僕の
ミィ、帝太子だった──!
た、確か帝太子の名前は、ミヒァル・ディ・バギォだ。
愛称はミィなのか! ゲームには、なかったよ!
くずおれそうになった透夜は、あわてて足に力をこめる。
「ご無事ですか」
「ぅ、うん……ぁりがとぅ、トゥヤ」
真っ赤な頬で、もじもじお礼を言ってくれる。天使だ。
「そ、そなたは……?」
ミィを守るように立つ麗しい男性は、もしかしてミィの、おかあさんだろうか。
全身真っ白な、突然屋根から降ってきた不審者です、ごめんなさい。
「ちょっと暗殺者が見えたので。ご無事ならよかった。失礼します」
シャッとふたたび屋根のうえに上がろうとした透夜の前に
「死ねェエ──!」
闇衣の暗殺者たちが湧いて出た。
同業に気づかなかったのは、こちらの落ち度だ。
いくら向こうがこちらが入る前から大地に張りついて潜んでいたとしても、気配を殺していたとしても、察知できなかったのは情けない。
あんまりしあわせで、平和ボケしちゃったかな。
ひとつ息を吸った透夜は、大地を蹴る。
殺したら、黒幕を吐けない。
それでは大本を断罪できなくて困るだろう。
帝家が困るのは願ったり叶ったりだが、天使なミィを傷つけようとする輩は、ざまぁ必須だ。
殺すほうが簡単だが、黙らせるのも難しくない。
無詠唱魔法を披露できるなら、もっと簡単だが、人前では控えよう。
一瞬で計算した透夜は、跳んだ。
鞘に入れたままの剣で、襲い来る暗殺者のこめかみを横から強打する。
一撃で昏倒させる。
風魔法で加速してもらうまでもなかった。
紅蓮や木蓮の爆速の援護さえ、必要なかった。
すべての敵を一撃で屠る最短経路を計算し、振り抜く。
疾風のように駆けた透夜の後には、泡を噴いて倒れる暗殺者たちが転がっていた。
「じゃ!」
軽く手を挙げて、颯爽と去ろうとした透夜の白衣のすそを、ちょこんとちいさな指がつまんだ。
「と、トゥヤ、ぁ、ありが、とぅ……ぁ、あの、あの、ぉ礼……」
真っ赤になって、もじもじ告げてくれるミィが、天使だ。
「あたりまえのことを、しただけだよ」
微笑んで、わしゃわしゃ陽の髪をなでてから、不敬だったことに気がついた。
「ぎゃあ! も、申しわけありません!」
「まさか。我が子の命を救ってくださり、心より御礼申しあげます」
麗しの男性が、涙の瞳で胸に手をあて、膝を折ってくれる。
心からの感謝を表す敬礼だ。王配殿下が!
「いえ! 当然のことですから! で、では、これで失礼します!」
シャッと屋根に跳びあがろうとした透夜の白衣のすそを、ちっちゃな指が、きゅうっとにぎる。
「行かないで、トゥヤ」
ミィの瞳が、うるうるしてる。
………………え、なにこれ……もしかしてほんとに、モテ期なの……?
え、早過ぎるよ!
意味ないよ!
『昔、そんなことあったねえ』120000000000000%だよ!
たすけて!
「とーや!」
ぽてぽて駆けてきてくれる、ちっちゃなロロァに目をみはる。
「ご、ごめん、トゥヤ、止めたんだけど、トゥヤが困ってるからって──」
常葉の眉が、ダダ下がりだ。
え、正面突破してきたの?
それ『隠密団』じゃないよね?
あんぐりする透夜の手を、ロロァのちっちゃな指がにぎる。
「とーやは、僕のなんだから!」
うるうるの涙目で叫んでくれる、真っ赤なロロァが、天使だ。
「……っ!」
ミィの瞳が泣きだしそうに、うるうるしてる!




