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悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


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正しい降り方




 泣いてる場合じゃない。

 皆を護るためにも、皆で一緒に生きてゆくためにも、お仕事だ!


 透夜は、あったかいご飯でお腹ぽんぽんで笑顔の皆をのぞきこむ。


「空と藤、柳は、ユィルとロロァさまを頼む。他の皆は俺たちに続いて後方待機を頼みたい」


『えー、また留守番?』


 すねるかな、と思ったのに


「りょーかい!」


 胸を叩いて、赤い頬で笑ってくれた。





 真夜中が『よい子の隠密団』の活動時間だ。


 よい子なのかどうかは大変疑問だが(主に透夜が、というか圧倒的に透夜が)よい子ということにしておこう。


 いつもの闇衣に身を包んだ透夜と紅蓮、常葉は、身体が覚えこんだ帝宮に忍びこむ。


「前は感覚に頼っていたが、今度はちゃんと地図を作ってみよう。道と建物と警護の衛士の場所、巡回経路を把握する」


 こくりとうなずいた紅蓮と常葉がかき消える。


 言葉なく、感情なく、記憶なく過ごしてきたからだろうか、感覚が異様に発達し、どれだけ離れていても、仲間がどこにいるのか把握できる。

 ゲームのマップで青い点がつくみたいに。

 敵には赤い点がついて、ちゃんと動いているのも解る。

 ああいうのが頭のなかに常にあって、どこに動けばいいのか解る感じ、がいちばん近いかもしれない。


 第六感と呼ばれるのかもしれないそれが、暗殺人形にされた皆は異様に発達している。

 それこそが、記憶と感情を叩き壊す目的なのかもしれなかった。

 あるはずのものを壊すことで、本来ない力を極限まで引き出す。


 感情がよみがえったのに、感覚は元のままだ。


 身体記憶がおぼえていた地図と、現状に相違がないか確認、衛士の位置などを修正してゆく。


「ほとんど記憶どおりだな」


 個人記憶は壊されていても、やはり指令用記憶は温存されているらしい。


 透夜は屋根を駆け、天井裏を伝い、裏道を抜け、さくっと担当したすべての部屋の確認を終えた。


「お茶会に招待した人たちのリストがあるといいんだけど……」


『ここだよ』みたいに書類が光って教えてくれる訳じゃないし、膨大な書類のなかから帝太子のお茶会計画資料を選び出すのは大変だ。


「ま、無理はしないでおこう。今日は帝宮内部が確認できただけでよしとするか」


 ふんふん鼻歌とともに、紅蓮と常葉と合流しようとした時だった。


 すんすん、泣き声が聞こえた。

 ちいさな、幼い声だ。


 子どもが、泣いてる。



 透夜も12歳なので子どもだと思うが、前世はBLゲームマスターだったからな!

 人生経験がある。

 ……たぶん生きてただけで、すんごいスキルとかすんごい頭脳とか威厳とか貫禄とか料理の腕とか何にもないけど、ちょこっと子どもよりは大人なはずだ!


 ここは、今世スパダリとして慰めるべきでは?


 屋根裏からのぞきこむと、白い天蓋つきの寝台の傍で、ちっちゃな子どもが、うずくまって泣いていた。


 従僕見習いの子どもが、あるじの不興を買って、叱責されたり、ぶたれたりしたのだろうか。



 虐待は、最低だ。

 殴るなんて、絶対に、しつけじゃない。ただの暴力だ。

 暴行されて反省するなんて、ありえない。

 恐怖と怨みと憎しみが募るだけ。

 憤激に髪を逆立てた透夜は、音をたてず屋根裏から降りた。



 そう、これが今世スパダリな俺の、正しい屋根裏からの降り方だ!


 腐った屋根裏を『ズボォ──!』踏み抜いて落ちる無様とか、生涯に一度で充分だから!







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