、素晴らしき存在だ。


 そのキァナをひと言で言うなら、クールな秀才キャラだろう。

 フルコンプしたからこそ言おう。


 ぷっくりふくれて赤い頬で上目遣いとか、鼻血もののご褒美スチルは存在しなかった!



「どした、キァナ。何かあったのか?」


 思わず聞いてしまった。


 しかし誰が、突然夜中に天井から降りてきた闇衣の不審者、しかも初対面でいきなりぱんつの色を聞いてくるような最低な輩に相談をするだろうか!


 ──猛省した。


「ご、ごめん、あの、キァナがすごいって知ってるから。元気だしてくれ」


 じゃあ、と手を挙げた透夜の闇衣のすそを、キァナのちっちゃい指がつまむ。



「……僕、全然、すごくないんだ」


 ちいさな声が、夜に落ちた。


 ちいさな肩が、ふるえてる。


 目をみはった透夜は、キァナを寝台に座らせた。

 その足元の床に座った透夜は、キァナを見あげる。



「何か、あったのか」


 また聞いてしまった!


 聞いたって、何もできないことがほとんどなのに。

『元気だして』

 言われただけで出るなら、自分で元気がつくれるだろうに。



「……ごめん、無責任に」


 キァナは首を振った。

 ぽふぽふ、寝台の隣を叩く。



「座れって?」


 こくりとうなずくキァナの隣に腰かける。


 ふかふかの寝台が、やわらかに沈んだ。

 キァナのちいさな頭が、こてんと透夜の肩に乗る。

 水の長い髪が、さらさら月の光を弾いた。


「……僕さ、頭、わるいんだ」


 かすれた声だった。



「…………へ?」


 思わず口を開けてしまった透夜に、キァナは笑った。


 無力を嘆くような、すべてを諦めるような、さみしい微笑みだった。






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