断固!
そうだ、暗殺人形だった頃は、ちいさな表情の変化も、微塵もなかった。
照れたり、赤くなったり、笑ったりする皆を見てると、涙腺が崩壊する……!
「皆、よかったな……!」
「トゥヤも」
手をにぎってくれる皆の目が、うるうるしてる。
固く手をにぎり合う透夜と皆に不思議そうに首をかしげたメメは、にこりと笑った。
「仲良し子ども団の皆に、いいのが1個あるよ」
「1個?」
11件って言ったのにー。
不服顔の透夜に、メメの唇がにやりに変わる。
「11件分の報酬があるんだよ」
「やります!」
手を挙げた透夜に、皆がうなずいてくれた。
メメは掲示板に目をくれることなく後ろの部屋に入り、書類をかき回して戻ってきた。
「今度、帝太子殿下の伴侶候補を決めるお茶会が開かれるんだ。誰が出席していて、誰が最有力なのか、調べて報告してくれって、隣国エゥゲ王国の宰相からの依頼だ。報酬は破格」
きらきらしく装飾された羊皮紙に目をむいた透夜は叫ぶ。
「断固、お断りします!」
攻略対象に近づいたら、ダメ、絶対!
「えー、やってよー。『よい子の隠密団』なんでしょ? バハから話を聞いた支部長も、子どもだから疑われなさそうだし、腕も良さそうだし、是非お願いしろって!」
「警護が厳重そうだし、俺たち、子どもなんで!」
はい拒否──!
「優秀なんでしょー?」
「優秀だけど、いや!」
断固拒否!
ぷんぷんする透夜のそでが、くいくい後ろから引かれる。
仲間の皆を振り返ったら、心配そうな皆の瞳と目が合った。
心配まで会得してる!
すごい!
「トゥヤ、いやなら、俺らで行ってくる?」
紅蓮の言葉に、空もうなずく。
「報酬、いいんだろ?」
「だめだめだめ! 仲間が近づくと、そこから芋づる式に被害が及んで、ロロァが惨殺されるなんてことになるんだから、絶対だめ!」
断固反対!
「という訳で、聞かなかったことに。犬探しとか、そーゆーのやります。帝都から出られないんで、薬草摘みとかは無理です!」
「えー!」
ぶすくれたメメは、声をひそめた。
「……さっきロロァって聞こえたんだけど、ギビェ家の?」
「聞き間違いじゃないですか」
ぐはあ──!
失言した! わがきみ、ごめんなさいー!
内心わたわたな透夜に、メメは更に声をひそめる。
「お茶会にはギビェ家が出てくるってさ。次男だっけ? 後釜のほうの子ども。彼を知り己を知れば百戦あやうからず。情報は持ってると強いよ?」
「……そんなことわざ、ありましたっけ?」
まさか転生者か!
ビビる透夜に、メメが胸を張る。
「知らないの? いにしえのカヒ王国の高名な軍師の言葉だよ!」
「……へぇえ」
さすがBLゲームの世界だ。
ビビった。
あちこちに転生者がゴロゴロしてるとか、危険すぎて、こわい。
「しばらく帝都にいるんでしょ。敵がどう動くのか、知っておくのは大切だよ。きみたち、優秀なんでしょう? 前に出るなんて、無様な真似しないよね? なら、近づかないのと一緒だよ」
片目をつぶってくれるメメは大変愛らしいが、スパダリな俺は、ほだされないぜ!
腐った屋根裏を踏み抜いて、無様に死にかけた男だからな!
「いや、どんな危険があるかわからないから──」
断固、拒否る!




